東京から大館への移住を決断した20代のご夫婦、佐藤大紀(たいき)さん・叶子(かのこ)さんにお話を伺いました。 「会社の看板」ではなく「個人の力」で生きることを選んだお二人が、なぜ大館を選び、今どんな暮らしを送っているのか。そのリアルな声をお届けします。
―まずは、お二人の自己紹介をお願いします。
大紀さん: 東京都出身の佐藤大紀です。前職はプラントエンジニアとして工場を建設する仕事をしていました。実は以前、仕事の関係で大館市内の工場建設に携わっており、一昨年から去年にかけて1年ほど大館に住んでいたことがあります。そのご縁もあって、2025年の春から大館市の地域おこし協力隊として着任しました。
叶子さん: 青森県出身の佐藤叶子です。元々は保育士として働いていました。夫が大館に出張していた時期に結婚し、私も一緒に大館で暮らしていました。現在は夫と、愛犬である2頭の秋田犬、虎毛の「お殿水(おとのみず)」くんと赤毛の「甘露甘露(かんろかんろ)」ちゃんと一緒に大館市内の古民家で暮らしています。
―東京にマンションも購入されていたそうですが、なぜそこから「大館」「農業」「協力隊」という道を選んだのですか?
大紀さん: 大館の仕事が終わり東京に戻って会社員として働いている時に、「仕事って結局は『人 対 人』だな」と痛感したんです。東京の会社にいると、どうしても「会社の看板」で仕事をしてしまう。でも、もし会社がなくなった時、自分には何ができるだろう?と考えた時に、個人の力をつけたいと思いました。
また、農業従事者の高齢化を目の当たりにして、「美味しい野菜が食べられなくなる未来」が現実味を帯びてきたことも大きかったです。「いつかやりたい」ではなく「今やるしかない」と思い、就農への道を探し始めました。
叶子さん: 最初は「5年後くらいに農家になれたらいいね」なんて話していたんですけど、夫が東京に帰ってすぐに「もう無理かも、今やりたい」って(笑)。
私にとっても夫と新婚生活を送った大館はとても楽しかった思い出の場所でした。「大館ならまた楽しく暮らせるかも」という直感もあり、二つ返事で賛成しました。
―数ある自治体の中で、大館市を選んだ決め手は何でしたか?
大紀さん: 最初は関東近郊で探していたんですが、対応が少しドライで…(笑)。そんな時、東京で開催されていた移住フェアで大館市のブースを見つけました。担当の方(秋田県農業公社の方)の対応が驚くほど早くて丁寧で、すぐに比内地鶏農家でのインターンシップを組んでくれたんです。
叶子さん: インターンシップで出会った比内地鶏の農家さんや、先輩協力隊の方々が本当に温かかったのが決め手です。「おいでよ!」と歓迎してくれる空気感がすごくて。 実は、一度「予算の関係で採用できないかも」という話が出たことがあったんです。その時、インターンでお世話になった大館の企業さんや農家さんが、「こんなにやる気のある若者を逃すな!」と市長に直談判までしてくれて(笑)。その熱量に感動して、ここならやっていけると思いました。
―実際に住んでみて、大館での暮らしはいかがですか?
叶子さん: 一言で言うと「ノンストレス」です(笑)。東京も楽しかったけれど、今は穏やかな人たちに囲まれて、愛犬たちものびのび過ごせているのが一番の幸せですね。 大館は「秋田犬の里」だけあって、みんな犬に優しいんです。散歩しているだけで「立派だね」「可愛いね」と声をかけてもらえます。
大紀さん: 「田舎の人間関係は濃すぎて大変そう」という不安もありましたが、大館は距離感がちょうどいいんです。過干渉すぎず、でも困った時は助けてくれる。 住居に関しても、大型犬2頭と暮らせる物件がなくて困っていたところ、先輩協力隊の方が継承という形で古民家を紹介してくれました。人との繋がりに本当に助けられています。
―現在はどのような活動をされていますか?
大紀さん: 比内地鶏の農家さんの元で飼育研修を受けたり、食鳥処理場でお手伝いをしたりして養鶏を学んでいます。また、自宅でも比内地鶏を飼い始めました。生き物を扱うのは大変ですが、その分「生きる力」を感じられて面白いです。
叶子さん: 私たちは「農泊(民泊)」の活動もしています。最初は農業体験を提供する予定でしたが、今は自分たちの強みを活かして「秋田犬と触れ合える宿」として運営しています。 これがすごく好評で、全国や海外から「秋田犬に会いたい!」という方が来てくださるんです。リピーターになってくれる方もいて、自宅にいながら全国、時には海外の方とも交流できるのがとても楽しいですね。SNSを見て来てくれる方も多く、大館にはまだまだ可能性があると感じています。
―最後に、大館市地域おこし協力隊への応募を考えている方へメッセージをお願いします。
大紀さん: 大館は、先輩協力隊の皆さんがしっかりと土台を作ってくれているので、地域の方々の協力隊に対するイメージがすごく良いです。「よそ者」でも受け入れて応援してくれる土壌があるので、とても活動しやすい地域だと思います。
叶子さん: 迷っているなら、まずは一度、旅行でもいいので大館に来てみることをおすすめします!ネットの情報だけでは分からない、その土地の空気や人の温かさを肌で感じてみてください。
それに、協力隊という制度自体がすごく良いものだと感じています。3年間収入が保証されているという安心感があるからこそ、リスクを恐れずに新しいことに挑戦できます。「もし合わなければ方向転換もできる」と思えば、人生の“お試し期間”として飛び込んでみるのもアリなんじゃないかなって。
自分の直感は意外と当たります。私たちも「ここだ!」と思った直感を信じて来て、本当によかったです。大館には「やりたい」を応援してくれる仲間がたくさんいます。ぜひ一度、遊びに来てください!