1
/
5

好きなものから探求。マイナス発見ゲーム

発言力が強い人の話は事実のように聞こえますが、実際にはその人の個人的な意見であることも多く、ここを読み誤ると間違った方向へ突っ走りかねません。特に自分とフィーリングが会う人の話は、そのまま信じてしまいがちなので注意が必要です。

一歩引いた第三者目線で、その話の真意を見定める力を鍛えるために、僕が普段から行っているマイナス発見ゲームの話をしたいと思います。自分が大好きなものを対象するのがポイントです。「大好き」という時点で相当に肩入れしているので、悪いところに目を背けている可能性が高いからです。それをはがして悪いところを見つけられるかどうか。こういった探求が課題の本質に迫り、改善の糸口を見つけるために不可欠な力になっていきます。


1. ABARTH

分かってはいましたが通勤には向きません。金曜日になるとなんでこんなクルマを買ったんだろうと頭を抱えます。ドライバーが楽できる機能が一つもなく、すべてがマニュアル。足はガチガチで路面の凹凸を余すところなく全身に伝えてくる。そして異様にクイックなステアリング。乗るたびに神経をすり減らされ体力を消耗するクルマといえるでしょう。しかし月曜日になるとまた乗りたくなる。こんなクルマと過ごす人生も自分らしいと思う今日この頃です。

良いところ

コンパクトで日本の道路にあっている。アクラポビッチマフラーの迫力ある排気音のおかげで、さほどスピードを出さなくてもレーシングカーを走らせている感覚が得られる。必要最小限のものしか搭載しない潔さ。ドライビングが楽しい、という感覚が得られる唯一無二のクルマの一つ。

悪いところ

騒音規制に対応するためにとても静かになってしまった。ブレーキの性能が高すぎてダストでホイールが真っ黒になる。見た目の可愛さとは裏腹に、ほぼレーシングカーなので運転した後の疲労が他のクルマより大きい。コンパクトなくせに小回りが効かない。

結論

ストレスを感じる時間のほうが長い。しかし間違いなく極上の瞬間が訪れる。その体験のためだけであっても所有する価値のあるクルマだが、万人にはおすすめできない。

2. Aesop

イソップのフレグランスづくりは失敗の歴史だったそうです。植物学や藻類学を学んだ経験を持つ調香師バーナベ・フィリオンと出会ったことで、フレグランスづくりの技術が抜本的に生まれ変わり今に至っているとのこと。そのビハインドストーリーに強く惹かれ、愛用するようになったというのが経緯です。

良いところ

香水っぽくない。どのフレグランスもトップは印象的で、だんだんとイソップの独自性が浮かび上がる。ミドルの香りが薄まると、鮮烈なベースが姿を現し、そのフレグランスの特徴が明瞭になる。余韻に包まれつつ変化する香りが、フレグランスのストーリーと調和し、束縛から解き放たれた気持ちになる。

悪いところ

新作を出しすぎている。ストーリーがマーケティング主導で作り上げられ、バーナベ・フィリオンに無理矢理作らせているかのよう。ミラセッティは全体的に雑草のような香り。エレミアはミドルでほんの一瞬だけ魅力が現れる程度。イーディシスはマラケッシュ風だが、ミドルから妖艶さが失われた劣化版といえる。4月に登場した新作グロームは葬儀場の匂いしかしなかった。年内にもう1作出してアザートピアスコレクションが完結するらしいが、もうやめたほうがいい。

結論

誰からも好まれる香りで、幸せな1日を過ごせる。香水を普段使わない人にこそぜひ試してみて欲しい。個人的にこれが無いと生きていけないレベルで好き。

3. kolor

ネットで一目惚れして買いました。ネイビーかグレーかで1週間ほど悩みましたが、グレーの方が良かったかもというのが唯一の心残り。

良いところ

kolorにしては控えめなデザイン。一見するとステンカラーコートに見えるが、V字型の襟元と浅めのラペルが特徴的なチェスターコート。パッチワークのようなポケットにkolorの創造性が表現されている。フォーマルなチェスターコートの崩し方にkolorの技が感じられる。

悪いところ

ポケットのファスナーが、半分くらいの位置まで勝手にずれ落ちてくるのが、デザイン上の意図なのか不良品なのか判断がつかない。ちなみに、このファスナーは完全に飾りで内側にポケットはない。

結論

ファッションのトレンドの刻々と変わっていく。いまは気に入っていても数年後には飽きているかもしれない。

アーキビジョン株式会社では一緒に働く仲間を募集しています
同じタグの記事
今週のランキング