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GoNOW前夜 - ゼロスペックの飯田橋時代

 まだGoNOWというサービスが生まれる前の話です。

 僕がはじめて満朗さん(ゼロスペックCEO:多田満朗)にお会いしたのは、2016年のことです。
 当時は東京、飯田橋駅近くのマンションの一室が、ゼロスペックの事務所でした。
 バイタリティに満ち溢れた、心の優しい男だな、というのが第一印象でした。(そもそもゼロスペックは名前呼びをしている会社ではありませんが、僕が彼をファーストネームで呼ぶのは、彼の兄弟が長い付き合いのある僕の友人だからです。)

 当時僕は自分の関わっていたスタートアップから離れて、次は何をするべきか?とフラフラとしていました。独立されたばかりで事業モデルを模索中という彼に、何かノイズ程度の刺激にでもなれば、と軽い気持ちで彼の兄弟に紹介され、件の事務所にお邪魔したのでした。

 小さなワンルームの壁はそのほぼすべてがホワイトボード化されており、そこにには、たくさんの数字や文字が書き込まれていて、この世界を少しでも良くしたい、しなきゃいけない、しかもそれを利益を生む事業として実現させる、彼の話す言葉ひとつひとつに、とても前向きで、真摯な起業への思いが伝わってきました。
 具体的に、事業化を検討しているいくつかのアイディアを聞かせていただいて、中でも熱量のある話がバイタルデータを使った、人のためになる仕事について、でした。

 なるほどふむふむ。。デジタルデバイス好きな自分はロマンを感じながらも、あー、ハードを含む事業をやろうとしているのか、、、それは悪筋だな。。。そう思い、失礼を承知でそう伝えたと思います。※ハードウェア開発を目論むスタートアップ起業は、容易に後戻りできない制約や、資金調達と資金繰りの難しさがあり、いわゆるITベンチャーに比べて、文字通り"ハード"、と言われています。

 誰もが自分のデータにアクセスし正しい意思決定ができるべきだ、そういう世界を実現したい。その思いの強さを疑う余地はなかったので、すくなくとも今ぎりぎり登れるかもしれない階段の設定が必要なんじゃないか、みたいな話をしてその日は解散しました。どんなに壮大で不可能に見える未来でも、適切な階段を見つけることができれば、少しずつでも実現できるはずなので、自分たちで登れる階段をみつけなければいけない、それは当然、目指す先の未来につながっている階段であるべきだ。初期のスタートアップに必要な心得だと思います。そしてそれがとてつもなく難しい、ということを当時僕は心底感じていました。

安易な道を選ばないということで得られる強さ

 驚いたのは、そんな話をしてあまり時間を置かずに(1か月程度だったと思います)またお会いした時には、今の灯油配送の課題解決に着目したビジネスモデルの具体的な検討を開始していた、ということです。北海道や東北にほとんど縁のない僕でしたが、社会的な課題として取り扱うべき灯油配送の実態と、その課題に向けられたビジネスモデルの素案を説明してもらい(その段階で業界の利益構造の調査や与えられるコスト的なインパクトの検証もはじめていました)、彼の考えるソリューションの必要性やビジネスとしての可能性、より大きな未来への一歩としてのポテンシャルについて、深く納得したのを覚えています。先日の「誰もが自分のデータにアクセスし正しい意思決定ができるべきだ、そういう世界を実現したい。」を思い出し、この課題に向き合うことは、最初の一歩に過ぎない、と。

 当時ちょうどIoTという言葉がもてはやされていた時期でもありましたが、その波に安易に乗ろうというようなアイディアではないのは明らかでした。あったらいいな、ではなく、なくて困るものを提供すべく、より現実的で泥臭いやり方でIoTやAIのような手段を社会実装する。とても満朗さんらしいビジネスモデルと感じられ、それを成す確信のようなものを同時に掴んでいるように見えました。

 いんたーねっとおぶしんぐす(モノが人を介することなく相互に情報をやりとりする概念をいう。 これによって、広範な分野で、自動的な認識、判断、制御等やそれらの統合・連携が可能になるとの期待がある)。僕はこの理想の究極を、この世からボタンを無くす事、ととらえていたのですがが、おいおいまてまて、北海道の灯油配送ではかなり前から、顧客が何一つしなくても、灯油が配られ続けている(真冬でも屋内では半袖でアイス食べてるっていうのは、そういうことか。。)。これこそIoT的なものが目指す究極の環境がすでに社会実装されている現実があるんじゃないか。Amazonのダッシュボタン(当時話題になっていた)よりずっと先を行っている現実を、満朗さんは、今使える技術で再構築するつもりなんだな、と興奮しました。

 灯油の定期配送において、その注文に電話やボタンすら必要としないという消費者にとっては超未来的で天国な仕組みが維持できているのは、配送員のハードワークと非効率によるものだ(これはまるでアメリカのスタートアップがやるという新サービスの中身は実は人力で、そのサービスが有用であることをまず証明してから作るパターンの、証明したままかなり長い間時間が止まってる状態じゃないか)。それをセンサーを使った残量監視による業務最適化によって、より効率的に生活インフラとして維持しよう! よくわからない、本当にそれ使うの? といった必要のない便利ではなく、今ある手放せない利便性が維持できなくなるその前に、維持できる仕組みに置き換えよう、というアプローチは、もう絶対それやらなきゃだめじゃん、という説得力がありました。

 諦めない強い気持ちと、安易な道を選ばない逞しさと、誰も来ない道で確実に足を前に進める推進力。今のゼロスペックで彼が発揮しづけているものは、当時から変わっていません。厳しいハードウェアの開発に向き合ったことが、今のGoNOWの強力な競争力となっています。

 この僕が満朗さんからビジネスプランを聞かされて唸らされた時から数か月後、また次に満朗さんにお会いしたときには、さらにまた驚かさることになるのですが、それは驚くべきスピードでセンサーデバイスの試作に成功していたというまた別のお話です(そしてあまりにスピーディすぎて知らぬ間に出来上がったものがそこにありました)。以上、GoNOWがまだ名を与えられる前のお話でした。

ゼロスペックは、泥臭く課題に向き合い本当に必要なサービスを社会実装していく会社です。興味を持ってくださる方がいらっしゃったら、お気軽に「話を聞きに行きたい」を押してみてください!

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