メガネのパリミキが大胆なブランド戦略をうっていることを知り、三城ホールディングス澤田社長にお話を伺いました。
詳しくは是非ともこのインタビュー記事を読んでいただきたいのですが、ここではパリミキがどんな改革を成し遂げたのか、ポイントを絞ってまとめたいと思います。
いま、パリミキが若者に人気って知っていました?
みなさんはパリミキと聞くと、どんなイメージを思い浮かべますか?
パリミキは、僕のような40歳を過ぎた人間にはとても馴染み深いブランドです。関東近郊の国道沿いに「補聴器」という文字とともにパリミキの店舗があったイメージがこびりついています。
パリミキは約90年の歴史を持つ老舗メガネチェーン店。それが、2016年に澤田将広氏が新社長に就任した頃から、「エンターテインメント」を軸に大胆なブランド転換を行ったのです。
それは、国道沿いにあった「補聴器」の文字のそれとは大きく違うイメージの転換です。
これが渋谷店。公園通り、タワレコの向かいという好立地にあり、若いお客さんで賑わっていました。僕もたまたまフラッと立ち寄って買い物をしたのですが、正直、紙袋にPARIS MIKIと買いてあるのを見るまでパリミキだと気付きませんでした(笑)。
若返りに成功!渋谷店の売上は2.5倍に!
ブランド転換の背景には、メガネの市場規模の縮小や、JINSやZoffといったコンペティターの動向があったかもしれません。
ただ結果として一番大事なことは、リブランディングによって売上が上がり、業績自体が上がったことだと思います。
パリミキはまず、ターゲットを若者にシフトしました。象徴的な街である渋谷店にフォーカスし、エンターテインメントをコンセプトに「50年代アメリカンミッドセンチュリー」という新鮮なスタイルを導入。
やるなら突き抜けてやろうと、本物のジュークボックス、ヴィンテージのギターやオートバイなどを海外のオークションやアンティーク店で取り揃えて、当時のカルチャーを徹底的に再現していったそうです。
これがヒットしました。
若者には新鮮なイメージとして映り、高齢に差し掛かった世代には懐かしく迎えられたのです。結果として、渋谷店の売上は年間130%の伸び率で増え続け、5年後にはなんと、2.5倍に達しました。
エンターテインメントに振り切ることで、ファッションとしてのメガネの需要を高める
渋谷店はもともとレイバンがよく売れる店だったそうですが、50年代アメリカンミッドセンチュリーというスタイルはサングラスの売上にもつながったようです。
つまり、目が悪くなったところを矯正するためのメガネではなく、ファッションとしてのメガネの需要を高めたということ。
この20年をみても、目が悪くなったところを矯正するという市場はコンペティターが増えたといえます。コンタクトレンズやレーシックなど新たな矯正ツールの存在が増したからです。
それを受けて、JINSはメガネを集中するためのツールとしてみたり、PCに対応するためのものにしてみたりと、視点を変えて新たな提案をすることで違う需要を生み出そうとしました。
パリミキは渋谷店で言うならば、50年代アメリカンミッドセンチュリーというスタイルを提案することで、その幅を広げたと言えるのではないでしょうか。
ブランド転換で離職率も低下!求人募集への応募数も急増
もう一つ、エンターテインメントをコンセプトにブランドチェンジした利点があると思います。
それは人材です。
パリミキの店舗にいくと、スタッフが実に楽しそうに働いているのが印象的でした。接客が気持ちよく感じられるのは、彼らが心から楽しんでいるのがわかるからのような気もしてきます。
また、社長がスタッフから愛されているのが伝わってきます。スタッフは「澤田さん」と親しげに社長を呼び、社長自身が店舗のソファでギターを弾いていることもあるのだとか。
インタビューで澤田社長が「ネクタイを外させるのにもひと苦労した」と振り返るように、最初はスーツから私服に移行するだけで違和感があったというスタッフたち。しかし今ではスタッフが自由な服装で、社長と気軽に話ができるようになりました。
もっといえば、店舗内にあるライブスペースでセッションできるという通常の業務では考えられないようなコミュニケーションが生まれています。
多くの社長が人材のことに頭を悩ませる昨今において、このアドバンテージは大きいのではないかと思うのです。
実際、同社の若いスタッフの離職率は下がり、求人募集への応募者数も増加しているそうです。
エンターテインメントをコンセプトにブランドチェンジすることで、売上ジャンルに幅を持たせ、人材の募集やモチベーションを上げることに成功した。それが業績向上につながっているのではないかと思いました。
それにしても、澤田社長は気さくでかっこよくて、クリエイティブを自身で主導しながら業績向上させているスーパーマンみたいな方でした(笑)。
澤田社長のコメントには、ブランディングやマーケティング戦略を考える上でのヒントとなるエッセンスがいっぱい詰まっています。インタビュー記事、是非ご覧ください。