「会場が凍りつきましたね…」

そう語ってくれたのは元就活のKさん。

「広告会社の説明会にはいくつも参加しました。けど、あんなこと言う会社は一つだけでしたよ」

学生時代から広告業界に憧れていたKさんは、就活でも広告関係を中心に受けていたという。

その中で出会ったとある企業の会社説明会で、事件は起きた。

「説明会の終盤。質疑応答で『得意な媒体や業界は何ですか？』って聞いたんです。私は交通広告が好きだったので、駅広告とか看板とか得意なら良いなーって思って。そしたら…」

当時を思い出すように、彼女は目を細める。

「『ありません』…って」

私たちは耳を疑った。

「でも、あとに続く言葉を聞いて納得しましたね。『なんでもできるから、得意とかない』って」

要約するとこうだ。その会社はテレビCM、新聞広告、ラジオCM、雑誌広告、WEB広告、交通広告、イベント企画やHP制作など、クライアントが求めることならほぼ何でもできる総合広告会社であり、だからこそ得意とか不得意とかがないということらしい。

採用担当は続けてこう話したという。

「何でもできるって営業としては正直大変。決まった商品や売り方がないから、自分でお客様の目線に立って、調べて、考えて、企画して、プレゼンして、行動して、形にしなくちゃいけない。自分で考えて動けないと、前に進めない仕事です」

会場は二度目の静寂に包まれた。

担当者は最後にこう付け加えた。

「・・・でも、めちゃくちゃ楽しいですよ！」

その瞬間、Kさんの心の中で、恋に落ちる音がしたという。

Kさんは全てを話し終えると、立ち上がり、手を広げ、私たちに微笑んだ。

「その時の会社が、今の勤務先です！」

まるでそれが決められていたシナリオだったかのように元気よく叫んだ。

株式会社一広グループホールディングス。いい会社です。