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医者として、二児の母として。「どんな子どもにも、明るい未来と幸せに生きる権利を」Patientricity MedPartnersが目指す、患者主体の優しい医療とは(前編)

―これまでの歩みを教えてください。

高校卒業後に単身でカナダに留学しました。私は当時、強豪校でバスケに没頭していたのですが、周りは実業団への内定や名門大学へのスポーツ推薦など華々しい進路が決まっていました。一方で、私には行く当てもなく、まさに人生のどん底。誰も私のことを知らない環境で一からやり直したいという思いに駆られて、その中でたまたま選んだ先がカナダでした。

カナダに留学中は本当に苦難ばかりでした!言葉も何も通じない、頼る知り合いもいない、1990年代後半は今ほどインターネットが発達しておらず、情報収集はほぼ本や電話での問い合わせ、言葉が通じないので本当にフラストレーションの連続でした。

しかし留学を決めたのはこの私。せっかくカナダに来たのなら何か達成しなければと、必死に勉強をしました。そこで目指したのが医学部です。私はカナダの大学在学中に日本の医学部試験を受け、学士編入学をつかみ取りました。実はこれ、高校から医学部に進むより競争率が高いと言われていました。カナダに留学するまで勉強した事がなかったので、当時は本当に、必死でした。

将来は、一番重篤な患者さんをも診られる医師を目指し、集中治療を極めるため大学病院で勤務していました。次第に自身が苦労した留学経験が生かしきれない医療現場に焦りが募り、自身の過去の経験を活かしながら、目の前の患者さんだけでなく、もっと多くの患者さんの役に立ちたい。同時に、医療業界に大きなインパクトを残せる仕事がないか模索した結果が、医薬品業界でした。いくつかのグローバル外資・内資企業を経て、30代で会社のリーダーシップを担うようになりましたが、2018年末に退職をしました。

―周りから見たら順調なキャリア。なぜ辞めてしまったのですか?

患者さんが主語の、優しい医療を実現させたかったからです。

医師として臨床現場で働いていた時、毎日のように患者さんとの対話がありました。彼らの辛い心の内や苦しい闘病生活を間近に見てきました。一人一人の患者さんに唯一無二のドラマがありました。一方、医薬品業界で働いていた時は、革新的な新薬が開発され患者さんに届くまでの工程を見てきました。

そこで生まれたのは、「なぜ、患者さんのための医療なのに患者さんの声が製薬会社へ届かないのだろう」「なぜ医療を提供する側の都合で薬が作られているのだろう」という疑問。

もちろん製薬会社もビジネスなので、利益を創出する必要があります。確かにそうなのですが、たとえ医薬品の改良の依頼やクレームが患者さんから寄せられても、事業戦略とそぐわない場合、リソースや予算を割り当てず意図的に改良しない現状を目の当たりにし、憤りさえ感じました。

私が目指しているのは、患者さん一人ひとりに寄り添い、その患者さんが主語の医療を届けられる、優しい医療の世界です。ビジネス主体の組織にいてはこの目標は実現できないと思い、特定の製薬会社で働く事を辞め、第三者として製薬業界を立て直そうと決意しPatientricity MedPartnersを立ち上げました。

―今の医薬品業界の現状を教えてください

多くの人が必要とするコモンディジーズ(=高血圧や糖尿病など一般的な慢性疾患)に対する医薬品は従来、大手製薬会社により開発されてきたため、飽和状態にありました。そんな中、ここ15年位の間にその流れは変わりました。欧米のベンチャー企業がニッチな領域の新薬開発をすることが増えたのです。これはとても素晴らしい変化です。珍しい病に苦しむ人は欧米だけでなくこの日本にも数多くいます。そんな彼らの希望となる新薬開発が徐々に増え始めました。

しかし、その新薬はまだ彼らに届ききっていません。通常、欧米で開発された新薬は日本の製薬会社と業務提携、もしくは欧米ベンチャー企業が大手製薬会社に買収されたのちに日本で開発、その後患者さんのもとに届きます。

この新薬がニッチな領域のものとなると、更に日本での新薬開発に時間や難しさを要します。希少疾患の場合、日本で販売した際の採算性がつかず開発しづらいからです。

―そんな現状に、Patientricity MedPartnersはどう切り込むのでしょうか

日本での医薬品開発や販売に関してノウハウをもっていない海外のベンチャー企業に対し、日本に進出するための事業戦略といったコンサルティングを提供しています。彼らに1日でも早く日本に進出してもらうことで、日本の患者さんにいち早く必要な医薬品を届けることが叶います。特にPatientricity MedPartnersでは、希少疾患や小児疾患といった、欧米に比べ日本での開発が遅れ難しい領域に注力し、未承認薬のドラッグ・ラグの問題を解消することを目指しています。

(後編に続く)

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