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窓から眺める世界遺産 – 屋久島 –

こんにちは、アトモフの風景情報の編集者、山口です。

Atmoph Windowの風景の中で、ユネスコの世界遺産リストに登録されている風景を深掘りした以前のブログ、お読みいただけましたか。まだまだある世界遺産の風景を皆さまに楽しんでいただきたく、第2弾をお届けしたいと思います!

今回ご紹介するのは、鹿児島県の屋久島です。世界自然遺産の登録基準のうち「ひときわ優れた自然美」が認められているのは、日本ではここだけ(2023年12月現在)。その美しさの秘密とはなんなのか、深掘りしてみようと思います。それではさっそくAtmoph Windowで「屋久島」を映し出しながら、窓の向こうに思いを馳せてみましょう。

「洋上のアルプス」

急峻な屋久島の山々

屋久島と言えば、縄文杉、苔むす森、などなど、豊かな原生林を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。それもそのはず、島の約90%が森林に覆われており、平地はほとんどありません。東シナ海に浮かぶ島に標高1,936mの九州最高峰・宮之浦岳をはじめ、1,500m級の山々が聳えていることから、「洋上のアルプス」と形容されています。

屋久島は今から約1,400万年前、海底のマグマが冷え固まってできた花崗岩が海上に隆起して形成されました。隆起を続ける島の高い山に、海からの湿った風が当たることで、大量の雨が降り注ぎます。こうした風と雨が長い年月をかけて岩を浸食し、急峻な山々や深い渓谷といった複雑な地形が生まれたのです。

屋久島の雨の多さは、「月に35日雨が降る」というもうひとつの形容でもよく知られています。全国の気象観測地点の中で年間降水量が一位という雨によって、豊かな植生が息づいているんですね。この雨と山岳地形のおかげで、標高によって亜熱帯から亜寒帯までレパートリー豊かな植物相が顔を揃えているのが、屋久島最大の特徴なのです。

屋久島を彩る動植物

白谷雲水峡の苔むす森

こちらの風景は、白谷雲水峡の森の中を撮影したものです。ここは世界遺産のエリア外ではありますが、それでも緑深い森の美しさに目を奪われてしまいます。ジブリ映画『もののけ姫』の舞台のモデルとなったと言われる森。思わず樹木に宿るこだまの姿を探してしまいそうになります。

白谷雲水峡の木々や岩に密生する苔は、約600種にもなるそうです。これらの苔も含め、屋久島に全部で約1,900種もの植物が自生しています。一番低い場所で見られる亜熱帯のガジュマルは屋久島が植生の北限で、逆に標高1,000m付近に多いモミやツガ、スギなどは、ここが南限なのだそう。また固有種も多く、「ヤクシマダケ」や「ヤクシマシャクナゲ」のように島の名を冠した植物もたくさんあります。

動物も同じように、孤立した島の変化に富んだ地形と気候のおかげで、固有種も含めて2,000種以上が生息しています。このうち哺乳類は16種で、なかでも観光客に馴染み深いのが、ヤクザルとヤクシカです。それぞれニホンザル、ニホンジカの亜種で、少し体が小さいのが特徴。この2種の間には交流もあるそうで、ヤクシカの上にヤクザルが乗ったり、ヤクザルがヤクシカの毛繕いをしている平和な場面に出会えるかもしれません。

樹齢1,000年超!屋久杉の秘密

屋久島を語る上で外せないものと言えば、屋久杉ではないでしょうか。屋久島に自生している杉で、樹齢1,000年を超えるものだけが「屋久杉」と呼ばれています。なかには、3,000年を超えて生き続けている古木もあるというのだから、びっくりです。通常、杉の樹齢は500年ほどとされていますが、なぜ、屋久島の杉はここまで長寿なのでしょうか。

その理由は、屋久島の地形と気候に深く関係しています。先ほども述べたように島は硬い花崗岩でできており、栄養が乏しいため、そこに根付く杉の成長はとても遅くなります。成長がゆっくりだと年輪が詰まって、抗菌作用のある樹脂をしっかり含むため、雨の多い場所でも腐らずに成長が続くのです。また、岩盤が硬く根を縦に伸ばせないため、横に伸びた根が他の木の根と絡み合うことで、お互いに支え合っているのも、木の強さの秘密だそうです。

ウィルソン株の切り口(photo by alain on photoAC

こうして長い時間をかけて大きく成長した杉の木は、戦国時代以降建築材として注目されるようになり、次々と伐採されていきました。その一例が、幹周り13.8mのウィルソン株です。一説では、豊臣秀吉の命によって、京の方広寺の大仏殿建設のために伐採されたのだそう。空洞になっている切り株の中に入って見上げると、切り口がハート型に見えることから、今では人気の観光スポットになっています。

縄文杉(photo by あおねこ06 on photoAC

何百年にもわたって続いた伐採によって屋久杉はかなり数を減らしてしまいましたが、それでも急峻な山の奥深くに生える巨木や、表面が凸凹だったり曲がったりしていて木材に適しないものは伐採を免れ、今でも力強く根を張り続けています。その最たる例が、屋久島のシンボル、縄文杉でしょう。10時間もの登山を要する山奥に佇み、幹周り16.4m、樹高30m、でこぼこした表面が力強さを感じさせる立ち姿は、森の王者の貫禄に満ちています。



屋久島の自然にまつわるストーリー、いかがでしたか。屋久杉をはじめとした貴重な自然が、いつまでも豊かであり続けることを祈ります。今後も世界遺産の風景にまつわる面白い話を発信していきますので、お楽しみに!


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