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目の前のお客様に尽くすことが夢の扉を開ける

直接「ありがとう」と言われたい

前職ではシステム開発会社のマニュアル制作部門に勤めて、校正、編集の基礎からテクニカルライティングや構成設計の考え方まで、マニュアル制作に必要な技術をひととおり習得しました。

仕事は主にメーカーの製品マニュアルを作ることでした。まだ世に出ていない製品の開発段階から関わることができるのは刺激的な仕事でした。かなり大きな企業の仕事が多く、クライアントごとに異なるルールに注意し、品質やスケジュール面での厳しい要求にも応えながらマニュアルを作る経験を通じて非常に成長させてもらったと思います。



しかし、長くやっているうちに、何かが足りない、と思い始めたのです。それは自分たちが作ったものが本当に役に立っているのか実感できないもどかしさでした。製品マニュアルを作る上で直接のお客様はメーカーの方です。しかし、実際にマニュアルを必要とするのは製品を購入したユーザーです。そのユーザーがマニュアルが役に立ったと思ってくれたかどうか知ることはできません。そのもどかしさがだんだん募っていき、自分のやっている仕事は意味が無いのかもしれないという虚しさと焦りが生まれました。管理職になって現場の仕事から離れマネジメントの仕事が増えるとなおさら「このままモヤモヤしたまま続けても仕方ない」という気持ちを抑えられなくなり、辞めて独立することを決めたのです。1995年3月末、35歳でした。

無計画なスタート

一緒に辞めた制作部門の課長(現在のシーブレインの専務取締役)と一緒に1ヶ月後の5月1日に会社を設立しました。会社設立の挨拶文は以下のとおりです。

近頃のコンピュータの技術進歩や製品の多様化、低価格化は目をみはるものがあります。しかし、ユーザにおける導入や運用、メンテナンスなどの利用技術はまだ開発途上にあるように思われます。
私たちは、こうした利用技術の情報提供(Communication)、研究開発(Creation)、およびコンサルテーション(Consultation)を通して、いささかなりとも社会の要請に応えたいと考えております。

この中にあるように、やりたかったのはコンピュータを利用するユーザーに直接役立つ仕事でした。1995年当時まだコンピュータの企業への導入は十分ではなく、特に中小企業においてはまだまだでした。これから導入する企業を対象に、導入サポート、教育、活用のアドバイスなどができるのではないかと考えたのです。それが自分の求めていた「直接お客様から『ありがとう』と言われる仕事」だと思いました。



しかし、世の中そんなに甘くありません。退職からわずか1か月で設立したので営業戦略も事業計画も何もなく、まったくの見切りスタートでした。つまり仕事をもらう当てがないまま会社を始めたのです。知人からたまに研修の仕事を紹介してもらい企業に行ってWordやExcelの講師をしたりしていましたが、継続的な売上がありません。創業したばかりだったので自分たちの報酬も生活できるギリギリの金額しか受け取っていませんでしたが、それでも売上がないので資本金は減っていくばかりです。非常にまずい状況でした。

培ってきた信頼関係に救われる

ちがう仕事がしたいと思って独立したので、前職の頃の取引先から仕事をいただくことは考えていませんでした。しかし、我々が独立したことに興味を持って様子を見に来てくださる方や、中には独立したことを意気に感じて仕事を出すと仰る方もいらっしゃいました。新規の取引先を開拓するめどが立たない状況でそんな言葉をいただけるとは、ただただ感謝するばかりでした。会社を継続できなければ夢も理想もありません。我々はご厚意に甘えて前職の頃のお客様と取引させていただくようになりました。そこから継続的に仕事が受注でき、会社は安定して社員を増やせるようになったのです。

では、創立当初の「お客様から直接『ありがとう』と言われたい」という願いは叶えられなかったのかというとそうではありません。前職の頃の取引先との関係は自分の会社としてお付き合いするようになってから強くなりました。それまで以上にいろんな仕事の打診をいただき、クライアントとの打ち合わせにも同行させていただけるようになりました。おこがましいようですが、外注ではなくパートナーのようにお付き合いできるようになったという実感です。それはサラリーマンの頃と経営者になってからでは我々の真剣さがちがったからかもしれません。そしてクライアントと直接お会いできる仕事では、満足いただけるものを作るとクライアントから「ありがとうございました」と言っていただけるのです。プロジェクトの打上げに呼ばれることもあります。

つまり私が前職の頃悩んでいた答えは意外と身近にあったのです。それは「目の前のお客様に尽くす」ということです。目の前にいるお客様がメーカー(サービス提供者)という立場の人であれユーザーという立場の人であれ、仕事を頼んでくれた人であればただその人が満足する結果を出すことに真剣に取り組む。それだけです。そのことだけを考えて尽くせばチャンスは広がるし、その先のお客様にも自分たちの作ったものは評価されるはずです。

そのような経験を踏まえて、シーブレインの経営理念では価値観の最初に「顧客感動」という言葉を掲げています。お客様を感動させるためにあらゆる手段を考える、全員で協力して取り組む。創業時の経験がシーブレインの経営理念の根底にあり、それを社員全員が共有するように努めています。

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