生成AIの登場によって、私たちの働き方は大きく変わり始めています。
「AIに仕事を奪われるのではないか」そんな声も少なくありません。
一方、実際にAIを活用する現場では、少し違う景色が見えているようです。
AIに仕事を丸ごと任せるのではなく、得意な部分を委ねることで、
人はより本質的な判断や課題解決に時間を使えるようになるといいます。
今回は、ITコンサルタントとしてプロダクトオーナーを支援する片桐さんに、
AIによって仕事がどう変わったのか、そしてこれからのコンサルタントに
求められる役割について伺いました。
「調べる時間」が減り、「考える時間」が増えた
片桐さんは現在、「次にどんな機能を作るのか」「どんなUI/UXにすべきか」を
プロダクトオーナーとともに考え、要望整理や優先順位づけ、
関係者との合意形成を担っています。長く使われてきたシステムでは、
資料が残っていなかったり、「なぜこの仕様なのか」を知る人がいなかったりすることもあるそう。
そうした中身を読み解き、改善につなげていく仕事に
「事業を支えている実感があります」と片桐さんは話します。
AIの登場で最も変わったのは、「調べる時間」が減り、
「考える時間」が増えたことでした。以前は、機能改修ひとつでも処理内容を
突き止めるだけで何日もかかることがありました。
今はまずAIに読み込ませて仮説を立ててもらい、
人は「なぜこの仕様なのか」「今も本当に必要なのか」を考える側に回れます。
現在は、AIを前提に開発を進める「AI-DLC」という考え方も取り入れています。
AIが計画や開発を進め、人間は意思決定と検証に集中する。
数週間単位だったサイクルを数時間〜数日で細かく回し、
手戻りにも早く気づけるようになったと言います。
AIは「どう作るか」には強い。でも「何を作るか」は決められない
ーーーAIが進化すれば、コンサルタントの仕事も代替されていくのでしょうか。
片桐さんの答えは明確でした。
「AIは『どう作るか』はものすごく速い。
でも、『そもそも何を作るべきか』は決められません」
例えば、「この画面に項目を追加してほしい」という要望があったとします。
そのまま作ることはできます。
しかし、クライアント様の話を聞くと、
本当の課題は「手続き途中で離脱される」「同じ問い合わせが毎日届く」といった、
別の場所にあることが多いです。
だからこそ必要なのは、要望をそのまま受け取ることではなく、
まだ言葉になっていない悩みを引き出し、「なぜ必要なのか」を問い、
本当の課題を見つける。
「実務では、課題そのものを見つけたり、設定を見直したりしたほうがいいことも多いです。同じ現場を見て、同じ責任感と熱量で一緒に悩める人がいるかどうかが大事だと思います!」
お客様が求めているのは、正しい答えだけではありません。
信頼関係を築き、対話を重ね、ともに意思決定をしてくれる存在。
そこに、コンサルタントだからこそ提供できる価値があると思っています。
AIは「答えをもらう相手」ではなく、「機械の同僚」
片桐さんに「AIをどんな存在だと思いますか?」と尋ねると、
返ってきたのは「機械の同僚」という言葉でした。
部下のように「指示して、任せて、完成したものを確認する」のではなく、
こちらが考えを出すほど、返ってくるものも良くなる。
会話をしながら、一緒に考えを深めていく相手に近いといいます。
一方で、「AIに聞けば答えが出る」と期待すると、思うような結果にはつながりません。
AIは、こちらの問いの質を超えた答えを返してくれるわけではないからです。
だからこそ、「答えをもらう相手」ではなく「壁打ちの相手」として使う。
その使い方ができれば、一人でできることの範囲は大きく広がります。
以前は、知識の浅い領域で自分なりの案を持って会議に臨むことに、高いハードルがありました。
しかし今では、AIとともにたたき台をつくり、そこに自分の考えを重ねることで、
より自信を持って議論の場に持ち込めるようになりました。
AIを使う人は、作業を少しずつAIへ渡し、「決める側」「問いを立てる側」へ移っていく。
そこで生まれた時間を、より本質的な課題解決へ使えるようになるといいます。
AIに任せた先で、人はもっと本質的な仕事が見えてくる
片桐さんが目指しているのは、AIが得意なことは遠慮なく渡し、
人がアイデアや判断に集中できる状態です。
担当するシステムでも、以前は電話や店舗で行っていた手続きが、
現在ではWebで完結するようになっています。
それも、誰かが「もっと楽にできるはずだ」と考え、形にした結果です。
こうした改善がAIによってさらに速く生まれるようになれば、
社会が便利になるスピードそのものも上がっていく。
だからこそ、目指すのは「AIに任せて終わり」ではなく、
AIに任せた先で、人が何を考え、何を決め、どんな価値を生み出すのか。
その部分が、これからますます重要になると考えています。
AI時代、若手の仕事はもっと面白くなる
AIによって変わるのは、仕事の進め方だけではありません。
挑戦できる範囲も広がっています。
以前は、企画する人、設計する人、作る人と役割が分かれ、
若手はその一部だけを任されることも少なくありませんでした。
今はAIが「手を動かす部分」を支えてくれることで、
一人でも課題を見つけるところから、
構想し、形にして動かすところまで携われる可能性があります。
「『言われたものを作った』から、『自分が決めたものが動いている』に変わる。
この手応えは大きいです」
最後にこれから入社を考えている方へメッセージ
「『AIに詳しくないと厳しいですか?』と聞かれることがありますが、
まったくそんなことはありません。
むしろ来てほしいのは、AIに全部任せる人ではなく、
『本当にこれでいいのか?』と一度立ち止まれる人です。
分からないことを、分からないまま放置しない。その姿勢が、
これから一番価値になると思っています」
AIが進化するほど、人の仕事がなくなるのではなく、
人が向き合うべき仕事が変わっていく。
「何を作るのか」「なぜ作るのか」「本当にそれでいいのか」
問い続け、考え続ける人にとって、
AI時代はむしろ挑戦の幅が広がる時代なのかもしれません。