現在カナダ・アメリカ・メキシコの3カ国で熱戦が繰り広げられているFIFAワールドカップ2026。
テレビ画面を観ていて、私はある奇妙な違和感に襲われている。
ネイマールも、エムバペも、そして次世代を担う前線のストライカーたちも、ピッチを駆ける彼らの足元が一斉に「ピンク」なのだ。ナイキも、アディダスも、プーマも。メーカーの垣根を越えて、驚くほど同じ色が並んでいる。
理由は明快だ。
「緑のピッチで一番目立つ色は何か」「人間の動体視力が最も爆速で反応するカラーはどれか」を、各社が最先端のデータと科学で突き詰めた結果、同じ答えに行き着いた。いわゆる、トレンドとマーケティングの最適解。
でも、いちサッカーファンとして、私の胸の奥には少しだけ寂しさが残る。
かつて、漆黒のレザーに三本線だけが入ったアディダスを愛した職人がいた。
無駄な装飾を一切削ぎ落とし、ただピッチで最高の結果を出すためだけに革を研ぎ澄ます。
そのストイックな姿は、私たちのDNA(仕事訓)の根底に流れる、伝統的な「始末」の精神そのものだった。
しかし、現代のメーカーの「カラー」やプレイヤーの「独創性」は、
数値化された最適解の波に、綺麗に呑み込まれてしまった。
これと全く同じことが、今、私たちの生きるデジタル・IT業界の、それも企業の顔である「コーポレートサイト」でも起きている。
「一般的ないいね」という名の溺死
現代のコーポレートサイト制作の教科書を開けば、そこには「絶対的な正解」が書かれている。
- 画面最上部には、使い慣れたヘッダーメニューを置くこと。
- キービジュアル(KV)には、一瞬で事業内容が伝わる高解像度のアピール画像を置くこと。
- スクロールを促すために、アニメーションはこう配置すること。
確かに、一見すると素晴らしい。ユーザー迷子にならないし、コンバージョン率(CVR)のデータも綺麗に出るだろう。
けれど、世の中の企業のサイトを見渡してみてほしい。
右を向いても左を向いても、同じようなヘッダー、同じようなキャッチコピー、同じような無料素材の画像。
まるで、あのピッチを埋め尽くしたピンクのスパイクのように、
みんな「最適解」という名の安全な水の中に溺れてしまっている。
私たちは、そんな「一般的ないいね」だけを求めて、このものづくりの世界を選んだわけじゃない。
データが弾き出した正解をなぞるだけなら、それこそAIにプロンプトを1行投げれば、スマートで、誰からも文句の出ないコーポレートサイトが一瞬で出来上がる。
だけど、そこに作り手の「独創性」や、その企業が持つ「狂気にも似たこだわり」は宿るのだろうか。