元漫画家志望の編集が語る。アプリ発の本格青年漫画レーベル「ジヘン」が開催する《本気の》新人賞とは

11月20日から開始されたアプリ発の本格青年漫画レーベル「ジヘン」が開催する「ジヘン新人賞」。

そもそも「ジヘン」とはどの様なレーベルでなぜ今回新人賞を実施したのか。また今後の展望や作家さんへの思いなど様々な角度からジヘンの全容を紐解いて行きたいと思います。インタビューに答えて頂くのは自身も漫画家志望だったというジヘン唯一の女性編集者:戸村玲さんです。


2017年中途入社。株式会社Nagisa ジヘン編集部員。
大学卒業後、マンガ家を志しながら、習い事事業のカスタマーサポートに従事。マンガを描くだけではなく、マンガを世に届けるところ、作家のサポートも含め仕事にしたいという想いが強くなり、編集業へ携わることを決意。

アプリ発の本格青年漫画を作る

本日は「ジヘン」編集部がなぜ新人賞を行なうことになったのか、お話を伺っていければと思います。まずは改めてどのようなレーベルかご説明をお願いします。


「ジヘン」はアプリ発の本格青年漫画レーベルです。20〜30代の大人の読者に向けて、しっかり読み応えのある青年漫画を届けたいと思っています。日常的に漫画を読んでいるいわゆる「漫画好き」な読者が多いですね。

最近は漫画アプリ市場が非常に盛り上がっているかと思いますが、その中で改めて青年漫画レーベルを立ち上げた経緯についてもお伺いできますか?

はい。下の記事にもある通り漫画アプリビジネスを行う上で中長期的に強みとなってくるのは「他アプリとの差別化」であると考え、その独自性を出すためにジヘンは生まれました。

元講談社のベテラン漫画編集者が、IT業界で新たなマンガ市場を切り拓く。オリジナル漫画レーベル「ジヘン」立ち上げ秘話

ただ、編集部に入って改めて感じたのは、アプリ発の本格的青年漫画を作るジヘンはマンガZEROの独自性のためだけに生まれたレーベルではなく、漫画業界の現状と今後も踏まえた上で生み出されたレーベルであるということです。

漫画の新時代を切り拓く為に

現状の漫画業界について教えて頂けますか?

雑誌の発行部数減少やWeb漫画、漫画アプリの流行によって、漫画の読み手(読者)と作り手(出版社や漫画事業を行うIT企業など)に変化が生じているのが、今の漫画業界なのではと考えています。

まず読み手についていえばスマホシフトがありこれまで漫画をあまり読んでいなかった人が無料の漫画アプリの流行によって日常的に漫画を読むようになったことがあると思います。これは漫画市場そのものの拡大に繋がるので本来は非常にポジティブなことです。

ただ、これは私たちの仮説なのですが、これまであまり漫画を読んでいなかった人が一気に無料漫画アプリに流れたことで、見た目のインパクトが強く、ライトな読者でも取っ付きやすいジャンルの漫画、つまりデスゲームやエログロなどのジャンルが一気に増加しすぎてしまった状況があると思います。もちろんそういったジャンル自体が悪いわけではなく、ジヘンでもそういった作品を掲載することもあるかと思いますが、少し偏りが強すぎるのかなと。

その結果、本来作家さんが書きたいと思ってるテーマや、世の中に伝えたいメッセージなどを込めた作品が生まれにくくなっている、更には今後その流れが加速していくのではないかというのが、今ジヘンが考えている漫画業界全体への懸念です。

その点を課題として捉え、ジヘンでは作家さんが書きたいものをしっかり時間とお金をかけて作り、その作品をスマホアプリやWebマーケティングなどで多くの読者に届けたいと考えています。

そういった背景があり、伝統的な漫画作りとITテクノロジーの融合により「漫画の新時代を切り拓く」為にジヘンが立ち上がりました。

キャラクター表現と徹底取材による"情報の信憑性"が命



ジヘンで作品を作る上で、編集部でこだわっていることやジヘン作品の特徴などあれば教えて頂けますか?

まず一番こだわりたい点は物語の設定や展開だけで読者を魅了するのではなく、作品の主人公やキャラクターで惹きつけるという事です。なぜなら作品にでてくるキャラクターは作家さんの魂を投影するものだと思っているからです。ここを最大限活かしながら漫画としてより読者に楽しんでる頂けるよう作家さんにアドバイスするのが編集の仕事だと考えています。

次に大切にしている点が情報の信憑性です。ジヘンの読者は20〜30代の大人の読者が中心です。ジヘンでは歴史物や地方を舞台にした作品などを連載していますが、それらの内容はしっかり資料を集めて作家さんと担当編集が読み込んだり、現地まで取材にいってお話を聞いたり写真を取ったりということを当たり前のようにやります。もちろん、漫画はエンターテイメントなのでフィクションを入れることはありますが、作品をより魅力的なものにするための情報収集は編集部として一切妥協はしたくありません。

私が担当している作品でも、当初の設定では細身で可愛い女性のキャラクターに、人格に厚みを持たせる為に「生まれは天ぷら屋の娘」という設定を追加した事があります。その際実際の天ぷら屋に取材に行って、厨房に入ったりすると当初の細身キャラではなくふくよかな女性の方がキャラクターが狭い通路を歩くコミカルなイメージが湧き、ヴィジュアルを180度変えた事もありました。展開や設定ではなくどうやったらキャラクターが生きてくるか。実際に足を運ばないと浮かんで来ないキャラクター表現があるんだなと学びました。

遠出もするし、実際に体験をするなんてそこまで徹底しているんですね。作家さんと一緒にというのもまた驚きです。

作家さんは本来そこまでやりたいと思っている事が多いのですが、編集部の方針や予算などの環境によっては出来ない事もあります。取材もキャラクターを生かす事も、作家さんが作品を作る上で編集としてベストなサポートを考えて動いた結果です。

作家さんの口コミを中心にジヘンの認知度が広がっている


編集部の方針やこだわりを強く感じる事が出来ました。ここまで創刊から8ヶ月が経ちましたが、現時点での感触はいかがですか。

本当に少しずつではありますが、認知度の向上は感じています。レーベルを準備していた今から1年前、作家さんや全国の漫画専門学校などに訪問依頼をしようとすると不審がられたことが多かったと編集長に聞きました笑 IT企業発の、構想だけで全く実態のないレーベルだったので仕方なかったのかもしれません。

ただ、現在は専門学校さんへの訪問依頼も快く受けて頂くことも増えましたし、コミティアなどのイベントで会った作家さんが既にジヘンを知ってくれているケースもあります。Twitterや口コミなどで作家さんがジヘンについて少しずつ情報が広げて頂いているのかなと思うと、本当に嬉しいですね。

実際に今では大手のレーベルで活躍するベテランの作家さんもジヘンでの連載を検討頂いたり、8社もの出版社さんから声がかかった新人作家さんがジヘンを選んでくれたりと、レーベルの信頼感、存在感は確実に高まっています。有難いことにジヘン作品を紙の単行本で出したいと出版社さんからお声がけを頂き、来年2月にはジヘン発の紙の単行本が発刊される予定です。


8ヶ月で大きく進んでいますね。作家さんからみてジヘンのどの様な点が魅力に映っているのでしょうか?

先ほども話した通り「作家さんと二人三脚で良い作品を生み出すことにこだわり抜く」という従来の漫画作りにおける編集部の信念を貫いている事ではないでしょうか。ジヘンではアプリ/Web発の漫画でありながら原稿料も大手出版社と遜色ない金額を作家さんにお支払いしてます。紙や電子書籍の印税は当然ですが、アプリに掲載された時点で発生する広告収益の一部も作家さんに還元しており、作品作りの部分だけではなく経済的な面でのサポートもしっかりさせて頂いています。これも全ては作家さんが作品作りに専念できるために、Nagisaという会社やジヘン編集部がしてあげられることを考えた結果です。

新しいレーベルは新人作家からヒットを出して、初めて一歩を踏み出せる。

作家さんを第一に考えて行動してきた事が少しづつ成果として現れているのですね。ではなぜこのタイミングで新人賞を開催したのでしょうか。

理由は2つあります。

まずはタイミングが整ってきたという編集部内の事情です。上記の通り、しっかりと作家さんと一緒に作品作りに向き合える編集部になってきたという事を市場に対して発信して行きたいと考えました。

2つ目は新しい作家さんとの出会いを増やしたいからです。本気で新しい漫画の時代を作ろうとしている私たちに共感してもらえる、新人作家さんともっと多く出会いたいと思っています。

上記2つがタイミングに関する理由ですが、そもそもなぜ新人賞を行うかというと「レーベルは新人作家さんからヒットを出して、初めて一歩を踏み出せる。」というポリシーが編集部の根底にあるからです。経験や実績のある作家さんにジヘンで活躍してもらう事はもちろん必要ですが、やはりレーベルは新しい才能を私たちが発掘、育成して一人前の漫画家に成長してもらい、一緒に世の中に残るヒット漫画を生み出してはじめてレーベルとしてのスタートラインと考えています。

応募作品全部にフィードバックするジヘンの「覚悟」



応募する方にとってはどの様な特典があるのでしょうか?

もちろん光る才能が見つかればジヘン内で担当がついたり、デビューという事もありえます。が、今回は全応募作品一つ一つ編集部がフィードバックを返します。応募者に原稿も書き上げてもらう事を課すので、我々も全力で全ての作品に目を通しフィードバックをする。当然リソース不足は想定されますが 笑 ジヘンが作家と向き合う編集部だという「覚悟」の証です。


とにかく「原稿を書き上げる」という漫画家としての一歩を踏み出して欲しい

編集部の覚悟が伝わりますね・・応募してくる作家さんにどのような事を期待しますか?

まずは原稿を書き上げて出すという漫画家になる上での一歩を踏み出して欲しいです。その後フィードバックがあったり、デビューが決まった場合は取材だったり編集部としても全力でサポートは出来るのですがまずは原稿を書き上げないと始まらない。そうしないと漫画家にはなれないという事を考えて欲しいと思っています。

デビューすると一人で原稿を書いていてくじける事もあり、そんな時は編集者が手助けできるのですが、まずは応募の段階では最後まで一人で作ろうとして欲しいですね。そこが漫画家としてのスタートです。

その後、デビューが決まったりした場合はジヘンだけでなくどの出版社にいっても活躍できる人になって欲しいですね。ジヘンで育ってくれた人は他の出版社にいく事があっても、外で活躍してくれた後またジヘンで書いてくれるような人を増やしたい。「ジヘンが発掘、育成した作家」として有名になって欲しいなと思っています。その為のサポートは全力でしますので!


今後戸村さんが担当する事になる応募者もいるかと思うのですが、編集者として心がけている事を教えてください。

作家さんに心を開いてもらう事です。作家さんの良いところ、悪いところどちらも引き出すのが編集の仕事なので最初のアウトプットする所でビクビクしないで漫画に人間性を叩きつけてもらいたいなと。その関係性を構築する為にも作家さんに心をさらけ出してもらうと思っています。

作家さんの納得してないモノは読者に届かない。作家さんがイヤイヤ書いたモノって全然反応が悪いんです。作家さんが納得して編集者も面白いと思うと作画もイキイキして作品が面白くなっていく。

そんな作品作りが出来る編集者になりたいです。


今後は「バイブルとなれる様な漫画を」



最後に戸村さんの今後の展望を教えてください。

上記にもある通り作家さんと関係構築した後は、常に作家さんを驚かせる編集者でありたいです。「こんな漫画の見せ方やネタの着眼点があったんだ」と言ってもらいたいと考えています。作家さんをのびのびさせたいですし、させられる編集者でありたい。

作品作りに対しては過去に私自身も作家を目指していた時から変わらず人生に迷った時にあの漫画を読んで人生が変わったと言われる作品を作る事です。

人生に寄り添えるバイブルの様な作品を作りたいのでその様な思いを抱えてる方の応募をお待ちしております!


新人賞ページはこちら

ジヘン新人賞楽しみですね!インタビューありがとうございました!
株式会社Nagisa's job postings
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