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私たちが「アジャイル」を選ぶ理由。エンジニアとストラテジックデザイナーがBCGDVで働く意義を語る

BCG Digital Ventures(以下、BCGDV)は、大企業との共創を通じて、世の中にインパクトのあるサービスを創出することをミッションにしているプロフェッショナル集団です。プロダクトマネージメントやエンジニアリング、デザインなどのエキスパートが在籍し、プロダクトとビジネスの両輪で革新性の高い大きな事業をグローバルに生み出し続けています。

今回は、Senior Strategic Designerの中島康祐、Senior Engineerの武田元の二名が登場。Partner & Director, Experience Design の花城泰夢がファシリテーターを務め、これまでに手がけたプロジェクトを振り返りながら、BCGDVで働く意義について語り合いました。

これまでのキャリアと入社のきっかけ

——(司会・花城):まずは、お二人のバックグラウンドを知るために、これまでのキャリアを教えてください。

武田:私は新卒で独立系のSIerに入り、金融機関のお客様を13年ほど担当しました。最初はWeb系のシステムを、最後のほうはスマホアプリを手がけ、その後スタートアップに転職しました。エンジニアとして入社しましたが、機会がありエンジニアリングマネージャーも経験しました。

中島:今はストラテジックデザイナーという肩書きですが、大学では工学系を専攻していました。大学院では情報科学系に進み、博士号まで取得しました。キャリアの選択肢としては企業や大学の研究者というのもあったかもしれませんが、私自身は大学時代にデザイナーと一緒に働く機会があり興味を持っていたので、電機メーカーのデザインセンターでデザインエンジニアとしてキャリアをスタートさせました。

しばらくしてから、家電部門で商品企画に携わるようになりました。市場のトレンドを明らかにしながら、エンジニアやデザイナー、営業など多くの方と一緒に製品を企画していくような仕事です。

——転職したきっかけは何だったんですか?

武田:SIerで基礎的なシステム構築力を鍛えてもらったと思っています。でも、SIerでは自社のプロダクトを担当するチャンスがありませんでした。自分でプロダクトをつくりたくなったというのが、スタートアップへ転職した理由です。その後、SIerでの経験とスタートアップでの経験をまた違う形で活かせる場を探していたときにBCGDVに出会い、2020年9月に入社しました。

——中島さんはいかがですか?

中島:デジタルを強みにしている企業で働いていきたいという思いがあり、そんなときに転職サイト上で声をかけてもらい、2020年1月に入社することになりました。BCGDVはデジタルに強みを持ちつつ、経営層とコミュニケーションをとりながら、アジャイルにプロダクトを開発している環境だと聞き、魅力を感じていました。

何のための「アジャイル」なのか

——武田さんがエンジニアとしてプロジェクトを遂行していくなかで、BCGDVはどんなところがユニークだと思いましたか?

武田:BCGDVには6つのコホート(職種)がありますよね。プロダクトマネジャーやエンジニア、デザイナーだけがアジャイルに進めようと奮闘するシチュエーションは一般によく聞く話ですが、入社して驚いたのは、どのコホートの人もアジャイルに取り組もうとすることです。もっとコホートごとに独立して仕事をしているかと想像していましたが、職種ごとの境界線がゆるやかで、全ての職種が同じ目線でプロジェクトに取り組んでいるのが特徴的だと思いました。メンバーのエンジニアリングに対する解像度も高いので、一緒に仕事をしていて助かることが多いです。

——読者の方には「ストラテジックデザイナーって何?」と思う方もいるかもしれません。DVではストラテジックデザイナーの役割を、「デザインシンキングなどの手法を用いてカスタマーインサイトを引き出し、ビジネス・サービスの種を導き出すプロフェッショナル」と表現することもありますが、中島さんの解釈はいかがですか?

中島:一言でいうと、プロダクトやプロジェクトの目指すべきところをチームで考えていくにあたり、必要な材料や考え方を提供する人、だと思っています。自分の考えだけで方向性を決めるというより、ユーザーが何を思い、何を必要としているかを深掘りして、そこに至るまでの方向性を指し示すような役割ですね。

——難しい仕事だと思いますが、拠り所になっているものは?

中島:ユーザーの生の声ですね。どれだけ多くのユーザーと触れ合えるかが、その後の工程を左右します。それから、プロダクトや事業全体としての戦略。この二つの基盤の上に世の中に届くものが出来上がるのだと思います。

——中島さんは、ユーザーインタビューが上手ですよね。どうやったらそんなに引き出せるのかといつも思います。

中島:ありがとうございます。ユーザーインタビューには他のコホートやコーポレートパートナー(クライアント)も同席しているのですが、それぞれ違った立場から質問してもらうことで、チームとして情報を引き出せているのかなと私としては思っています。そのやり方なら、ユーザーの声だけでなく、「エンジニアはこういうポイントが気になるのか」と、メンバーそれぞれの視点を知ることもできますよね。

——武田さんもよくユーザーインタビューに参加していますよね。

武田:はい、すごく貴重な機会だと思っています。これまでのキャリアでは、ユーザーから直接話を聞ける機会はほとんどなかったのですが、BCGDVでは、自分が関わっているプロジェクトのユーザーインタビューに自由に参加できる。同席させてもらうことで開発タスクに納得感を持って開発に進めるようになりました。コーポレートパートナーのエンジニアの方が参加されたときも「解像度が上がった」と話していました。

——解像度が上がったというのは?

武田:エンジニアは「こういう仕様でよろしく」と決定事項だけを伝達されることが少なくありません。そうではなく、意思決定の背景も共有してもらうことで、乗り越えるべき課題をより深く理解できるようになり、ディスカッションのレベルも格段に変わってくる。ユーザーと対話することで「アジャイル」の意義がより明確になります。初めに決めたプランを変えることって、誰にとっても多かれ少なかれストレスだと思うんです。でも、ユーザーと話すと「だったら仕様が変わっても仕方がないよね」と納得できる。

——日本企業の多くはウォーターフォール型開発だと思います。最初に全ての工程が決まり、納期も決まっているので、途中で問題が見つかっても目をつぶらざるを得ないことがあるんですよね。

武田:計画した通りに直線的に進むことができればエンジニアとしても気持ちがいいもの。ですが、ペインポイントを一発で当てて、さらにそこに一発で100点の機能を開発することなんて計画してできることではないので、ある程度揺れ動くのは仕方がないことです。コーポレートパートナーも、例えば、VRのような技術の流行や、コロナ禍といった社会的な潮流の影響を受けて考えが変わることがあるので、その時点のベストを尽くし、それでもその後変わることを良しとする姿勢は常々大切だと思っています。

中島:それは共感します。「アジャイル」という手法が目的になってしまうと、毎日ルールが変わるゲームに参加させられているみたいで辛いと思うんです。でもユーザーを軸に議論することで、ユーザーの意見だったものが、だんだんとみんなの意見に変わっていく。結果、アジャイルが一番ユーザーの意向に沿うことができる手法なんです。

ナレッジトランスファーを通して暗黙知を探索する

——社内では最近、ナレッジトランスファー(ナレトラ)がテーマになっています。BCGDVとの契約が終わった後も、コーポレートパートナーは自走していかなければなりません。そのために、わたしたちの知見をコーポレートパートナーに移転させていこうという取り組みです。印象に残っているナレトラの事例はありますか?

武田:結果的にナレトラになったという事例なのですが、昨年エンジニアとデザイナーが協働して、デザインシステムをつくったんです。デザインシステムというのは、Webサイトをつくるときの裏側、色やデザインなどの基本部分をコンポーネント化することで、デザインの変更が簡単にできるというものです。例えるなら、レゴブロックの基本セットをこちらであらかじめ用意しておいて、あとは自由に設計してもらうような仕組みです。

デザインシステムが整備されるにつれて、効果を実感していきました。コーポレートパートナーのなかには、デザインの知識がない方やフロントエンドの開発に慣れていない方もいます。デザインシステムを構築したことで共通言語ができ、エンジニアでない方からエンジニアらしい意見が出て、デザイナーでない方からデザイナーらしい意見が出てくるといった変化が顕著に現れました。

——デザイナーでない人からデザイナーらしい意見が出るというのは、どういうことなんでしょう。

中島:知識がないと意見を持つことはできません。特にデザインは好みの問題にされやすいので、「ここの色は青が良い」「いや赤が良い」といった議論になりがち。けれど、「こういうユーザビリティを実現するために、このカラーやデザインを選んでいる」というロジックを説明すると、デザインを科学できるようになります。クライアントパートナーからも的を射た意見が飛んでくるようになり、建設的な議論になるのです。

武田:実践のなかで都度「なぜこうするのか」をお伝えしていたことは大きいと思っています。実践を通して考え方を知り、エンジニアマインドやデザイナーマインドが醸成されていったのだと思います。

——ナレトラでは、知識や技術だけでなく、マインドセットから考え方までシェアする。学びや成長のための空気感を一緒につくり上げているんですね。

中島:私たちはクライアントを「コーポレートパートナー」と呼ぶように、お客さまではなくパートナーとして一緒に取り組んでいます。いかにフラットに情報交換ができるか、知見の共有ができるか、ナレトラという文脈でもその関係性が重要です。

ナレッジ“トランスファー”という言葉こそ使っていますが、私たちの知見をシェアすることで、結果としてお互いの知見が深化する場面が多いと思っています。知識には、暗黙知と形式知があります。形式知は私たちも認識できている部分ですよね。一方、暗黙知に関しては、私たちにとって「当たり前」になっていて言語化できていないことがある。その当たり前の部分をクライアントパートナーから質問されると、レスポンスするのに言語化する必要が出てきます。ここでお互いに活かせる知が思いがけず見つかることがある。ですので、知識を一方的に移転するというよりも、関わり合いのなかで互いに知を発見しあい、深められるような関係性を目指しています。

——棚卸しに近いですよね。これまでやってきたことを体系化して、わかりやすく伝える。

中島:レクチャーをするときにも、ただ教えるだけではあまり意味がないように思っています。一方的な講義をしても、それをどう活かせばいいかわからない。けれど、一緒に手を動かしているタイミングで受けたレクチャーなら、すぐに実践と接続させることができます。そうやって形式知と暗黙知を行ったり来たりする動き方をしています。

——武田さんのエンジニアリングのセッションも、すごく好評だったみたいですね。

武田:はい。そういった声をいただけてとても嬉しく思いました。あまりエンジニアリングに特化してしまうと、コーディングの経験がない人が興味を無くしてしまうと思ったので、ナレトラのセッションとしては、未経験者にもわかりやすいよう概要的な話をしました。

先ほど中島さんも言っていたように、プロジェクトのなかで質問された内容からヒントをもらって、レクチャーの内容を決めています。例えば、実際に使っているシステムを題材にして、エンジニア視点で裏側を説明するというもの。システム部門の人からすると当たり前のことでも、それについて改めて説明される機会はなかなかないようで、コーポレートパートナーからは「そうなっていたんですね」といい反応をいただきました。

とはいえ、自社のシステムについては、当たり前ながら、その会社のIT部門の方が一番詳しくご存じです。なので、10以上のシステムについて担当者にヒアリングさせてもらい、社内システムの全体像を整理することもありました。

——レガシーのシステムは複雑で、知見も属人化しているんですよね。担当者がそれぞれ秘伝のタレを持っている状態で、俯瞰図がなかった。そんな霧がかった状態を武田さんが解き明かしていったんですね。いろいろな部署を巻き込んでプロジェクトを推進するためには、何が必要だと思いますか?

中島:プロジェクトを進めるときにユーザーセントリックに考えることは重要なのですが、同時にそこで働いている人たちが楽しく働いていることも大切です。DXの推進という困難なテーマでも、やっている人たちが楽しそうであればより広い範囲に波及しやすい。平易な表現ではありますが、「楽しむ」ことがプロジェクト成功の秘訣なのだと思います。プロジェクトの期間は、BCGDVとクライアントパートナーとが濃密な時間を過ごすことになりますので、互いに楽しく進める、ということは意識しています。

——武田さんのプロジェクトチームもいつも楽しそうですよね。

武田:エンジニアという同じ職種同士が楽しいのは当たり前だと思うんですよ。でも、同じ職種同士だけでなく要件を出す側のコーポレートパートナーも含めて、あらゆるコホートが共通言語を持って楽しめているのは、BCGDVならではですね。

先日、コーポレートパートナーのマネジャーの方が修正希望を出したほんの1時間で、私たちが対応する前にコーポレートパートナー内のエンジニアが爆速で対応されていたことがありました。私たちが直接手を動かさなくても、ご自分たちで答えを見つけることができる。おこがましいかもしれませんが、そういう変化が見えるとやりがいを感じますね。

「DX」はデジタルトランスフォーメーションの略ですが、「ディベロッパーエクスペリエンスの略でもある」* という言葉があります。(*広木大地 note 「2つのDX」というコンセプト より)開発するという体験自体をより良く楽しくすることで、デジタル革新にもつながるのではないかと思います。

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