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"かっこいい経営者"はいらない

だいぶ前に、ある著名な経営者のインタビュー記事を読みました。

その経営者は「会社の立て直しや苦境におけるチャレンジに、モチベーションや達成感を感じる」と意気揚々と答えていました。その言葉に、強い違和感を感じたので、今でも覚えています。

なぜ、違和感を感じたかというと、私が思う経営者の仕事とは、難局に対して、かっこよく活躍することではない。それよりも、まずは、できるかぎり問題が起きないように、チームが苦境に陥らないように最善を尽くすことだと思っているからです。

同様のことは、ビジネス以外の世界にも言えます。例えば、手術で人を治す外科医の人は周 りから称賛を浴びやすいです。

一方、その裏で、予防医療などに尽力している目立たない人 たちも、社会にとって、大きな価値を生み出しているように私には思います。(例えば、タンザニアでお会いした山崎さんが携わられている、Community Nurse Companyさんの話を聞くと、非常に意義のある取り組みだなと感じました。)

コミュニティナース | 人とつながりまちを元気にする_Community Nurse CompanyCommunity Nurse Company 株式会社|コミュニティナースは、いつも地域の中にいて〝健康的なまちづくり〟community-nurse.jp

*大事な家族が手術で救われたこともあるので、外科医の人たちへの感謝と尊敬がある上で、予防医療に尽力されている方をハイライトしています。

立て直しはキレイごとじゃない

なぜ、問題が起きないように、チームが苦境に陥らないように、最善を尽くすべきだという想いがあるかというと、私自身のアメリカでの会社の立て直し経験が根底にあります。

私はタンザニアの事業に関わる前、3年ほど、アメリカで事業の立て直しを担当していました。

従業員の立場から言うと、立て直しは"消耗戦"です。

会社というものは、一度苦境におちいると、何もしなければ、下り坂を下るように状況が悪化します。その際に、下り坂を下ってくる会社を下で受け止め、押し返すのが従業員にとっての”立て直し”という仕事です。なので、その際に、外部から見て、業績が現状維持だったとしても、裏には、従業員の相当なハードワークがあります。

また、会社というものは、多くの利害関係者がいるのが、常です。問題が起き、業績が悪くなると、みんながこぞって状況を知りたがります。(よく分からないのですが、元々、事業にそんな興味がなかった人も登場しはじめます。)

こうしたアクションが”レポート”、”レポートのためのレポート”の時間の急激な増加に繋がります。こうして必死に下り坂にある会社を受け止めている現場の人たちが引き抜かれて、レポート作りに駆り出されるのです。

目の前の課題にチャレンジしたいのに、レポートのような後ろ向きな仕事量だけが増える。業績が悪いので、誰も評価されず、給料も上がらない。

そうした状況の中で、現場にいる人たちは消耗し、良い人から辞めていきます。そして、元から傍観している人、志を折られた人、身に余る高給をもらっている人だけが会社に残ります。

こうした経験が、立て直しのことを”消耗戦”と呼ぶ理由です。

こうした会社の問題というものは、突然発生するものではありません。問題が起きる何年も前から根本原因はあり、会社にストレスがかかった時に表面上に問題として現れるものだと思います。

だからこそ、”問題の根本原因を作らないこと”が重要になります。

問題の根本原因を作らないためには?

私の中で、思いついたことは大きく3つあります。

まず1つ目は、”やりきる文化を作ること”です。

やり残してきた課題が積み重なった結果が先ほど例に出した下り坂にある会社の重みです。だからこそ、やりきり、課題を将来に残さないことがまず重要です。

どんな仕事でも、やりきるまでに、何らかの問題や障壁に出くわします。そのため、”やりきる”ということは、問題を乗り越えることと同義です。そこに大きな価値があります。また副次的に、問題を乗り越える経験は、チームメンバーの成長にも繋がります。そういったところに文化が醸成されます。

また、向き合う事象の本質を思考し、シンプルにとらえて、やりきるべき課題を増やさないことも重要になります。こうしたやり切る文化さえあれば、問題の根本原因に育ちうる中途半端な課題を将来に残しません。

2つ目は”未来を見て仕事をする癖をつけること”です。

”未来を見て仕事をする”ということは、仕事の先をイメージし、描くことです。例えば、会社のホームページを作る仕事を任されたとして、そのホームページを完成させるところまでが自分の仕事と捉えるか、その作ったホームページが、公開後、こういう認知がされ、将来こういう展開になるという所まで、イメージを描くかで、大きく仕事のやり方が変わります。

その意識の差で、その仕事の賞味期限は大きく変わります。(余談ですが、未来をイメージすれば、その仕事の楽しさも変わり、仕事はもっと楽しくなります。) こうした未来へのイメージ力があれば、会社として問題が出てくる可能性は大幅に低くなるはずです。

3つ目は”間違った人を登用・配置しないこと”です。

これは非常に重要なポイントです。世の中には、無自覚に、下り坂に向かって、会社を蹴っている人もいます。また、こんな人よりはマシでも、会社として前進するために何をすべきかを分からず、チームメンバーを活躍させない上司もいます。

こうした尊敬できない上司の下では働きたくないので、良い人は嫌になって去っていきます。さらに残念なことに、ポンコツな上司はポンコツな人を登用し、増殖します。こうした人に関する問題に手をつけなければ、会社が間違った方向に進み、組織が壊れ、大きな問題の根っこが育っていきます。

こうした3つのことに気をつけることが、会社にとって、問題の根本原因を作らない文化を築くために重要だと思います。

未来思考で、現場でやりきる人を大切に

弊社は“新規事業”、”大企業とスタートアップのJV”というイメージから楽しそうな印象を一見受けるかもしれませんが、95%が泥臭い仕事です。

例えば、タンザニアで事業をスタートするための法人登記や銀行口座開設、輸出入の手続きだけでも、十分、骨が折れます。(チームメンバーの労働許可書を取ろうとしたら、中学校の成績証明書まで要求される国です。そのせいで、チームメンバーのオカンまでもが、巻き込まれて、子どもの中学時代の通信簿を必死に発掘しています。笑)

この事業で将来のお客さんが喜んでくれるものになるという未来を描き、現場でチームメンバーがこうした一歩一歩を積み重ねてくれているおかげで、事業の立ち上げが進んでいます。このように、事業を前に進め、本当の価値を生み出しているのは、経営者ではなく、現場のチームメンバーです。

未来を描きながら、目の前の小さなことをやり切ることができる人を、見逃さないように、会社として大切にしたいです。また、このように頑張ってくれているチームメンバーが、立て直しなどという苦しい想いをしないように、前を向いて、その力を存分に発揮できるように、私は経営者として以下のことに最善を尽くしていこうと思います。

1. やりきる文化を作るために、課題にチャレンジするチームメンバーの背中を押したり、活躍できる環境を整備すること。また、全く違う方向にいかないように、やりきる方向性を対話の中で確認すること。

2. 未来を見ながら仕事をするために、チームメンバーと対話しながら、ありたい将来の絵と道筋をクリアーにしていくこと。

3. 間違った人を登用・配置しないために、人を見る目を鍛えること。そして、人に関する問題は、避けたいテーマながらも、重要な仕事として、コミットすること。

この3つは私自身にとって、大切な経営テーマで、これからもずっと続いていくチャレンジです。”かっこいい仕事したいな〜”という甘い煩悩をふりはらい、日々地道に精進していきます。

追記

妻にいつもサムネイルを書いてもらっています。今回のnoteの原稿を読んでもらったあと、妻から、あんたがなりたい経営者っていうものは、"ジャムおじさん"じゃないのかと言われ、ハッとしました。笑

少々意味は違えど、本質的には、そんなような気がします。自分が目指すべきところは、"アンパンマン"ではなく、"ジャムおじさん"なのではないかと思っています。

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