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ブランディングの考え方【CICATAのシカタ】

  • TALK:北本浩一郎(シカタ株式会社 代表)
  • INTERVIEWER:荘司 大

2013年CICATA設立。
仕事への違和感と自分を前に進ませたある出来事。

荘司 CICATA設立の経緯を教えてください。

北本 クライアントにとっても、そして、自分自身にとってもベストだと納得できる「仕事のやり方」を追求したくて…。だったら独自で提案できる場を持つ必要があるのではないかと思ったんです。プロダクションや代理店で働いていた頃は、“制作物を創ること”が仕事のメインになっていました。クライアントから「ポスターや新聞広告を創って欲しい!」という依頼が来るわけです。限られた時間の中でヒヤリングやディスカッションを行い、企業や商品の特長やターゲットの特性を踏まえ、最も効率的だと思われるデザインを形にして納品する。そうしたやり方に、「これが、本当にクライアントのためになるのだろうか?」「もっと、できることがあるのではないか?」と、どこか納得できずにいる自分がいました。もちろん、デザインを突き詰めることは大切なんです。0.1mm単位の細部にこだわることで、スペース全体が締まって見やすくなったり、伝えたい情報を直感的に感じてもらうことができたり。そこを追求することはやりがいもあるし大切なんです。でも、何か自分のデザインスキルを切り売りしているというか、クライアントとの関係が、制作物の納品と同時に単発で終わっていく日々に、納得できない自分がいたんだと思います。

荘司 それで、2013年にCICATAを立ち上げたわけですね。

北本 そうですね。2013年という時期に関しては、その前の2011年の震災を経験したことも、大きく影響していると思います。その頃も、相変わらずデザインスキルを売るような仕事をしていたんですが、「こんなことやってる場合か?」って、気持ちが強くなっていったんです。目の前には、困っている人がいっぱいいるのに、相変わらず自分は0.1mmの精度にこだわっている。「デザインなんて、いらないじゃん!」って、半ば自暴自棄になっている自分がいましたね。

荘司 デザインなんて、いらない?

北本 いや、デザインがいらないんじゃなくて、その頃、自分がやっていたような仕事のやり方に対する思いですよね。同じような商品の小さな差異を、なんとか魅力的に魅せるための「見せかけのデザイン」はやりたくない。もっと、目の前にいる人の思いに寄り添い、その思いを伝えるためにデザインの力を使う。そんな仕事こそが、自分のやるべきことなんじゃないかと思ったんですよね。

自分たちらしさが光るブランド。
価値ある存在の伴走者であり続けたい。

荘司 それが、CICATAが考えるデザインであり、ブランディングなのでしょうか?

北本 そうですね。自分たちはデザイナーである前に、ブランディング・パートナーでありたいと常に思っています。

荘司 ブランディング・パートナー?

北本 これは、私たちが独自に使っている言葉なんですが、本気でブランディングやリブランディングに取り組む方々に徹底的に寄り添う姿勢を表しています。企業や商品の社会的価値、そこに込められた、経営者や社員の方々の思いなどを丁寧にヒヤリングして、一緒に紐解き、その時その時の時代にふさわしい形に見える化する。社会への都合のいい見え方を、デザインの力で無理につくるのではなくて、クライアントが提供する商品やサービスの中心にある本質を見極める過程から、伴走者として寄り添うのがCICATAの仕事のやり方なんです。そうすることによって、関わった企業の社員の方が、やる気になったり、笑顔になったりすることで、自分たちらしさが光るブランドになっていき、その企業はもちろん、社会全体が豊かになっていく。それが、理想だし、CICATAが存在する意味だと思っているんです。

荘司 なるほど…。そうしたブランドが、社会をまた元気にしてくれるといいですね。

北本 そうですね。この国には、確かな志を持って商品やサービスを提供されている企業が、まだまだ沢山あるはずです。そうした方々に出会い、一緒にビジョンを見つめ、目の前の課題をひとつひとつクリアしていけたらいいと思っています。目指す未来は、その先に必ずあるはずですから。


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