ブルーモ証券のSO—いま選べる最善
ブルーモ証券CFOの大部です。
採用面談では、ストックオプション(以下SO)に関する質問を受けることがよくあります。スタートアップへの参画を検討する候補者にとって、SOも判断材料として一定の比重を占めるからです。
ただ、面談の場で話せる時間には限りがあり、ブルーモ証券がそもそもSO制度をどう考えているかという背景までは、十分にお伝えしきれない部分があります。本記事では、その背景にあたる部分を書いています。
ブルーモ証券がSO制度に向き合う姿勢は、創業から変わっていません。
将来価値が見通せないからこそ、いま取り得る選択肢のなかで、できる限りメンバーのメリットが大きくなるよう、制度を設計し続けています。
SOの価値は、いま断定できるものではない
将来SOが1つあたりいくらの価値になるかは、企業価値の伸び、追加調達による希薄化、エグジットの形態やタイミングといった、複数の不確実な要因が組み合わさって初めて決まります。アーリーステージの段階では、いずれの要因についても輪郭がはっきりしていません。だからこそ、この問いに断定的に答えようとすればするほど、根拠は曖昧になっていきます。
したがってブルーモ証券では、SOの説明を、断定的な数字や情報に集約させて伝えるようなことはしません。いま説明できる部分(SO制度の仕組みや設計思想)と、事業の成長に委ねられる部分(最終的に生まれる経済価値)を、混同せず切り分けて伝えるようにしています。
採用面談で耳にするSOの説明は、「現金報酬は市場よりやや控えめだが、その分をSOで補填する」というものが典型的です。しかし、SOの将来価値は会社側でも見通せていない領域です。価値が定まらないなかでは、「補填」を成り立たせる根拠そのものが揺らぎます。候補者の側で深掘りをしても、確たる判断材料に行き着くことは多くありません。会社側が対外的に開示できる情報も限定的になりますし、「いくらになるのか」「何%の持分相当なのか」といった議論にあまり意味はありません。
SOを評価するうえで本当に問われるのは、その背後にある設計思想だと思います。経営陣が従業員への報酬をどう位置づけ、どのような優先順位でSO制度を組み立てているか――そうした思想は、行使条件、退職時やエグジット時の取り扱い、配分の方針といった細部に、おのずと表れてきます。提示される数字よりも、ディテールににじむ思想を読みに行く――そのほうが、SOにかぎらず会社を見極める精度は高くなるはずです。
将来価値が不確実だからこそ、制度として今できることに集中する
SOの経済価値の源泉は、事業価値が伸びるかどうかにあります。これは経営全体の仕事であり、SO制度の話とは別レイヤーの議論です。SO制度の役割はその先――事業価値の伸びを、実際に従業員へきちんと届けることにあります。
将来価値が不確実だからこそ、会社がSO制度として集中すべきは、この「届ける設計」の部分です。既存株主との契約や税制といった現時点の前提のもとで、個別の条件ごとに、メンバーのメリットが大きくなる選択肢を可能な限り取っていきます。
SOが将来いくらになるかをいま約束することはできません。しかし、価値が生まれたときに、それが一緒に挑戦してきたメンバーにきちんと届く形になっているかどうかは、いまの選択で決まります。ブルーモ証券がSO制度に対して負っている責任は、ここにあります。そしてこの責任は、設計時点で終わらず、価値が現実になる将来まで及びます。
今回の制度に込めた考え方
いま運用しているSOは、2025年に信託型から切り替えた税制適格SOです。
設計に込めた軸は、これまでと変わっていません。取れる選択肢のなかで、メンバーのメリットが最大になる方を選ぶ、という方針です。
ブルーモ証券がSO制度を最初に導入したのは2022年で、当時は信託型を採用していました。
2023年5月に国税庁が信託型SOの権利行使時の経済的利益について給与所得課税の見解を示し、当初は想定していなかった税負担が、行使する従業員に発生しうる状態となりました。この状態のまま運用するべきではないと判断したのが、税制適格SOへの切替に踏み切った直接の理由です。信託型で付与済みだったポイントは、新SO発行時に合算したうえで同条件で付与し直しました。
税制適格SOには、行使価額・行使期間・年間限度額など、枠組み上の要件がいくつもあります。だからこそ、そうした要件のなかで「メンバーのメリットを大きくできる部分はどこか」を一つひとつ点検し、可能な範囲でメリットを大きくしていくのが、設計作業の中身になります。
たとえば、行使価額は1円に設定しています。行使価額を低くするほどメンバーが手にする経済価値は大きくなりますが、その分、株式報酬費用が増えるというトレードオフがあります。アーリーステージのいまはこの財務インパクトが相対的に軽微なため、メンバーのメリットを最大化する側に倒した判断です。行使期間は最長15年で、これは設立5年未満のスタートアップに限り認められる例外規定です。ブルーモ証券が新制度を立ち上げたタイミングが、ちょうどこの要件を満たせる最後の局面だったので、制度変更に合わせてこの15年特例を取り入れました。
個別条件の設計と並んで、誰にどう配るかという配分のポリシーも、SO制度の中身を大きく左右します。ブルーモ証券では、フルタイムで参加してくれたメンバー全員に開かれた仕組みとし、等級と貢献に応じた配分基準を整備しています。組織が成長してもメンバーへの付与余地が枯渇しないよう、向こう数年分のSO枠もあらかじめ確保しています。組織のどの段階で参加したメンバーにも、配分の余地がきちんと残されていることが、設計上の意図のひとつです。
特別な仕掛けがあるわけではありません。与えられた条件のなかで、メンバーのメリットが大きい選択を積み重ねた結果が、いまのブルーモ証券のSOです。
制度は変わりうる。でも判断軸は変えない
会社のフェーズ、外部環境、法制度、事業状況は、これから何度も変わっていきます。それに応じて、最適なSOの形も変わっていくはずです。今回の制度がそのまま続くとは考えていません。
ここ数年だけを見ても、SOを取り巻く環境は具体的に動いてきました。税制面では、令和6年度税制改正で税制適格SOの年間権利行使限度額が大幅に引き上げられ、スタートアップの実態に合った規模感でSOを設計できる余地が広がりました。政策面でも、2025年2月に経済産業省が「スタートアップの成長に向けたインセンティブ報酬ガイダンス」を公表するなど、SO設計を支える公的な参照軸が整いつつあります。流動化の側でも、2025年5月施行の改正金商法で未上場株セカンダリー取引の制度的な枠組みが整い、Nstockなど従業員・個人向けセカンダリープラットフォームの立ち上がりも見られます。これから先も、こうした動きは続いていくはずです。ブルーモ証券は、その変化に合わせて、SO制度を機動的かつ柔軟に見直していきます。
それでも、変えない判断軸があります。
そのときに取り得る選択肢のなかで、できる限りメンバーのメリットが大きくなる設計を選び続けるという基本方針は、これからも一貫させていきます。信託型から税制適格への切替で過去の付与分まで遡って手当てしたように、必要であれば、同じやり方で制度を見直していきます。
おわりに:ブルーモ証券の未来を一緒につくる人へ
ブルーモ証券のSOは、会社の未来に参加するための仕組みです。
SOは、価値を約束するものではありません。
意味を持つかどうかは、これからつくる事業の成長に懸かっています。
それでも、価値が生まれたときに、それが一緒に挑戦したメンバーにきちんと届くように――そのための器として、いまの制度を設計しました。
ブルーモ証券は、日本の個人投資家ひとりひとりが自分にとって最適な資産運用を選べるよう、新しい選択肢を提供しています。
プロダクトラインの拡張とともに事業は急速に伸びていますが、ここはまだ通過点です。より多くの人に、より豊かな選択肢を届けるために、組織をさらに大きく育て、プロダクトを磨き続けていきます。この事業を一緒に大きく育てていける仲間を、探しています。これから集まるメンバーと、これから一緒につくる事業そのものが、ブルーモ証券のSO制度に本当の意味を与えていきます。
この記事が、ブルーモ証券に関心を持ってくださっている方にとって、ひとつの手がかりになれば幸いです。
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