日本の労働力不足。誰もが口にするこの課題に、本気で解を出せるチームはどこか。
シードラウンドの資金調達を完了した株式会社Tancee。数多のスタートアップを見守ってきたインキュベイトファンド社が、なぜまだ形のない私たちの挑戦を信じ、共に歩むことを決めたのか。ベンチャーキャピタリスト和田氏と、代表の西が出会って共鳴した、Tanceeにしかやれないこととは。
投資の舞台裏から今日までの軌跡に迫る対談記事です。
目次
1. 最初の出会いと、すぐに出資を決めた理由
2. 間違いなく来る市場のど真ん中に、Tanceeがいる
3. とにかく人を惹きつける、代表のリーダーシップとは
4. Tanceeが求める3つの要素と、今参画する意義
和田圭佑(インキュベイトファンド/代表パートナー): 2004年フューチャーベンチャーキャピタル入社、ベンチャー投資やM&A アドバイザリー業務、二人組合の組成管理業務に従事。2006年サイバーエージェントへ入社し、国内ベンチャー投資、海外投資ファンド組成業務、海外投資業務に従事。2007年シード期に特化したベンチャーキャピタル、セレネベンチャーパートナーズを独立開業。2010年にインキュベイトファンド設立、代表パートナー就任。(写真右)
西雅也(Tancee/代表取締役): 和歌山県出身。神戸大学大学院卒。新卒でリクルートに入社し、不動産業界・外食業界向けに集客・採用支援を行う広告営業や新規事業を経験後、Tanceeを創業。(写真左)
1. 最初の出会いと、すぐに出資を決めた理由
西: 和田さんと最初にお会いしたのは、僕の知り合いのスタートアップ役員の方から繋いでもらって、インキュベイトファンド主催の「Blue Field Program(BFP)」に参加したのがきっかけでしたよね 。
和田: そうですね。BFPは起業家のやりたいことや関心に対して、「こういう事業の可能性があり得る」というところを丁寧に壁打ちしていく起業準備プログラムです 。そこに参加してくれた西さんの第一印象は、とにかく行動力とエネルギーがすごいタイプだなというものでした。
西: 嬉しいですね。
和田: 起業家には色んな個性とタイプがあって、皆が「やります」と行動力をアピールしつつも、実際の馬力には結構差があるのを見てきました。でも、西さんはその中でも突出しているんじゃないかと 。エグゼキューション(実行)のエネルギーが、起業家の中でもトップクラスだなと感じましたね。勉強会の後でも気後れや様子見を一切せず、いきなりトップギアで「僕はこう思っているんですけど!」とはっきり言ってくるところが印象に残っています。
西: BFPに入った当初は事業プランも固まりきっていなかったんですが、元々僕はリクルートで働いていて、「日本の労働力不足」という大きい課題に対して何かしらアプローチしたいという強い思いがあったんです 。壁打ちでいくつかアイデアが出た中で、一番ビビッときたのが「外国人労働者」の領域でした 。割と初期の段階で「これだ」と決まった感覚でしたね 。
和田: その決断の早さもすごく良かったです。労働力不足を解決するテーマの中で、AIを使うのか、シニア層を活性化するのか、外から人を連れてくるのか。いろんなアプローチが考えうる中で「どれが一番燃えられそうか」を決める時の決断力が高く、西さんは「じゃあこれで」と早速アクションを取っていく反射神経がすごいなと思いました 。
西: ぶっちゃけ、投資を決めていただいた一番の決め手は何だったんですか?
和田: 端的に言うと「ゴール」と「人」ですね 。創業期の今この瞬間、すごく特別な強みや参入障壁があるわけじゃないことはお互い分かっています 。それをどう作っていくかという話になるが、明確なゴールを共有できて、試行錯誤していける西さんとなら一緒に作れる、と最大限信じられたのが決め手です。
2. 間違いなく来る市場のど真ん中に、Tanceeがいる
西: 投資実行までのプロセスで、僕がちょっと弱音というか、迷いを打ち明けたことがありましたよね。
和田: ありましたね。外国人受け入れに反発する国民感情のニュースを見た西さんが、「本当にやるべきなのか」と少し尻込みして言いに来たことですね 。結論としては「やろうぜ」とはっきり伝えたんですが、僕にとっては意外でもありましたが、一方で、すごく良いことだと思いました。
西: どういうことですか?
和田: 盲目的に「これいいよね」と信じ込むだけではなく、やり方を間違えたり、課題が残ったりするリスクを、ちゃんと頭に入れた上で始めようとしている証拠だからです。楽観論だけで始めると大きな火種になりかねないですが、一度自問自答して揺らぎを経験した上で「ちゃんとやろう」と思えたのは、すごく頼もしかったですね。
西: 今でも僕は、外国人が増えること自体が、手放しでめちゃくちゃ良いことだとは思っていないですからね。でも、現実に彼らは増えていく流れにある。外国人労働者が増えるかどうかは政府で意思決定できる部分はあるが、僕の意見では増えも減りも影響しない。だからこそ、その環境の中で全員が幸せになれる一番の形を目指すことにコミットしよう、と覚悟を決めました。文句を言っている暇があるなら、みんながやりたがらないことを率先してやろうというのが今の僕のスタンスです 。
和田: 日本において、この外国人材という市場は必要不可欠な変化であり、需要があることは間違いありません。投資家としてもこの巨大な市場機会に対してずっと研究していました。この領域は必ず来るからこそ、ただ単にマッチングするだけではなく、関わっているみんなのQOLが長く本当に高まるサービスを目指すという軸を持っておく必要があります。
西: 建前だけでなく、関わる人全員が理想的になれる形を本当に作っていきたいですね。
和田: そうですね。市場全体がより効率的で透明性の高い形になっていくために、Tanceeがすべきことやできることは、際限なくまだまだあります 。この「間違いなく来る市場」の中心に、Tanceeがいると僕は確信しています 。
今はまだ、特定技能という未成熟な市場で、泥臭くエージェントを回り、一人ひとりのマッチングに向き合っている段階です。しかし、目の前の一つひとつの現場での知見を大切にしながら、健全な労働市場や労働文化の形成に貢献できるように、進化を目指していってもらいたいです。
3. とにかく人を惹きつける、代表のリーダーシップとは
西: 和田さんから見て、今の僕ってどんなタイプのリーダーに見えていますか?
和田: 率先して現場の行動力で引っ張っていくタイプですね 。それに加えて、他の人の意見を超素直に吸収して、「応援団の力」を引き出すのが上手いなと思います 。自分の書いたプランを全面的に正しいと思い込む事で、周囲にも信じ込ませてリーダーが引っ張るやり方もありますが、当然ですがスタートアップの新規事業は必ずしも百発百中とはいきませんし、起業家によってはチームの力を引き出すことで乗り越えるやり方もあります。チームワークを活かす方が得意なタイプに見えていて、みんなと協力して決めていける資質が、西さんにはちゃんとありますね。
西: 自分としては、言ってもらえたことは飲み込んで吸収できるようにしようと意識しているんですが、第三者からそう見えているのは大きな発見ですね。良いフィードバックをもらいやすいように、これからも大事にしていきたいです。
和田: あと今弊社メンバーがTanceeに出向していますが、その社員から「西さんは教祖感がある」と言われていますよね(笑)
西: それ過去に10人くらいから言われたことあるんです(笑)。どうしてですかね?
和田: 言語化が難しいですが、何だろう、話し方や言い切り方の強さとかもあるのかもしれません。でも会社の成長に対してシビアな判断をしつつも、同時に、周囲の一人ひとりに対し「めちゃくちゃ興味がある」という触れ幅が大きい。強くスタンスを明確にして言い切ったかと思えば、急にすごく寄り添ってくる 。そのギャップが、「この人が言うならついていきたいな」と思わせるリーダーシップに繋がっている気がします 。シンプルにEQが高いということかもしれませんが、人への興味・関心やコミュニケーション欲求が強いからこそメンバーとも深い話ができるんでしょうね。
4. Tanceeが求める3つの要素と、今参画する意義
西: 組織づくりにおいて、僕が会社として大切にしているのは「情緒的価値」です 。仕事をしてお給料をもらえるという経済的価値は大前提として、これをやることが価値に繋がっている、この人たちと働くのが楽しいといった部分を大事にしたいと思っています。そういうのはどうでもよくて稼げればいい、という人は今のTanceeには合わないかもしれません。
和田: そういうカルチャーの中で、これから会社をさらに加速させるために、西さんはどんな人に来てほしいですか?
西: 今はとにかく、社内でガンガン強いディスカッションを起こしたいので、問いを立てれる人、実行力のある人が欲しいです。どう思いますか?
和田: 同感です。今のチームを見ていると、今後のメンバーに期待したい要素はいくつか明確だと思います。やはり1つ目は、今のリクルート出身のメンバーと同じくらい、圧倒的なエグゼキューション能力があること。2つ目は、実行力の上に、当事者意識を発揮して事業に向き合い、徹底的に対話できるコミュニケーション意欲の高い人。
そして、3つ目として重視したいのは、特定技能で雇用される外国人の現場の現実や、そこで起きる摩擦・痛みに対して敏感で、想像力が働く人です。そういった意味では海外留学などの経験者とかもいいかもしれません。
西: 前者の2つはスタートアップならどこでも欲しがりますが、僕もマストで欲しい要素です 。最後の「痛みに気づける」というのは本当に人によりますが、そういう現場への想像力を持った人たちで構成されたチームが、この市場で一番理想的なサービスを磨いていけるはずです。ちなみに、今のTanceeはまだまだカオスな環境ですが、今入るからこそ味わえる面白さって何だと思いますか?
和田: まだ始まって間もない会社なので、事業の成長に伴って業務のカバー範囲が必然的に広くなります。変化が早く不確実性も高い環境の中で、自分たちのアウトプットや決定の一つひとつが、長きにわたって会社の土台になっていく。責任やインパクトの重さですね。
西: 自分の行動がそのまま会社のカルチャーを作っていく実感は強いです。自分が試したいことを試せて、すぐに結果が返ってくる面白さも確かにありますね。
和田:それ以外の魅力もたくさんあると思うので、この機会に言っておきましょう。
西: 僕は人生の目的を「幸せになること」に置いていて、そのためには「人間関係の質」を高めることが大事だと思っています 。目の前の人の気持ちにできるだけ寄り添うためには、関わってきた人の幅と深さが大事です。その価値観も踏まえてグローバル領域をやっていますが、エッセンシャルワーカーの現場を知ることで、自分自身の価値観がアップデートされる瞬間がたくさんあるんです。
和田: 世の中の広さを知り、人の人生に深く関われるのは、この事業の素晴らしいところですよね。今はまず1プレイヤーとしてやり切るタイミングですが、Tanceeがこの市場で、ど真ん中に立つ日はいつか必ず来ると信じているので、これからも一緒に頑張りましょう!