プロフィール
1999年東京生まれ。2016年TIEにデザイナーとして加入。TIEでは実況解説として活動し、YouTubeの登録者数は約20万人を誇る。TIECLANのCEOに就任し、以後TIEプロチームの運営活動を主導する。趣味はバイク、モータースポーツ
■TIEの“映像センス”に衝撃を受けた中学生時代
――TIEとの出会いについて、教えていただけますか?
TIEを初めて知ったのは2013年頃、中学生のときです。ちょうど自作のパソコンを組んで、YouTubeでいろいろな動画を見ていた時期でした。そこで偶然見つけたのがTIEの動画で、すごく衝撃を受けました。プレイはもちろん、編集の完成度や全体の空気感が群を抜いていて、当時の僕にとっては本当にかっこよかったんです。
そこから、TIEのプレイヤーの動きを真似したり、自分でも動画を編集してYouTubeに投稿したりするようになりました。最初は完全に自己満足でしたが、やっているうちに少しずつTIEっぽい雰囲気が出せるようになって。TIEの切り抜きやハイライトも勝手作って投稿していました。
そういった活動をTIEの中の人に見てもらえて、2016年、僕が16歳のときにチームに誘っていただきました。当時のUIEはまだ法人ではなく、コミュニティベースの集まりという感じでした。
――チームに加わった後は、どのような形でチームに関わっていかれたのですか?
最初はデザイナーとして入りました。もともと動画編集が好きだったのもあって、After Effectsなどを使いながら、TIEのコンテンツに関わることができたのは本当に嬉しかったです。
そこから8年ほどはプレイヤーとして活動したり、配信をしたりと、立場を変えながらチームに関わってきました。その過程で、TIEをもっと大きな存在にできるんじゃないかという思いがどんどん強くなっていきました。
■「このままじゃ続かない」──TIEを法人化した理由
――TIEを法人化することを考えるようになった経緯と、実際にそれを実現されたときのことを教えてください
TIEでの活動が長くなるにつれて、このチームをもっと大きくしていける余地があると感じるようになっていきました。ただ、当時の体制はあくまで趣味やコミュニティの延長線上にあって、継続性や収益面を含めて、限界が見えてきていたんです。
選手や配信者が本気で取り組んでいる分、活動の基盤が不安定なままではいけないと思うようになりました。そういった体制面を整えるには、法人化が必要だと感じていましたが、チーム内にはそれを主導する人がいなかったんです。だったら、自分がやろうと決めました。
2023年、チームのリーダーに向けて法人化の提案をしました。思いつきで話しても伝わらないと思ったので、スライドを70枚ほど用意して、実際に自宅まで行ってプレゼンをしました。TIEは活動歴も長く、可能性もあるチームなので、このタイミングで一歩踏み出すべきだと熱心に話したのを覚えています。
その提案がきっかけで話が進み、2023年末にTIEを法人化することができました。
■デザイナーからチームの実務責任者へ
――法人化後、体制づくりはどのように進めていったんですか?
法人化してすぐの頃は、ほとんどの業務を一人で担当していました。経理や財務、スポンサー対応、SNS運用、選手のマネジメント、映像制作まで、自分ができることは全部やっていました。
もちろん、すぐに限界がきたので、資金調達を行った上で少しずつ体制を整えていきました。現在はコアメンバーが3人いて、そこにタレントやスタッフを含めて13人ほどの規模で活動しています。
自分の役割としては、バックオフィスの管理、営業、そしてクリエイティブディレクションです。もともとデザイナーとして入ったこともあり、クリエイティブの部分は今も自分が責任を持って全体を見ています。
■340万人に届く発信力と、世界を目指す選手たち
――現在のTIECLANの事業構成についても教えていただきたいです
TIECLANは現在、選手部門とストリーマー部門の二軸で構成されています。
選手部門では、APEX Legendsを中心に活動しており、「Esports World Cup 2024」や「ALGS: APAC North Pro League」といった主要大会にも出場しています。競技性の高い場で成果を出していくことを目指して、日々の練習や体制づくりにも力を入れています。
一方、ストリーマー部門はTIECLANEの中でもかなり大きな柱です。合計で340万人以上のフォロワーを持つストリーマーたちが所属しており、特にAPEX界隈では強い影響力を持っていると思います。
――TIECLANが取り組んでいる“カジュアル層へのアプローチ”には、どのような狙いがあるのでしょうか?
今のeスポーツ業界は、コアな競技ファンに向けたコンテンツが中心になっています。でも、実際にゲームをしている人の大多数はカジュアル層です。そこに対してアプローチできていないのが、業界全体の課題だと思っています。
TIECLANとしては、そのギャップを埋められる存在になりたいと思っています。コアとカジュアルの間に立って、ゲームの楽しさや選手の魅力をもっと広く伝えていくことで、eスポーツ全体の裾野を広げていけたらと考えています。
■フラットでスピーディな、少人数チームの強み
――TIECLANの中で、特に大切にしている価値観やカルチャーはありますか?
一番大きいのは、自由度の高さだと思っています。やりたい企画があったときに、すぐに動ける柔軟さがあること。それがTIECLANの強みでもあります。
大きな組織になると、何かやろうと思っても段階を踏んで承認を取る必要があったりして、動きが鈍くなりがちです。でもTIECLANは、少人数でフラットな組織なので、「やりたい」と言った人がすぐに動けるし、周りも協力しやすい。スピード感のある環境だと思います。
それと、メンバーの年齢が近いこともあって、コミュニケーションはすごくフランクです。話し合いの中から自然に企画が生まれることも多いですね。Slackで雑談をしていたらそのまま企画会議になる、みたいなこともよくあります。
――所属しているメンバーについても教えていただけますか?
TIECLANの中心になっているのは、基本的に20代前半のメンバーたちです。今はコアメンバーが3人いて、業務委託やタレントを含めると全部で13人ほどが活動しています。
年齢が近いというのもあるんですが、それ以上に、「こうしたい」という考えやビジョンを持っている人が多いです。しっかり自分で考えて動ける人ばかりなので、方向性を決めたあとはそれぞれが自然と自分の役割を果たしていくような動き方ができています。
■“TIEから広げる”eスポーツの未来
――今後、TIECLANとして実現していきたいことを教えてください
長期的に見て、eスポーツという分野にはまだまだ成長の余地があると思っています。特に、ゲームを当たり前にプレイする時代が進んでいく中で、それを観戦したり応援したりする文化もより一般的になっていくはずです。
そうなったとき、TIECLANはその“つなぎ役”でありたいと考えています。コアなゲーマーだけでなく、もっとカジュアルにゲームを楽しむ人たちにとっても身近な存在であること。そうした人たちに「eスポーツってこんなに面白いんだ」と感じてもらえるような入り口を作っていきたいです。
ストリーマーとして活動しているメンバーにも、できるだけ自由に、自分のスタイルで発信してもらえるようにサポートしていきたいですし、選手に対しては世界大会で勝てるような体制をつくっていくのが当面の目標です。
――ご自身の目標についてはいかがでしょうか?
最終的には、TIEを世界一のチームにすることです。それが今も変わらない一番の目標です。
10年間このチームに関わってきて、自分の時間もエネルギーもすべて注いできました。だからというのもありますが、何よりこのチームに対する思い入れが強いんです。理念というか、「ここを一番にしたい」という気持ちが原動力になっています。
――最後に、TIECLANに興味を持っている方に向けてメッセージをお願いします!
eスポーツは、身体的なハンディキャップがある人でも楽しめるし、国を超えて人とつながれるスポーツです。だからこそ、もっと広く、多様な人に届く形にしたいと思っています。
eスポーツが好きで、TIEというチームを一緒に大きくしたいと思ってくださる方がいれば、ぜひ来ていただきたいです。まだまだこれからの組織なので、挑戦できることも多いですし、自分の力を試せる環境だと思います。