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メンバーに聞いてみた|プロジェクトマネージャー せきぐち

omusubi不動産の紹介をすると「いろいろなバックグラウンドの人が働いていて面白いですね」と言っていただくことがよくあります。きっかけはそれぞれ違うけれど、「omusubi不動産」という会社に集い、同じ方向を目指して日々精進しています。

omusubi不動産の一番の魅力は、一緒に働いているひとりひとり。どんな人が、どんなことをしているのか。どうやってomusubi不動産にたどりつき、一見、ちょっと変わった不動産屋で働いてみようと思ったのか。この連載では、omusubi不動産の日常の様子を覗きながら、なかで働くスタッフに話を聞いていきます。


プロフィール
前職ではWebサイトやコンテンツのディレクターとしてプロジェクトマネジメントの経験を積んだ後、表現をする人を応援したいというモチベーションから独立。2018年omusubi不動産に参画。2020年より千葉県松戸市「科学と芸術の丘」で2020年よりディレクターを務める。omusubiではジャズ担当。


バレーボール選手の引退後、たどり着いたジャズの世界にハマる

――せっきーさんは、ジャズのピアノをやられていますよね。たしか始めたのは30歳のときだったような……。

せきぐち:そうですね。実は社会人まで実業団でバレーボールをやっていたんです。ただ、他の選手と一緒にプレーをしていくうちに、なんとなく天井が見えてきてしまって。肩を壊していたり、他にやりたいこともあったので、引退を決めました。

――そんな経歴があったのですね……! 初めて聞きました。

せきぐち:ずっとバレーボールに情熱を注いできたので、同じくらい夢中になれる趣味がないかなと探していたら、たまたまツテがあってとあるジャズのイベントに参加したんです。そしたら、それがもうめちゃくちゃかっこよくて! 「これだ! わたしもやりたい!」って胸が高鳴りました。

――ジャズと一言で言っても、さまざまな楽器で構成されていると思うのですが、そのなかでもなぜピアノだったんでしょうか。

せきぐち:ジャズって「セッション」の時間があるんです。ライブとは別に、楽器をやってる人たちが即興で入ってもいいよ、というものなんですが、観客席にいた人が、わたし以外全員ステージに上がったんですよ。目の前でみんなが心から楽しそうに演奏している間、わたしは何にもできなくて。それで、「いいな」「悔しい、やってみたい」って大騒ぎしていたら、ピアノの人が「じゃあ、ピアノやってみる?」って言ってくれたんです。だからピアノ(笑)。声をかけてくれた方がトランペットをやっていたら、トランペットだったかもしれないので、本当にふとしたきっかけからでした。

パリの本店でルブタンを買ったのに、心が動かされなかった

――夢中になれるものとしてジャズに出会い、お仕事はどんなことをされていたのでしょうか。

せきぐち:いわゆるOLで、営業事務をしていました。待遇もよかったし、スタートアップだけどおやすみも取りやすくて、働く環境としてはとても整っていたと思います。当時のわたしって、「これが幸せ」っていう正解があると考えていて、そのひとつの指標が「ルブタンをパリの本店で買うこと」だったんです(笑)。

――そうなんですか! 今のせっきーさんを知っていると、そういうふうに考えていた時期があったのは意外です。

せきぐち:で、行ったんですよ。パリのルブタンに。

――ええっ!(笑)

せきぐち:でも、いざ買ってみたら、心が動かされなかったんです。昔は夕焼けを見ただけでも感動できたのに。そもそも、ルブタンがめちゃくちゃ欲しかったわけでも、これを手に入れるために何かを頑張ったわけでもない。そのときに、ようやく「わたしがほんとうにやりたいことってなんだろう?」って自分に目を向けられるようになったんです。

――誰かにとっての幸せの正解を求めるのではなく。

せきぐち:そうです。それで、進学する際に大学かグラフィックデザインの専門学校へ行くか迷ったことを思い出して、週末に専門学校へ通うようになりました。

アルバイトスタッフでかかわりはじめて、科学と芸術の丘のディレクターに

――その後デザインの仕事に……?

せきぐち:そうですね。ただ、意匠だけじゃなく「プロジェクトデザイン」という考え方のもと実践している会社があり、そこにすごく惹かれて入社しました。

――そこではどんなことをされていたんでしょうか?

せきぐち:新規事業や新しいことをやりたい会社の実現化をするために、制作やディレクションを行っていました。具体的にわたしはWebの中身のコンテンツをつくったり、編集業務を担当していましたね。我が子のように大事にプロジェクトを育てていくのですが、やはりクライアントワークなので、最後は手放さないといけなくなるんです。本当はそこからが大事だと思っていたので、次第に現場の方へ行きたいなと思うようになりました。

――たしか、せっかく手塩をかけて育てても、すぐに手放さないといけないのはちょっと寂しいですね。

せきぐち:Webの制作にかかわるのはすごくたのしかったので、自社でメディアを運営しているような事業会社へ転職しようと思い、一社だけ受けました。でも、落ちてしまって。そこから、他にやりたいこともないし、「自分で仕事ってとれるのかな……?」って興味本位でフリーランスに転身することにしました。

――その時期にomusubiと出会ったんですよね。

せきぐち:はい、当時omusubiから業務委託を引き受けていた知人が紹介してくれて。ちょうど科学と芸術の丘が始まるタイミングで、ディレクター経験者を探していたようだったんです。ただ、不動産屋さんで何ができるかもわからないし、omusubiがどういう会社かもまだよくわからなかったので、最初は時給制のバイトでかかわりはじめました。オフィスにかかってくる電話の対応をしたり、不動産の事務的なことをやったり。

せきぐち:その後、隠居屋、One Table、せんぱく工舎の運営業務に携わるようになって、学芸大学や芸大寮のプロジェクトにもかかわったりもしていたんですが、科学と芸術の丘の時期はその業務にフルコミットしないといけなくなり、科学と芸術の丘のディレクターとしての仕事に専念するようになりました。

――イベントの準備をしているだけで、あっという間に一年が過ぎてしまうくらい準備が大変ですよね……。

せきぐち:ほんとうに! 最初はこんなに芸術祭にフルコミットすることになるとは思ってなかったんですけどね(笑)。

――行政の方と一緒にお仕事をする大変さもきっとあると思うんですが、そのあたりはどうでしたか?

せきぐち:普通は行政の方と一緒に何かを実施するのってもっと大変だと思うんですよ。でも、先人の方々が昔からアートの取り組みをすでに長い期間取り組んでいて、PARADISCE AIRが10年間松戸で活動をしてたりとか、「アルスエレクトロニカと戸定邸で国際フェスティバルをやります」って言っても受け入れられる土壌ができていたんだろうなと思っています。それこそ、戸定邸を建てた徳川昭武さんもヨーロッパで見た最先端の科学や芸術を実験していた歴史があるんですよね。だから、その点では苦労を感じるようなことはなかったですね。市の方にも「せきぐちさん、もっとやっちゃってください!」って言われるぐらいですから(笑)。

おもしろい個人商店が集まり、アートイベントを受け入れる土壌のある松戸だからこそ、「科学と芸術の丘」が成り立っている

――そういえば今年の科学と芸術の丘は、特にまちの方がたくさん参画してくださっているなと感じました。

せきぐち:科学と芸術の丘を、まちの人たちが自分たちの祭りだと思ってくれるといいなと思っていたので、今年は企画段階から入ってもらっていました。わたしが初めて松戸に降り立ったときには、駅前とか駅ビルしかわからなかったんですが、実は個性のある面白いお店がたくさんあるんですよね。宝箱みたいな老舗家庭用品店さんとか、パンがジュエリーケースみたいなショーケースに運ばれて出てくるパン屋さんとか、死生観について考えるお花屋さん、とか。

――それはおかやま生花店さんだ(笑)。

せきぐち:当たりです(笑)。松戸って、きっと東京の人にとっては、ふらっとくる場所ではないと思うんです。だけど、科学と芸術の丘を通じて、「松戸ってこんなに面白いお店が多いんだ」とか「面白いまちだな」って感じてもらえる声を聞くととてもうれしいですね。

――わたしも都内に住んでいて、これまで松戸に来たことはほとんどなかったのですが、通えば通うほど気になるお店が増えるまちだなと思っています。今年で5回目の開催でしたが、続けることで感じる課題はありますか?

せきぐち:科学と芸術の丘はイベントなので、どれだけ時間をかけても、二日限りでその場はなくなってしまいます。それを「どうやって日常に残すか」「日常と非日常の循環って?」っていうのが、今年の議論としてあがっていました。

せきぐち:その取り組みのひとつにPARADISE AIRに来たアーティストの方に私たちがつながりのあるお店をご紹介することで、今後もアーティストは発表の機会を得て、お店はアート作品を店内に展示ができるといったいい関係性が続いたら嬉しいなと思っています。過去やった空き家を使った展示の機会も作れたらいいですよね。世界中で活躍しているアーティストやサイエンティスト、アカデミックな方々ともご一緒できる機会なので、さらに新しい事業や取り組みをしたい個人から大手企業の方々とも良い形で繋いでいける機会に成長していけたらいいなと思っています。

――科学と芸術の丘で、これからやってみたいことがあればぜひ教えてください。

せきぐち:アートマネジメントの勉強をしていると、文化やアートがいかに「人の幸福度」や「生きがい」「感性」にいかに影響があるかということを学びますし、自分自身も実体験として経験しています。科学と芸術の丘は、いろんな奇跡が積み重なってできていることなので、よりいいかたちで継続していきたいですね。

せきぐち:今年、展示いただいたアーティストのひとりであるMatthew Waldmanさんの作品を見て、ちっちゃい女の子が「これ血管みたい!納豆かな〜?」とすごく的を得た感想を自由に発言した後に、「これなんですか?」ってMatthew先生に直接聞いている場面に立ち会って、すごくいいなと思ったんです。子どもの頃からいろんな生き方をしている人に出会ったり、さまざまな感性に触れる機会があることで、世界が広がるはずだから。こういった小さな接点を、これからもできる範囲でつくっていきたいです。


取材・撮影=ひらいめぐみ



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