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【代表インタビュー】「そもそも僕が無理だと思ってたら実現しませんから」新しい流通を模索する経営者の頭の中

article/pictures : Yuya Okuda

スモールビジネスのための問屋サービス「orderie(オーダリー)」がローンチして1年9カ月。全国のスモールビジネスのユーザーとクリエイター(メーカー・生産者)をつなぐオーダリーのサービスはどのように生まれたのでしょうか。これからの問屋に求められること、そしてオーダリーが提案する仕入れ体験について、丸菱の取締役執行役員であり丸菱リンクトの社長である本田宗太郎(ほんだ・そうたろう)に訊いてみました。

orderie (オーダリー) | スモールビジネスのための問屋サービス
プロのためのオンライン製菓製パン材料マーケット。5000品以上の材料や、ものづくり・店づくりが深まる情報との出会いで、全く新しい仕入れ体験を。
https://orderie.jp/

問屋という業界は何ができるのか

これまでずっと問屋の価値って何なのか、問屋という業界は何ができるのかを考えてきました。ゆくゆくは家業である食品問屋の丸菱に戻ることは決めていたので、食品ビジネスの現場をまずは経験しておきたくて、カゴメと日清製粉で経験を積みました。カゴメは野菜生活のような家庭用商品をつくる食品メーカー、日清製粉はベーカリー、菓子屋にとどまらず、うどん屋やラーメン屋など専門店に向けた業務用の小麦粉などの原料素材を製造・販売する会社です。家庭用と業務用の両方の現場を経験したことで、問屋のおもしろさ、特に業務用の問屋だからこそできることが見えてきました。

それは付加価値をつけられること。家庭用の問屋は基本的にはメーカーから大量に安く製品を仕入れて、そのままお客さんのもとに届けるため、1円でも2円でも原価を下げて粗利を増やすというのがビジネスモデル。でも業務用の問屋のおもしろいところは、製品がそのまま完成品としてお客さんのもとにいくわけではないところなんです。食品問屋の場合、ユーザーであるお店によってお菓子やパンに加工されて最終的にお客さんのもとに届けられる。変化が起きることで、単なる価格競争ではなくなってくるんです。それと食品に関して言えば、原価が低くて利幅が少ない代わりに流通量は圧倒的に多い。少ない利幅で必死にやりくりしている問屋も見てきたので、そうならない新しい問屋の形をつくらなければと思って生まれたのが丸菱リンクトという会社であり、オーダリーというサービスです。

築地市場のような問屋を目指して

オーダリーは商品売上とサブスク会員費の2本の柱で運営されていて、ユーザーから月額を払ってもらうことで商品1品からでも送料無料かつ問屋価格で購入できるサービスです。サブスクってユーザーにはハードルが高いかもしれないけど、その分僕らも目先の売上にとらわれずに、継続してくれるユーザーが喜ぶことだけに投資し続けられる。その結果会員を減らすことなく流通量が上がっていけば、僕らがクリエイターと呼んでいるメーカーの人たちもハッピーになる。スモールビジネスのユーザーとクリエイター、そして僕ら、みんながwin-winになるために有効なモデルを現在進行形でつくっています。

今はユーザーが求める品揃えを日々充実させつつ、流通量という実績を積み上げていっている段階。でも手応えは感じています。以前SNSに、オーダリーから届いたダンボールの写真をUPしているユーザーがいたんです。お店側が「うちはここから仕入れてるよ」って問屋の名前を挙げることってまずないですよね。あるとすれば築地市場くらい。その名前が信頼の証だから。だから僕らオーダリーもその信頼を築いていきたいんです。

最高の仕入れ体験のために

問屋ってリアルなマッチングだと思うんです。つまりユーザーが欲しいものとメーカーが売りたいと思っているものをマッチングさせていくことが問屋としての重要な仕事です。

そこで大切になってくるのがマッチングしていく“体験”だと思っています。例えばサブスクサービスでもApple MusicとSpotifyでは何が違うのか。もはや扱っている曲数ではないと思うんです。サービスごとのプレイリストの充実具合だったり、潜在的に求めていた楽曲とマッチングする体験こそが魅力だと思っていて、この体験自体をつくれたら今までにない問屋になれる。

そのための機能が「仕入れリスト」と「マーケットトップ」。オーダリーでは注文は必ず仕入れリストに登録しないと買えないようにしています。基本扱っているのは業務用の材料でありユーザーも飲食店がほとんどだから、定期的に発注する材料の見落としを防げるし、こちらとしても材料の需要を予測しやすくなる。マーケットトップには、読み物コンテンツや見慣れない材料のことなど、あらゆる情報が毎日のように流れてくる。言ってみれば仕入れリストは通い慣れた通学路で、マーケットトップは渋谷スクランブル交差点みたいなイメージです。街歩きをしていてふと気になるものを見つけるような、そういう食材や情報との出逢う体験をオーダリーはつくっています。

ここで意図的にしているのが、適度に不便で摩擦が起こるようなサイトづくりです。便利でスムーズでわかりやすいものが求められがちですが、その方向に進んでいけばどのサービスも行き着く先はコンビニのようなものになると思うんですよね。欲しい物を買うだけならいきなり検索画面があればいいし、ECサイトは手間を減らして買いやすくするのがセオリーだけど、うちはそうしない。目的にたどり着きやすくするために検索主体のサイトになれば、自分の興味の範囲内でしか情報を得られなくなってしまいます。便利にすることでユーザーのどんな体験が失われるのか、どこにちょっとだけ違和感を持たせるのかが大事だと思っていて、こういうことを常にチームで話し合って決めています。

農業のようにみんなで向き合う

オーダリーが本当にユーザーの役に立てているのか、もちろんユーザー数は増えているし、売上は増えていますが、最終的にはそれは察するしかないと思っていて。ユーザーにどんなにアンケートやヒアリングをしたところで、ユーザーの本心が聞けるとは限らない。例えば自販機で買った飲み物を「なんでこれ買ったんですか?」と聞いたとしても、なんとなく論理的な言葉で答えるだろうけど、実際のインサイトは違う。そういう意味で言うと正解がないし、だからこそ一生懸命考えて仮説を立てて解釈し続けるしかないんです。でも自分一人で判断していると、経営者である僕が間違っていたら間違った方向に進んでしまう。だからチームみんなで考え続けないといけない。それがうちの社員に求める資質。

毎日夕礼をしているのも、ユーザーのオーダリーの使い方やちょっとした数字の変化など、日々の小さな機微に気づき、共有することが大事だと思っているからで、例えるなら農業に近いかもしれない。種を蒔いて出てきた芽が変な方向を向いていないか、葉っぱの色は変じゃないか、そういった機微に気づくこと。農薬を使えば一気に解決するようなこともあるだろうけど、僕らは持続可能な方法を模索していこうと思っているからこそ、役職を問わず全員でサービスやユーザー体験を見るようにしています。

 “いいチーム”をつくっていくことが、結果的にオーダリーのサービスの向上に繋がると思っています。だから「今日はどんな変化を起こせるかな?」って考えながら出社するのが、僕の毎日のモチベーションになっています。

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