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「モノづくりの楽しさ」再認識の時間を創造的・生産的な仕事に取り組める「ALICE構想」とは?【前編】

専門的な要素が多いことから「分かる人にしか分からない分野」といわれるIT業界。そんな世界で「そろそろ、ITをわかりやすく。」をモットーに活動しているFabeee株式会社。「伝わらない専門用語をまくしたてるコミュニケーションには愛がない」とし、IT技術をすべての人が理解できるよう「伝える力」の重要性を説きながらDX、リモート開発支援など数多くの受託開発を扱ってきました。

受託開発は工程が決められた開発手法で進めるケースが多く、綿密な計画のもと実行していくことが可能です。ただ決められた要件内での作業は自由度が低く、クリエイティブな発想が生まれにくいこともあります。取締役CTOの杉森さんはそんな開発業務に対し、ある課題を感じていたそうです。

今回は課題解決への思い、自社開発ツールの全容、ツールを用いることで実現可能となった「ALICE構想」についてお話を伺ってきました。

お話を伺ったのは…

Fabeee株式会社 取締役 CTO
杉森 由政(Yoshimasa Sugimori)

東京理科大学在学中に宇宙物理学を専攻。線形代数、統計解析やテンソル計算といった機械学習の基礎知識を習得。2016年よりシステム会社のエンジニアとして就業。行政システムやSNSサービス、ゲーム開発等、短期間で様々なカテゴリーの開発に従事。2017年よりFabeee株式会社に入社。Pythonを用いたIoTプラットフォームの設計開発はもちろん、機械学習・ディープラーニング分野のプラットフォーム開発をリード。2018年2月同社CTOに就任。就任後は、AIの分野でシェアNo.1を目指すというビジョンを掲げ、現在、広島大学との連携研究において、生体データを解析。

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<目次>

■受託開発の課題「業務効率化」は売り上げのためじゃない?

■「モノづくりの楽しさを忘れて欲しくない」から始まった自社開発

■NO属人化!情報を会社の資産として活用するエコシステム

■プロジェクトをまるっと一括管理できる「EPQOT」

■価値を最大限に再活用するためのエコシステム「ALICE」と自社開発ツール「EPQOT」の関係性

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■受託開発の課題「業務効率化」は、売り上げUPのためじゃない?

――「Fabeee」は今まで受託開発をメインにやってきた会社だと伺いました。

杉森さん:はい。企業の依頼に合わせ、システムやソフトウェアを開発してきました。

――受託開発を受けていく中で、課題に感じる部分があったそうですね。

杉森さん:はい。僕は業務を効率化させたくて。受託に限らず、開発業務。ひいてはほかの部署もそうです。Fabeeeメンバー全員の仕事の負担を減らしたいと思っていました。

――それは… 生産性を上げて、売り上げを伸ばすためですか?

杉森さん:結果的にそうなれば嬉しいですが、業務効率化を目指したのは別に理由がありまして。

「モノづくりの楽しさを忘れて欲しくない」から始まった自社開発

――別の理由?

杉森さん:はい。Fabeeeは開発屋として多くのシステム開発をしてきましたが、それは常に「しなければいけないタスク」に埋もれている状態でした。あるとき「この状況はモノづくりする人のあるべき姿なのか?」と疑問に感じて。ボトムから上がってくるアウトプットをプロダクトに昇華する。モノをつくることが楽しいことだと認識する。そうやって自由にクリエイティブなことを考える時間がない状況に違和感を感じたんです。

――「やらなければならないこと」に終われて「やってみたいこと」を考える時間がない?

杉森さん:そうです。エンジニアはモノづくりに関わるのに、つくる楽しさを忘れてしまうのは不自由な気がしました。そこで業務を効率化して、余った時間を新しい発想を生み出す時間にすればいいと思ったんです。

――なるほど。

杉森さん:効率化のアイデアに役立ったのがGoogleが提唱していた「20%ルール」です。

――Googleの「20%ルール」は、仕事時間を分割したときに10割「やらなければいけないこと」をするのではなく、仕事の2割は未知の学びや視野を広げる取り組みをする時間に充てよう… というような習慣ですよね。

杉森さん:はい。「20%ルール」を適用するためには、どうしたらいいのか?それには今100%で取り組んでいる仕事を80%の時間でこなせるようになればいい。10時間かかる仕事を8時間で完成できれば、残り2時間は新しい発想を生み出す時間として提供できると考えたんです。


NO属人化!情報を会社の資産として活用するエコシステム

――とはいっても「100%の仕事を80%の時間でできるように」ってけっこう難しいですよね…?

杉森さん:もちろん100%の仕事に120%の時間がかかってしまう人もいます。若手は時間を要して当たり前だし、熟練者は80%といわずもっと早く終わることもあります。

――人によって仕事のスピードが違う…。

杉森さん:はい。業務が属人化しているんですね。なんとかできないかと思いながら効率化の仕組みや開発体制を考えていたら、ひとつのアイデアを思いつきました。

――おお!どんなアイデアですか?

杉森さん:考えたのはカスタムフレームワークやローコードの開発体勢です。例えば一度行った仕事を再度やると1回目より短い時間で終わることが多いですよね。それは効率的にできるようになったから。Aさんが行った案件と同じ案件をBさんが行ったらどうなるか。Aさんのやり方を知らないままだと属人化して人によってかかる時間は異なりますが、Aさんがやり方を共有していたらどうだろう?と思ったんです。

――やり方が共有されていれば、作業者が変わっても効率化される?

杉森さん:そう考えました。誰かの経験とやり方を会社の資産として活用する。そうすれば「この人がやるから早い」と属人化されず、自然に効率化されていくはずです。会社の資産として活用する仕組み、それをフレームワークに還元して開発効率を上げていく。そうした文化を社内につくりたいと思いました。

――「エンジニアが引き継ぎなく辞めてしまい、仕事に支障が出てしまった」といった話もよく聞きます。「経験を情報資産として社内活用」すれば、そんな属人化トラブルも少なくなるかもしれませんね。

杉森さん:行った仕事の価値を最大限に再活用する。この仕組みを上手く循環させている会社はほとんどないと思います。広い視野で見ればエンジニアも営業もバックオフィスも同じ仕組みを活用できるはずだし、成功例も失敗例もすべて情報資産として記録できるはず。行った仕事(価値)を最大限に再活用するためのエコシステム。これを僕は「ALICE構想」と呼んでいます。

■プロジェクトをまるっと一括管理できる「EPQOT」

――「ALICE構想」…!Fabeeeが自社開発したプロジェクト管理ツールは「EPQOT」だったと思いますが、「ALICE」と何か関係があるのでしょうか?

杉森さん:「ALICE」は仕組みのことです。対して「EPQOT」は自社開発したプロジェクト管理ツール。

――ふむふむ。… ここからなんだか難しい話になっていきそうな…(焦)

杉森さん:ではいったん「ALICE」は置いといて「EPQOT」についてお話ししますね。「EPQOT」はプロジェクト管理ツールとして開発したものです。

――管理ツールの種類には、Git系やガント・WBS系がありますよね。Gitはソースコードのバージョン管理が簡単にできるし、ガント・WBS系は各タスクとスケジュール全体が直感的に把握できる。「EPQOT」はどんな特徴を持つツールなのでしょう?

杉森さん:人によって使うツールはそれぞれかと思いますが、例えばBacklogだとGitのソースコードと紐付いた管理ができません。チケット管理はあるけどガント機能がなく、進捗管理に弱いところがある。FabeeeではGitとBacklogの両方を使っている人もいますね。なんとかひとつのツールでプロジェクト管理できないものか… と思い「ないなら自分でつくってしまおう!」と思ったわけです。

――(技術力を持つ人だけがいえる言葉…!)じゃあ、ツールのいいとこ取りをしたプロジェクト管理ツールが「EPQOT」ということになりますか?

杉森さん:そうだと思います。EPQOTはクライアントの業界、業種、機能、企業課題。課題からどんなシステム開発を行い、どう解決したか。案件の情報とソースコード、Git、タスクがすべて紐づいたプロジェクト管理ツールです。ひとつの案件で、誰がどのタスクをどのくらい時間をかけて行ったかもソースコードに紐づいたデータとして一括管理できる仕組みになっています。

――おお…。

杉森さん:困ったこと、解決できたことを記録する日報機能、それに対するコメント機能もあります。内容を確認しながらメンバー同士でコミュニケーションがとれますし、クライアント提供の資料もプロジェクトに紐付けて管理できます。チケット管理、ガント機能もありますね。

価値を最大限に再活用するためのエコシステム「ALICE」と自社開発ツール「EPQOT」の関係性

――そんな「EPQOT」と「ALICE」には、どんな関連があるんでしょう?

杉森さん:メンバーがデータマネジメントして「EPQOT」を使うと、データがどんどん変化します。そこにはソースコードに紐づいた業界業種の案件情報があります。「これで困った」「こんな方法で上手くいった!」という多様な情報を見せながら「もっと簡単に自走する仕組みにしよう」と「ALICE」にフィードバックするんです。

――フィードバックする…?

杉森さん:「EPQOT」にある程度情報が溜まると「ALICE」はその情報をもとに「より良い方法」をアップデートで生み出します。一度行った開発に似た案件の実装が必要なとき、「ALICE」がアップデートされていることでメンバーは前回よりも簡単に実装できるようになる、というわけです。

――すごい!

杉森さん:簡単にいうと「EPQOT」はインプット。「ALICE」はアウトプットする装置のようなものです。データを効率よく利用するためのアウトプットが「ALICE」なんです。

――なるほど!インプットとアウトプットの関係なんですね。

杉森さん:様々な案件をこなして新しいモノをつくっていけば、情報や課題をどんどん溜めていける。溜まったらまた「ALICE」をアップデートできる。好循環が生まれるんです。

――この仕組みを活用できれば自然に業務が効率化して、創造的な発想を生み出す時間もつくられるようになると…?

杉森さん:そうです!業務効率の改善、余剰時間を生み出すことにつながるかなと思います。

――なんだかすごい仕組みですね。杉森さんはこの仕組みを社内全体に浸透させたい、と考えているんですよね?

杉森さん:はい。「EPQOT」&「ALICE」の仕組みを、社内で「文化」として根付かせたいなと思っています。仕組みを文化に昇華させるには、最初の1回は啓蒙していく必要があります。正しい使い方を確立して、みんなにレクチャーする存在が必要です。そこで文化浸透を積極的に行うための「Imagineering STUDIOS」という部隊を立ち上げました。

<後編に続く>

後編では、プロジェクトチーム「Imagineering STUDIOS」についてお話を伺います!

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