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ディスカヴァーらしい本づくり トップ編集者4⼈の座談会

“ディスカヴァーならでは”の本づくり世の中に「新しい視点の提供する」ことにこだわる

大山

私が企画を立てるときに大切にしているのは、自分の漠然とした不安感や心配ごと、問題意識に正直になることでしょうか。自分自身が不安に感じていること、あるいは、社会に足りなくて困っている人がいるような問題意識を掘り下げていくことに、常に立ち返るようにしています。

大竹

私も同じで、自分が関心あることから考えるようにしています。ただ自分はそれほど関心がないテーマでも、誰かの悩みを解決することや、読んだことをきっかけにやってみよう、行動してみようと思える本はつくりたい。それがディスカヴァーのミッション「視点を変える明日を変える」ということだと思うからです。

大山

ディスカヴァーで編集するなかで、「二匹目のドジョウ」企画は出さないという文化も、他社と異なり新鮮だな、と感じます。たとえば、たくさん本を出している有名な著者さんに執筆を依頼するとしても、他ではまだやっていない視点や切り口を提案する。「それは新しいね!」という視点がなければディスカヴァーとしてやる必要がないと思うし、社内でも指摘される。その意味では、企画を探すときに著者の知名度は関係なくて、まだ世に出ていないけど、どうしても届けたいメッセージがそこにあるかどうか。そこを重要視して企画を立てています。


大竹

どんな著者なのか、どんなメッセージを伝えたいのか。対象読者はこんな人で、こんなことが課題で、本を読んだらその課題が解決するだろう、という具体的なストーリーが頭に浮かぶときは、企画が順調に進むことが多い。
逆に、知名度のある著者でも、誰が必要としている情報かイメージできないときは、はじめはなんとなく面白そうと思っても、うまくいかないことが多いですね。

堀部

僕は自分の問題意識からというよりも、まずは人に会ってみて、その人が何に没頭しているかを聞くところからはじまることが多いです。それがマーケットに受け入れられるかどうかは後で考える。何かピンとくるものがあれば、それを深掘りして構成案をつくり、企画会議に持っていきます。

堀部

なかには本を出したいという想いが強い人もいて、「こんなことを書きたい」という話をされることもよくあるんですけど、それを真に受けすぎないようにして。結局この人は何にたくさんの時間を注いでいるのかを探っています。
その人がめいっぱい時間を費やしていることのなかに他の人にも役立つ何かがあるはずだ、その人にしか書けない深いものがそこにあるはずだ、と思っているからです。だから、1つの領域に本当にたくさんの時間を費やしている研究者の話など、特に面白いと感じます。

千葉

自分は前職と合わせてビジネス書の編集を20年以上やっているので、こちらからアプローチしなくても、著者の方から企画を提案されたり、人から紹介されたりするだけで、回そうと思えば回せてしまうんですね。紹介を受ける場合でも、間に立ってくれる人は、ディスカヴァーに合うだろうという人を紹介してくれるから、ある程度の質は担保されている。それはとても有り難い話で、実際そうした縁からベストセラーが生まれることもある。
でも、そうやって売り込みや紹介にばかり頼っているとすごく危険で、編集者が待ちの姿勢になってしまう。つきあう著者や仕事の範囲がいつのまにか狭くなって、新しい動きや若い書き手にキャッチアップできなくなる。そんな落とし穴にはまるベストセラー編集者を少なからず見てきました。だから自分は著者もテーマも新規開拓していくことにこだわりたいし、ブックライターやデザイナーも、新しい世界を創りだしている人を常に探しています。

千葉

ディスカヴァーの編集方針のひとつに「いつもどこか新しい」というのがあります。新しいことを教えてくれる著者、新しい世界を一緒につくっていけるスタッフと組んで、この本はどこが新しいんだろうとぶつぶつ自問しながら、手探りの中、どうにかこうにか本を一冊つくりあげる。そんなことの繰り返しが編集者をアップデートさせていくんじゃないか。要は、ラクしてちゃダメってことですね(笑)

プロデュース力が求められる時代誰かに読むメリットのある本を仕掛けていく

堀部

企画を見るときポイントにしていることはありますか?

千葉

鎌倉投信の新井和宏さんに書いていただいた『持続可能な資本主義』(小社刊)の中に、「八方良しの経営」というフレーズがあって。「社員・取引先・株主・顧客・地域・社会・国・経営者」、それぞれが「win-win」、なおかつ「×8」という概念なんですが、ディスカヴァーの場合、「取引先」すなわち著者にとって、この企画をディスカヴァーで書籍にすることがどんな意味を持つか。「顧客」すなわち読者の皆さんや、そして「社会」にどんな価値を提供できるのか。「社員」「経営者」「株主」はこの本がディスカヴァーから出ることにどんな意義を感じるだろうか。企画を検討する際、八方まではいかないまでも、そのくらいのことは考えます。「著者から提案されたから」「自分が好きなテーマだから」だけでは今日、営業部や書店さん、メディアを巻き込んでいくのは難しいような。


堀部

僕は企画に一貫性があるかどうかを意識しています。「伝えたいことは何か?」「それを伝える構成になっているか?」「それを伝えるのに一番ふさわしい著者になっているか?」。目次構成を大事にしていて、企画書の段階でどこまでアイデアを広げて、そこからポイントを絞り込んでいけるか、そのプロセスが本の良し悪しを決めると思っています。

大山

実用書をつくっていて意識するのは、「本当は本なんて読みたくない」という人がいるかもしれないということ。「1ページ目から集中して、まじめに読んで学ぼう」という能動的な方ももちろんいらっしゃると思うのですが、忙しい毎日のなか「できれば読みたくない、さくっと要点だけ知りたい」と思っている読者もいるはず。現に私自身もそうです(笑)。そんな方にも届けるためには「読者は結局のところ何を知りたいのか?」という視点や、作り手の自己満足の書籍にならないようにすることも大事なのかな、と。

大竹

たまに企画を通すための企画みたいなものになってしまうこともあって、そういうものは「本当にやりたいのかな?」と考えると、熱が冷めてしまうことがほとんど。当事者意識がなくて、ただこんなコンテンツがウケそうだから、というだけで企画したものは上っ面をなぞっただけのものになる。自分が当事者ではなくても、本をつくっていく中で読者になりきって「これが欲しい」と本気で思えるようになるならいいと思います。「なりきれるか」「自分ゴト」として捉えられるかどうかは大事です。

大山

あと、いろんなジャンルに興味を持てるように、教養や触れる情報の範囲を拡げていかないと、ずっと同じ企画テーマばかりになってしまうので、同じ場所にばかりいないようにしたいな、と思ってはいます。

堀部

企画会議では、類書の売れ情報をあまり重視しないですよね。売れてないからダメということもないし、売れているからOKというわけでもない。


大山

類書は意識しないとしても、書店での置き場所がどこになるかは、企画を考えるときはかなり重要ですよね。そのテーマに関心がある人と、本がどこで出会うのかがイメージできないということは、自分の中で最終的なアウトプットの落とし込みができてないということだから。

大竹

「結局、この本を誰に届けたいのか」まで考えることは大事ですよね。

千葉

とにかく今売れている著者にアプローチして、順番待ちして書いてもらうという出版社もあると聞きますが、ディスカヴァーはそうではないですね。その企画は世の中にどんなインパクトをもたらすか、読者にとってどれだけのメリットがあるか。ディスカヴァーが主に扱っている実用書やビジネス書は、読者の潜在的なニーズに応えていく要素が強いジャンルだから、特にそうしたところを見るようにしている気がする。読者視点と、全体を俯瞰して捉える視点? そのあたりのバランス感覚は、企画を検討するときに必要なことだと個人的には思います。

ベストセラーは
活発な社内コミュニケーションから!?書店営業の強み、全社で売るディスカヴァーのスタイル

千葉

先日、複数の出版社のオファーからディスカヴァーを選んでくれた著者に言われたことが印象的でした。近くの書店の新刊話題書コーナーで、売れ筋本が所狭しと並んでいるなかに、「これは営業がすごく工夫をして置いている。手をかけて売っているな」と、面積にかかわらず存在を主張している本があって、出版社を見たらディスカヴァーの本だったと。だから、ディスカヴァーから出してみたいと言われて、それはとても嬉しかった。

全員

そうそう。そうですね!

大竹

他社で売れなかった本をディスカヴァーでリメイクして出したい、という持ち込みをいただいたりもしますし、ディスカヴァーの営業の存在は著者にとっても魅力だと思います。

大山

やっぱり新刊を出して適材適所にちゃんと置かれるということは、書店営業をしているディスカヴァーの大きな強み。地方の都市部でも一ヶ月半くらいは書店に置いて様子を見てもらえる、というのは営業がいるからこそですよね。

堀部

それが新人著者の場合であっても同じなのが、編集の立場としては心強いですよね。

大山

新人著者さんの場合、残念ながら書店のいい場所に並ばない出版社さんも多いですよね。書店さんからの直接の意見は、編集者自身も情報としてありがたいし、著者さんとしてもフィードバックが得られる機会は少ないから喜ばれる。「ディスカヴァーならではですね」と言われます。

大竹

社内でも営業と編集の距離が近くて、何かあればすぐ相談できることも大きい。

大山

私は営業部のFさんによくヒントをもらうんですけど「この本の装丁を変えて文庫コーナーに置いたら結構売れると思うよ」とか、彼の営業経験の中から企画の卵みたいなことをアドバイスしてくれたりする。それが『超訳ニーチェの言葉 エッセンシャル版』をはじめとしたクラシック文庫本シリーズになったり。情報交換したことから販促物のアイデアが浮かんで『うまくいっている人の考え方』『心の持ち方』のカバー替えにつながっていったり。

堀部

それ、Fさんパワーですよね。営業と編集が仲がよいとか、編集と広報の風通しがよいとか。単純にそういうことではなくて、そのときどきで話をしたい人にby nameで相談に行ける。部署間の仲がいいというより、それぞれが相談しあっているイメージ。それがうまくいっている要因のような気がします。


千葉

翌月に出る新刊の内容を共有して、編集、営業、広報、Webチームで垣根をこえて一緒に売り方を考える「新刊説明会」はディスカヴァーらしいコミュニケーションの場だと思うな。

大竹

営業メンバーから「さっき説明されていたあの本、私売りたいです!」と言ってきてくれたり、「もっと資料ないですか?」と、個別に聞きに来てくれたりすると、すごく嬉しい。

全員

そうそう!そういうのよくある!

大山

一方的にプレゼンをしてジャッジされて終わりではなくて、自分とは違う感覚の多様な意見が聞けますね。たとえば女性向けの企画を考えているときに、さまざまな立場の女性の意見を聞いて、実際に本に反映させることもあります。

堀部

あと、よく編集あてに営業から電話がかかってきますよね。「書店でこんな反応でした!」とか。

大山

タイトルやサブタイトル、帯に入れると反応がよくなりそうな言葉とか。

千葉

社内のコミュニケーションから生まれた販促プランやアイデアがベストセラーの要因となっていることは少なくないね。

大山

ベストセラー作家であるひすいこたろうさんの『あした死ぬかもよ?』という本は、新刊説明会で出たアイデアがそのままタイトルになったんですよ。最初は「人生死ぬ前になんとかな27の質問」というようなちょっと真面目なタイトルで、みんなフーンみたいな感じだったんですけど、軽いノリの営業がいて(笑)

堀部

『あした死ぬかもよ』くらいでいいんじゃないですかー?みたいなノリでしたね。

大山

いいね!じゃあそれにしよう!と。いつもタイトルを営業との会議で相談するわけじゃないけど、そういう意見の交換でうまくいくこともあるのが、ディスカヴァーの楽しいところ。

大竹

ポップの文言も、つくっている当事者では絶対思い浮かばないような言葉が手書きでつけられたりして。

堀部

マジで!?みたいなのありますよね(笑)

大山

つくり手の発想だとマジメで説明っぽいものになっちゃうから、むしろ違う角度から書いてくれるポップやキャッチがわかりやすくて勉強になったりする。

大竹

少し売れるとプロジェクトチームができますよね。編集と営業が一体になって意見を出し合い、次はこんな販促物にしましょうとか、来月は○万部目指します、というような話をして。すごくうれしくなりますね。あと、Web、海外、オーディオブックと、全方位で売っていくことも考えるので、その点も著者さんにも喜ばれます。

千葉

出版業界は斜陽と言われるけど、そんな中でもディスカヴァーはいち早くデジタル、電子書籍、グローバルに投資をして、人材を採用している。今では他版元の海外版権の代行もやれる力があるし、書籍と連動させたLearnWayやWebコンテンツの企画も進めている。フットワークの軽い出版社だからこそ、21世紀型出版社としての道を、先頭に立って進んでいるのはいいよね。

大竹

働き方の面でもいいと思います。私や大山さんは子どもがいて、もちろん時間のやりくりは大変だけど、いろんな勤務形態があるし職場の理解があるので、働いていて肩身の狭い感じはしない。余計なストレスもない。

堀部

時間を自分でコントロールできるのがいいところですね。保育園からお呼び出しの電話があったときも、柔軟に動けます。あとでどこかにしわ寄せが来ますが(笑)

大山

編集の仕事って、個人で没頭してやるものだという印象が強いかもしれないけど、ディスカヴァーはインタラクティブなやりとりが多いし、柔軟に仕事をしている人が多い。それはすごく良いなと思いますね。

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