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三越伊勢丹がアジャイルで進めた「現場と一緒につくるサービス開発」

こんにちは! アイムデジタルラボの採用広報担当です。今回は、2021年11月25日に行われた講演をお届けします。株式会社三越伊勢丹のMD統括部オンラインクリエイショングループ デジタルサービス運営部 部長の升森 一宏さんとマネージャーの樋口 雅希さんに登壇いただき、三越伊勢丹がアジャイル開発に取り組んだ後の変化などを聞きました。ぜひご覧ください!

アジャイルで現場が使えるシステムが開発可能に

Q.まず、お二人の役割を教えてください

升森:デジタルサービス運営部は、デジタルサービスを利用した接客を推進する役割を担っています。三越伊勢丹には全国に数百の売り場がありますが、それらの売場と開発チームの間に立って、現場に対してはデジタルツールの導入をおこない、開発チームに対しては現場のニーズを吸い上げてフィードバックをおこなっています。現場からすれば、我々は「システム開発側の人」ですね。

Q.アジャイル開発を取り入れて、いかがでしたか?

升森:これまでは「現場が欲しいもの」と「開発チームが作るもの」にはズレがありました。現場は自分の売場視点なので、例えばベビー子ども服売場から「子どもの足型アプリを作って」、宝飾売場からは「顧客カルテを作って」など、その売場でやりたいアイデアが出ます。一方、開発チームとしては個別対応に限界があるので、どの売場でも使えそうな機能を開発してしまいます。そのため、個別の現場に持っていっても「使えない!」というフィードバックになりがちです。ところがアジャイル開発を導入したところ、現場との認識齟齬がなくなり、物事がスピーディに進められるようになったのは驚きでした。

樋口:システム開発の進め方が180度変わりました。現場と開発チームでは、何ができる・できないというポイントが違っていました。例えば開発チーム側ではiPadを使う前提で話を進めるけれど、そもそも現場にはiPadがない、というレベルです。今回は、そういったことが起きずに「どうやったら現場で使えるのか」ということを考え続えながら、改善できています

▲「三越伊勢丹リモートショッピング」を使った接客シーン

現場がシステムを身近に感じてくれるように

Q.現場に対する導入の仕方はどう変わったのでしょうか?

樋口:これまでは現場にヒヤリングをして、数ヶ月経って「システムが完成しました。使ってください」という進め方でした。当然、現場にいけば「使いにくい」という意見ばかりが出ます。でも、作られたシステムの機能を変えることもできないので「でも、使ってください」としか言えない。そうなると正直、現場に行くのが怖いんです。
アジャイル開発では現場で試してもらって、そこで出た意見をもらいながらブラッシュアップをしていくという進め方です。そうなると現場に行くのも怖くなりました(笑)。

Q.現場からのシステム開発に対する見方も変わりましたか?

樋口:そうですね、明らかにコミュニケーションがよくなりましたし、結果として現場とシステムを導入する側に信頼関係ができたと思います。先日、現場のマネージャーに「システムを初めて身近に感じた」と言ってもらえたんです。現場の要望をきちんと取り入れたシステムが出来上がった印象を持てた、この開発の進め方を続けて欲しいと言われてとてもうれしかったです。

Q.システムの導入で工夫されていることはありますか?

升森:我々が「新しいシステムを開発したのでどうですか?」と持っていっても、現場からは「業務が忙しくて使えません」という拒否反応が起こりがちです。そうではなくて「今、何に困っていますか?」とヒアリングから入るように変えました。その上で困っていることに対して「この機能を使って、こう運用すれば、こう便利になります」と伝えています。自分たちの役割を「システムを導入する人」から「課題をシステムで解決する人」にしていきたいと思っています。

樋口:さらに提案するだけではなく、我々のメンバーが現場に入って、システム運用を手伝うこともあります。そうやって現場と一緒に手を動かせば、システム導入の効果も課題もきめ細かく把握できます。いきなりシステムを完成させるのではなく、現場と一緒に作っていくほうが、はるかに効率的だということを全員が理解できている状態になったと思っています。

役員とは成功も失敗も共有する

Q.役員とのコミュニケーションはどのように進めていたのでしょうか。

升森:以前は数ヶ月に1度の報告会だったものを、毎週の会議で会話するようにしました。1時間でリリース内容の確認、現状の結果共有、将来について、の3つを話します。たとえば「前回行ったリリースの評価がこうだったから、今後はこんなことに取り組みたい」という話し方です。定期的に会話しているので役員は状況を的確に理解してくれています。そのため判断もスムーズですし、役員の視点から優先順位などの意見ももらえるようになっています。
樋口:はい、成功も失敗も共有できるのがありがたいです。開発を進めていくと方向性が変わることもよくあるのですが、その理由には成功も失敗もあります。役員側も、なんでも共有しやすい雰囲気にしてくれているので、状況をありのままに報告して次につなげる、という良い循環になっています。


Q.役員に対しても改善される前提は重要ですね。

升森:「1年かけて作った機能が全然ダメでした」とはどうしても言いにくいですよね。でも、数週間~1ヶ月で作った機能を改善するなら話しやすいです。しかも、その根拠が実際に現場で使われた上での話なので、役員の方も受け入れやすいのだと思います。
樋口:我々は毎日のように売場でヒアリングしているので、その反応を見ながらPDCAを回せています。本当に実のある改善が積み重ねられているという実感がありますね。

アジャイルがデジタル化を推進してくれる

Q.アジャイル開発は今度も続けていきたいと思いますか?

升森:ぜひ続けたいでね。デジタル化というのは単にデジタルツールを導入するだけではダメで、運用がきちんと回っているのかを確認し、何か課題があればツールを改善する必要があります。アジャイル開発を前提に、我々のようなチームが現場に入っていくのが有効だと感じています。
樋口:デジタル化は、実際にやろうとすると現場から「できない」「難しい」という声が出てきがちです。アジャイル開発で小さな成功体験を毎週積み重ねて行くことで、現場のマインドが変化していくのを今回実感しました。現場を巻き込んで一緒にビジョンを実現できるのがアジャイル開発の魅力だと思っています。

Q.逆にアジャイル開発のデメリットはありますか?

升森:(しばらく考えて)んー、ないですね。良いことずくめですね。我々からすれば、現場とも、開発チームともコミュニケーションがよくなりました。結果的に成果にも結びついています。現場の意見を聞きながら週単位で改善していく、というのは本当に良い進め方です。

アジャイル開発が、現場や経営陣も巻き込んでコミュニケーションに変化をもたらしている好循環な事例でした!
三越伊勢丹という歴史の長い大きな企業が、スピーディな開発を実現し、DXを推進している環境に意外性を感じた方も入らっしゃるのではないでしょうか?
DXを推進している環境でデジタル人材も育ってきており、まだまだ変革は続いていきます。
伝統ある大きな組織のデジタル化や、レガシーな企業のモダナイズにチャレンジにしてみたい方は、ぜひカジュアルにお話ししましょう!
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