1
/
5

鰻のつかみどりから企業研修まで。あらゆる”やってみよう”が集まる「こゆ朝市」の多様性

世界一チャレンジしやすいまち、宮崎県新富町。

この町でどんなチャレンジが行われているかを紹介します。

今回は「こゆ朝市」です。



毎月第三日曜に生まれる小さなコミュニティ

「こゆ朝市」は、持続可能な地域の実現を目指して新富町が設立した地域商社、こゆ財団が2017年5月から開始したマルシェです。毎月第三日曜に新富町中心部にある商店街で開催していて、約200mの道路を歩行者天国にし、およそ20〜30店舗、300〜500人の人出でにぎわいます。

宮崎県には同じ児湯郡の川南町で14年の歴史があり、160回以上も開催され続けている「トロントロン軽トラ市」というマルシェがあります。全国的にも有名で視察も多数訪れている「トロントロン軽トラ市」と比べれば、「こゆ朝市」は規模も人出もごく普通に思われるかもしれません。

ところが面白いことに、「こゆ朝市」は商売や飲食だけにとどまらない、なんでもありの空間になっています。「トロントロン軽トラ市」が圧倒的な人出と物量を誇る人気の”売場”であるなら、「こゆ朝市」はおもしろいことをやろうとする人たちが集まる”実験場”のようです。


↑2019年3月には路上にミニ四駆コースが出現。親子連れに大人気でした。

2019年だけを見てみても、ここで実現したことは多彩です。

・1月 東京の企業が企業研修のフィールドに活用
・3月 大学生による農産物加工品のマーケティング実験
・6月 地元商工会によるわんこそばの早食いコンテスト
・8月 道路上に出現したライチ畑でライチ狩り
・9月 地元養鰻業者による鰻つかみどり&その場で職人が捌いて食べる特設ブース
・10月 地元ボランティアとの協力によるハロウィンパーティー

ほかにも、ハイブリッドカーを使った災害時の電源供給デモンストレーションなんていうことも、ここでは行われています。こゆ財団の観光チームのアイデアも多彩ですが、そこに町内外の人がアイデアを掛け合わせ、おもしろいことが続々生まれています。

なぜ「こゆ朝市」がこのようなことになっているのでしょうか。


↑東京から企業研修に来たメンバー。研修の一環としてブースを出店しました

「こゆ朝市」は関係人口案内所

新富町にも何度も足を運んでくださっているソーシャル&エコマガジン「月刊ソトコト」編集長の指出一正さんは、予想だにしない未来を創り出す「コクリ!プロジェクト」発起人・三田愛さんとのインタビューで、「こゆ朝市は地域の内外の関係を生み出す関係案内所だ」と、「こゆ朝市」に触れてくださっています。関係人口案内所とは、普通の旅で出会う観光案内所の人や宿泊・観光施設の人ではなく、地域で暮らす人との出会いの場。東京一極集中がとどまらない現状にあって、都市と地域が緩やかにつながる関係人口は、地方創生を考える指標の一つとされています。

「こゆ朝市」では実際に、新富町での講座に講師としてお呼びした著名な方々をはじめ、東京からビジネスやワーケーションなどで来られた方、移住を検討中の方などが町内の方と交流しています。

その交流の仕方も実に多様です。一つ、例を紹介しましょう。


↑2020年1月は地元中学生の餅つき。学校による持ち込み企画です。

朝市でタロット占い!?

2019年1月、東京から新富町を訪れていた勝本さんという女性から「こゆ朝市に出店したい」との相談を受けました。物品の販売かと思いきや、何とタロット占いをしたいとのこと。朝市で占い?と最初は驚きましたが、こゆ財団のモットーは”とにかくやってみよう”。両隣りが飲食店というおもしろい状況の中、勝本さんは(わざわざ占い師っぽいベールまで用意してくださって)のタロット占いブースが実現しました。

蓋を開けてみると、タロット占いは町の人から大人気で、終了時間までブースから人の姿が消えることはありませんでした。勝本さんは2020年1月にも再び新富町を訪れ、「こゆ朝市」でタロット占いを出店してくださったのですが、やはりブースには絶えず町の人が足を運んでいました。

「こゆ朝市」に新しい関わりしろが生まれた、象徴的な出来事です。



コミュニティづくりの失敗が生んだ多様性

実は、「こゆ朝市」はスタート当初、東京の「ファーマーズマーケット」のような売場を作り、農家さんを中心とした新しいコミュニティをつくろうと計画していました。基軸になるのは農家さんによる対面販売で、農家さんそれぞれにファンが生まれることを想定していたのです。名称もその名の通り「こゆファーマーズマーケット」でした。

しかし、朝市の時間帯は農作業が忙しく、ほとんどの農家さんが参加できない状況でした。農家さんから野菜を仕入れての代理販売もやってみたのですが、プロが売らないので説得力に欠け、残ったのは売る・買うの行為だけ。コミュニティづくりにはうまくつなげられませんでした。2017年5月にスタートしてから、半年が経ったころのことです。


↑2017年11月の様子。野菜を代理販売するも人影はまばらでした。

来場者数も伸び悩み、わずか半年ながらもはや継続も危うしという状況でしたので、とにかくなんでも”やってみよう”と考え方を柔軟にシフトします。

まずは来場者を確保しようと、子どもたちが楽しめる企画に注力。それから家族向けに、三世代みんな向けに…というように企画の自由度はおのずと高まっていきました。

そして生まれたのが多様性です。同じ頃、こゆ財団の人材育成事業が活発化し、県内外からさまざまな講師や受講生が来訪する機会が増えていたこともあり、小さな町のマルシェは急速に多様性を増していきました。

↑2019年7月、6人の女の子は路上というステージでダンスデビューしました。

マジックにダンスに。やりたいことにチャレンジできる場へ

先述のタロット占いの話を、こゆ財団でインターン中の大学生2人にしたことがあります。そうすると二人は「自分たちもやってみたいことがある」と、マジックを披露するブースを企画してくれました。タロットがありなら、もちろんマジックもありです。そして朝市の当日、二人のブースでは子どもたちが溢れ返っていました。

またあるとき、小学生の女子6人が突然こゆ財団オフィスにやってきました。「ダンスで有名になりたい。どうすればいいか」というので、朝市でステージ(=道路です)を作ろうかと提案すると、女子たちは何と自分たちで先生を探し、レッスンに励み、数ヶ月後の2019年7月、「こゆ朝市」で見事なダンスを披露してくれました。ギャラリーには町内の皆さんはもちろん、視察などで新富町を訪れていた県外のゲストの姿もありました。

多様性が生まれたことで、「ここならこんなこともできるんじゃないか」「私もチャレンジできるんじゃないか」という空気が生まれているのが、「こゆ朝市」です。


感染症予防の観点から2020年は2月以降しばらく休止を余儀なくされていますが、ふだんは毎月第三日曜です。外出解放のあかつきには、ぜひ訪れてみてください。そして、やりたいことにチャレンジしてみませんか。

一般財団法人こゆ地域づくり推進機構では一緒に働く仲間を募集しています
3 いいね!
3 いいね!
今週のランキング