本村での暮らしを伝えるウェブサイト「きなりと」。
そこでご紹介している後岡さんについて、ここでもご紹介します。
下北山村の村民さんの雰囲気を感じてもらえたら嬉しいです。
この村で生まれた。
出生は下北山村大字浦向。じいちゃんとばあちゃんとじいちゃんの姉さん、両親と弟妹の8人の拡大家族。昔はどこの家も家族が多かった。父親の転勤で保育園の卒園と同時に家族5人で橿原市へ引っ越すことになり、年寄りだけがこの村に残った。私と弟は、小学生から中学生までの夏休みをじいちゃんとばあちゃんが住む浦向の家で過ごした。
毎日のように家の下の川で近所の子どもたちと冷たい水に浸かり、唇が青くなるまで夢中で川魚やウナギを捕っていた。奥地の墓の斜面では木馬(きんま)遊びも楽しんだ。暗くなるとカブト虫を捕まえに、街灯という街灯を弟と夜遅くまで回った。夏休みの宿題もあったが遊び惚けていた。
夏休みも終わりが近づくと、じいちゃんが二人分の宿題を手伝ってくれた。特に日記が大変で、今から思えばいい加減な内容になっていたと思う。私たち兄弟の記憶には、子どもの頃に下北山村で過ごした夏の思い出が残っている。大人になってからも家族でよく川遊びに行った。
チャンスがやってきた。
現在は下北山村で空き家の相談員の仕事をしているが、前職時代は橿原に住み、大阪の広告代理店でポスターやTV、ラジオCMなどの制作に従事してきた。定年を迎え、延長雇用も選択できたが、60歳で退職して第二の人生を選んだ。退職後は建築を学び、地域づくり人材の養成塾にも1年間通った。DIYのスキルを身につけ、古民家に関わる仕事に就きたいと橿原・今井町の古民家改修も手伝いに行った。
そんな感じでなんやかんや3年程していたら、下北山村で空き家の相談員の仕事があると聞いた。ずっと村で何かしたいという気持ちがあったので、すぐに応募して、無事雇ってもらった。そして2022年8月、村に移住して仕事をはじめた。
村にはたくさんの空き家がある。所有者さんから空き家の相談を受けて、売買や賃貸物件としてホームページに掲載する。そして物件に興味ある方がいたら案内し、購入の意向があれば所有者さんとマッチングする。
仕事をするうえで心がけていることがある。所有者さんにとって、家や土地は先祖が残してくれた大切な宝ものであり、思い出もいっぱい詰まっている場所だ。それを手放す寂しさもあったり、親戚に対する後ろめたさもある。その点はいつも留意している。
下北山村もこのままだと人口は減る一方だろう。お年寄りは子どもや孫に帰って来てほしいという思いはあっても、中々口に出すのは難しい。
だから私は、まずは移住者さんが増えればいいと考えている。移住者さんで村のために協力している人たちがたくさんいる。そういう人たちの力を借りて、村が活気づけば、やがてUターンもしやすくなるはずだ。私が村に来てからお世話をした移住者さんも、村になじんで助力されている方もいる。これからの下北山村には住み続けてきた人の思いと移住者さんの助力のマッチングが必要で、また両者の協力も必要になってくる。
村民はどんな人が来るのか憂慮する。移住者さんもまた、地域に馴染めるかという懸念もある。人口800人弱の小さな村だからできることもある。両方がいい感じに交じり合って、みんなが豊かに幸せに暮らせる村になるといいなと思う。
移住を検討している方や村内で空き家をお持ちの方は、空き家相談窓口へお問い合わせいただきたい。
先日、ある契約が成立した際に購入者さんから「この家を大切にします」と言われて、所有者さんの不安げな顔が安堵の表情に変わったのを見た。私が村で仕事をしている間に空き家がすべて無くなることはないだろうが、この村が好きで大切に守りたいという人が一人二人と増えていったらいいなと思って、これからも頑張るつもりである。
ちなみに、この仕事をして良かったと思うことがある。それは、村には両親や私の幼少期を知っている人が今もいて、声をかけていただいたり、親切にしていただいたりすることだ。仕事でもプライベートでも、その人たちに私は凄く感謝している。同時に両親にもありがとうを言いたい。
やっぱり、この村いいな。
子どもの頃は自然は能動的だったが、歳を重ねてから感じる下北山村の自然は受動的だと住んでわかった。周囲を山に囲まれた緑豊かな地形。狭くて小さい青空もこの村らしい。
澄んだ清流にはアマゴやアユが泳ぐ。私は朝夕に玄関の椅子に座るのが好きだ。朝は正面の山に霧が創り出すアート作品が毎日のように楽しませてくれる。
夕方は鳥のさえずりや川のせせらぎ、特に夏はヒグラシの鳴き声が聞こえてきて郷愁を誘う。夏にはDIY作業などで暑くなるとすぐ下の川まで歩いて行って、服のまま浸かると涼しくなる。
家に野鳥のヤマガラがやってくる。人懐っこくて手から餌のヒマワリの種を食べる。可愛くてたまらない。ひとり暮らしでも自然と戯れて寂しくない。むしろ幸福感に包まれている。
村の良さはまだある。家には畑がある。近所のおばさんたちに指導してもらって耕作をはじめた。夏野菜のほか、伝統野菜の「下北春まな」は10月に種を蒔いて1~2月に収穫した。
村では正午と夕方に時刻を知らせてくれる。夕方、「♬カラスといっしょに帰りましょう」が流れると、途方もなくノスタルジックな気持ちになる。
父の幼馴染で96歳になる和田八郎さんと会うのも楽しみだ。父の少年時代の話を聞くのが目的のひとつ。
家の改修や音楽仲間との集いも楽しいし、アマゴ釣りやゴルフなども楽しい。一人暮らしで自炊が大変だろうと、食事も時々ご馳走になる。村の方にはいつも感謝している。
(中略)
下北山村の穏やかで温かい雰囲気が伝わりましたでしょうか?
続きや、他のエピソードは「きなりと」をぜひご覧ください。