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【社員インタビュー Vol.23】技術者から、売れる仕組みを作るプロへ。アダコテック1人目のマーケ担当者が考える、アダコテックの面白さとは

▼中島美鈴(なかじま・みすず)
九州大学大学院にて有機半導体デバイスの材料開発から特性評価に関する研究に取り組み、博士課程単位取得退学という形で研究の場を離れる。塗布装置メーカーでものづくりのプロセスに深く携わったのち、外資系の分析機器メーカーでセールス&アプリケーションエンジニアとして営業・技術営業だけでなく国内向けにコンテンツを提供する経験を積み、ニコン㈱に入社。超解像顕微鏡などの技術営業、営業支援を担当後、営業戦略担当として国内マーケ、販促部門にて活躍。並行してMBAを取得した。その後検査装置メーカーの㈱XTIAでは導入案件のPMや営業、マーケ、広報まで幅広く担当。ピクシーダストテクノロジーズ社を経て2023年5月にアダコテックに入社。

――経歴を拝見すると、理系のバックグラウンドを活かしてご活躍されてきた印象ですが、大学ではどのような研究をしていたのですか?

私が在籍していたのは有機EL/有機半導体で有名な研究室で、いわゆるシートディスプレイと呼ばれる、湾曲できるシート状のPCを実現させるために必要となる有機トランジスタの材料合成からデバイス作成、特性評価などを行っていました。化学と物理にまたがる領域で、研究はとても面白かったので博士課程まで進みましたが、実用性という観点では遠い地道な研究でした。もう少し実用が見えそうなことに取り組みたいと思い、就職を決めました。そもそも大学進学当初、理学部ではなく工学部を選択したのは実用性の高いことをやりたかったという背景もありましたしね。

――キャリアの序盤ではものづくりに深く携わったということですが、どのような経験をされたのでしょうか。

1社目は液晶塗布装置を主力とする精密塗布技術のニッチトップメーカーに入社しました。研究で扱っていたのが液晶材料だったので評価技術の構築に貢献できるだろうと思い入社しました。実際には評価だけでなく顧客の期待する塗布を実現するための機械・電気設計にも業務の幅を広げる機会が得られました。また当時新規事業として取り組んでいたバイオチップ製造装置では既存製品の改造ベースではあるものの、部品の選定からシステム設計、部品図、配線図、組立図まで準備して手配し性能評価までの一連の過程を経験できたことは非常に勉強になりました。

――ザ・モノづくりといった感じのキャリアのスタートですね。

そうですね。期待以上に実用的なモノづくりを経験できました。ただ、3年くらい経ったころ機械設計の業務が主となっていることに気づき、キャリアの方向性に悩み始めました。社内では機械設計の技術者が求められがちでしたが、その道に進むとなると自分の強みを生かしづらいなと。バックグラウンドをもう少し直接的に生かせる領域がないかという視点で転職活動を行いました。

2社目のメトラー・トレド社には熱分析機器のセールス&アプリケーションエンジニアとして入社しました。熱分析は大学院時代の私の研究テーマの中で特に重要な分析手法であり、中でもメトラー社の顕微鏡用ホットステージはよく使っていたんです。そのため、操作が分かるというだけでなく原理やデータ解析なども研究室の後輩に教えていたくらいに知見があって、まさに強みを生かせそうだと思いました。一方でメトラー社は専門商材について顧客となる研究者や専門家とコミュニケーションがとれる人材を採用したいという意向があり、理系人材のセールスエンジニアへの採用に積極的だったので親和性が高かったのでしょう。決まるまでの時間が非常に短かった記憶があります。

国内熱分析は小さなチームだったので、顧客への製品紹介から技術営業的な機器構成の選定、見積、提案を進めつつ、アプリケーションエンジニアとして顧客のサンプルでデモ測定をしてレポートの作成、顧客の目的に合ったデータ解析、導入後も操作説明、アフターフォローまでという一連のセールスプロセスを経験しました。また、メトラー社はグローバルでマーケティングが強い会社で、スイス本社からアプリケーションノートやウェビナーなどのコンテンツ提供が頻繁にありました。その日本語記事の校正作業なども担当し専門家が読んで違和感のない表記にして国内の市場に届けるのは非常に学びが多い経験となりました。
この会社での経験は私のキャリアのコアになっています。

――そうなんですね!特に印象的だったのはどのようなご経験なのでしょうか。

ちょうど当時ローンチされた画期的な熱分析装置「超高速DSC」の国内展開を推進したことです。DSC(示差走査熱量分析計)は一定の速度で対象物を昇降温させその吸熱・発熱挙動を分析する熱分析の一つなのですが、熱は伝達に時間がかかったり材質によって熱容量が異なるため制御が難しく10mg程度の少量サンプルを10℃/minで走査するような分析が一般的です。そんな中、MEMSセンサを用いごく微量のサンプルを昇温速度最速 240万℃/min、降温速度最速24万℃/minで制御し、高速なプロセスでの吸熱・発熱挙動を分析するという超高速DSCは非常に画期的な製品でした。

性能だけを聞いた時には非常に戸惑いましたが、本社で開催されたグローバルミーティングに参加し、開発にかかわったMEMSセンサの研究者の講演やターゲットにしている高分子材料の結晶化プロセスの速度依存性の講義、セールスマテリアルの説明、サンプルで機器のトレーニングを受けて、どういうものでどういう意図で作られたのかを理解して国内での展開のイメージを持つことができました。この辺りの本社の準備にマーケの強さを感じます。

顧客に対して提案やデモを実施しながら、どういう分析ができればいいのかなどについて一緒に考えていくという形で商談を進めました。イノベーティブな製品だからこそのプロセスを経験することが出来ました。

――「すごい製品」ありきでニーズを開拓していくというのは大変そうですが、非常に面白そうですね。

市場開拓は非常にやりがいがありましたが、次はそういう新しい技術を世に出すところから携わりたいという気持ちが強くなりました。そうすると外資系の国内販社のつらさでキャリアの進め方に見通しが立たず、日本のメーカーならできるのでは?という発想でニコンに転職することにしました。超解像顕微鏡などの最先端の生物顕微鏡の技術営業から入ったのですが、技術の理解やどうすごいのかを個別の顧客に説明はできるもののそれを広く届けようとすると方法がよく分からないことに気づきました。その仕組みがメトラーで経験していたマーケティングなのか、商材に合わせて仕組みを考えるにはどうすればいいのかなということでオンラインで海外MBAが取得できるコースを始めました。マーケティングだけでなく、これまで学んだことのなかった組織論や経済学、経営、ビジネスプランの立て方などビジネス面での実践的な知識や考え方をインプットでき、業務に生かせる学びとなりました。

――その後入社されたXTIAさんで、今アダコテックのメンバーである永井さんと一緒に働いていたんですよね。

そうですね。先端技術の情報を適切に届けて必要とする人への価値提供につなげるという点ではベンチャー企業への挑戦もこれまでのキャリアの延長線にありました。ただやはり、大手メーカーであったり、XTIAやピクシーダストのようにある程度フェーズの進んだベンチャーだと「すでにできあがっているもの」のプロモーションになることが多かったんですよね。売るモノ自体や売り方といった、ビジネスの形から作っていく余地のある会社がいいなあと、漠然と思っていました。転職活動をしていたわけではありませんでしたが、XTIAからアダコテックに転職した永井さんとお会いした際にお誘いを受けて、アダコテックに興味を持ちました。

――なるほど。永井さんの猛プッシュだったんですね(笑) やはりフェーズといったところは魅力的に映ったのでしょうか。

はい。これまでの経験を踏まえて、今のフェーズのアダコテックで役に立てそうだなと思った部分が多くありました。具体的には、技術・製品に合った売り方にしていきながら同時に売り方に合った製品にしていくという点です。どちらもフレキシブルなフェーズなので、より面白さを感じました。

加えて、永井さんとまた一緒に働きたかったのも理由の一つです。永井さんは生産技術のプロで現在事業領域でも顧客の考え方をよくわかっているという強みをもっていて事業開発を引っ張ってくれています。そんな製品・サービスづくりにマーケとして貢献していければと思っています。

――入社してからここまでの中島さんのミッションはどのようなものだったのでしょうか。

初めにホームページの改修に取り組みました。これは発信する情報が抽象的過ぎたり、古い情報が混ざっていて顧客に誤解を与えかねない部分があったりして、その結果インバウンドで質の良い引き合いが来ないという問題につながっているように見受けられたためです。製品の簡単なLPを作成しリンク先をそちらにするだけの簡単な対応で一定の改善が見られました。その後に本格的なリニューアルの計画を始め、24年2月に全面リニューアルまでいたりました。現在の私たちの状況に合わせ、コンテンツを増やしたり更新しやすいフレキシブルな構成となっています。

また、技術について顧客に理解を深めてもらうことで魅力を感じてほしいという目的の技術ブログの立ち上げにも携わりました。採用広報向きと一般的には言われる技術ブログですが、プロダクトがどういう技術を使っているかを丁寧に説明することは顧客が技術者の場合にはプロモーションの効果も期待できます。コンテンツを更に増やしていけるよう、企画をがんばっていきたいです。

よりフロントのところでいうと、ここ半年くらいの展示会への出展周りをいろいろ担当してきました。アクションを積んできたので、私たちのプロダクトと親和性の高いお客様がどこにいるのかが少しずつ分かってきたのは大きな収穫でした。ある程度仮説が立ったので、これからは売れるための仕組みをどう作るか、という方向に舵を切れると思っています。

――今はPMFを目指した探索フェーズですので色々と大変なことも多いと思いますが、やりがいや難しいポイントなどはありますか?

アダコテックには今までマーケティングの担当がいなかったこともあり、マーケティングに必要な考え方について社内コンセンサスを取らないといけないなと考えています。例えて言うなら、アダコテックは「業務用カレー鍋」を作っているのであって、その売り先は「おいしいカレーを食べたい消費者」ではないんですよ。ただどうしても価値提供のわかりやすさやリードタイムといった観点で消費者にアプローチしてしまいがち。役割が違うことで目線も変わってくるので、そういったコンテクストの違うメンバーをつなげて認識を合わせるにはどうしたらいいか?ということを考えています。

マーケティング=販促活動、というイメージが強いんですが、スタートアップとして今の時期は検証という意味合いが強く、いまいま売れる・売れないだけではないと思っていて。こういうお客様にはこういう見せ方をしたらどうか?といった仮説を1つずつ試行錯誤していくことが大切だ、ということを伝えていきたいなと思います。

(↑中島さんが社内用に作成したスライド)

――今後の目標やこれからアダコテックでやっていきたいことを教えてください!

とにかく売れる仕組みをつくっていくことが目標です。プロダクトの面白いところを引き出して、それに価値を感じてくれるお客様にしっかりと届けていく、ということを着実に進めていきたいと思っています。なかなか一朝一夕で達成できることではないので、難しい課題をやり抜く力のある方にぜひジョインいただきたいと思っています!

(インタビュー・構成:出塚杏沙)


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