2025年8月、コラボカフェ事業やタレントYouTube制作を手がけるジャパンコンテンツエンターテインメント(JCE)が、オリグレスグループに参画した。カフェコラボとエンタメ施設コラボ、それぞれの強みを持つ両社の統合により、IPコラボの提供企業数で業界日本一となる企業群が誕生した。
今回、「オリグレスカフェ」では、オリグレス代表取締役社長・吉武優さんとJCE代表取締役社長・針山大輔さんによる特別対談を実施。共通点も多いが、経営者としてのスタイルは対照的な二人が、M&Aの裏側から2040年に実現を目指すテーマパーク構想、そして総合エンターテインメント企業としての未来まで語り合った。
TBSから独立、7年目の決断。挑戦を重ねて見つけた新たなステージ
――まずは、針山さんのこれまでのキャリアについてお聞かせください。どのような経緯で現在の事業にたどり着いたのでしょうか?
針山:もともと私はテレビ番組の制作からキャリアをスタートして、TBS時代からルーティンワークは120%の結果を出してきたタイプでした。ただ、それだけでは物足りなさを感じて、常に新しいビジネス企画を立ち上げては、実行して成果を出す。そんな働き方をしてきたんです。
けれど、大組織という枠の中ではどうしても限界がある。「これは会社としてはやらせません」と言われる場面も出てきて、もっと自由に挑戦したいと思い、独立しました。
会社をつくって今年で7年になります。これまでずっと0を1にすることをやってきて、自分は企画をつくったり営業したりするのが得意なんだと感じてきました。ただ一方で、1を100にすること、つまり事業をスケールさせていく力はまだ足りないと気づいたんです。
資金調達やマネジメントの知識もまだ足りなくて、大きな壁にもぶつかりました。周りを見れば、年商2500億円を超える企業の経営者や上場を果たした友人もいる。そんな中で、自分もそうした目線の人たちと一緒に経営をしていけば、普通は10年かかることを3年でできるんじゃないかと思い始めたんです。
――経営を続ける中で、「誰かと組もう」と思うようになったのは、なにかきっかけがあったのでしょうか?
針山:一緒にやってきたメンバーがそれぞれの道を見つけて独立していったんです。一時はひとりになった時期もありました。「自分ひとりで食っていくだけなら全然問題ない」と思いつつも、会社として成長するためには、もう一段上の挑戦が必要だと痛感したんです。
そこから新たに取締役を迎えたり、採用に真剣に取り組んだり、組織づくりに真正面から取り組むようになりました。とはいえ、すべてをひとりでやるのは難しい。だからこそ、「どこかと組みたい」と思い、15社ほどと会いました。
最終的に5社から具体的な条件を提示していただいたのですが、そのうちの1社は上場企業を3つ持っている私の大親友が経営している会社でした。正直すごく葛藤しました。大親友とやるのも悪くない。でも最終的に私が選んだのは、オリグレスであり吉武さんでした。
理由のひとつは、やはり事業シナジーです。オリグレスがやっている事業と弊社が展開してきた領域には、重なる部分が多い。掛け合わせたときに大きな化学反応が起こせると感じました。
もうひとつの理由は、「吉武さんが上場して、鐘を鳴らす瞬間を一緒に見たい」と思ったからです。大親友と一緒にやるのは楽な選択肢。でも、それだと自分が甘えてしまう気がして。どうせなら、一番厳しく、自分を追い込める環境に身を置きたかった。いわば背水の陣を敷く覚悟で、オリグレスと組むことを決めました。
M&Aの話を進める中では、オリグレスの株主構成や事業内容も徹底的に調べました。広告商品やECサービスなど、弊社の強みとどう組み合わせられるか、どんどんアイデアが広がっていきましたね。
今はいい意味で負荷を感じながら、より大きな成果を目指して仕事に取り組めています。数字に対しても、以前よりずっとストイックになっていますね。
0→1型と1→10型。異なるタイプの経営者が生む、新たな推進力
――吉武さんと針山さんが出会ったきっかけを教えてください。
吉武:オリグレスでは今年、複数のM&Aを行いました。知人からの紹介や仲介会社など、さまざまなルートを開拓していく中で、針山さんの会社はとあるM&Aプラットフォーム上に情報が公開されていて、こちらから問い合わせて出会いました。
その掲載情報に「コラボカフェ」「元TBS」というキーワードがあって、これは絶対に親和性が高いはずだ、と。実際に話せば分かってもらえると確信して、すぐにアプローチしたんですが……最初は一度、断られたんですよ(笑)。
問い合わせたタイミングが少し遅くて、すでに他社と独占交渉の段階に入っていたんです。でも、数カ月後に「独占交渉が解除になったらしい」と風の噂で知って、もう一度問い合わせたんです。そこからトントン拍子に話が進みました。
――実際にお二人が話してみて、どんな印象を持たれましたか?
吉武:本当に共通点が多かったんです。私は電通出身、針山さんはTBS出身で、どちらもコンテンツビジネスやメディアに深く関わってきた。それに、オリグレスはエンタメ施設とのコラボを、針山さんはカフェコラボを手がけている。いくつも接点があって、話をしていても感覚的に馬が合うのをすぐに感じましたね。
とはいえ、経営者としてのタイプはまったく違います。針山さんは0→1型で、企画を立ち上げるのが得意。私はどちらかというと1→10型で、すでにある仕組みをファイナンスや組織構築力で拡張していくタイプ。
だから、私の役割は、針山さんがより事業に集中できる環境をつくることだと思っています。針山さんにしかできないことがたくさんあるので、存分に暴れてもらって突き抜けてもらいたい。針山さんが苦手なことはオリグレスが引き受け、両者ともできないことは、一緒に取り組んでできるようになる。その体制づくりを全力で進めたいですね。
針山:私は自分の役割が明確に分かっているので、その役割に徹して突き進めればと思っています。でも同時に、自分がいなくなっても会社が回る仕組みを作らなきゃいけないとも思っています。
小さな会社ではワンマン経営でも成立しますが、長期的に見るとそれでは限界がある。だから、自分の人脈ややり方をオリグレスの皆さんにも共有して、私がいなくてもちゃんと機能する体制を作っていきたいです。
すでに、新たな企画をオリグレスの皆さんと一緒に進めて、施設コラボに掛け合わせたりと、両社のリソースをつなぐ動きがどんどん進んでいます。これまでに積み上げてきた実績のある案件も多いので、数字の見通しも立っているし、今はかなりスピーディに動けている感覚がありますね。
数時間で知った「最高の針山大輔」 結婚式が証明した信頼の輪
――ところで、先日針山さんはご結婚されたそうですね。吉武さんも結婚式に参加されたとか。どんな雰囲気だったんですか?
吉武:針山さんの結婚式は本当にすごかったんですよ。あの日の光景に、針山さんという人のすべてが凝縮されていました。奥さまにも初めてお会いしましたし、列席している方々の顔ぶれが豪華で、大企業の社長クラスの方々や一流タレントが勢揃いしていたんです。演出も元テレビマンらしく、質が高く、最高のおもてなしでした。
結婚式って、本当に大切な人しか呼ばない場じゃないですか。その人たちがどんな面々で、どんな気持ちで針山さんを祝っているのか。一方、針山さんが皆さんをどう喜ばせようとしているのか。それらすべてが最上級で、針山さんのパーソナリティや人間関係がよく伝わってきました。「針山大輔って最高じゃん」と思いましたね。
針山:ありがとうございます(笑)。あの場は、ある意味で自分をプレゼンする機会でもあったと思っています。もちろん妻のための式ではあるんですが、私の中では7割くらい仕事のつもりで準備していました。
進行台本も自分で書いて、VTRの構成も考えて、「針山大輔ってどういう人間で、どういう仕事をしているのか」を2〜3時間で全部伝えられる場所にしたかった。列席してくれたゲストの方々を通して、自分の交友関係やこれまでの軌跡を見せられる。そんな自分という人間像をまるごと感じてもらえる場になったと思っています。
よく「あの有名人と仲がいい」と口では言う人はいますが、しっかりご祝儀を包んで、実際に結婚式に来てくれる人って、そう多くないと思うんです。だから、あの座席表を見たとき、「ああ、ちゃんとつながってきた人たちがここにいるな」と感じて、すごくうれしかったですね。
針山:そういう本気で関係を築いてきた方々と一緒に、これからもエンターテインメントをつくっていきたいです。失敗を恐れず、トライ&エラーを繰り返しながら、悩みも共有して、組織も売上も利益も大きくしていく。そんな成長のプロセスを、オリグレスの皆さんとともに歩んでいきたいと思っています。
そして目指す先は、やっぱり上場ですね。社員ひとりひとりにとっても、社会的に開かれた公明正大な会社になることは、大きなモチベーションになるはずです。
吉武:ありがとうございます。ただ、針山さんすみません、私は上場はできると確信しておりますので、そんなに高い目標だとはもう思っていません(笑)。
私の興味関心はすでにもっとその先に向いています。上場は通過点のひとつ。私がオリグレスを上場させたい理由は、富や名声のためじゃなくて、オリグレスグループに社会性をまとわせ、さらに大きく育てていくためです。あとは、私自身が正しい経営をできる人になりたいという思いもあります。
2040年のテーマパーク構想、夢から目標へ。「ホラ話を現実に変える」
――一緒に動かれてみて、お互いの考え方や事業への視点に、影響を受けた部分はありますか?
吉武:針山さんから大阪・関西万博のスペシャルチケットをいただいて行ったとき、自分の中で大きな気づきがありました。
オリグレスは、もともと「オリグレスパークス」という社名でスタートしたんです。創業時からテーマパークをつくるという構想を掲げていたものの、まったく形にできず、早々に挫折しました。創業時からいた社員からも「いつになったらつくるんですか?」と聞かれ、次第に離れていく人もいて……。その反省もあって、1年前の12月に「パークス」を外し、今の社名に変えました。そして今は、2040年からテーマパーク事業に再チャレンジするという時間軸に引き直しています。
先日、万博会場を訪れた際に、自分自身の成長を感じました。かつてはテーマパークをつくることがあまりに遠い存在で、「夢」としか思えなかった。ですが今回は、あのスケールを目の当たりにしても「夢」とは感じなかったんです。あと15年実績を積み上げ、ファイナンスや不動産を含めてこの先さらに総合的に力を磨いていけば、きっと実現できると思えました。今はもう、「夢」ではなく「目標」に変わりつつあります。
針山:新しいテーマパークをつくるなら、日本のIPで構成された場所にしたいですね。ディズニーもUSJも素晴らしいけれど、純ジャパンのコンテンツで勝負できる場所が、そろそろあってもいいと思うんです。日本が世界に誇るアニメやゲーム、キャラクター文化を核にした新しい形のエンターテインメントパーク。それを実現できたら、本当に面白いと思います。
テーマパークの構想も、早い段階で動かしていくべきだと思うんです。確かに2040年という大きな目標はありますが、そのベースとなる土台づくりは今から始められる。そして何より大事なのは、その夢を積極的に語ることだと思っています。
私は、いい意味でホラ吹きでいいと思っているんです。「そのホラ話、面白いね」と言ってくれる人がひとりでも増えたら、そこから現実が動き出す。それが私たちの仕事だと思っています。
――最後に、読者の皆さんへメッセージをお願いします。
針山:私自身、「総合エンターテインメント企業をつくりたい」という考え方は、吉武さんとまったく同じなんです。1日でも早く、外の人から「オリグレスは最強の総合エンターテインメント企業だ」と認めてもらえるように、実績を増やしていきたいと思っています。
ただ、それは私ひとりではできない。オリグレスグループの皆さんと一緒に、作っていくものだと思っています。みんなが楽しく働きながら、同時にこの厳しい世の中でちゃんと稼げるようになることが理想です。やっぱり数字に対する執着はとても大事で、その気持ちがなければ会社の成長も止まってしまう。だからこそ、メンバー全員が意欲的になれる環境をつくりたい。そのためのチャンスづくりや企画づくりを、私はこれからも日々やっていきたいと思っています。
吉武:今回のM&Aで針山さんのチームが加わったことにより、私たちが切れるカードが一気に増えました。私はそのカードを遠慮なく使っていきたいと思っていますし、針山さんも「どんどん使って」と言ってくれている。その関係性を大事にしながら、私自身も挑戦の幅をどんどん広げていきたいですね。
結婚式の話に戻りますけど、あの日の光景を見て改めて思ったんです。あの場には大物芸能人や大企業の社長クラスの方々が多く集まっていましたが、そうした影響力のある人たちほど、人間関係を本当に大切にしている。そして、そうした人たちと長く良好な関係を築ける針山さんは、やっぱり信頼に足る人なんだと。
みんなに祝福されながら、おもてなしの心で場を盛り上げる針山さんの姿を見て、「この人と組めて本当によかった」と思いました。私自身も、もっと精進して、針山さんに「一緒にやってよかった」と思ってもらえる未来を築いていきたいと思っています。