ルーツの物語④ 子どもの育ちと就労支援をつなぐ想い
社会福祉法人を設立し、認可保育園を運営するようになってからも、私の心のどこかにはずっと残り続けている問いがありました。――「この子たちが大人になったとき、安心して働ける場所はあるのだろうか?」という問いです。
保育園に通ってくる子どもたちの中には、発達の特性や育ちのペースに違いを持つ子がいます。その子たちの姿を見ながら、私はどうしても先の未来を想像してしまうのです。子どもの頃には支えの手があっても、大人になったときに同じような理解やサポートがあるとは限らない。むしろ「社会に出たら苦労するだろう」と言われてしまうこともあります。私は、その言葉を聞くたびに「それでいいのだろうか」と胸がざわつきました。
そんな思いを強くしたきっかけの一つは、かつて児童養護施設で出会った子どもたちの姿でした。成長し、施設を巣立っていった後に、社会でつまずいてしまう子が少なくなかったのです。「働きたい」「自立したい」という気持ちはあっても、受け入れてくれる職場がなかったり、理解者がいなかったり…。その現実を知るたびに、私は「子どもの育ちと、その先の“働く”をつなぐことが、自分の使命なのかもしれない」と思うようになりました。
こうして、保育だけにとどまらず、就労支援という新しい分野に踏み出すことを決意しました。保育園で大切にしてきた「その子らしく生きられるように寄り添う」という姿勢を、今度は大人になった利用者さんに向けて実現していきたい――それが私の願いでした。
最初の一歩はとても小さなものでした。地域の方から声をかけていただき、軽作業を一緒に取り組むことから始めました。洗い物や袋詰め、農作業など、一見シンプルに思える仕事でも、そこには「役割を持てる喜び」や「誰かに必要とされる実感」がありました。利用者さんの表情が少しずつ変わっていくのを見て、私は確信しました。「やっぱりこの道は間違っていない」と。
子ども時代の支援と、大人になってからの支援。その両方をつなげていくことができれば、人生をより安心して歩めるのではないか。翔空会の取り組みは、そうした思いから広がりを見せていきました。
保育と就労支援――一見別々の世界のように見えるかもしれません。でも、私にとっては一本の道でつながっています。子どもの笑顔の先に、大人としての安心した暮らしと働き方がある。その未来を見据えて、私たちは歩みを続けてきたのです。