#30:製品開発に携われることの喜び
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日頃の感謝の気持ちをお伝えするため、年初にはすべてのお客様のもとへご挨拶に伺っています。3月でその大半が終了しました。連日の外出の影響もあって体を酷使していたからのか、謎の肘痛に見舞われました。
謎というには大袈裟ですが、以前強く肘をぶつけた際に骨の先端が鎌状に変形し、それが周囲を刺激して炎症を起こしたためではないかとのことでした。念のため検査を受けましたが、細菌感染の兆候はなく、ただ、白血球数の上昇がないのに炎症を示す数値(CRP)が高いことから、医師からはウイルス性の可能性もあるとの説明を受けました。疲労によって免疫力が低下していたのかもしれません。
それでも、お客様を直接訪問することは、会社にとって非常に大切な仕事だと考えています。私にとって「すべてのお客様」にご挨拶することは、決して譲れない一線です。疲れ果てようが、謎の肘痛になろうが、使命感をもって、前向きな気持ちで取り組んでいます。
幸いにも、社員が日頃からお客様に真摯に向き合ってくれているおかげで評判が非常によく、訪問先では多くのお褒めの言葉をいただきます。また、当社の仕事の成果にご満足いただいているようで、新しいお仕事のご依頼をいただくことも少なくありません。正直なところ、疲れ以上に喜びの方が大きいと感じています。
お客様にご挨拶する際には、当社をご紹介する資料をお渡ししています。あらためてその資料を読み返すと、携わっている製品の広さと深さを実感します。キヤノン製品でいえば、プリンタやカメラといった定番製品から、半導体露光装置などの産業機器、さらにはCTスキャナといった医療機器まで、実に多岐にわたります。こうした製品群を支える一端を担っていることに、あらためて誇りを感じます。
当社でも4月1日に入社式を行いました。私も入社した当時、自分が開発に携わった製品が店頭に並び、ニュースで取り上げられ、お客様に喜んで使っていただける日を夢見て、胸を躍らせていたことを思い出しました。社長挨拶の中でも、ワールドワイドに使われる製品に携われることへの期待についてお話ししました。
入社後に最初に配属されたのは、小規模オフィス向けビジネスフォンの開発部門でした。この話をすると「キヤノンで電話を作っていたのですか」と驚かれます。実は私もそう思っていました。当時、キヤノンはファクシミリを主力製品の一つとしており、その活用を目的としてビジネスフォンの開発にも取り組んでいたのです。外線の着信を受けた時に「ピーヒャララー」と聞こえてきたら、ボタン一発でファクシミリに転送できる機能が売りでした。
私たちが開発していたビジネスフォンですが、販促用プロモーションビデオに有名になる前のウッチャンナンチャンに出演していただいたり、浅野ゆう子さんが出演するトレンディドラマで使用されたりと、今振り返ると話題性のある製品でした。しかし、残念ながら売上の方はあまり芳しくありませんでした。
その後、電話事業からは撤退しましたが、そこで培った通信の技術を生かし、PHSや3G無線の開発に携わりました。ただ、試作品を作っても製品化審議を通過できない時期が続き、20年近く製品開発に直接関われない状況が続きました。研究開発費で無線を開発しながら、他部門の収益に支えられて自分の給料が支払われているのかと思い、自嘲気味に「無銭飲食」と呼んでました。
しかしその後、キヤノン製品にはBluetoothやWi-Fiといった無線機能が当たり前のように搭載されるようになりました。自分が携わった技術が、カメラやプリンタをはじめとする多くの製品に不可欠な機能として使われていることを思うと、今では胸を張って「無線飲食」だと言えるようになりました。
私自身が長年追い続けてきた「製品開発への貢献」という夢は、当社の社員の多くが入社後早い段階で経験することができます。私から見ると、非常にうらやましいことです。その恵まれた環境を、ぜひ実感してほしいと思います。
以前、社内報で当社社員が携わった新製品の特集を組んだことがありました。製品写真とともに開発チームの集合写真が掲載され、新製品の開発に大きく貢献した社員の生き生きとした笑顔を見ると嬉しかったんだろうなと思います。その下に書かれている開発ストーリーからは、求められる機能を実現するための創意工夫や設計の難しさがひしひしと伝わってきました。その困難を乗り越え、製品として世に出て、お客様に喜んで使っていただける――これほど幸せなことはありません。
当社のスローガンは「ありがとうが聞こえるソフトウェアを目指して」です。実際にソフトウェアから言葉として「ありがとう」が聞こえるわけではありませんが、「製品を使ってくれてありがとう」という私たちの思いと、「便利な機能をありがとう」というお客様の声が、ソフトウェアを通じて行き交う世界を目指しています。
製品に限らず、自分の仕事の結果がお客様のもとに届き、そして喜んでいただけることは、何にも代えがたい幸せなことだと思います。仕事を続けているとそんな当たり前の幸せを忘れてしまいがちです。是非、新入社員として会社に入ったころを思いだし、お客様の笑顔を思い浮かべながら、新たに湧いてきたエネルギーとともに仕事に向き合ってみてください。
※本記事に掲載している画像の一部は、生成AIを用いて作成したものです。
※次号は4月20日(月)リリース予定です