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教育現場の悲鳴に応えるたった一つの解決法——“正しい”ITで実現する「新しい教育の未来」とは

「教育現場は今、大変なことになっていて…」

アバナードのデジタル最高顧問であり、青山学院大学 地球社会共生学部 教授である松永 エリック・匡史から、とあるオンライン飲み会で発せられた一言。

連日報道されるニュースでも、一斉休校、卒入学式の中止、授業開始の延期、授業料の一部返金…と、教育現場には問題が山積みのように見て取れます。

果たして、withコロナ、afterコロナ時代においては、実際の教育現場、教育機関はどう変わりゆくのでしょうか。 そして、イノベーションのプロフェッショナルたちは、この問題にどう向き合い、どんな未来図を描くのでしょうか—。

代表取締役 安間裕と、デジタル最高顧問松永 エリック・匡史のオンライン対談をお届けします。



安間 裕(あんま ゆたか)/代表取締役

団体系保険会社、外資系商社を経て、1998年にアクセンチュアに入社。その後外資系広告代理店を経て、2001年に再度アクセンチュアに入社し、アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズ株式会社の設立に参画し、2002年8月同社代表取締役社長に就任。
2009年、アクセンチュア株式会社 執行役員アウトソーシング本部長、2010年執行役員ビジネスプロセス・アウトソーシング統括本部長を歴任し、国内ITコンサルティングファームの経営に携わった後、2014年4月アバナードに入社。5月に代表取締役に就任。


松永 エリック・匡史(まつなが えりっく まさのぶ)/デジタル最高顧問

バークリー音楽院出身のプロミュージシャン、アバナードのデジタル最高顧問を務めるビジネスコンサルタントであり、大学教授。これまで、アクセンチュア、野村総合研究所、日本IBM、デロイト トーマツ コンサルティング メディアセクターアジア統括パートナーを経験し、PwCではグループ横断のデジタルサービス日本統括パートナーとしてデジタル分野をリード。現在は青山学院大学 地球社会共生学部 教授、 事業構想大学院大学客員教授、スタンフォード大学ライフデザイン認定講師、Forbes公式コラムニスト。


オンライン授業開始はいいけれど…大混乱の教育現場

——エリックさん、まずは教育現場の現状を教えてください。

松永 エリック・匡史(以下、エリック):報道されている以上に教育の現場は大混乱です。ニュースですでにご覧になっていると思いますが、学生が授業料の返金を求めてアメリカでは訴訟が起きていて、日本でも同様の動きが始まっています。

その抗議内容を見ると、施設を使わないのに設備費を払うべきか?オンライン授業によって大学教育全体のクオリティが下がっているのに、お金を払う価値があるのか?という議論まで起こっています。

学校によっては一部返金などの対応も始まっていますが、われわれ教員の中でも、学生と向き合い今後どう誠実に対応していくべきか日々議論を繰り返しています。

今回のようなオンライン授業への全面的対応を想定していなかったため、基盤となるシステム自体がそれに対応しきれず、アクセスが集中して、システムがダウンするなんてことも各大学で起きているようです。 加えて、大学のシステムはセキュリティ上の問題からリモート環境ではオペレーションできないものも多く、学校が閉鎖されれば、学務機能も停止してしまって、スムーズな対応が難しい環境です。

いわゆるBCP(※)というものを、これまで多くの教育機関がしてこなかったので、その実態や日本の教育環境の遅れが、今回のパンデミックによって明らかになってきたという状況です。 この点は教育だけではなく多くの企業でも同様の状況ではないでしょうか。

※BCP・・・Business continuity planning(事業継続計画)とは、自然災害、大火災、テロ攻撃などのなどの緊急事態が発生したときに、企業が損害を最小限に抑え、事業継続あるいは早期復旧を可能とするために取り決めておく計画のこと。


安間 裕(以下、安間):その教育現場の悲鳴や課題は、我々アバナードのもとにも数多く届いていて、学校からの引き合いが非常に多くなっています。

どんなインフラ基盤でオンライン授業をどう実現するか、どんなセキュリティ対策をすればいいかなど、まさに今エリックが話してくれたようなご相談が増えてきている状況ですね。

エリック:特にセキュリティに関しては、オンライン授業のためのITツールの選択から緊急で対応したため、充分な対策が行われておらず、非常に大きな問題になっていくと思っています。学校側は、急遽オンライン化の対応が必要になって、短期的な視点でどのツールがいいかという“ツール論”になっていますが、長い目で見たセキュリティ問題については議論されていません。

企業のシステムを設計するように、きちんとした設計がなされずに、とにかく早く簡単に使えればいいという短期的視点でツール選定と導入がなされてしまい、新たな問題が生じている現状があります。


——そうなんですね。たとえば、機能拡張性やセキュリティ性の高いMicrosoft Teams(以下、Teams)を導入することで、そのあたりの問題は解決できないのでしょうか。

エリック:マイクロソフトの製品は企業のニーズに向き合った高いセキュリティの発想が原点です。学校でのシステムは、まだ企業のレベルには到達していません。もともとの学校側の基盤設計が、企業向けのシステムのように様々なリスクを想定できていないのです。

全体最適ではなく部分最適の考え方でシステムを構築してしまっているので、連携の出来ない異なるベンダーのツールが導入されていることも問題です。ただ現実的には、学校のIT部門には十分なリソースと予算が配分されていないので、まずはITの重要性を理解し、適切なリソースを配分しようとするところから始めないといけないですね。


安間:一見同じようにみえるツールであっても、それが生まれた背景や思想によって、実は使い勝手は大きく異なりますよね。

僕自身、当然会議はTeamsで行いますが、孫と話をする際にはZoomやその他のツールも使うんです。

色々と使ってみると、前者は「オンラインで会議をしましょう」というツールで、後者は「オンラインでお話をしましょう」というツールだということがわかります。

オンラインで会議をしましょうというツールであるTeamsは、ホワイトボードの前でみんなで議論したり、まるで隣に開発者がいて開発の進捗をその場で見せてくれたりするような感覚で、オンライン会議が行えます。やはり、仕事のためのツールとして細かな設計がなされていて、様々なアドオン機能によって、オンラインでも快適に仕事ができるようになっています。

教育というものは、ナレッジを相手に与えていく、議論をしながらナレッジを共有していくという行為なので、仕事環境と近いものがありますよね。

そう考えると、資料を共有する、トライアンドエラーを一緒に行うなどの行為を、簡単に効率よく共同でできる環境が必要です。

「すべてのユーザーインターフェイスはTeamsに集約できる」というのが、Teamsがスーパーアプリケーションだと言われる理由のひとつでもありますから、今のところそのような環境はTeamsでなければ実現できない気がしますよね。

環境を見直し、この先も教育機関として生き残っていくためには、いまあるテクノロジーをいかに組み合わせるかがポイントになってきます。もちろんスピード感をもって対応することは重要なのですが、エリックが言うように、短期的な視点ばかりではいつか壁にぶち当たります。中長期的に未来を見据えて設計しなくてはいけないですね。


教育現場の人間がテクノロジーを知らない

——では、なぜこのような混乱が次々と教育機関に起こってしまったか、その問題の根本はどこにあると思いますか。

エリック:そもそも、教育現場はリアルの世界が全てで、テクノロジーに対する優先順位は、考えられない程低いのです。だから教育現場の人間がテクノロジーを知らないのは仕方ないんですよ。これは非常に大きな問題です。

だからツール論に走ってしまって、「誰かが使い方を知っている」というだけでツールが安易に導入されてしまう。テクノロジーを知らないので、ツールを導入したところで、実際どうオペレーションしたらいいかわからないのは当然ですよね。 このようにテクノロジーに無知な状態が引き起こされている理由はとてもシンプルで、学校経営とITが離れすぎていることにあります。

テクノロジーの進化は凄まじいスピードなので、今は「教育でこんなことを実現してみたいな」と現場が想像できるレベルのことは、だいたい実現できます。それなのに、教育業界の経営とITが離れすぎてしまっているが故に、テクノロジーを有効に使えていないんですよね。

学校はリアルな校舎や設備への投資に比べて、これまでITには全然投資してきていないため、ITへの投資となると価格優先で、安いベンダーに発注してしまうんです。 でも今後は、将来を見据えて設計して、より一層きちんとしたシステムを構築していく考えにシフトしていかないと、ITと学校経営との乖離はどんどん大きくなっていくと思います。


安間:将来的に、設計によってもっと面白いことを実現できると言う指摘は、本当にその通りです。

我々がイノベーションを推進する企業という立場でアドバイスさせていただくときには、インフラやセキュリティの課題をどうするかという話だけではなく、もっと視野を広げたお話をします。

いまはコロナ問題以前に少子化の時代なので、学生は、“うちの生徒”ではなく“お客さま”です。そのお客さまである学生を確保するためには、いわゆるカスタマーケアが必要です。いかにリピーターにして、いかにロイヤリティを高めていくのか。それをITの観点でどう実現していくかというところがとても重要です。

我々は、今回のパンデミックによって、「なんだ、距離って簡単に超えられるじゃん」「組織の壁も、超えられるね」と、自ら経験して証明してしまったじゃないですか。

だからもう、コロナ問題以前に戻るべきではないんです。いかにして新しい世の中を作っていくのかという視点で、我々は考える必要があるんですね。

距離の壁とは何か、組織の壁とは何かということについて、もっともっと突き詰めて考えいく機会とそのための想像力を、コロナ問題が提示したんだと思います。

想像力を一生懸命働かせることによって、絶対に面白い世界が作れるし、作っていくべきですよね。


——想像力を働かせて、新しい世界を作っていくために、教育機関はどうしたら良いのでしょう。

エリック:その答えはすごく簡単で、ITのスペシャリストを学校経営者のすぐ隣に置くことです。社長室の隣にITスペシャリストがいて、経営者は自分のアイデアがどう実現できるのかをダイレクトに、しかもリアルタイムに相談できる環境ですね。もっと言ってしまえば、アバナードの社員をひとり、学長の隣に置く。それで多くの経営アイデアが実現しますよ(笑)

これは冗談でもなんでもなくて、改革はそこから始まりますし、それだけで大きく変わると思います。これが最短の解決方法です。

もしもこれまでのように経営のコンサルティングを依頼して、彼らの意見をききながら、各社から提案もらって見積りを取って…なんてことをやるつもりなら、それは今すぐにやめたほうがいい。そうこうしている間に、あっという間に時代に乗り遅れます。

今必要なのは、今頭にあることをすぐに実行に移すことです。それができてしまうのがITのマジックで、ITのおもしろいところですからね。

そして、ITのスペシャリストを選ぶ時にもうひとつ重要なのが、ベンダーではなく、パートナーとして選ぶことです。

損得勘定で取り組むのではなく、失敗したらお互い共倒れぐらいのパートナーシップで取り組まないと、システムなんてろくなのができませんからね。


コロナで崩れる壁、拡がる教育の未来

——先ほど、新しい世界・面白い世界が作り出せるという話がありましたが、お二人は、どんな「新しい教育の未来」を想像しますか?

安間:例えば、僕が今想像するのは、大学の形がどんどん変わっていって、1時間目は早稲田大学の授業に出て、2時間目は青山学院大学の授業に出て、3時限目は明治大学の授業に出て、みたいなことができるようになっていく世界です。

つまり、教育も組織の壁が溶けるということですね。

そこにテクノロジーとして字幕機能が加わると、教育の可能性は無限に広がります。距離も国境すらも超えて、海外の授業にも自由にバンバン出ちゃう、みたいなね。


エリック:そういえば、Teamsにはもうライブキャプション機能が備わっていて、リアルタイムで字幕を出せるようになっていますよね。

この「字幕をつけられる」というのは、教育にとって非常に大きなインパクトがあることです。

母国語が異なる人同士がミーティングをする場合、無理に下手な英語で会話するのではなく、日本人なら日本語、マレー人ならマレー語というように、母国語で世界中の人とコミュニケーションできたら、教育の可能性って恐ろしく広がるはずなんです。

そうなると、安間さんが言うように、壁はどんどん壊れていきますよね。

コミュニティの形がどんどん変わってきて、そこに追随するようにシステムやテクノロジーも変わってくると思います。


安間:そうですね。これからどんどん変わっていくものに対して、テクノロジーも一緒に変わっていく必要があります。現状、もしテクノロジーが追いついていないのであれば、我々はそれを待つ必要はまったくなくて、今できるものでできることをやればいいんです。

「必要は発明の母」というように、システム自体が育っていきますからね。

かつて、企業におけるシステムも、最初の頃は部署ごとにセキュリティグループを作らなくてはいけなかったんです。それが徐々に、部署単位での仕事だけではなく、企業内でアメーバ的に色々なプロジェクトが発生するようになってきて、部署の壁を越えて柔軟にダイナミックにセキュリティグループを作れるようになってきました。

そういう風に、きっとテクノロジーは進化していくんだと思います。

組織と距離の壁が崩れる時、そこにテクノロジーもついてくる。ついてこないと絶対に面白くならないし、もしついてこないんだったら、僕とエリックが作りますよ(笑)


エリック:本当にその通りだと思います(笑)今すぐシステムがフィットすることは難しいかもしれないけれど、導入した後、長く使うことでシステムが成長していく世界が絶対来ますよね。これまでみたいに、パッケージソフトをドンっと入れる世界ではなくなるはずです。

afterコロナの世界においては、ITというものが、正しい方向に進んでいくんじゃないかという気がしますね。人間社会に自然なかたちでITが入ってくる時代、ITが人間社会をうまくつなげてくれる時代を、コロナが運んできたんだなと感じています。


——そんな時代に、アバナードという企業はどう貢献していくのでしょうか。

エリック:完成形をソリューションとして提供するのではなくて、未来を見据えたテクノロジーという位置づけで、絵に描いた餅ではなく、具体的な新しい取り組みを提供するのがafterコロナ時代のソリューションだと思います。その、未来の実現をテクノロジーでサポートする企業がアバナードなのです

先日、社内で未来志向のメイカソンをやったのですが、想像を超えるようなワクワクするアイデアがたくさん生まれました。今も、社外には出ていない面白いプロジェクトが、社内にはゴロゴロ転がっていますからね。それらの取り組みそのものがこれからのアバナードのソリューションになっていくんじゃないでしょうか。


安間:そうですね。これからは我々自身が実験室かつショーウィンドウになっていくと思います。「こんなソリューションいかがですか」ではなくて、僕たちが「こんなことやってるんだけど見てみてよ」とショーウィンドウのように見せることでリードしていくのが大切なんじゃないかなと思うわけです。

現在も、従業員がどんどん予算を使って、自由に面白い遊びをしているんですよね。僕をどこでどうやって言いくるめたのかわかりませんが。(笑)そして、それをコミュニティとして広げようとしているんです。これはとても素晴らしいことで、僕はもっとやってもらいたいと思っています。

そうやってひとつのショーケースが生まれてくるし、教育という観点から見てみても、教えることももちろん大切ですが、経験という場を提供することが結果的に教育やトレーニングにもなっていく、と思います。


▲オンライン対談の一コマ


以前のインタビュー記事はこちら:



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