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この道20年!ベテラン編集者に聞く広告マンガのすべて

今回インタビューさせていただくのは、トレンド・プロで活躍するベテラン編集者、福田さんです。
エンタメのイメージが強いマンガですが、マンガという手法は広告や教育にも有用です。トレンド・プロでは、約30年前から企業向けのマンガを制作してきました。そんなトレンド・プロで、誰もが親しみやすいマンガを時代のニーズに合わせて進化させ、読者により伝わる工夫を凝らしてきた福田さん。広告マンガ業界で20年走り続けている福田さんから、その全貌を教えていただきました。


ーベテラン編集者、福田さんの経歴を教えてください!

福田さん:大学ではデザイン学部のグラフィックデザインコースでデザインや広告、イラストレーションなどの勉強をしていました。卒業後ホームページのデザイン~コーディングまでを個人で請けて制作していた時期を経て、2001年にトレンド・プロに漫画家の友達が入社することになったのを機に誘われて一緒に入社。最初は先輩デザイナーのサポートを担当していました。

その後、Web制作の案件が増えてきて、得意分野なのでやらせてほしい!と立候補、7年程担当していました。広告マンガのディレクションは、2010年頃から始めました。

広告マンガに慣れてきた2014年頃にビジネスコミック※ブームが始まり、トレンド・プロにもたくさん依頼が来るようになったため、一度広告マンガから離れてビジネスコミック編集専業になりました。2019年頃から若い社員の増加に伴いチームのまとめ役を頼まれて、現在は広告メインでクリエイティブ部チームリーダーとして6人の編集者をまとめています。
※ビジネスコミック…ビジネス書のマンガ版。

ー広告マンガを一言で表すと?

福田さん:「企業が抱えている課題を解決する方法の一つ」だと考えています。企業が消費者や社員など、ターゲットに伝えたいことをマンガを使って伝える、ということです。

ー広告マンガ編集の役割は何でしょうか?

福田さん:一般的に、企業様が直接漫画家さんに依頼してもうまくいかないことが多いため、私たち編集者が間に入って情報整理や内容の提案などをすることで、企業様の求めるマンガを制作しています。企業様が伝えたいことと漫画で表現できることのバランスを取り、最大限効果の出る広告マンガに仕上げていきます。

制作の一連の流れとしては、取材→プロット→シナリオ→ネーム→下描き→仕上げ→納品となります。私たち編集者がそれぞれの工程で企業様と漫画家さんの間に入ることにより、企業様の求めている効果の得られる高いクオリティのマンガをスムーズに制作していきます。

ー広告マンガの特徴や効果は?

福田さん:特徴はやはりマンガという表現手法の視覚効果による情報の伝え方、でしょうか。マンガだからわかりやすく、自分のスピードで読めるので理解しやすい、という点が効果につながっていると思います。

私が入社した20年前は、決裁権を持つ人にマンガを読まない層が多かった肌感がありましたが、今は子どもの頃から少年誌→青年誌とマンガを読み続けてきた、マンガに馴染みのある世代に変わってきました。発信側も受け手側もマンガという表現手法への認知度が高いため、マンガの持つ効果が出やすくなっています。

ー最近増えてきている他の広告マンガについてどう思われますか?

福田さん:クライアントの入れたい要望をすべてセリフに入れ込んでしまい、文字が異様に多いフキダシが続く「読む気がなくなる広告マンガ」が増えていると感じます。このようなマンガは読者の印象に残らず、途中で読むのをやめてしまうことも。また、エンタメマンガの手法を多用しすぎると、本来伝えたかったことが伝わりづらくなります。

広告マンガは「広告」なので、「伝えたいことがターゲットである読者にきちんと伝わるかどうか」が玉石の差になります。
とにかく人の目に触れさせるために、広告マンガとして質を問わないような作品が量産され出回ってしまうと、広告マンガ業界全体の印象が悪くなってしまうので、もったいないですね。

ー制作するうえで気をつけていることは?

福田さん:伝えたい情報が間違いなく読者に伝わって、効果が出るものになっているかどうかを常に気にしながら制作しています。
企業様の要望通りにしてしまって大丈夫か、初読の人にきちんと伝わるか、マンガ内に入れる情報量に過不足がないか、読者の次のアクションに繋がるか。絵でも言葉でも誤解をさせるようなことがあってはいけないので校正も複数名でしっかりやっています。


ー依頼する企業側が気をつけるべきことを教えてください。

福田さん:マンガで伝えられる情報量は、それほど多くないという点です。
マンガ広告のメリットは、読者に感情の動きも含め疑似体験させることで、共感してもらいながら内容を伝えられることです。そこに、企業が伝えたい情報を「全て」入れこんでしまうと、説明セリフが詰まった一方通行のよくない広告マンガになってしまう場合もあります。
長すぎると読者が飽きてしまって読了してもらえず、短かすぎると情報が入れられない、ということをご理解いただき、伝えたいポイントを絞っていただく必要があります。

ー印象深かった広告マンガはありますか?

福田さん:とある金融関係の広告マンガ制作ですね。サイトで広告特集を行うことになり、口座開設、外貨預金、投資信託などの分野でサイトページを作ることになりました。金融関係は敷居が高いと思われがちですが、マンガを入れることで理解しやすくなり、いろいろな効果が出ました。沢山の人の目に触れることで、マンガだけでなくパンフレットや新聞広告にも展開していったこともあります。

制作のために様々な情報を提供いただく中で、製品やサービスに深く触れられたことも印象深かったです。広告を作りながらファンになってしまい、実際に使ってみたサービスもありますよ。


ー今後の広告マンガはどんな可能性がありますか?

福田さん:「誰が誰に何を伝えたいか」がうまくいっていない業界は、マンガで力になれると思います。社員教育などのインナー向けのマンガが使われる頻度が上がっているなど、マンガが役に立つシーンはまだまだあります。
また、昨今コンテンツの多くがスマホで見ることがメインになっているので、toCの広告はスクロールして見るウェブトゥーンの浸透など新しい技術が洗練されていくのではと感じています。

時代の表現に合った広告マンガを作り、さらに見やすく・さらに理解しやすくするのが私たちの仕事なので、読み手の世代が変わっていくことに順応していかなければなりません。広告マンガ業界の先駆者としてトレンド・プロが頑張ってきたからこそ、これからの展望も楽しみにしていただければと思います。

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