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無名だった“喋る鏡”が一瞬にして世界中に広まった仕掛けの裏側─キーワードは「白雪姫」?【代表インタビュー】

誰しもが毎日チェックする鏡。その鏡自身がもし肌や表情に関するアドバイスをしてくれたら─。そんな童話のような体験を、最新のAIと豪華声優陣による演技で実現させたのが、株式会社Noveraが発表しているスマートミラー「novera」です。

noveraはその存在を発表した瞬間、SNSを中心に世界各国まで話題が広がり、公式Twitter(https://twitter.com/Novera_PR)では、ティザー開始から予約開始日までの約10日間で広告出稿無しに176万インプレッションもの露出を達成。さらに予約受付初日は、本体価格が約7万円と決して安価ではないにも関わらず、開始30分で100台, 1日で200台を超える予約を受注しました。

その好調の裏には、どんなノウハウや戦略設計があったのか。同社の代表取締役CEOである、遠藤 国忠さんに聞きました。


【プロフィール】

遠藤 国忠(Endo Kunitaka)

2011年に会津大学を卒業し、株式会社サイバーエージェントに新卒入社。マッチングサービスに企画とエンジニアの両面から携わった後、スマートフォン向けゲーム「ミリオンチェイン」のプロデューサー・ディレクター、「ガールフレンド(♪)」のリードプランナーなどを経験。2016年末に退職。2017年1月に株式会社Noveraを創業し、代表取締役CEOに就任。

◆「鏡+声=白雪姫」? 世界中の女性の心を掴んだマーケティング


─スマートミラー「novera」は、約7万円と決して安価ではないにも関わらず、開始30分で100台, 1日で200台を超える予約を受注しました。いったい、どんな仕掛けを打ったのでしょうか。

まず、「novera」という製品名を浸透させることは至難のわざだと考えました。製品名だけを見てもどんな製品か想像がつかないからです。一方、「スマートフォン」が世の中に出て以来、まだ見たことのない新製品でも「スマート〇〇」という言葉をつけることである程度どういった製品か想像がつくようになりました。

「スマートミラー」自体は、世界中の企業が開発しているものではありますが、まだワードとして浸透していなかったので、「スマートミラー」を世間に認知させたプロダクトがブランディングで先に行けると考えました。そこで、スマートフォン初期の「スマートフォンといえばiPhone」であったように、「スマートミラーといえばnovera」という認知されるための動きを、戦略の軸として置いていました。

認知を広げるためには、Twitterで拡散される話題性やメディアで取り上げられるほどのインパクトが必要です。そのため、「お客様の心情や背景、場所、行動などの状況に添ってタイミングを捉え、それに対応した商品を提供する」というマーケティングの考え方、いわゆるコンテクスト・マーケティングに沿い、世界中の誰もが文脈として理解できる童話の「白雪姫」を重要なキーワードとして、商品を見せていくようにしました。

noveraでは鏡に映った自分に対して、鏡の中のキャラクターが「おはよう」「今日も綺麗だね」などと話しかけてくれるのですが、この原体験は、まさに「白雪姫」の有名なワンシーンと酷似していて、分かる人にはピンとくるだろうと考えたのです。

また、豪華な声優陣を起用していたことでこの「白雪姫」の文脈に拡散力を持たせることができました。

─たしかに「白雪姫」の有名なシーンに似ていますね。実際にnoveraを発表した際は、どのような反響があったのでしょうか。

SNSで大きな話題となり、国内はもちろんですが、20日間で40以上の海外媒体にも取り上げられました。鏡が喋るというインパクトと実力のある声優さんの演技、それに幼い頃に読んだ「白雪姫」の思い出という3つの要素が上手く噛み合ったのだと思います。

ロシアの国営メディアから取材の連絡をいただいた時は、反響の大きさに驚きました。

モノに命が宿るという考え方は日本独特ですし、そういう意味でも珍しかったのかもしれません。


◆noveraならではの体験が想像できるようにする

─ほかに、noveraの認知拡大のために行ったことはありますか?

キャラクターボイスには、メインターゲットとなる女性から人気を集めている有名声優さんをアサインしました。

各声優さんには「その方に合う配役にする」「無理やり演じさせるようなことはしない」よう、「その方の持つ良さ」に気を配りました。声優さんのイメージに合ったキャラクターではないと、ファンに思われないよう心がけました。その点を大事にし続けたことで、noveraは大きな違和感無く各声優さんのファン層にリーチできたかと思います。

より深く入り込んでもらうための仕組みとして、使い続けるとキャラクターとの仲が深まり、声のトーンも変化するような仕掛けを入れています。なので最初は声優さん自身に惹かれてnoveraに興味を持った方々も、鏡を使っていくうちに自然とキャラクターに引き込まれるようになっていくと思います。

─それは愛着が湧きますね。

そうですね。また、noveraのTwitterでは毎朝、キャラクターが「おはよう」と挨拶してくれるボイスを配信しています。好きな声優さんが毎日「おはよう」と言ってくれるコンテンツが少ないので、フォロワーの皆様にはそれが新鮮なようです。


日常的にキャラクターに触れる機会を作ったり、商品のプロトタイプを紹介する動画を配信したりすることで、「noveraを使うとこういう体験ができるんだ」とリアルに想像できる環境を作りました。

そうした鏡と声を結びつけるコンテンツを、ティザー発表から予約受付開始までの10日間、ひたすら配信し続けました。その結果、声優の方々の公式アカウントの後押しもあり、Twitterのみで広告出稿せずに約176万ものインプレッションを生み出すことができました。

こうして、検索エンジンで「スマートミラー」と検索すると、私たちのサービスが検索結果1位で表示されるほどになりました。こうなると他社の「スマートミラー」が盛り上がるほど弊社サイトのトラフィックが増える流れができます。
こうした一連の認知拡大が、好調な予約に結びついたと考えています。
ちなみにSEO対策はほとんど行っていません。


─最後にnoveraをアピールする際に意識していることを教えてください。

声は、あくまで鏡を使うという体験の良さを伝える一要素であると捉えているので、非常にこだわって制作していることは間違いないんですが、そこだけに振りすぎないようにしています。今度は、「こんなサービスを利用できます」といった具合に、機能面についても積極的に伝えていきたいと考えています。

noveraという鏡は、人によって見え方が様々だと思うんです。声優さんのファンであればその方が自分自身に話しかけてくれることが価値ですし、美容に関心がある方にとっては、肌に関するデータが溜まってフィードバックまで得られるのが価値ですよね。このようなマルチコンテクストという考え方を大切にして、敢えて一つに絞らず、その魅力を発信していきます。できるだけ多くの方に弊社の鏡のコンセプトを体験していただける手段も考えているので、ご期待ください。

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