”まだ見ぬ世界”をビジュアル化する。CafeGroup コンセプトアートチーム統括 小池進太郎さん
ゲームや映画の世界観をゼロからつくり上げる「コンセプトアート」。
ファンタジーから近未来、SFまで、多彩な作品の世界観を生み出すアーティストはどんな想いや日常を過ごしているのでしょうか。
今回お話を伺ったのは、コンセプトアートチーム「at//c」を統括するCafeGroupの小池進太郎さん。
独学時代からフリーランスを経て、コンセプトアートの最前線で活躍するまでの道のりや、“まだ形のないアイデア”をビジュアル化するプロの哲学についてお聞きしました。
コンセプトアートに興味があるCGアーティストはもちろん、ものづくりが好きな方にも刺激になるエピソードが満載です。ぜひ最後までご覧ください。
目次
- ― これまでのキャリアや経験について教えてください。
- ― なぜコンセプトアートという職種を選んだのでしょうか?
- ― CafeGroupに入社したきっかけや決め手は何でしたか?
- ―フリーランスから会社員に転向して感じたメリットはありますか?
- ― 大きな影響を受けた作品やアーティストや体験はありますか?
- ― 普段、アイデアを形にするためにどのようなリサーチを行い、仕事に生かしていますか?
- ― 最近注目しているアーティストやトレンドがあれば教えてください。
- ― SF的な未来都市や遠い未来を思わせる世界観を多く手がけていますが、インスピレーションの源は?
- ―「at//c」の統括として、特に重視していることは何でしょうか?
- ― CafeGroupや「at//c」としての目標があれば教えてください!
- ― 印象深かったプロジェクトと、そこから得た学びを教えてください。
- ― オフの時間はどのように過ごされていますか?
- ― CG業界を志す若手へのメッセージ
- おわりに
― これまでのキャリアや経験について教えてください。
2008年に東京デザイナー学院(現TDA)を卒業後、少しフリーターをしながら作品制作を続け、 STUDIO TOMIYASU(現INEI)にアルバイトとして入ったのがキャリアのスタートでした。
その後、フリーランスとしてゲーム会社や映像会社を渡り歩き、2014年からCafeGroupと仕事をするようになり、2020年にはコンセプトアートチーム「at//c」の統括として社員になりました。
マットペインターとしてはテレビCMの背景制作を多数担当させていただきました。
映画では『約束のネバーランド』『シン・仮面ライダー』などにも参加しています。
コンセプトアーティストとして『FINAL FANTASY Ⅶ REMAKE』、イラストレーターとして『ラストクロニクル』『天空のクリスタリア』など、幅広いタイトルに関わってきました。
― なぜコンセプトアートという職種を選んだのでしょうか?
もともと風景を描くのが好きで、最初はマットペイントを中心に活動していました。
ただ国内ではマットペイントとコンセプトアートを兼任することが多く、その延長で自然とコンセプトアートを手がけるようになり、
今ではそちらがメインになりました。
イラストやマットペイントも好きですが、いまはコンセプトアートにやりがいを感じています。
コンセプトアートは「完成した状態」をイメージできる絵を提示し、プロジェクトの方向性を固める役割だと考えています。
具体的な設計図というより、“こんな世界観”を伝えるための大まかなビジュアルを作り、制作チームに共有していくイメージです。
形のないアイデアをビジュアルに落とし込むうえで、コミュニケーション能力や提案力が求められる職種です。
小池さんのArtstationより抜粋
― CafeGroupに入社したきっかけや決め手は何でしたか?
フリーランス時代に仕事が途切れていたとき、モデリングカフェ(当時)がマットペインターを募集しているのを見かけたのがきっかけです。
ちょうど知人がコンセプトアートとして在籍していたので、相談してみると「一度オフィスに来てみては?」と声をかけてもらいました。
その後、モデリングカフェとアニメーションカフェで業務委託として参加し、 社長の岸本さんから「コンセプトアートチームを作りたい」とオファーをいただき、メンバーを募ってチームが整ったタイミングで正式に入社しました。
現在は「at//c」の統括として、コンセプトアート全般を指揮しています。
―フリーランスから会社員に転向して感じたメリットはありますか?
メリットは、腰を据えて制作に集中できる環境が整っている点です。営業や事務を一人で抱える必要がなく、社内のクリエイターやテクノロジー部門と日常的に情報交換しながら、企画から完成までをワンストップで進められます。この仕組みこそが CafeGroup の大きな強みだと感じています。
デメリットは今のところありません。裁量や働き方の自由度はフリーランス時代と変わらず保たれています。
― 大きな影響を受けた作品やアーティストや体験はありますか?
原体験としては、90年代のPCゲーム『Marathon2』に挿入されていたリアルなイラストに衝撃を受けました。
当時は「どうやって作ったんだろう?」という謎がずっと残っていて、それがCraig MullinsによるPhotoshopのデジタルイラストと知ったのは、
10年以上経ってからでした。
また、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズで活躍したマットペインターのDUSSOやDylan Coleも大きな影響源です。
リアルで没入感のある作品に惹かれるのは、そうした体験が強く残っているからだと思います。
― 普段、アイデアを形にするためにどのようなリサーチを行い、仕事に生かしていますか?
日常的にArtStationやPinterest、X(旧Twitter)などでさまざまな絵をチェックしています。
その時々の仕事に合わせてピンポイントで探すこともありますが、常に魅力的な作品をストックする習慣のおかげで、リファレンス探しがスムーズです。
話題のアニメや映画はできるだけ観るようにしていて、「この作品は何に影響を受けているのか」という元ネタに注目することが多いです。
元ネタをたどると、さらに学べる要素が見つかるので重視しています。
― 最近注目しているアーティストやトレンドがあれば教えてください。
最近は中国のアートシーンに注目することが多いです。特に『Black Myth: Wukong』のアートディレクターであるYang Qiさんは、非常にクオリティの高い作品を多数アップしてくれており、とても勉強になります。
コンセプトアートのトレンドとしては3Dをベースにした作品が増加している印象です。Blenderやスキャンモデルの普及で、3Dを使った美しい絵を作る敷居が一気に下がりました。ただ実際の制作現場ではアイデア出しがメインなので、3Dを使わない作業もまだまだ多いです。SNS上のトレンドと現場とのギャップを感じることはありますね。学生の方は3Dと2Dの両方を練習すると良いと思います。
― SF的な未来都市や遠い未来を思わせる世界観を多く手がけていますが、インスピレーションの源は?
子どもの頃に観た『スター・ウォーズ』や、昔から親しんでいた『Magic: The Gathering』などの影響が大きいです。
ゲーム『Marathon2』を遊んでいたこともあり、「近未来」というよりも、さらに遠くて想像を超えた未来にロマンを感じています。
リファレンスはインターネットから多く得ていますが、ArtStationやPinterestで集めた作品を眺めることも大きなアイデア源です。
―「at//c」の統括として、特に重視していることは何でしょうか?
徹底していることはないのですが、自主制作を大いに推奨しています。
ギャラリーサイトにアップしている作品の多くも自主制作なので、そういったアウトプットを通じてアーティストとして自立してほしいと思っています。
ゲーム関係の仕事などは公開できないケースが多いため、自主制作を続けているとモチベーション維持にもつながります。
― CafeGroupや「at//c」としての目標があれば教えてください!
CafeGroup では、統合によるシナジーを活かし、部署の垣根を越えて同一コンテンツを創出する機会をさらに増やしたいと考えています。アート・映像・Web を一貫して手がけられる基盤があるため、会社全体の成長を私自身も楽しみにしています。
一方、at//c はメンバー全員がアートディレクターとして自律的に動けるチームづくりを目指しています。課題は残るものの、着実に前進している実感があります。
― 印象深かったプロジェクトと、そこから得た学びを教えてください。
コンセプトアートの案件は基本的に挑戦的な要素が多いです。
斬新なデザインや世界観を求める依頼が多いので、日々試行錯誤しながらアイデアを深めています。
印象的なプロジェクトもたくさんありますが、契約上詳しく語れないものが多く……。
ただ毎回学びはあります。特にゲーム系のアートディレクターからのフィードバックは学ぶことが多く、
そこからさらにブラッシュアップしていく過程がとても面白いです。
― オフの時間はどのように過ごされていますか?
休日は子どもと遊んだり、ゲームをしたり映画を観たりがメインです。
オンオフを厳密に分けず、気が向いたときに制作するスタイルなので、ゲームは良いリフレッシュになります。
本屋で画集やイラスト集を眺めるとモチベーションが一気に上がるのでおすすめです。
休日のオフショット
― CG業界を志す若手へのメッセージ
新しい知識を得続けることで、どんどん成長できる業界だと思います。 チュートリアルは「見るだけ」ではなく、実際に手を動かして試すのが大切です。
また“CGアーティスト”といっても分野は非常に幅広いので、いろいろ経験して自分に合った表現を見つけるのがいいですね。
もしプロを目指すなら、いつか一緒に面白い作品を作りましょう。
おわりに
最後までお読みいただきありがとうございます。
コンセプトアートの奥深さや、常にインプットを欠かさない小池さんのクリエイター魂が伝わりましたでしょうか。
これから「at//c」が描く未来のビジョンもますます楽しみです。
ぜひ今後の活動にもご期待ください!