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株式会社GEOTRA 公式note|note
はじめに
みなさん、こんにちは!GEOTRAインターン生の百瀬です!
国土交通省では、土地・不動産・建設業に関する政策として地理空間情報に関する施策を様々施行しています。
近年、デジタル技術の進展により、人の動きや集積を捉えた「人流データ」が入手しやすくなっています。
人流データは都市計画や観光分野での活用のイメージが強いですが、防災対策、環境保全、地域経済の活性化など、行政のあらゆる分野において課題解決の手段として活用することが可能です。
しかし、こうしたデータ活用は一部企業や自治体で先行事例が見られるものの、全国的な普及には至っていないのが現状です。
全国の地方自治体を対象としたアンケートでは、特に小規模な自治体において、費用や人員、体制の問題により人流データ活用が進まないという声が散見されています。
そこで、国土交通省は令和7年3月、人流データ利活用事例集2025を公開しました。
この事例集では、以下の3点に焦点を当てて、地方自治体での事例が紹介されています。
- 人流データは具体的に何に使えるのか
- 費用やスキルなどの課題をどのように乗り越えたのか
- 規模の小さな自治体でも活用できる具体的なケーススタディ
本記事ではこの事例集の中から、人流データの活用事例を4つご紹介いたします。
事例集の概要と具体事例
今回取り上げている国土交通省の資料の中では、「体制などの工夫で活用を進めている事例」「小規模自治体でも活用し成果を上げている事例」「「使ってみる」から継続利用に進んでいる事例」「多様な部署での活用が進んでいる事例」のカテゴリーに分けて事例が紹介されています。
また、データ活用のヒントとして、人流データを活用している自治体の特徴や活用方法、活用の進め方などのアドバイスもまとめられています。
今回は、活用事例の各カテゴリーから1つずつ、具体的な事例を紹介します。
①体制などの工夫で活用を進めている事例ー福島県郡山市
■事業内容
福島県郡山市では、DX推進部署が取りまとめ役となり、担当課とデータ活用のマッチングやデータ解釈の手助けを実施することで、人流データ分析ツールによって全庁的に人流データの活用ができる環境を用意しました。
この中で、人流データによって行政センターの利用状況の可視化、分析を行い、各行政センターの所管事務などの適正性の検討を実施しました。
人流データだけでなく人口や事務の種類ごとの件数なども合わせて掲載することで、多角的に各行政センターの特徴を捉えられるようになりました(図1)。
図1 行政センターごとの利用状況
出典:人流データ利活用事例集 2025
■取り組んでよかったこと、注意点
取り組んでよかったこととして、議会への説明をデータに基づいて行えるようになったこと、現地調査の必要がなくなったことでデータ収集効率が上がり職員の業務負担軽減にもつながったことが挙げられていました。
一方、あくまでも「大きな傾向を把握する」ための手法であることを理解することの重要性が指摘されていました。
また、データの選択と適切なツール設定が難しいため、郡山市は、データコンサルとの頻繁な意見交換や庁内での知見共有によって理解を深めました。
■活用できた要因
郡山市で人流データを活用できた要因として、以下の4点が挙げられています。
- 人流データに完璧な精度を求めないこと
- トライアンドエラーを繰り返し一つの成功事例を作ってから横展開を目指したこと
- DXなど新たな取り組みに積極的な組織文化
- 具体的な活用目的を設定できたこと
特に、人流データはツールの1つに過ぎず、それを活用することで何を実現したいかという目的意識を明確にすることが重要であると報告書では指摘されています。
②小規模自治体でも活用し成果を上げている事例ー北海道倶知安町
■事業内容
北海道倶知安町では、観光地域づくり法人(DMO)を中心とした推進体制と宿泊税収入を活用することで、専門人材確保と継続利用を実現しました。
観光庁2020年実証事業「観光地域づくり法人による宿泊施設等と連携したデータ収集・分析事業」参加を契機に人流データの活用を開始し、主にニセコエリアの観光施策の検討に活用しています。
観光施策の具体例として、人流データと宿泊データを組み合わせて需要を分析し、循環バスの運行期間の設定やルート検討が挙げられています(図2)。
分析結果を元に、循環バスの路線数の増便、切り替え、有料バスを無料バスに統合しブランドの1本化を行い、観光客の利便性向上を図りました。
図2 無料循環バスのルート検討
出典:人流データ利活用事例集 2025
また、繁忙期と閑散期の人流データを分析し、MICE(※1)やイベントの実施時期検討、観光案内所の運営時間や人員配置の最適化に活用しています(図3)。
※1)MICEとは、MICE:企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、 学会等が行う国際会議 (Convention)、展示会・見本 市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字を使った造語 でこれらのイベントの総称
図3 観光案内所の人流分析
出典:人流データ利活用事例集 2025
■取り組んでよかったこと、注意点
人流データを継続して利用することで、冬季には曜日によらずインバウンド中心の長期滞在が多い一方、夏には日本人の土日祝利用がメインとなることが可視化されました。
これにより、インバウンドの方が平日利用も見込める利点があるなど、インバウンド観光促進の意義についても理解が深まったとのことです。
また、宿泊税のデータを組み合わせることで、より正確な観光統計の作成も可能になりました。
一方、人流データだけでは観光客と通勤・通学の区別が難しいこと、数字だけで比較すると誤りが生じる可能性があるため、データの見方や認識間違いをしないように注意する必要があることが注意点として挙げられていました。
■活用できた要因
倶知安町で人流データを活用できた要因として、以下の3点が挙げられています。
- 官民連携:DMOが中心となって推進し、行政は支援に徹する体制を構築したこと
- 人材確保:宿泊税収入を活用し、データ分析やDXに長けた人材を採用できる予算を確保したこと
- 関係者連携:DMOを中心に観光関連事業者が参画し、定期的にデータ活用や施策検討を行う協議の場を用意したこと
この中でもDMOを中心とした推進体制の構築が最大の成功要因と分析されています。
③「使ってみる」から継続利用に進んでいる事例ー山梨県
■事業内容
山梨県では、2024年に導入した富士山の登山規制に対し、人流データを用いて登山者動向調査分析を実施しました。
富士山は世界遺産登録時から過度な混雑が問題視されており(図4)、近年では危険な弾丸登山が大きな社会問題となりました。
対策として午後4時から翌朝3時までのゲート閉鎖、入山料徴収を導入しましたが、登山に関する規制前例はあまりなかったことから、今後の対応策検討のために人流データ分析による規制効果検証が行われました。
図4 富士山山頂付近の混雑
出典:人流データ利活用事例集 2025
分析の結果、最も混雑する山頂付近における滞在時間の短縮、弾丸登山の95%抑制など、規制の具体的な効果を可視化することができました(図5)。
図5 ピーク時の登頂所要時間の変化
出典:人流データ利活用事例集 2025
また、観光部門からの要望もあり、混雑緩和効果の検証に合わせて、登山前後の観光客の動向を追跡し、登山後の宿泊と日帰りの割合などを確認しました。
■取り組んでよかったこと、注意点
人流データの分析によって、曖昧な指標である「混雑状況」を可視化することができ、効果検証に大いに役立ったとされています。
また、登山規制は前例がないため、同様の取り組みをしている他自治体のモデルケースとなっている模様です。
一方、外国人登山客の分析を行う上で十分なボリュームを取得できるアプリが限られており、今回は外国人データの精度に課題が残りました。
また、継続的なモニタリングを行う場合、安定的な予算確保が課題であるため、山梨県は入山料収入を活用することも検討しています。
■活用できた要因
山梨県で人流データを活用できた要因として、以下の3点が挙げられています。
- 具体的で明確な課題と目的設定
- 予算の確保
- 知事による規制導入表明による後押し
特に最大の成功要因として、大規模な弾丸登山という具体的な問題に対し、「規制効果の検証と政策立案」という明確な目的があった点が挙げられています。
④多様な部署での活用が進んでいる事例ー愛知県
■事業内容
愛知県では主に産業振興課次世代産業室、観光振興課の2部署が、それぞれ異なる目的で人流データを活用しています。
各部署が独自予算で事業を実施し、予算規模や目的に応じて柔軟な活用方法を実現しています。
産業振興課次世代産業室では、2030年に向けた近未来の事業・サービスの先行実用化を目指す「あいちデジタルアイランドプロジェクト」を推進しています。
事業の一環として、中部国際空港(セントレア)とその周辺エリアにおいて、人流データを活用した実証実験を実施しました。
2023年度は、空港の商業エリアの人数や動きをヒートマップ化し、賑わい状況を可視化し、混雑していないエリアをプロジェクションロボットでリアルタイムに案内し、利用者の分散を図る実証実験を実施しました(図6)。
図6 中部国際空港での実証実験
出典:人流データ利活用事例集 2025
2024年度は、飛行機と鉄道の交通分担割合の可視化や、常滑市の観光施策の効果検証、大規模イベント時の交通行動分析を実施し、より具体的な課題解決に向けたデータ活用を進めています(図7)。
GEOTRAも人流データ提供や分析であいちデジタルアイランドプロジェクトに携わっており、2025年3月には報告会セミナーにて講演いたしました。
図7 常滑市でのデジタルスタンプラリー
出典:人流データ利活用事例集 2025
観光振興課では、観光デジタルマーケティングを推進するため、県と市町村が連携した人流データの活用を実施しています。
県と市町村との間で、同じ条件下でデータを共有・活用できる環境を整備し、観光スポットの来訪者属性分析を広告配信や新規事業の立案に活用しています。
■取り組んでよかったこと、注意点
あいちデジタルアイランドプロジェクトでは、これまで感覚的に捉えていた人流を可視化することで、取組みに生かせる可能性が見えてきた点が、地域のステークホルダーからも評価が高かったとのことです。
一方、データを取得することと、分析して施策に活用することは別問題であり、職員や市町村に対するデータ活用支援の必要性が指摘されています。
観光振興課では、県と市町村が同じ条件下でデータを活用できる環境を整備したことで、市町村間での情報共有や事例の横展開が進みました。
一方注意点として、「データは単独では十分な示唆を得られず、他の統計データや市町村独自の調査と組み合わせて解釈することで、意味がある」ということをしっかり伝えていくべきであることが挙げられました。
■活用できた要因
愛知県で人流データを活用できた要因として、以下の3点が挙げられています。
- それぞれの部署で、明確な目的と課題意識が存在していたこと
- 自主財源での実施が可能だったことで、事業の自由度を確保できたこと
- 市町村との勉強会や伴走支援、知見共有により、意識向上を図った
愛知県の事例の特徴は、「データありき」ではなく、具体的な政策課題の解決手段として データを活用している点にあります。
また、職員自身による分析を重視し、組織全体のデータ活用能力の向上を図っている点も特徴的です。
まとめ
ここまでご覧いただきありがとうございました。
本記事では、国土交通省が令和7年3月に発表した、人流データ利活用事例集2025の中から、幾つか事例をご紹介しました。
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