SES出身の北原秀人さんは、上流工程への挑戦と正当な評価を求めて転職を決意。数ある選択肢の中から選んだのは、設立されたばかりの兼松株式会社(以下、兼松)の100%子会社であるIT企業、兼松シードポートでした。
入社してわずか数ヶ月で3つのプロジェクトを経験し、自ら希望を出してチームを異動。今まさに商社の基幹システム刷新という、大規模プロジェクトの上流工程を担う北原さんに、転職の経緯と入社後のリアルを聞きました。
SESの5年半で感じた「上流へのもどかしさ」と、転職先の選び方
――まずは、これまでのご経歴について教えてください。
北原:私は新卒で入社したSES企業に5年半ほど在籍し、様々なプロジェクトに関わってきました。具体的には、エンジニアとして複数の客先に常駐し、アプリ開発やデータベース管理、Webサイトのログインページなど、設計から開発、テストまで幅広く担当しました。
――転職を考えるようになったのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか。
北原: きっかけは2つありました。1つは、キャリアアップへの課題感です。SESの現場は設計・開発・テストが中心で、お客様と直接話して要件をまとめるような上流工程の案件には、なかなかアサインされません。もっと上流から携わりたいという思いが、だんだん強くなっていきました。
もう1つは、評価制度への疑問です。私の場合、客先に一人で常駐していたため、自社の上司が現場を直接見る機会がほとんどなかったんです。評価の基準は、勤続年数や資格取得がメインで、実務での成果が給与に反映される仕組みがありませんでした。「自分が何を成し遂げたかで評価してほしい」という気持ちが積み重なって、転職を決意しました。
――転職先はどのような軸で探していましたか。
北原: 軸は2つあります。1つは上流工程から関われること。もう1つは、上司が近くで自分を見て、評価してくれる環境であることです。先ほどの転職理由が、そのまま軸となっています。転職先候補としては、客先常駐を避けていたわけではなく、上司が近くにいて適切に評価してくれる現場かどうかを、必ず確認していました。
――数ある選択肢の中から、兼松シードポートへの入社を決めた理由を教えてください。
北原: 正直に言うと、兼松シードポートへの最初の志望度は、そこまで高くありませんでした。ただその気持ちは、担当一次面接で社長の堺と話した際に、気持ちがガラッと変わりました。会社を立ち上げた経緯や取り組んでいるプロジェクトの内容、描けるキャリアパスについて、直接・丁寧に話してくれたんです。内容への共感もあったのですが、それ以上に「この社長と一緒に働きたい」と強く感じました。面接が終わった時点で、兼松シードポートへの志望度が一番になっていました。
また、プロジェクトの内容も大きな決め手でした。商社の基幹システムを5〜6年かけて刷新する規模の案件に携われるのは、貴重な機会だと感じました。しかも商社という特殊な業界での経験は、かなり希少なキャリアになると直感しました。
――設立間もない会社への入社に、不安はありませんでしたか。
北原: 不安はありました。最終面接の直前にエージェントから「北原さんが中途採用の1人目です」と聞かされて、かなり動揺しましたね(笑)。ただ、親会社がプライム上場企業の兼松株式会社であることが、大きな安心材料になりました。もし兼松シードポートがグループ企業としてどこにも属していない会社であれば、入社を決めていなかったかもしれません。
評価についても、人数が少ない分、上司が間近で仕事を見てくれます。自分の働きが直接伝わりやすい環境だと感じたことも、不安を払拭してくれた理由の一つでした。
3つのプロジェクトを経て、自ら動いてたどり着いた「上流の現場」
――入社後はどのような業務に携わってきましたか。
北原: 入社後はまず、各部署のデジタル課題を解決するDXチームに配属されました。最初に取り組んだのは、在庫照合の自動化です。倉庫からの報告資料・営業担当者のExcel管理表・基幹システムの入力データ、この3つの在庫情報を毎回目視で突き合わせていた作業を、プログラムで自動化しました。小規模ながら、課題のヒアリングから解決策の設計まで自分で考える経験ができたのは、大きな収穫でした。
その後、会計系の基幹システム刷新を担うコーポレートチームに異動しましたが、ここで少し立ち止まりました。配属された時点ですでに要件定義が終わっており、前職のSESでずっとやってきた仕事と、ほとんど変わらないような業務内容でした。
――そこでどのような行動を起こしたのでしょうか。
北原: 上司に直接相談しました。「コーポレートの今のフェーズは前職と同じ設計の仕事で、自分がやりたいのはその上流の部分です」と率直に伝えたんです。たまたまコーポレートサイドが開発フェーズに移ることで、協力会社を増員するタイミングだったこともあり、要件定義フェーズを担うビジネスサイドへの異動を認めてもらえました。入社から数ヶ月で、DX・コーポレート・ビジネスサイドと、3つのチームすべてを経験したことになり、こうした経験も、小さい組織ならではの柔軟さだと思います。
――現在のビジネスサイドでは、どのような難しさがありますか。
北原: 同じ会社なのに、部署ごとにまるで別会社のように業務が異なり、複雑極まりないことです。兼松の各営業部署は扱う商材がまったく異なるため、必要な機能もデータも部署ごとに全然違います。為替情報の管理が必要な部署もあれば、冷凍・冷蔵といった荷姿の管理が必要な部署もある。それぞれが独自のExcelで運用してきたものを、一つのシステムに集約しなければなりません。
難しいのは要件定義そのものというより、全部署の異なる要望を矛盾なく一つに整理していくプロセスです。しかも現在は要件定義よりもさらに上の、システムの全体構想を検討している段階。前職では想像もしなかった領域に、今は足を踏み入れています。
商社の「伝え方」を学びながら、エンジニアの枠を超えていく
――入社前後で、働き方のギャップはありましたか。
北原: 一番驚いたのは、ミーティングの多さです。実務の半分近くをミーティングや折衝に費やしている感覚で、前職では考えられなかった頻度でした。SESの頃は、タスクを与えられてそれを黙々とこなすスタイルが基本でしたから。
ただ、振り返ってみると、お客様と直接話しながら仕事を進めることは、転職前からずっとやりたかったことでもありました。今は兼松のIT企画部や営業部門、外部ベンダーなど、さまざまなステークホルダーと直接やり取りしながらプロジェクトを進めています。ギャップというより、求めていた環境にようやく来られたという感覚の方が近いかもしれません。
――営業部などは、IT知識がそこまでない方も多いと思います。それを踏まえて、コミュニケーション面で、工夫していることはありますか。
北原: できるだけITの専門用語は使わないように意識しています。一方で、商社側の用語にはまだ苦労していて、ミーティングで飛び交う言葉の半分ほどしか理解できないこともあります。兼松が用意している用語集を参考にしつつ、自分でも備忘録を作って少しずつ知識を積み上げているところです。
むしろ、コミュニケーションについては商社の方たちから逆に学んでいる部分が大きいです。兼松の方々はミーティングで必ずパワーポイントのスライドを用意して、図や表を使いながら説明するんです。エンジニアはプレゼンをする機会がほとんどないので、最初は「そういう文化があるんだ」と新鮮でした。今は自分もその手法を取り入れて、技術的に伝わりづらい内容は図や絵に落とし込んで説明するようにしています。この経験は、エンジニアとしてだけでなく、ビジネスパーソンとしての引き出しを確実に増やしてくれていると感じています。
――兼松シードポートならではの働きやすさを感じる場面はありましたか。
北原: 声が届きやすい環境だと実感しています。毎週全社ミーティングがあり、業務連絡だけでなく、困っていることや相談したいことをその場で共有できます。もし解決しきれなければ、社長や上司と個別に打ち合わせの場を設けることも柔軟にできる。先ほどお話したチームの異動も、上司に相談してすぐに動いてもらえました。
人数が少ないからこそ、自分の意見や希望が組織に直接届く環境であり、大きな会社ではなかなか味わえないと思います。ただその分、タスクを与えてもらうのを待つのではなく、今のフェーズに何が必要かを自分で考えて動くことが求められます。そうした働き方が合う人にとっては、非常にやりがいのある環境だと感じています。
「会社の名前より、自分のやりたいこと」を軸に選んだキャリア
――今後、兼松シードポートでどのようなキャリアを歩んでいきたいですか。
北原: まずは目の前の基幹システム刷新をしっかり完成させることが第一です。その先で興味を持っているのが、AI活用の領域です。兼松では現在、倉庫からの報告書や取引先からのFAXなど、画像データとして届く情報を担当者が手入力しているケースがまだ多くあります。それをAI-OCRで自動読み取りできれば、大幅な業務効率化につながります。AI-OCRについては既にDXチームが導入していて入力自動化の試みを行っている最中なので、更に読み取り精度を高めて、基幹システムをはじめ様々なシステムと連携する入力インターフェースとして拡張させていきたいですね。
基幹システムが完成した後は、グループ会社への展開、さらには外部への販売も視野に入れています。フェーズが変わるたびに新しい挑戦が生まれる環境なので、その都度手を挙げていきたいですね。
――最後に、転職を考えているエンジニアの方にメッセージをお願いします。
北原: 私自身、転職活動中は会社の名前や規模もかなり気にしていました。それでも前職を経験して感じたのは、大企業だからといって自分のやりたいことができるとは限らない、ということです。大きな組織ほど業務は定型化されており、上流工程に辿り着くまでに時間がかかることも多いです。
兼松シードポートは設立間もない会社だからこそ、風通しの良さや働き方の柔軟性はあります。その点は、小さい組織ならではの強みです。そして背景には兼松という親会社がある。この両方が揃っている環境は、なかなかないと思います。
不安な気持ちは、私も入社前に十分持っていました。だからこそ言えるのですが、会社の名前よりも「自分が何をやりたいか」を軸に置いて考えてみてほしいです。その軸で転職先を探したとき、兼松シードポートはきっと有力な選択肢の一つになると思います。