「この動画、絶対伸びると思います」
SNSの仕事をしていると、そんな会話をすることがあります。
でも、再生数が伸びれば、本当にそのSNS運用は成功なのでしょうか。
100万回再生されても、お店に誰も来なかったら。
フォロワーが増えても、採用応募につながらなかったら。
企業にとって、その「バズ」にはどれくらいの価値があるのでしょう?
株式会社国境離島革命団でSNS運用・インフルエンサーPR領域に携わる、「ふかまる」こと深井栞。
自身もインフルエンサーとして発信を続け、SNSの総フォロワーは10万人を超えています。
◾️ふかまるアカウント:https://www.instagram.com/fukamaru_kagoshima/
一方、国境離島革命団では鹿児島の企業や自治体のSNS運用戦略、企画、撮影、インフルエンサー施策など、クライアント側のSNSマーケティングにも携わっています。
「自分のアカウントを伸ばすことと、企業のSNSを成功させることは、似ているようで全然違いました」
インフルエンサーとして「伸ばす側」と、SNSディレクターとして「売る側」。
両方を経験したからこそ見えてきた、“伸びるSNS”と“人を動かすSNS”の違い。
そして、革命団のSNSディレクターは、実際にどんな仕事をしているのか。
深井に聞きました。
営業職だった私が、気づいたらSNSを仕事にしていた
――今ではSNSが仕事の中心になっていますが、もともとはSNS業界ではなかったんですよね?
全然違います。
新卒では人材系の会社に入って、営業をしていました。
新規営業を1年、その後は既存のお客様へのカスタマーサクセスを中心とした営業を1年。
そこからエンタメ系のスタートアップに転職して、TikTok関連の事業立ち上げやオンラインイベントなどに関わるようになりました。
そこで初めて、SNSが「見るもの」ではなく「仕事」になった感じです。
――そこから2023年に会社が解散して、独立しています。
そうですね。
26歳で独立して、その2か月後には人口約130人の鹿児島の離島に移住しました。
こうやって話すと意味分からないですよね(笑)。
もともとは観光事業や場づくりに関わるための移住だったんですが、鹿児島で暮らしながら、自分自身でもSNS発信を始めるようになりました。
それが「ふかまる」です。
最初からインフルエンサーになろうと思っていたわけではなくて、鹿児島で出会った面白い場所や人、お酒や食を発信しているうちに少しずつ見てくれる人が増えていきました。
今ではInstagramを中心に、SNS全体で10万人以上の方にフォローしていただいています。
自分のSNSなら、「伸びる動画」はだんだん分かる
――10万人まで伸ばしていく中で、「SNSの伸ばし方」は分かるようになりました?
かなり分かるようになったと思います。
例えば動画の冒頭。
最初の数秒で何を言えば続きを見てもらえるのか。
どこで離脱するのか。
どういうテーマならコメントしたくなるのか。
どういうタイトルなら「自分のことだ」と思ってもらえるのか。
発信を続けていると、少しずつ感覚が蓄積されていくんです。
私の場合は特に鹿児島やお酒、グルメなどの発信をしてきたので、
「これは伸びそう」
「これは多分伸びない」
という感覚はかなり持てるようになりました。
――じゃあ、そのノウハウを企業SNSにもそのまま使えばいい?
私も最初は、かなり近いものだと思っていました。
でも、実際に企業のSNS運用をやってみると、
「あ、これ全然違う仕事だ」
って気づいたんです。
100万再生しても、売れなければ意味がない?
――何が一番違ったんでしょう?
ゴールです。
インフルエンサーとして自分のアカウントを運用するなら、「たくさんの人に見てもらう」はかなり大きな目的になります。
もちろんフォロワーとの関係性なども大切ですが、再生数やフォロワー数が伸びること自体に価値がある。
でも企業は違います。
企業がSNSをやるのには、必ずその先の目的があります。
商品を買ってほしい。
お店に来てほしい。
ホテルに泊まってほしい。
採用に応募してほしい。
会社のことを知ってほしい。
つまり、SNSはゴールではなくて、人を動かすための手段なんです。
――「バズった=成功」ではない?
全然そうじゃないです。
例えば鹿児島のお店の動画が100万回再生されたとしても、そのほとんどが県外の人だったら、実際の来店にはあまりつながらないかもしれない。
逆に10万回再生でも、その多くが鹿児島に住んでいる人や、そのお店へ行ける人だったら、売上へのインパクトは後者の方が大きい可能性があります。
国境離島革命団では、そういう考え方を「ローカルバズ」と呼んでいます。
私自身インフルエンサーだからこそ、「再生数を伸ばしたい」という気持ちはめちゃくちゃ分かります(笑)。
100万再生したら嬉しいですし。
でも企業SNSでは、
「何回再生されたか」より、「誰に届いて、その人がどう動いたか」。
そこまで考えないと、本当の意味での成果にはならないんですよね。
SNSディレクターは「投稿を作る人」じゃない
――革命団のSNSディレクターは、具体的に何をするんですか?
めちゃくちゃ幅広いです。
まずクライアントと話して、
「何に困っているんですか?」
を聞くところから始まります。
例えば「Instagramを伸ばしたいです」と相談されたとしても、本当の課題はInstagramではないこともあります。
新規のお客様が来ないのか。
若い人に知られていないのか。
採用がうまくいっていないのか。
リピーターが少ないのか。
そこを整理して、
「じゃあ誰に届けるべきなのか」
「その人は何を見たら動くのか」
を考えていきます。
そこからアカウントのコンセプトを作って、企画を考えて、撮影して、編集者にディレクションして、投稿する。
さらに数字を見て、次の企画を改善する。
案件によってはインフルエンサー施策を組み合わせたり、広告を使ったり、SNS以外の方法を提案したりすることもあります。
だから私は、SNSディレクターって、
「SNSを運用する人」というより、「SNSを使って事業課題を解決する人」
に近いと思っています。
「この動画、面白い」だけでは企画にならない
――個人の発信と企業アカウントでは、企画の作り方も違います?
違いますね。
自分のアカウントだったら、極端に言えば「私が面白いと思ったからやってみよう」でもいいんです。
失敗しても自分の責任なので。
でもクライアントワークでは、その企画にちゃんと理由が必要です。
誰に見せたいのか。
なぜこのテーマなのか。
なぜこの出演者なのか。
なぜこの冒頭なのか。
この動画を見た後に、どういう行動をしてほしいのか。
全部説明できないといけない。
例えば「若者に来店してほしい」という相談なのに、40代にめちゃくちゃ再生される動画を作っても、本来の目的とはズレています。
だから企画を考えるときも、
「面白いか?」と同時に「目的に合っているか?」
を見るようになりました。
これは企業SNSをやるようになって、かなり変わった部分です。
「再生数」ではなく、「人が動いた瞬間」が一番面白い
――SNSディレクターをやっていて、一番面白い瞬間は?
自分たちが作ったものによって、本当に人が動いたと分かったときですね。
もちろん動画が伸びた瞬間も嬉しいです。
「うわ、10万いった!」みたいな(笑)。
でも、それ以上に、
「動画を見たお客様が来てくれました」
「問い合わせが増えました」
「SNSを見て応募してくれた人がいました」
みたいな話をクライアントから聞く方が嬉しい。
画面の中にあった数字が、現実の行動に変わる瞬間なんですよね。
特に地方は、その距離が近いと思います。
東京で全国向けのマーケティングをしていたら、自分の施策によって誰が動いたのか見えにくいこともある。
でも鹿児島だと、自分が担当したお店に実際にお客さんが増えたり、街でその動画の話をしている人がいたりする。
自分の仕事が、目の前の街に影響している。
これはローカルマーケティングならではの面白さだと思います。
鹿児島には、「いいのに知られていない」が多すぎる
――地方企業のSNSをやっていて感じることはありますか?
めちゃくちゃあります。
一番感じるのは、
「こんなにいいものなのに、なんで知られてないんだろう?」
ということ。
商品へのこだわりがすごい会社。
何十年も技術を磨いている職人さん。
本当においしい食材を作っている生産者さん。
面白い会社なのに採用に苦戦している企業。
鹿児島には、そういう会社や人がたくさんいます。
でも、いいものを作ることと、それを伝えることって全然別のスキルなんですよね。
伝えることが得意じゃないから、知られていない。
私は、それがすごくもったいないと思っています。
だから革命団の仕事って、単にSNSを伸ばしているというより、
地方に埋もれている価値を、伝わる形に翻訳する仕事
なんじゃないかなと思っています。
ただ、SNSの仕事は思っていたより泥臭い
――ここまで聞くと楽しそうですが、大変なところは?
めちゃくちゃあります(笑)。
まず、正解がない。
SNSって変化が本当に速いので、半年前に伸びた方法が今は通用しないことも普通にあります。
アルゴリズムも変わるし、流行るコンテンツも変わるし、AIツールもどんどん出てくる。
だから、一度覚えた知識だけでずっと仕事をするのは難しいです。
それに、企画って勝手に降ってくるものでもない。
日頃からSNSを見たり、街を見たり、人と話したりして、
「これ面白いかも」
という種を集め続けないといけない。
さらにクライアントワークなので、自分が面白いと思うものと、クライアントが伝えたいことと、ユーザーが見たいもの。
その3つを合わせないといけません。
だから、華やかに見えるSNSの裏側では、かなり地味に考えて、試して、数字を見て、また考える。
その繰り返しです。
「SNSが好き」だけだと、たぶん足りない
――じゃあ、革命団のSNSディレクターに向いているのはどんな人でしょう?
SNSが好きなのはもちろんプラスです。
でも、それだけだと多分足りない。
私が一緒に働きたいと思うのは、
「なんで?」を考えるのが好きな人。
「この動画、めっちゃ伸びてる」
で終わるんじゃなくて、
「なんで伸びたんだろう?」
「最初の3秒かな?」
「このコメント欄、なんでこんな盛り上がってるんだろう?」
って考えちゃう人。
あとは、新しいものを触るのが好きな人ですね。
新しいSNSが出た。
AIツールが出た。
新しい動画フォーマットが流行っている。
そんなときに、「会社から教えてもらうまで待とう」じゃなくて、とりあえず触ってみる。
革命団自体、まだ完成された大企業ではありません。
教育制度も、仕組みも、全部が完璧に整っているわけではない。
だから、
「教えてもらったことをちゃんとやります」
という人より、
「これ面白そうだから、やってみてもいいですか?」
と言える人の方が、圧倒的に楽しめる会社だと思います。
私自身も、「SNSの人」で終わりたくない
――深井さん自身は、これからどうなりたいですか?
SNSの専門性は、もっと深めたいです。
でも、「SNSだけできる人」にはなりたくないと思っています。
企業が抱えている課題に対して、
SNSなのか。
PRなのか。
広告なのか。
インフルエンサーなのか。
そもそも商品や企画から変えた方がいいのか。
手段に縛られず考えられる人になりたい。
新卒で営業をやって、スタートアップで事業づくりに関わって、独立して、自分自身も発信者になって。
一見バラバラだった経験が、今になって全部つながってきた感覚があります。
営業で身につけた「相手の話を聞く力」も。
インフルエンサーとして身につけた「人が見たくなるものを考える力」も。
企業SNSで身につけている「人を動かすために設計する力」も。
全部、マーケティングにつながっている。
だからこれからは、SNSを入口にしながら、もっと事業そのものを動かせる人になりたいです。
「SNS担当」で終わりたくない人へ
SNSの仕事というと、
「毎日Instagramを更新する」
「TikTok動画を作る」
そんな仕事を想像する人もいるかもしれません。
もちろん、それも仕事の一部です。
でも革命団でやっているのは、その先です。
なぜ、この会社はSNSをやるのか。
誰を動かしたいのか。
何を伝えれば、その人は動くのか。
そのために、どんな企画をつくるのか。
そして、本当に人は動いたのか。
そこまで考える。
だから、もし今、
「SNSは好きだけど、投稿を作るだけでは物足りない」
「動画編集だけではなく、企画や戦略にも関わりたい」
「マーケティングをもっと広く経験したい」
「自分の仕事によって、誰かが動くところまで見たい」
と思っているなら。
革命団のSNSディレクターという仕事は、きっと面白いと思います。
私自身、インフルエンサーとして発信していたからこそ、
“伸びる”ことと、“売れる”ことは違う
と気づきました。
そして今は、その両方を考えられることが、SNSマーケティングの面白さだと思っています。
100万再生をつくることがゴールじゃない。
その先で、人を動かす。
そんなSNSを、一緒につくってみませんか?