札幌から車で約2時間。国道230号沿いにある「道の駅230ルスツ」(北海道留寿都村)。2025年9月、株式会社TAISHIはこの場所を「ルスツは、豊かさのはじまり。」をテーマにリニューアルしました。
レストランチームをまとめるのが、髙橋海さん。20代のメンバーを中心に、ゼロから店舗づくりを行いました。掃除にメニュー開発、チーム体制の構築まで、手探りで成長してきたレストランは、初めての冬の繁忙期を迎えようとしています。
留寿都ブランドを国内外へ。「手を抜かない」道の駅
羊蹄山を望み、尻別岳の麓に位置する留寿都村は、四季ごとに姿を変える山の景色と、豊かな農作物に恵まれている。国内屈指のスキー場には、国内外から年間100万人以上の観光客が訪れる冬の人気観光地だ。
道の駅230ルスツでは「ルスツは手を抜かない」を合言葉に地元野菜をブランディング。肥沃な大地と寒暖差により甘みとうまみが凝縮された野菜は味が濃く、直売コーナーには色とりどりの旬の野菜が並ぶ。
レストランスペースで提供するのは、これらの地元野菜をふんだんに使ったラーメン。味噌、醤油、とんこつ、辛味噌の4種類があり、それぞれのスープに地元農家から直接仕入れる野菜を組み合わせる。
留寿都野菜を観光客へ届けるために。細部までこだわった一杯
レストランの中心に立つのが、髙橋海さん。2023年、株式会社TAISHIに入社。東京都出身で短大卒業後は航海士として日本中の港を訪れた。「違う世界を見てみたい。せっかくなら旅先で好きだった北海道の地域活性に関わってみたい」と転職を機に札幌へ移住。展示会出展や地域PRプロジェクトなどのディレクション経験を積み、2025年から道の駅230ルスツ ブランチマネージャーに就任した。
レストランリニューアルプロジェクトは掃除から始まった。
前テナントが撤退してから約半年。厨房には長年の油汚れが残り、流れにくくなっている排水設備も。洗剤を手に脚立に登り天井や換気扇周りを磨いたり、ワイヤーやホースを使って水回りの詰まりを取り除いたり。冷蔵庫や電子レンジ、食洗機などの厨房機器も購入し、少しずつ使える厨房へと整えていった。
並行してメニュー開発を進めた。
「地元の食材を生かすにはどんなメニューができるのか」
選択肢となったのはラーメン。さまざまな地元の野菜をただ入れるだけでは味も見た目も魅力的とは言えない。ラーメンに適した野菜とその品種、切り方、調理方法、火の通し方、盛り付けるタイミング。細部まで試行錯誤を重ね今の一杯にたどり着いた。「いちから作ったメニューを、実際にお客さんに食べてもらえるのがやりがい」と語る。
外食の選択肢が限られる地域であり、村民から憩いの場としての期待も大きかったレストラン。オープン後はオフシーズンでありながら平日は80〜100杯、休日は150〜200杯の注文が入るが「物足りない。もっともっといけるはず」と髙橋さん。定山渓、中山峠、洞爺湖、そして留寿都と道内の観光名所を結ぶ国道230号沿いに秘められた可能性に期待を込める。
道の駅レストラン第2フェーズへ。新たなメニューとチームを作る
留寿都の冬は、特別な季節だ。道内最大のスキー場「ルスツリゾート」に国内外からスキーヤーが集まり、年間100万人以上の観光客のうち約8割が冬に訪れている。
初めて迎える冬の繁忙期。海さんはレストランにとって「第2フェーズ」と位置づけ、新たなメニュー開発とチーム作りに力を入れる。
現在のチームは20代が中心。札幌から移住したメンバーと地元出身のメンバーが協力しながら、日々のオペレーションを回している。閉店後は一緒に食事へ行くこともあり、距離が近く、良い意味で肩の力が抜けたチームだ。
一方で、飲食の現場経験が豊富なメンバーばかりではない。ピークタイムには手元に集中するあまり周囲が見えなくなってしまうことも。よりよい体験をお客様に提供するために、忙しくなるほど明るく元気に声を出し、「注文5つ入ったよ」「まず3つ麺茹でて」「あと20秒で麺いくよ。そのあと味噌2つね」と、全体を見渡しながらチームを動かす「指揮官」のような存在が必要だ。
観光拠点ならではの「食」のプロデュースから得る経験
道の駅ならではのミッションとそのやりがいは何か。
「道の駅の使命は観光で訪れた人に留寿都野菜の魅力を伝え、野菜を買ってもらうこと。そのためには生産者の方の目線に立って、野菜への知識や愛情を深めていかないといけない。そのうえでイベントを企画したり、目を惹くPOPを作ったりといった努力ができないと売れるものも売れなくなると思っています」
観光拠点である道の駅だからこそ、季節や天候、観光客の動向やトレンドに合わせた演出が求められる。産直コーナーとの連携や地元野菜を生かすメニューの開発など地元食材の魅せ方や伝え方まで関われるのが、この場所ならではの面白さだ。
地域の魅力を伝える拠点で、飲食店のオペレーション作りや観光トレンドに合わせたメニュー開発、イベント企画などさまざまな経験を得る機会がある。
「自分の芯を持ちながらも、地元の人の目線に立ったり観光客の目線に立ったり、TAISHI流に考えをシフトする柔軟性が必要になります。難しいとは思いますが、その分得られるものも多いです。この第2フェーズだから挑戦したい、という人をお待ちしています」