元リッツ・元スタバ・元メルカリ社員が語るCSの未来|CS.MOTSU #1 イベントレポート

スマホで呼べる、相乗りアプリ「CREW」を運営するAzitでは、CS業界の有識者を集めて談話する「CS.MOTSU(シーエス・ドットモツ)」を定期的に開催しています。

CS.MOSTUの司会を務めるのは、Azit CCOの須藤 信一朗。採用戦略や文化・制度構築を担当している須藤は学生時代に4年間スターバックスで働いていた経験があります。その経験を活かして、CSの皆さまのイズムを引き出していきます。

今回は2017年3月に開催、CS・おもてなしのプロである元リッツ・カールトン、元スタバ、元メルカリの方々をご招待した「CS.MOTSU #1」のご様子をお届けします。

《ゲスト》

小川 直樹(画像中央/ピックアップ|スターバックス、ロコンド、メルカリを経て現職)

狩野 哲史(画像右から2人目/ポケットコンシェルジュ|オリエンタルランド、リッツ・カールトン、BMWを経て現職)

青山 正史(画像右から1人目/Azit|スターバックスで店舗・マーケティングを経験後現職)

鈴木 ‎暢之(画像左から1人目/Azit|電通営業・マーケティングを経験後現職)

各社のCS業務とCSポリシー

須藤 皆さんのキャリアを深掘りしたいと思うのですが、まず狩野さん。一貫して「CS・ホスピタリティ」を追求する仕事に就いていらっしゃいますが、現職ではどういう業務をされているんですか?

狩野氏 会社が運営するサービスの紹介をすると「ポケットコンシェルジュ」という、高級飲食店を紹介して、お客様をつなぎ合わせる役目を担うサービスを提供している会社です。私は、その責任者的な役割を担当しています。

サービスで提供するのは、飲食店とお客様をつなぐことなのですが、中には「魚はだめだけど寿司屋に行きたい」というかたや「子供NGなのに子供を連れてきてしまった」というケースを未然に防ぐような業務を行なっています。良店と良客をつなぎ合わせる役目、お互いに負担にならないように調整をする業務ですね。

ポケットコンシェルジュのTOPページ)

鈴木 アプリの基調もシックで、上質な感じですよね。お店もユーザーもハイエンド層がターゲットですか。

狩野氏 そうですね。客単価はかなり高いです。

小川氏 ハイエンドユーザー向けにCSで応対をするのは電話ですか?

狩野氏 基本的にはメールとzendeskで行なっています。電話もたまにありますが、アプリ・Webベースのサービスなので。一応電話は「MOT/Phone」という代表番号をアプリで出られるというサービスを使っています。あと最近はLINE@での対応も開始しました。

小川氏 LINE@はユーザーさん向けですか?

狩野氏 いえ、お店とお客様両方ですね。お店側には「こういうお客さんがいます。対応できるレストランさんいらっしゃいますか?」と投げかけて「うち大丈夫だよ」と返信をもらう。一方でお客さんからはご要望をいただいた際にお返しをするというオーソドックスな使い方です。

それらの業務は「コンシェルジュチーム」として3人で回しているのですが、ユーザーは16万人。アクティブは3-4万人くらいでしょうか。そもそも客単価が高いので、それほど高い頻度と回数が来ないのが特徴なので、なんとか回すことができています。

須藤 小川さんのキャリアも深掘っていいですか。

小川氏 現在はピックアップ株式会社でCSマネージャーを担当しています。ただすごく少人数なので、まだチームは1人しかいません。そういうフェーズなんです。会社自体も10人程度なのですが、来月・再来月で20人-30人程度になる予定です。

スタバで働いていた頃に、もっと小さい会社で挑戦をしたいと思って、29歳の時にロコンドに転職しました。靴を中心にアパレル関連を販売する通販サイトです。IT業界に行きたいけど専門性がない。そこで「接客×IT」ならいけるかも、と思ってCSになることを決めました。

ロコンドは小さい会社だけど仕組みはできていたので、もう少し仕組みを作るところから挑戦したい。そう思って100人規模のメルカリへ転職。メルカリも大きくなって整ってきた部分が増えてきたと感じて、0-1に挑戦できるピックアップ株式会社に転職しました。DMMに買収されたスタートアップですね。

サービスは3つ。写真ストレージサービスの「POOL」、ライブ配信アプリの「CHIPS」チャットノベルサービスの「DMM TELLER」です。僕がメインで担当しているのは、CHIPSというライブ配信アプリ。5月にリリースをして、立ち上がったばかりなので、CS対応は少なく、今の段階では色々と整備をしていこうという段階です。

(小川氏がCSを務めるライブ配信アプリ「CHIPS」

須藤 どういうところから整備するんですか?

小川氏 まだテスト配信をしているだけ時期でCS環境は整備されていなかったのですが、既にインフルエンサーの配信は開始されていました。一般人も利用できる状態だったので、変な動画を配信されないか監視体制を整えないといけない。

そこで監視会社と組んで監視環境を整備、クオリティコントロールをすることにしました。それが最初の仕事だったのですが、システム開発には1.5ヶ月もかかるんです。

なので、その間だけアルバイトを採用して24時間監視体制を整えました。変なコメントのチェックやスパムアカウントのチェックを目視で行なうんです。今はその基準を運用しながら整備して、監視会社に基準に落とし込むための準備をしている段階ですね。

須藤 立ち上げとなると、普通は監視から始めるんですね。

小川氏 私たちのモデルだと、安心安全が重要なのでそこからですね。問い合わせがあって、遅れてもサービスが終了するわけではありませんが、変な動画が上がるリスクは大きい。CHIPSは10代-20代の女子向けライブ配信アプリなので、安心安全という側面がとても重要だと思っています。

須藤 守備面が重要なサービスということですね。

須藤 ポケットコンシェルジュにも問い合わせルールなどはありますか?

狩野氏 僕たちは24時間までにお返しするというルールですね。外国の方だと、時差があるので「なんて時間に返すんだ」と怒られることもあります。なので、登録されている国際番号から時差を調べて、適切な時間に返すようにするということはありますね。

須藤 時差まで気にするなんてVIP対応みたいですね。

「リッツ以外考えられない」究極のホスピタリティの秘密

須藤 みなさん分厚いCS経験をお持ちなのでその経験について聞きたいのですが、実は僕もスタババイトで4年、中部電力で1年間のCS経験があるんですよ。

(須藤が大学卒業後勤務していた中部電力のHP)

小川 電力会社にもCSがあるんですね。

須藤 もちろん「CS」という呼び方ではないのですが、そういう役割の人が1500人くらいいて、問い合わせやクレームには24時間対応していました。1500人はバイトやパートのおばちゃんたちが担う役割ですが、彼ら彼女らにマニュアルで対応しきれない部分を、中電にいる中の人たちが確保すると。

僕たちに回って来るのは、難易度がかなり高いものばかり。ここでは話せないような内容の問い合わせがわんさかありましたね。電気って、使えて感謝されるものではないんです。あって当たり前。それがインフラの役割とはいえ過酷ですよね。

という僕の経験をお話したところで、みなさんが経験されてきた会社独特のCS対応について聞きたいのですが、まずは狩野さんに「リッツ・カールトンのCS文化」を聞きたいです。苦労したこととかありましたか?

狩野氏 一番大変だったのは、会員制のスパを利用しようとした方が、自分の希望している時間帯にお気に入りのラウンジの席を取ることができなかったことで怒ってしまい、現場のマネージャーを土下座させたことがありました。GMが出て来ても治まらず、その時はもうだめでした。

小川氏 リッツって、現場の裁量がすごいと聞きますが、その時は代替案は出せなかったんですか?

狩野氏 他のケースは代替案で解決できたこともあったのですが、その時はどうにもなりませんでした。基本的には叶えられる限り、マネージャーの裁量でできます。お金がかかることでも、事後報告で問題ありません。

須藤 予算の上限は、ちなみにいくらくらい・・?

狩野氏 20万円ですね。1案件それくらいは大丈夫です。お金は気にせず、ほとぼりを治めることを優先します。聞いた話では、大阪のリッツに泊まった方が東京で行うプレゼン資料を忘れてしまった。車でお客様が移動している間にホテルマンが新幹線で追いかけてホテルで待ち合わせをしたということもありました。

鈴木 その予算をかけられる理由というのは何かあるんですかね。

狩野氏 明確な因果関係があるかはわかりませんが、やはり1つの感動体験として記憶してもらえるので、リピートしてくださるんですね。ホテル全体でリピートが4割。他ホテルと比べても高い水準だったと思います。

「リッツ・カールトン以外考えられない」と言ってくださるお客様もいて、他の高級ホテルでももちろんいますが、その中でもファンが多いんです。

須藤 「○○以外考えられない」って言われたら本当に嬉しい言葉ですね。

狩野氏 それを言っていただくための仕組みがあるんですよね。リッツブランドの、全世界の全ホテルでお客様の情報を共有しています。例えば須藤さんが来たとすると、家族構成はもちろん、好き嫌いまで全て記録しています。なので、「先月須藤様がソウルのリッツ・カールトンでオレンジジュースを絶賛された。そのオレンジは○○産の○○のオレンジだった。では、東京に着いたときに部屋にそのオレンジジュースを入れておこう」となるわけです。

須藤 すごい。どういう風に記録するんですか?

狩野氏 従業員が「ゲスト・プリファレンス・パッド」という、ゲストの好みを記録するためのメモを持っています。そこにいつ、どこで、何を召し上がられたとか。体調が悪いときはこれを避けてといった情報が全て書いてあります。

他の会社だと行き過ぎ感もありますが、これらの考え方・理念は全てリッツの全従業員が持っている「クレドカード」に記載されているんです。

須藤 一体、どういう内容が書かれているんですか。

狩野氏 例えば「生涯のリッツ・カールトンゲストを獲得する」という言葉が最初に書かれているのですが、中にはエモーショナルなものから機能的なものが両方入っています。

本来相反するように思うことが全て書かれていて、12個の項目を日々全世界中のリッツ・カールトンで「今日はこれに向かって動こう」と共有して、全ホテルが一緒に動くんです。

小川氏 内容は変わることもあるんですか?

狩野氏 時代にそぐわない内容は変化することもあります。基本的な方針はアトランタの本社が決めるものですね。

スタバ・メルカリにおけるCSの指標とは?

(狩野氏は持参の栓抜きで、手慣れた様子でワインを注いでくれる。自然で手慣れた様子にもホスピタリティを感じる)

鈴木 スタバも「ホスピタリティ」のイメージが強いですが、「クレドカード」みたいなものってありますか?

小川氏:スタバは「グリーンエプロンブック」というものがありましたね。

青山 行動指針ですね。スタバのシンボルであるグリーンエプロンをつけている人が、どこに重きを置いて行動していくか。現在はなくなってしまったんですが、内部で振り返ることはあります。3ヶ月、半年、1年とか。期間に応じて研修を行なうことも。

小川氏 研修は最初だけで、あとは上司たちが3ヶ月に一回の人事考課で内容を理解しているか、それを持って行動できているかという部分を確認するんです。

青山 人事考課では「自己評価をする」ことが重要で、人から評価される前に自ら意識することができているかを気にしています。意識していなかったら意識するようになり、していればあとは行動するだけ。そのための人事考課ですね。

須藤 メルカリは行動指針として3つのバリューがあると思うのですが、CSとして目指している指針も何かありますか?

小川氏 結論から言うと、CS単体の指標はないですね。メルカリは全社でOKRという評価制度を導入しているのですが、その中の指標の1つとしてCSの指標があります。なのでメルカリではシンプルに「事業にどれくらい貢献できているか」というところを追っていました。

なので、CSならではの指標「顧客満足」などを追っても、会社のKPIにはそれが入っていないので違う。ではどうしようというところで、僕がいた時期には「お客様と長期的な関係を結ぶためのCSのあり方を再創造しよう」という抽象的な目的があって、そこから細かく追う必要がある指標を考えていました。

須藤 CS単体の成果ではなく、その行動の先でユーザーが使い続けてくれる、魅力的に感じてもらえるようにするということですね。

これからの時代に必要とされるカスタマーサービスとは

須藤 色々な話を聞いたんですが、みなさんにとっての「最高のカスタマーサービス」とは、というところを教えてください。もつ鍋にもご飯が投入されてシメに向かいますが、話の方もシメに迎えればというところですね。

小川氏 僕は4-5年ITのCSをやって思うのは、「コミュニティ」の時代だなと思っています。顧客満足というのは少し違うような気がしています。

鈴木 コミュニティの時代ですか。

小川氏 お客様に満足してもらうのは当たり前で、それ以上にサービスの仲間として関わってもらう。それ自体がお客様にとっていい価値になるかなと思っています。カスタマーとプロダクトが関わって、その間をつなぐのがCSなのではないかなと。

ユーザーも受け手としてだけでなく、サービスを一緒に伸ばしている実感があって、そのサービスが伸びる喜びを感じるというレベル。

スタバも初期は、お客様もスタバに関わっていて、おしゃれなブランドに関わっている喜び、ブランドを育てる喜びが共通認識としてあったんだと思います。

まだ曖昧な感覚ですが、それを僕個人としても実現させていきたいと考えています。うちのサービスでも、やっぱりコミュニティを作っていきたい。企業とお客さんではなくて、同じ船に乗る仲間という雰囲気を作っていきたいですね。

青ちゃんはスタバにマーケティング視点で関わってきて、顧客満足についてはどう感じてる?

青山 スターバックスの中で「顧客満足」「感動体験」を提供するために一番重要なのは「パートナー」(店員)のモチベーションをどう上げるかだと思っている。昔からスターバックスが変わらないのは、パートナーとものと空間が一致したときの感動体験はパートナーの関わり方次第だと思うんです。

もちろん商品開発にも力を入れているけど、そこにもっとパートナーが関わっていくことができれば、同じ商品でもお客さんに自信を持って勧めていくことができると思っている。

パートナーが楽しく働いていれば、お客さんを喜ばせることもできるはずだし、その姿を見たお客さん、例えば高校生や大学生は「働いてみたい」ってスイッチしてくれる。リッツ・カールトンとかと比べると単価も低いけど、フレンドリーさ、人の軸をどう作るか。どうやって楽しく働いてもらって、それをお客さんに伝えるかが重要なのかなと思っています。

須藤 使ってくれている人たちが店員になるっていうのはすごいですよね。

小川氏 それでいうと、CREってオンラインサービスから始まって、今はオフラインにも行こうとしている。その姿勢ってすごいですね。

須藤 やり方はだいぶ違うと思います。それにまだまだユーザー数が少ないからこそ、コミュニケーションは取りやすい。ドライバーさんにはコーヒーを配って応援したり、今後もイベントを開催する予定なんですが、そういう付き合い、関係性がサービスを運営する上でのお願いごとをしやすくしたり。一緒に行動を起こしやすくすると思っています。

狩野氏 サービスを愛してくれる、一緒に進めてくれるっていうのは嬉しいですね。

鈴木 やっぱり、車好きの方が多いんですけど僕が会ってきた中でも、仲良くなった方とかは頼っても答えてくれることが多くて、嬉しいですよね。ライダーとドライバーという、2パターンのユーザーさんがいて、現状ではドライバーさんたちと一緒にサービスを作っているんです。不安に思いながら使ってくれてるユーザーさん達もいると思うんですが、そこに共感してくれて、丁寧に接していることが、結果としてサービスに定着してくれることにもつながるのかなと。

今後は僕が直接関われる機会が減るかもしれないけど、その考えは浸透させていきたいと思っています。

須藤 では最後狩野さんもお願いします。

狩野氏 僕らのサービスは、レストラン側に寄っているんです。高級店って、お客さんを選ぶんですよね。レストランにとって、うちが間に入るおかげでいいサービスを提供できて、食体験を提供できるということが指標になるので、そこをしっかりと目指していきたい。

ユーザーさんの願望をないがしろにするわけではなくて、できる限りその人達に寄り添った体験にするというのが僕たちの使命。代替案の提案で、高い満足度を目指すことが、僕たちの大きな役割なので、今後もそこを強めていきたいですね。

【締め】

CS.MOTSUvol.1の様子をお届けしましたが、いかがでしたか?

オンライン・オフラインで様々な信条があります。しかし、そこに通ずるのは、ユーザー・お客様にどのような姿勢で接するかという信念を持っているということ。

狩野さんがBMWの接客で感じた「姿勢が伝播する」という経験や、青山が語る「店員が楽しむことが、お客さんに伝播する」という姿勢は、ホスピタリティの原点なのではないのでしょうか。

自分たちが誇りに思う仕事を、誠実にユーザー・お客様に伝える。その姿勢を貫いている5人の会でした。

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[編集:大沢俊介]

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