肌年齢というあいまいな数字や、誰かの口コミに振り回されるのではなく、「顔に眠る情報」を科学して、一人ひとりの美と健康の習慣を変えていきたい──。
B-by-Cが掲げる「恋する100歳、働ける120歳」を、鏡から実現しようとしているのが「AIスマートミラー」です。
今回お話を聞いたのは、このAIスマートミラーの開発を牽引してきた取締役・黒田。
方眼紙と手作業から始まった測定技術の試行錯誤、何億円もの投資と失敗の連続、それでも「世界中のミラーを変えたい」と語る理由について、じっくり語ってもらいました。
B-by-Cがなぜここまでミラー事業にこだわるのか。
その背景にある想いと、これから一緒に挑戦したい未来を、ぜひ最後までご覧ください!
▼企業説明
「100歳でも恋を楽しめる社会や、120歳でも自分の力で誰かの役に立てる社会を実現する」というVISIONの元、IoT AIスマートミラー事業・COREFIT事業・アカデミー事業・Face Atelier事業を運営しています。
私たちの目標は、生涯現役で働く人を増やし、100歳でも恋ができたり、120歳でも働けてしまえるような社会を当たり前にすることです。現代社会は高齢化による多くの問題を抱えており、これらの問題を解決するために私たちは美容とAIの力を活用し、未病にアプローチしていきます。
B-by-C株式会社 取締役・CTO 黒田 祐二(くろだゆうじ)
京都大学工学部を卒業し、中小企業の経営支援やフランチャイズビジネスの展開を行うコンサルティング会社のベンチャー・リンクに新卒入社。美容室のコンサルティング事業部門に配属される。
2006年に同事業部はベンチャー・リンクの子会社となり、B-by-C株式会社が誕生。
その後、2009年2月にB-by-Cが独立。B-by-Cの商品開発と事業開発の責任者を担当。
ペン型美顔器のフェイスポインターやヘッドフォン型EMS美顔器のフェイスプレイヤー、AIスマートミラーの開発業務に携わる一方で、デザイン部門(バナー、HPのディレクション・作成)の業務にも幅広く関わる。
AIスマートミラーとは?
AIスマートミラーは、顔を撮影するだけで “今の顔の状態を正しく測り、必要なケア方法をその場で教えてくれる” 顔のインストラクターのようなプロダクトです。
やることはシンプルで、鏡とかスマホの前で写真を1枚撮るだけ。
それだけで、ほうれい線がどれくらい濃いかとか、頬がどれくらい下がってきてるかとか、フェイスラインがどれくらい崩れてるかとか、そういうのを全部数値で出します。
よく「肌」を測るサービスはあるんですけど、うちは肌を見てないんですよ。
見てるのは、顔の重心がどっちにどれだけズレてるかとか、歪みがどこから出てるかとか、要は顔そのものの構造です。
ここ、結構大事で。
たるみとかほうれい線って、シミみたいに「そこに線がある」わけじゃないんですよ。
影なんですよね。面積とか、位置とか、そういう話なんです。
肌がどう見えるかではなく、顔の重心がどの方向にどれだけ下がり、歪み、変位しているかを捉えるという、この領域に弊社は7〜8年かけて取り組んでいます。
現在は世界初のほうれい線だけでなくフェイスラインの角度まで評価する「6D」や、開発初期からある「4V」など、独自の測定指標を確立しています。
現在は2つの形で提供しています。
【ハードウェア版(ViEW=TECH®)】
鏡一体型のデバイス。顔を撮影することで、美しくなるためのヒントを得ることが出来る
【スマホ版(i=SCORE)】
スマホで撮るだけで測定でき、結果に応じて美しくなるためのヒントを得ることが出来る。
どちらも共通しているのは、“今の顔がどのような状態で、何をするとどのように良くなるのか” を具体的に教えてくれるという点です。
AIスマートミラーが誕生した背景
目の前のお客様の悩みを解決するために
ーそもそも、「AIスマートミラー」はどのような背景で生まれたのですか?
正直、スタートはすごくシンプルで。
「なんで、目の前のお客さんの悩みが解決しないんだろう?」
それだけなんです。
エステに行っても、しばらくすると元に戻ってしまうじゃないですか?
SNSで「これ良かったです」っていうのを真似しても、当たる人もいれば、全然変わらない人もいる。
そして、不思議なことに、ちゃんと美容を頑張っている人ほど、分からなくなっていくんですよね。
何が正解なのか分からない。情報はいっぱいあるのに、自分に合ってるかは分からない。
結果、美容難民みたいになっていく。
これって、個人の努力の問題ではなく、構造の問題だなと思います。
原因のひとつは、世の中にある美容の指標が、曖昧なことです。
肌年齢とか、水分量とか、一見ロジカルっぽいですけど、じゃあ「30歳の肌って何?」って聞かれると、実際に答えられますか?(笑)
これってなかなか答えられないんですよね。
不安になる数字ばかり出てきて、「では実際にはどうすればいいか」には誰も責任を持たない。
これ、結構ひどい構造だと思ってます。
だからこそ、誰かの成功体験をなぞるのではなくて、
その人の顔そのものを見て、その人なりの美しさのルールを数値にしようと考えました。
正直、美容業界では、あまりやられてこなかった領域です。でも、そこをやらない限り、根本的な解決にはならないと思ったんですよね。
その中で、研究を続けていく中で分かってきたのが、顔には印象を決める「頂点」がある、ということでした。
横から見たときのお顔のお山のてっぺんみたいなイメージです!これが、ちょっと下がるだけで、たるみとか、ほうれい線って一気に目立ってくる。
つまり、美しさって感覚の話ではなく、高さとか、向きとか、位置の話なんです。「なんとなく老けた」ではなく、「ここが何ミリ下がった」と説明できる世界なんです。
ただ、その頂点って、エステに月1回行ったり、化粧品を塗ったりするだけじゃ、正直変わらない。
体と同じで、毎日どう動かすかが大事なんですよね。顔も、筋肉をどう使うかの積み重ねでしか変わらない。
そこで私たちは、「その積み重ねを支える場所はどこか」を改めて考えました。
現代のファーストスクリーンはスマホになり、かつてのテレビのように人の時間はどんどん“画面”に奪われています。広告も情報も、この画面の奪い合いの上に成立している。では、まだ誰にも奪われていない時間はどこにあるのか。毎日、意識しなくても必ず向き合う場所はどこか。
そう考えたときに行き着いたのが「鏡」でした。
鏡そのものが測り、変化を示し、今日やるべき一歩をそっと導いてくれれば、人は初めて“自分の変化を自分でつくる”という体験を積み重ねられる。
そんな発想から、ミラーという形にたどり着いたのです。
原点:「方眼紙」から始まったプロダクト開発
ー「AIスマートミラー」の技術基盤は、どのようなアプローチから生まれたのでしょうか?
今でこそ「AI」とか「ディープラーニング」とか言ってますけど、スタートは、正直めちゃくちゃ泥臭いです。
開発を始めた当初、まだAI技術が今ほど発展していなかった頃、私たちがどうしていたか。
写真をプリントして、その上に透明な方眼紙を重ね、手作業で点を打っていたんです。
開発の指針となったのは、AIスマートミラーの技術と理論の開発者であり、上級執行役員の鳴海の「眼」です。 彼女が直感的に「ここだ」と指し示すポイントの共通項を見つけていく。
「なぜ、そこなのか?」 「横から見た時に、その位置関係はどうなっているのか?」、鳴海の直感を一つひとつ解析し、そこに潜むロジックを言語化していきました。 そうやって5五千人分ものデータを蓄積していったのです。
最初は、テクノロジーも何もありませんでした。
この膨大なアナログデータの蓄積があったからこそ、AI技術の進化に合わせて学習させることができ、徐々に自動化が可能になっていったのです。
測定精度の壁と、世界的企業との技術提携で直面した現実
ー開発を通じて苦労したエピソードを教えてください。
一番の壁は、やはり「測定精度」でした。
顔写真を分析しようとすると、照明のわずかな違いや、顔の角度のズレだけで結果が大きく変わってしまいます。
ユーザーからすれば、「乗るたびに数値が変わる体重計」を渡されるようなものですよね。 撮影環境によって数値がブレるという問題には、長く悩まされました。
また、当時はAIの分析エンジン自体の精度もまだ低く、技術と環境の両面で、実用レベルに達するまでには長い道のりがありました。
そんな中、私たちのビジョンに共感してくれたのが、台湾の大手企業「新金宝グループ」です。 彼らも当時ミラー事業に課題を抱えており、私たちが「一緒に世界を変えたい」と熱意を伝える中で、技術提携を結ぶことになったのです。
しかし、現実は甘くありませんでした。「B-by-Cファースト」といって優先的に開発を進めてもらっても、なかなか思うような成果が出ない。
売上はほとんど立ってないのに、毎年1億以上、正直ちょっと吐きそうな金額を投資し続けてました。
中小企業からすると、まあまあ覚悟がいる額です・・・(笑)
ブレイクスルー:世界基準のデータと、ハードウェアへの回帰
ー開発が大きく前進した転換点は、どのような出来事だったのでしょうか?
風向きが変わったのは、本当にここ1年、特にこの半年です。
AI技術が一気に進化し、7〜8年かけて積み上げてきたデータと、ようやくAIがちゃんと噛み合い始めた、って感覚でした。1年前に、世界大会をやったんです。
人の顔が持つ“本来の変化の力”を技術者同士で検証し合うために、モデルの顔を5分で見立て、5分で変化をつくる。メイクも痛みの強い施術も使えない中で、その人の顔をどう読み取り、どうアプローチするかが試される場です。
その中で、一眼レフで撮影された高精細な顔画像が世界中から集まりました。
この膨大なデータが、急速に高度化していた最新のAI技術と結びついた瞬間、私たちがずっと越えられなかった“測定精度の壁”がようやく動き始めました。
顔の構造を理解するロジックと、AIが急速に進化したことで、これまで人の「感覚」に頼っていた部分まで数値として扱えるようになったのです。
開発チームにとっても「ようやくここまで来た・・・!」と実感できる、大きな前進でしたね。
正直、ここから一気に動くフェーズに入ったと思っています。
これまではミラー中心でしたが、直近はWeb版のほうが、よっぽど早く進化しています。Web版は、ハードウェアと比べると、修正や改善にかかる時間もコストも圧倒的に小さく済みます。
そのため、思いついた改善を短いサイクルで実装でき、試す → 直す → もう一度試す、というプロセスを何度も回せるようになりました。
このスピード感が、ユーザー体験とAI精度の磨き込みを一気に加速させています。
そこで次のステップとして、Web版で磨かれた体験やノウハウを、ミラーという“本来の舞台”に統合していく予定です。
いまのミラーはまだ完成形ではありません。
むしろ、7〜8年かけてようやく土台が整い、ここから本格的に大きく育てていける段階に入りました。
「ここから未来が一気に動き出す」私たちは、そんなフェーズの真ん中にいます。
AIスマートミラーが描く未来 -美と健康を支える次世代プラットフォームへ-
ーAIスマートミラーで実現したい世界について教えてください。
|「口コミ」ではなく「事実」で、自分でPDCAを回す世界へ
世の中には、不確かな口コミや危機感を植え付ける健康情報が溢れています。私たちはそれを正したい。
誰かの感想ではなく、自分が判断できる「正しいデータ」を目の前に揃えてあげたいんです。
「納豆を食べれば健康になる」って言うけど、それ本当なの?って思いません?(笑)
我々がやりたいのは”納豆を食べた人が1万人いて、その1万人の変化を顔のデータで見て、そこから美容や健康に影響があるのか、その人に合った方法なのか”そういうデータを蓄積していくことなんです。
「あの人が良いと言ったから」ではなく、「あなたの肌質なら、この商品を使うと高い確率で改善するが、こっちの商品だと変化が出にくい」というような、パーソナライズされたデータがあれば、お客様自身が納得して意思決定し、自分でPDCAを回して変わっていくことができます。
データをもとに選ぶのと、何も考えずに選ぶのとでは、その後の行動も結果も全く変わってくるはずです。
|顔情報を元に、人生をより良くする提案ができるプロダクトを
最終的に私たちが目指しているのは、鏡を通して得られる膨大な顔情報をもとに、世界中の人々の生活習慣を変えることです。
顔には、美容情報だけでなく、健康状態や「未病」のサインなど、あらゆる情報が集約されています。
その顔情報を取れる唯一の場所って、実は鏡なんですね。
少なくとも女性は30分以上、鏡を見てる。みんな鏡を見てるけど、ただの鏡になってるだけ。もったいないと思いませんか?
昨日と今日の変化を見て、『ちょっと飲みすぎてない?』とか『今日はむくんでるね』って言える。
でも、そこはまだIoT化されていません。 もし鏡がIoT化され、過去の自分と比較して「今日はここが調子悪いね」「この運動をしよう」と提案してくれたら? 今はまだSF映画のような話ですが、いずれ必ず実現する未来です。
AIスマートミラーは、まだ進化の途中です。美しさだけでなく、健康を守るために、顔情報を元に、人生をより良くする提案ができるプロダクトを目指しています。
ー候補者の方にメッセージをお願いします。
AIスマートミラーは、まだ完成形ではありません。
7〜8年積み上げてきた技術やデータに、AIの進化が重なり、ようやく“大きく広げられる段階”に入ったところです。
私たちがつくろうとしているのは、ただの美容ツールではありません。鏡を通して、美と健康の意思決定を「感覚」ではなく「データ」に変える、新しい世界のインフラです。
そしてその未来は、今まさに動き始めています。技術的な挑戦も、プロダクトの拡張も、これからが本番です。技術的な課題は山ほどある。やったことのないことだらけ。
でも、だからこそ面白い。
美と健康の未来を、鏡からつくり変える。
B-by-Cは、そんな“未来の当事者”を待っています。
この挑戦に、心が少しでも熱くなった方がいたら、ぜひ一度お話ししたいです。
ー黒田さん、ありがとうございました!