人は、
一度にいくつものことを
完璧にはできない。
だから、
仕事には優先順位が必要になる。
でも、
優先順位をつけるというのは、
「何からやるか」
を決めることだけではない。
もっと大事なのは、
「何をやらないか」を決めることだ。
仕事ができる人ほど、
仕事が集まってくる。
結果を出せば、
さらに大きな仕事を任される。
担当部門が増える。
部下も増える。
責任も増える。
新しい挑戦が増えて行く。
本人も、
期待されていることが嬉しい。
「これもできる」
「あれもやってみたい」
「せっかく声を掛けてもらったのだから」
そうやって、
一つ、
また一つと、
抱えるものが増えていく。
私は、
ここが一番危ないと思っている。
人は、
うまくいっていない時には、
意外と慎重だ。
怖いから、
考える。
失敗したくないから、
準備する。
余計なことには、
手を出さない。
ところが、
うまくいき始めた時は違う。
自信がつく。
周囲からも評価される。
任される。
声が掛かる。
そして、
自分なら全部できるような
気がしてくる。
そして、舞い上がるのだ。
でも、
自分の能力が突然、
2倍、3倍になったわけではない。
一日は、
相変わらず24時間だ。
仕事だけではない。
人生には、
仕事以外にも、
大切なことがある。
家庭のこと。
自分自身のこと。
生活環境の変化。
人生には時々、
いくつもの大きな変化が、
同時にやってくる時期がある。
そんな時に、
仕事まで、
「あれも、これも」
と増やしてしまったらどうなるのか。
最初に失うのは、
時間ではない。
一つひとつの仕事に対する深さだ。
考える時間がなくなる。
人を見る時間がなくなる。
部下と話す時間がなくなる。
確認が甘くなる。
そして、
判断がその場しのぎになる。
本人が気づいた時には、
いくつもの仕事が、
少しずつおかしくなっている。
私はこれまで、
そんな光景を何度も見てきた。
だから、
波に乗っている時ほど、
私は「足す」ことより、
「捨てる」ことが大事だと思っている。
一つ引き受けるなら、
一つ手放す。
新しいことを始めるなら、
今やっていることの何をやめるのかを、
先に決める。
まして、
自分を取り巻く環境が
大きく変わろうとしている時なら、
なおさらだ。
全部をやることが、
挑戦ではない。
全部を引き受けることが、
責任感でもない。
本当に大切なものを選び、
そこに力を集中させる。
それも、
立派な決断なのだ。
隣の芝生は、
相変わらず青く見える。
新しい仕事も、
新しい事業も、
新しい挑戦は、
面白そうに見える。
だけど、
せっかく自分の足元に、
芽が出てきたのなら、
まずは、
そこを掘った方がいい。
もっと深く。
もっと深く。
これでもか、
というくらい。
一点集中。
失敗している時より、
成功し始めた時の方が、
人は広げたくなる。
だからこそ、
波に乗った時ほど、広げない。
私は、
これが案外、
難しいことだと思っている。