1
/
5

人間中心設計で、まだ世にない「移動」をデザインする。UXデザインのプロフェッショナル集団

トヨタコネクティッド先行企画部UXデザイングループでは、モビリティ領域だけによらないトヨタコネクティッド独自の新規事業の開拓を志しています。人間中心設計の原則にもとづいて「今はまだない価値」を創造しようとするUXデザイングループ。マネージャーの水野に、グループのミッションやプロダクト開発にかける想いを聞きました。

大変革が起こっているモビリティの世界でUXデザインの可能性を活かす

——水野さんのこれまでのキャリアについて教えてください。

私はこれまで、国内外のクリエイティブエージェンシーから始まり、飲食や人材活用の自社インターネットサービス開発、自動車製造業でのコネクティッドサービスデザインなど事業会社での活動まで、業界問わずさまざまな企業で二十数年間、一貫してUXデザインの領域に携わっています。

中でもここ4〜5年は、UXリサーチを起点にしたサービスデザインのプロジェクトに数多く関わってきています。デジタルサービスとの関わり方をつぶさに観察したり、お話を伺いながら人々の生活スタイルや嬉しい体験をあぶり出す探索型リサーチです。もちろんそれらをもとに具体的に開発したアプリやサービスについて、どんな使われ方をしているか、設計品質や利用品質に満足していただけているか、そこから次にどんなものを作っていくかを模索する、評価型のリサーチ活動を数多く実施してサービス開発をしてきました。

人々がどんな生活をしているか、どんな体験に価値を感じているのか、デジタルサービスやプロダクトはどんなものを使っているかといったことをリサーチしていく過程では、自分たちが考えもしなかったことを発見したり、リサーチチームが立てた仮説がことごとく覆されたりといったことが起こります。UXデザイン活動にはそうしたおもしろさがありますね。

——水野さんがUXデザインにのめり込んでいくきっかけはなんだったのでしょうか。

エージェンシーでデザイナーをしていたころ、クライアントやディレクターに「作って」と言われてデザインしたプロダクトが、ことごとくユーザーに使われないことがありました。なぜなら、それを使うユーザーの利用状況を知らずに「こういうものを作りたい」という企業の都合でものを作っていたからです。

どうすればユーザーに価値あるプロダクトとして使ってもらえるのか。作り手として試行錯誤の末に行き着いたのが、人間中心設計のアプローチでした。それから開発をする前後でユーザーに直接会う機会を作って、「何をつくるのか」「なぜつくるのか」「どうやってつくるのか」など、利用者と向き合いながら問うようになったのです。その頃からさらに主導権を執りつつ「もっと利用者の声をつかんでサービスやプロダクトを創りたい」と考えるようになり、事業会社に転職しました。

——同じ事業会社でも、インターネットサービスから自動車製造業にフィールドを移した背景には何があったのでしょうか。

私の周りでは5〜6年前から、「これからクルマが大革命時代に突入するぞ」と言われていました。かつて、家にあった黒電話がガラケーに置き換わり、それからスマートフォンが発明されて、世の中が激変しましたよね。それ同等の大変革が、クルマやモビリティの分野でも起こると。それはおもしろそうだと考えて、コネクティッドサービスを立ち上げる専門部隊のメンバーとして、自動車業界に飛び込みました。

ハードウェアの塊だったクルマはいま、ネットにつながり、バッテリーやAIを搭載してどんどんソフトウェア化しています。従来の「クルマ」に大革命が起こり、ソフトウェア主体で、移動インフラ、そのプラットフォームもしくはその一部として、モビリティが新しく発明されていく。その中で、Webサービスやデジタルサービスを作ってきた知見が自動車業界でも活かせそうだとも感じました。

——トヨタコネクティッドに参画されたきっかけや決め手は何だったのでしょうか。

ひと言でいえば、「チャレンジ」です。自動車そのものに閉じず、移動を捉えなおし、デジタルサービスとして変えていく。トヨタコネクティッドでは、それを自社事業としてともに挑戦できる仲間がおり、実現できるチャンスがあるのではないかと、参画を決めました。

人間中心設計のプロセスで「利用者に選ばれる体験」を作り出す

——先行企画部の中で、水野さんのデザインチームがどんなミッションを抱えているのか教えてください。

モビリティ業界では、ビジネス環境が常に変動しています。それに呼応するには、これまでの延長線上ではなく、今はまだない価値の可能性を捉えてスピーディにカタチにして対応すること。非連続な活動をしていく必要があります。

いまはまだないサービスやプロダクトの開発を通じて、利用者に選ばれる体験を世に送り出す。我々は、そこを目指す情熱あふれるプロフェッショナル集団であろうとしています。

——具体的にはどんな世界を目指していますか?

一例として、自動運転のテクノロジーやサービスが行き届き、クルマが社会インフラに置き換わっていく世界ですね。

たとえばモビリティについて考えるときに、クルマそのものだけにフォーカスするのではなく、「高齢化社会」という切り口で捉えてみる。地方では過疎化と相まって、高齢者の移動の問題は解決すべき喫緊の課題になっています。健康寿命を延ばすために社会とのかかわりを持ち続けたいと考えている高齢者に対して、いかに制限されず、むしろ自由に移動できる社会が作れるか。

こうした課題に対して自動運転社会を前提にした「移動」を捉え直し、デザインしていくことが、私たちの大きな使命です。

——「今ないもの」を作るにあたって、どんな業務プロセスで取り組んでいますか?

今ないものを、作り手の都合で思いついたところから勝手気ままにつくっていく……のではなく、まず基本的な人間中心設計のプロセスにのっとって開発を実行します。

とくに向き合いたい利用者の状況の把握と共感を軸に、何を創るかを決め、すばやく具体的に創り出し、利用者に評価してもらう……その評価の学びを活かして前のプロセスにもどり循環させていく、私たちが軸にしているデザインのスタイルです。「最初の利用者に向き合うところ:探索と共感」、そして「最後にある学びを生み出すところ:評価」はとくに大事にしています。

このアプローチを各プロジェクトで実施するなかで、デザインの基本を身につけ、型を破りながら応用発展していく。当社だけでなく、PJの規模や業界を問わずどこへ行っても通用するスキルとなるでしょう。

この人間中心設計の原則にのっとってプロジェクトに取り組むことで、メンバーには、デザイナーとして力をつけてもらいたいと考えています。

——今後入社される方が取り組んでいくデザイン業務には、どんなものを想定していますか?

今後は移動というキーワードによるコネクティッドサービスの開発にも取り組んでいきたいと思っています。一つ可能性として挙げられるのが、トヨタと協働で進めているプロジェクトへの参画です。介護現場で働くスタッフや入居者さんとふれあいながら業務や生活をサポートする介護ロボットのサービスデザインやUIデザインを想定しています。

それ以外では、クルマに限定しない移動に関連するナビゲーションシステムやサービスなどの開発で活躍する機会をもてるでしょう。たとえば、ある特定の利用文脈を想定したスマートフォンアプリベースのコネクティッドサービス。最終的に市販に至るかはわかりませんが、高齢者の方が安全に移動することを目的に、VR/ARテクノロジーを用いたナビゲーションのコンセプトモデルもトヨタコネクティッド独自で進めていこうと考えています。

新たな「意味」を、非連続なギャップからデザインする

——水野さんはデザインチームのマネージャーとして、どのような価値観でチームを作っていきたいと思っていますか?

メンバーにはPJを通じて、UXデザインの根幹である人間中心設計の基礎を身につけてほしいですね。デザインの領域は可能性に満ちていますし、この人間中心設計のエッセンスがその可能性を社会により近づけていきます。

モビリティはもちろん、フィンテックや教育、医療の現場においても、今後このエッセンスを活用するデザイナーが力を発揮できる場所はたくさんでてくるでしょう。UXデザインチームの活動を縁にそんな可能性を掴み取っていただきたい、そう考えているんです。

こうした強み、未知の状況でも戦えるチカラを身につけることで、仲間や他社から声がかかることもあるでしょう。しかし、他社から声がかかるような人たちがたくさんいる組織は強いと思います。そんなメンバーが世の中を変えていくのだと思いますし、そのチームワークが“今はまだないもの”を生み出していける。

チームの主役は、そうした外向きの目線ももってあらゆるチャレンジができる若さ溢れる人たちだと思っています。

——チームのメンバーをどのようにマネジメントしているのでしょうか。

ぼくは従来あるような管理を強化するようなマネジメントはしないです。いわゆる数世代前のよくある“組織管理”を重視すると、デザイナーの能力、クリエイティビティを阻害してしまいます。

UXデザイングループの活動は、メンバーひとりひとりのありたい姿を実現するための機会ととらえ、そのために、まずみずから考え、行動できるよう対話を続け、やがて自走していけるようなスタイルをとっています。ですから、粘り強い対話で手間はかかりますが、私からは都度こまかく指示を出さず、ひとりひとりにまず考えてもらい、並走してチームをまとめていきます。

大勢集めていっきに落とす共有会スタイルは最低限、1on1と“問いかけ”をもっとも大事な活動と位置づけて向き合っており、チームのメンバーにはしっかりとこうした価値観が伝わってフラットな関係性で活き活きと活動してます。

——従来のクルマ開発のアプローチとはイメージが違いますね。

今あるものを進化させてきたアプローチは、日本の伝統的な製造業が得意とする「カイゼン」によるものです。それも大事ですが、チームが目指すものは“いまはまだないもの”を創ること。そのためには、連続的進化、ではなくあえて非連続な取り組み、ありたい未来を描き、その姿からバックキャストをする必要があると考えます。

たとえば、電話の延長線上でプロダクトを作ろうと考えていたら、いつまでたってもそれは電話、その電話を消し去ったスマートフォンは生まれなかったでしょう。

便利さをサービスの提供価値にしようという視点だけだと、他にも便利な類似サービスが、いまもすでにそうであるように…たくさん出現し、やがて飽和して2,3番は淘汰され、結局一番しか残りません。だからこそ便利さだけではない、あらたな「意味」を“いまはまだないもの”に込めて社会に問うていく必要があるのです。

そうした非連続なギャップを見出すことは大変です。自動車製造業の一角を担う看板を背負っているゆえのチャレンジになるんだと思います。過去の栄光に固執することなく、思考もデザインワークも、非連続にジャンプさせなければならないからです。少しずつ変えていくのではなく、大胆に取り組んでいかなければ、世の中には響きません。

その柔軟な発想と可能性を秘めているのは圧倒的に若い世代だと信じています。私のチームでは20代後半から30代前半の若くて優秀なメンバーがチームを組んでコラボレーションを軸に活躍しています。シニアなデザイナーはもちろんですが、経験が少なくても未知なコトに柔軟な視点と行動力をもって臨める若手のデザイナーにも、十分にワクワクを手に入れチカラをつけられる機会があるでしょう。

「何かに夢中になっている」オタク、クルマに寄らない思考の多様性を重視するチームを

——どんな人がカルチャーにフィットすると思いますか?

依頼されたことに対して、「それにはどんな意味があるのか」を自問自答できる人ですね。そして変化そのものを楽しめる、アジャイル開発のエッセンスを持った人です。

それに加えて、いわゆる「オタク」な人を歓迎します。たとえば、「YouTuberをやっています」であったり「エンジニアをやりながら農業をやっています」であったり、クルマやデジタル技術だけに寄らない、趣味の延長で別の特定分野で夢中になっている人と一緒に働きたいと考えています。

私も含めてですが、人はどうしても、ものづくりをする際に今あるものをスタート地点にしてしまいます。非連続にサービスやプロダクトを生み出していくには、別の視点、新しい観点がはいるのはとても有効です。そういう意味では、クルマについてまったく知らない、運転免許証すら持っていない人でも活躍できるでしょう。

とにかく、何かに夢中になって取り組んだことのある人に来ていただいて、その人たちの視点をプロダクトに反映していきたい。思考の多様性を重視したいと考えています。

——最後に、チームへの思いを聴かせてください。

皆さんが使われているiPhoneのアプリは、週単位でメジャーバージョンアップデートされたりすることも珍しくありません。ですが、1台のクルマを市場に出すまでには、5〜6年、もしくはそれ以上かかります。

ソフトウェア開発やモダンサービス開発の現場では1つのものを世に出すのにこれだけ長い時間をかけることはあまりありませんし、激変する社会で、それそのものがリスクになりえるのです。

もちろん、現在取り組んでいるPJでも、世に出せない過程であっても抽象と具体を行き来しながら、つねに可視化やプロトタイピングを実施していますが、今後はよりスピーディにコンセプトを世に問い、具体的にいまはまだないサービスを出していきたいですね。自分たちが作ったものを世の中にさらして、利用者に直接向き合うことをくりかえしながら、いまはまだないものを探り磨いていきたいです。

そのために、私は旗振りとして、デザインチームづくりに徹します。メンバーには人間中心設計の原則にのっとって具体的なデザイン活動に集中、自走してもらえるよう、リーダーとしてアウトカムを導き出せる環境を整えていきます。

デザインするのが大好き、ユーザーと会うことにワクワクするといった方、三度の飯よりPythonのソースを書くのが好き、ある地域の民族音楽に精通しているといったような、我こそはニッチな得意領域をもっている、新進気鋭のオタクと思う人にこそ合流していただいて、現場で一緒にワクワクする「いまはまだないサービス」を作っていきたいです。

トヨタコネクティッド株式会社では一緒に働く仲間を募集しています
23 いいね!
23 いいね!
同じタグの記事
今週のランキング
このストーリーが気になったら、直接話を聞きに行こう