このタイトルのフレーズを覚えていますか。若い世代にはなじみがないかもしれません。
1995年、イチロー選手がCMで発したセリフで、「新語・流行語大賞」のトップ10にも選ばれました。
選手登録名を鈴木からイチローに変え、さらにはメジャーリーグへ挑戦するなど、イチロー選手は自ら「変わらなきゃ」を実践し、数々の記録を打ち立ててきました。その活躍は、日本のプロ野球、そして米国のメジャーリーグの双方に大きな変化をもたらしました。
先週水曜日まで野球の国際大会であるWBC(World Baseball Classic)が開催されていました。侍JAPANは惜しくも本選ベスト8で敗退しましたが、各国が「打倒日本」を掲げて対策を講じる中、ディフェンディングチャンピオンとして厳しい戦いを強いられた大会だったと思います。
日本の早期敗退や放映権の問題により地上波で視聴できない試合があるなど、さまざまな意見はありましたが、日本開催では連日満員となる会場も多く、今回も大いに盛り上がったと感じています。
もっとも、WBCは最初から注目を集めていたわけではありません。第1回大会の日本初戦の観客数は1万5869人で、空席が目立ちました。その後の試合も満員にはならず、チケットが売れ残る状況でした。
「シーズン前の開催時期」や「商業主義的な大会ではないか」といった課題も指摘され、メジャーリーグの有名選手の多くが参加を見送っていました。
そのような中でも、イチロー選手はいち早く参加を表明します。
「1回目がなかったら、2回目もない。でも、歴史ってそうやってつくられるものでしょ?積み重ねというか。まずやってみないと、どこがいいのか悪いのか、分からない部分もあるんじゃないですか」
第1回WBC(2006年)で日本代表としてチームを牽引したイチロー選手
写真:イチロー(2006年WBC日本代表)
© Mori Chan / CC BY 2.0(Wikimedia Commons)
サッカーがワールドカップを通じて世界を巻き込み盛り上がる中、日本球界も米国球界も「変わらなきゃ」と、イチロー選手は考えていたのだと思います。
イチロー選手の「持っている」かのような奇跡的な活躍や日本の連覇をきっかけに、他国も本気で取り組むようになり、試合内容はより白熱し、観客も増えていきました。イタリアの躍進など、かつては想像できなかった国々の活躍も見られ、野球はワールドワイドなスポーツへと変わっていきました。
このように「変わらなきゃ」を実践し、世界を変えていったイチロー選手ですが、その一方で、ルーティーンを非常に大切にしていることでも知られています(『#08:決めつけモードで道を開く』参照)。
バッターボックスに入る際のイチローポーズや、試合後の道具磨きなど、日々のルーティーンが高いパフォーマンスを支えていました。蛇足ですが、私自身も毎朝、神様の前で手を合わせてから出社することをルーティーンにしています。
このコラムのシリーズ名は『守・破・離』です。
「守る」べきところはルーティーンとしてしっかり守り、それを土台に「破る」、すなわち「変わらなきゃ」の部分で発展させ、最後は「離れて」新しいステージへ飛躍する。
『#16:守・破・離』でも書きましたが、「守るところと変えるところをしっかり見極めることが重要」だと考えています。
当社において、私が「変わらなきゃ」と強く感じていることの一つが「工数ビジネス」です。現在、当社の主力はソフトウェア開発の受託ビジネスであり、売上は基本的に「工数×単価」で構成されています。
しかし、AIが本格的に活用される時代においては、工数そのものが減少し、AIが作業を担った場合の単価は限りなくゼロに近づいていきます。このままでは、会社の収益的な成長にも限界が訪れてしまいます。
そこで必要なのが、「工数×単価」ではなく、成果物がどれだけ顧客に貢献したかという「価値」で評価されるビジネス、すなわち「価値ビジネス」への転換です。私は重点施策として常に「価値ビジネス」を掲げており、これを早急に拡大していく必要があると考えています。
もっとも、工数ビジネスを否定しているわけではありません。当社が長年培ってきた高いソフトウェア開発スキルや品質技術は工数ビジネスで培ったもので、顧客から高い評価をいただいている基盤、すなわち『守』の部分です。
この工数ビジネスにおける「変わらなきゃ」、すなわち『破』の要素は、AI活用を前提に工数ベースをさらに強化し、その上で「価値」を創造し、顧客に提供していくことだと考えています。
当社では年初に、全社員が参加する社員総会を開催しています。そこで、私が社長に就任してからの5年間の変化について説明しました。
まずは形から入ることも大切だと考え、エントランスや応接室、大会議室の内装を一新しました。モダンな雰囲気となり、お客様や採用候補者の方々にも、より好印象を持っていただけていると思います。
来客や商談の際に使われることの多い当社の本社会議室の一室
さらに、顧客別体制から技術ドメイン別体制へのシフト、部屋型組織からラインマネジメントを軸とした組織改革、キヤノングループ以外へのビジネス拡大、マスメディアを活用した情報発信強化、オフィス環境の刷新、健康経営の推進、ビジネス志向の研究開発体制、生成AIの早期活用など、多くの変革に取り組んできました。
この5年間で当社は大きく生まれ変わり、「価値」を創造し、顧客に提供できる会社へと進化してきたと感じています。ひとえに、当社の社員が「変わらなきゃ」と思って、一所懸命に取り組んでくれたからこそ成し遂げられたと思って感謝しています。
もうすぐ冬も終わり、本格的な春を迎えます。新入社員も加わり、桜が背中を押してくれるような、新しいスタートにふさわしい季節です。
皆さんも『守』と『破』をしっかり見極め、Next Stageに向けて、自らの「変わらなきゃ」を実践していきましょう。
※次号は3月30日(月)リリース予定です