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教えて吉田先生!これからの健康経営を考える!11.経済産業省の取組みについて教えてください。

全20回シリーズでお伝えしています「教えて吉田先生!これからの健康経営を考える」。前回は「厚生労働省の取組みについて教えてください」でした。今回は「経済産業省の取組みについて教えてください」をお送りします。

インタビューは2020年4月6日に都内にて行われました。

―――今日はいよいよ経済産業省の取り組みについて伺います。

はい、まずは前回のおさらいから。時系列で言うと、厚生労働省の政策として「健康日本21」(2000年)、第2次安倍内閣「日本再興戦略」の成長戦略にも位置づけられた「データヘルス計画」(2013年)が続きました。対する経済産業省は「企業の健康経営ガイドブック」を2014年に公表、2015年から東京証券取引所と一緒に「健康経営銘柄」、続いて2017年からは「健康経営優良法人」の選定、と進めてきました。

特に「健康経営銘柄」は、東京証券取引所に上場している企業の中から健康経営の取組みが特に優れた企業を選定し、長期的視点での企業価値向上を重視する投資家にとって魅力ある投資対象として公表することで、企業における健康経営の取組みの促進を目指すものとして大きな注目を集めました。

続いて厚生労働省はそれらと歩調を合わせ、2016年の政府「骨太方針」において「企業による健康経営の取組とデータヘルスとの更なる連携を図る」とされたコラボヘルスの考え方を体系化し、翌2017年に「コラボヘルスガイドライン」を作成しています。

健康経営から健康投資へ

健康経営が一定の広がりを獲得した、と見た経済産業省は、2019年から次の方向性を示しています。それが「健康投資管理会計ガイドライン」の策定(2020年6月公表)で、「企業が健康経営を効果的に実施し、資本市場をはじめとした様々な市場と対話するための枠組みを示す」と謳っています。つまり、各企業は、単に社員の義務的な健康管理を行うだけでなく、企業の経営課題としての労働生産性向上といった課題解決のために、社員の健康の保持・増進に向けた取組を主体的に実行し、企業内でPDCAサイクルを回すこと、及びその取組を外部へ発信することが重要となりました。

これまでは、経済産業省が音頭を取り、健康経営の取組の方向性についてガイドブックの作成や顕彰制度などを通じて示してきたけれど、今後は各企業が主体的に取り組む必要があり、その評価を株式市場に問いなさい、ということです。

管理会計の手法による「見える化」が求められている

ガイドラインでは、企業が社員のためにそれぞれ創意工夫して自社の健康経営をより継続的かつ効率的・効果的に実施するための、内部管理手法が示され、かつ取組状況について各企業が市場などの外部と対話する際の共通言語が整理された、と理解して良いと思います。

本ガイドラインでは、管理会計の手法により、健康経営に要する費用とその活動によって得られる効果を認識するために、量的・金銭的指標を用います。健康の定義は幅広いものであり、量的・金銭的指標だけでその全てを表しきることはできないものの、それらを「見える化」をすることで、個人も組織も健康を増進するための合理的な判断や行動をとる一助となります。また、「見える化」することで、社員・事業主・地域社会・株主等の異なる立場のステークホルダーが、健康について共通の理解や認識を醸成し、対話することも可能となるでしょう。

健康投資管理会計ガイドラインは主に、健康経営に取り組み始めていて、効果分析や評価方法を模索している企業による活用が想定されています。企業はこのガイドラインを用いて健康投資管理会計を作成することで、企業価値の向上を図ることができるでしょう。

(聞き手:株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介)

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