こんにちは。Medii広報です。今回は、2022年に入社し、現在はMediiのコンシェルジュ室を率いる室長・種田健二さんにインタビューをしてきました。
北海道の脊髄損傷専門病院で理学療法士として患者と向き合い続けた種田さんが、スタートアップへ飛び込んだ背景や、医師との信頼関係を丁寧に積み重ねるコンシェルジュ室という仕事のやりがい、そしてこれから実現したいことを聞いてみました。
ドクターヘリが運んでくる患者と、向き合い続けた5年間
──前職では理学療法士として、どんな仕事をしていたんですか?
北海道にある、脊髄損傷を専門とする医療機関で働いていました。交通事故やスポーツ中の大怪我などドクターヘリで運ばれてくる一刻を争う患者さんから関わり始めて、機能回復のリハビリテーションはもちろん、日常動作の指導、退院前には実際に自宅を訪問して手すりやスロープの設置、家屋改修の方針まで多職種と連携しながら考えていました。医師、コメディカル、患者家族が一体となって、一人ひとりの患者さんの人生を支えていく仕事です。
最初はベッドの上で手足をほとんど動かせない状態でも、受傷直後からの適切なリハビリテーションによって、歩いて退院できる患者さんがいる。自ら車椅子を操作して社会に戻っていく患者さんもいる。退院時に、笑顔で「ありがとう」と言ってもらえる瞬間は今でも鮮明に覚えていますし、あの感覚は忘れることがないですね。
──なぜ、その仕事を辞める決断ができたんですか?
逆説的ですが、この病院で働いたからこそ、一歩踏み出せたと思っています。
脊髄損傷のリハビリテーションは非常に難易度が高く、障害のレベルに応じて訓練を細かく選択しなければならない。専門施設と、そうでない施設における療法士の経験の差は大きい。「うちに来られた患者さんはラッキーだった」で終わらせてはいけないと感じていました。
専門病院の役目として北海道内の医療機関向けにオンライン講演を企画したことがあって、その時は専門知識を分かち合うだけでも現場の意識が変わる可能性を実感しました。でも、業務の片手間に私たちだけが動いても情報を届けられる範囲には限界がある。「仕組みとして解決しなければ、変わらない」。そう思わせてくれたのが、当時の職場でした。同時にこの課題は療法士だけではなく、医師にも共通するものと感じていました。医療が目まぐるしく進歩する中、最新の知見を全て完璧にアップデートし続けるのも大変でしょうしね。
求人サイト、メール、SNS、そして電話──諦めなかった、2ヶ月
──Mediiを選んだ理由は?
2020年、コロナ禍でオンライン診療が注目される中、私が重要視していたのは医療従事者間の病院を跨いだ連携による専門性の共有でした。患者向けのオンライン診療ではなく、診療に悩む主治医とその疾患のエキスパートをつなぐ仕組みです。ちょうどその年に創業したMediiは、まさに自分が病院で働きながら「必要だ」と感じていたサービスを実現しようとしていました。
代表の山田さんとお会いするまでには紆余曲折がありました。
2021年秋、東京都がスタートアップ支援のために運営しているコミュニティスペースで撮影された山田さんのインタビュー動画を偶然見て、Mediiが求人を出していることを知り応募しました。ところが、一向に連絡が来ない。求人サイトに記載の連絡先にメールを送ってみると、外部アカウントからは受信できない設定となっていたり、山田さんのSNSを通じて直接メッセージを送っても返信はなく。最終的に、会社の代表電話に連絡しました。
電話代行サービスの方が出てくれたので「1ヶ月以上前に求人を見て応募したが連絡がない」と伝えると、ようやくそれが山田さんの耳に届きました。後から聞いた話ですが、山田さんは当時求職者対応をしていた方に「お断り方針であればそれでも構いませんが、Mediiとして丁寧にレスポンスをお願いしたいです」とすぐに伝えてくれていたそうで。最初の応募から2ヶ月後の2022年2月にようやく1対3のオンライン面接が実現し、気が付けばMediiへの入社が決まっていました。
なんでそこまで諦めなかったのか今振り返っても笑えますが、それだけやりたいことが明確だったんだと思います。
──上京の決断に不安はなかったですか?
不安は全くありませんでした。
振り返ると、企業に転職しようと決断したのは2021年の2月。当時大学院博士後期課程を中退し、残りの1年間は脊髄損傷患者さんに臨床現場で向き合う時間を大切にしようと決めたら、それがとても充実した時間になりました。その年の9月には、転職先も決めないまま職場に年度末いっぱいでの辞職の意向を伝えました。それほど意思は固かったし、退路を断つことへの迷いもなかったですね。
幸運にも在職中にMediiへの転職が決まったので、職場の方々に報告したら、「種田さんらしいね」と温かく送り出してもらえました。また以前お世話になっていた部長にもメッセージを送ったところ「卒業おめでとう。BE AMBITIOUS!Carpe diem(今この瞬間を生きろ)。スタートアップで大事なのはランチェスターの戦略だね——弱者が分野を特化して戦う、当時総合病院だったこの病院が脊髄損傷に特化して生き残った戦略だよ。」と親身に教えてくれました。前職の方々とは今でも事あるごとにご飯に行ったりもしますが、自分の挑戦を常に応援してくれていて本当に感謝しかありません。
Mediiには最初、フルリモートで業務委託として関わり始めましたが少し経った頃に、山田さんから「契約社員として雇用したいので、東京に来てほしい」と言われて。住む場所も決まらないまま、翌月にはとりあえず東京に来ました。およそ2ヶ月間ホテル暮らしをしながら家を探すという生活でしたが、不安よりもとにかく社員として迎え入れてもらえた嬉しさと新しい環境へのワクワクが大きかったですね。
▲VCのオフィスから、初めて自分たちで借りたオフィスに移転する前夜(左から、代表山田・COO筒井・種田)
「何者でもなかった自分」が、室長になるまで
──入社してみて、どうでしたか?
これまで企業で働いた経験が全くなかったので、正直、何も想像できていなかったというのが本音です。比較できる基準がありませんでした。
ただ、山田さんの熱意が本物だということは、隣にいてひしひしと感じました。
良い意味で驚いたのは、最初からかなり任せてもらえたこと。入社2週間後にはCOOの筒井さんから「アライアンスの提案資料、とりあえず作ってみて」と渡されたり、初受注した製薬会社との案件でMRさんや医師との連絡対応窓口を全て担当したり。山田さんと一緒に医師とのオンライン面談に同席するときも、山田さんが直前の大事な予定が延びて遅刻することがよくあって(笑)。そのうち「山田さんは来ないものだ」と思って、自分が話せるように準備して臨むようになりました。あの環境が、当事者意識を育ててくれたんだと思います。
1年目は本当に何でも屋でした。医療系企業とのアライアンス提案、製薬企業とのプロジェクト、広報、自治体への導入提案、バックオフィス業務まで何でもやりました。
▲2022年11月に参加したイベントでの写真。ロゴもミッションも以前のもの。(左から、CFO冨田・COO筒井・代表山田・種田)
ユーザー医師向けサポート業務もやっていましたが、当時はもちろん専門部門もなく、山田さんと二人で問い合わせ対応をしていて、メールを見逃して数週間返信できていないものが出てきたりして。「これはどうにかしないと」ということでカスタマーサポートツールを導入したのが、入社から半年ほど経った頃。そのタイミングで、山田さんの命名で「Medii医師コンシェルジュ」という役割が生まれました。
一方で、自分より後に入社してくるメンバーは尖ったスキルを持った人たちばかりで、「自分は何に尖れば良いのか」と葛藤していた時期もありました。今4年前を振り返ると、当時何者でもなかったからこそ、幅広い業務を経験することでビジネスの多角的な側面を学ぶことができたのは、結果的にとても幸運なことだったと思っています。
そんな中、Eコンサルの利用医師数が爆発的に増えエキスパートの先生との関係も広がり、コンシェルジュ室という一部門としてのメンバー採用やマネジメントが必要になってきたところで、室長を任せてもらえることになりました。
──室長になってから、大変だったことは?
カスタマーサポートの専門的な知識もなければ、リーダーやマネジメントの経験もない。最初は本当に手探りでした。
山田さんから何十回も言われた言葉があります。「メンバーには高い水準の期待をかけること。できないことがあるから、それができない理由が何かを考え、できるようになろうと必死に頑張る。そのときに成長が促進される」と。
自分がまさに山田さんにそうしてもらってきたことを、今度は自分がチームのメンバーに実践する番だと思って、最初のうちは質より量を大事にして、メンバーと話す時間を増やすことを常に意識しました。室長としてまだ一人前とは言い切れませんが、Mediiの「医師コンシェルジュ」を最も知り尽くしているのは自分だと信じて、自分なりの理想のチームを作ることを心がけています。結果としてメンバーそれぞれが自分の意見を伝え合いながら、当事者意識を持って医師に寄り添ったコミュニケーションができるチームになっており、半期に一度の社内表彰(Medii Value Award)でも、メンバー全員が受賞を経験するくらい、会社に貢献できる強いチームになりました。それが、今のところ一番の誇りですね。
医師と医師をつなぐ先に、患者のいのちがある
──コンシェルジュ室のミッションを一言で言うと?
「患者さんを救うための、医師 x Mediiのチームを作ること」です。
Mediiには、事業の継続のために製薬企業とのプロジェクトにより売上を作る部門や、新規医師会員数とサービス利用数を拡大することに注力する部門があります。でも、会社のミッションでもある「誰も取り残さない医療」を実現しようとした時、売上や利用数という数字のみでは絶対に埋まらないピースがあると思っています。それは一人ひとりの先生方に最大限寄り添い伴走することで、一緒にその先にいる患者さんを救うということ。そのピースを担うのがコンシェルジュ室だと思っています。
──具体的にはどんな仕事をしているんですか?
相談する先生には、困っているそのときに、できるだけ早く、負担なく、最適なエキスパートを繋げることで個別最適化された有益な情報が届く体験をしてほしい。その中でも、相談するにあたって不足する項目があれば追記のお願いをしたり、専門医とのマッチングに時間がかかっているときには状況をお伝えしてお待ちいただいたり、回答が届いても気づかれていない場合にはリマインドを送ったり。満足度評価が低かった場合にはその理由を丁寧にお伺いして、サービス改善につなげたりしています。
一方、回答するエキスパートの先生がいなければ、Medii Eコンサルはそもそも成立しません。特に希少疾患や難病のような診断が難しい疾患や、生物学的製剤や分子標的薬のような専門的な医薬品に精通したエキスパートの先生は全国でも非常に限られていて、一人ひとりご面談してMediiの取り組みをご紹介し、協力をお願いしています。取組の進捗をオンライン面談やレポートで継続的にご報告したり、学会などの機会に直接お会いしてフィードバックをいただいたりしています。「困っている患者さんのために社会貢献のつもりで協力している」「全国の先生がどんなことに困っているかを知ることができて勉強になる」——そう言ってくださる先生もいて、本当にありがたいばかりですが、先生方の優しさに甘えるだけでなく、何をお返しすればエキスパートの先生方にとってもっと価値ある取り組みになるのか、常に考え続けています。
──コンシェルジュ室がうまく機能したとき、何が起きているんですか?
ある町の開業医の先生が、ALS(筋萎縮性側索硬化症)という呼吸筋を含めた全身の筋肉が正常に働かなくなってしまう進行性の難病の患者さんへ病状説明をしなければならない場面がありました。人工呼吸器をつけるか否かというような命に関わる重大な意思決定を伴う、日常の外来診療ではなかなか経験することのないケース。すぐ近くに大学病院のような専門施設はなく、その先生はMedii Eコンサルで相談したところ、たった1時間で2,000字を超える詳細な助言を受け取ることができました。やり取りの中では「専門の先生からの助言を受けて安心しました」「本当に助かりました」「自信を持って家族に説明できるよう準備したい」という前向きな言葉もいただき、実際の患者さんの顔は見えないけれど、医療現場に裏方として貢献している実感がとても強くありました。
その他にもEコンサルを使ってくれた先生に後日インタビューをしたとき、「あの時相談した患者さん、確定診断がついて経過良好ですよ」と教えてもらえる瞬間があります。その言葉が、本当に嬉しいですね。
私たちが目指しているのは、誰も取り残さない医療を実現すること。医師と医師がつながった先には、患者さんのいのちが、そしてその家族の人生が救われている。直接患者さんと向き合う仕事ではないけれど、確かにその先につながっているんだと感じられることがこの仕事の一番のやりがいです。
──現場の医療従事者への気持ちは?
今も昔も変わらず、第一線で働いている医療従事者こそが最も尊い存在だと思っています。その現場で日々奮闘している人たちのために、仕組みで支える立場でありたい。直接患者さんと向き合うことはなくなったけれど、その想いは理学療法士だったころから何も変わっていません。
医療従事者と違い、患者さん一人ひとりの顔が直接見えない面はあります。でもその分、より多くの人を救う仕組みを作ることができる。誰も取り残さない医療を実現するためには、仕組みを作り変えることがいちばんの近道だと思っています。
──コンシェルジュ室をこれからどんなチームにしていきたいですか?
AIで効率化できる業務は極限まで効率化して、その分だけ先生方との直接のコミュニケーション量を増やしていく。定型業務をAIに任せるだけでなく、面談後のフィードバックをAIで整理したり、先生ごとの状況や関心に合わせた面談アジェンダをあらかじめ組み立てたりしながら一人ひとりの先生に向き合う「量」と「質」を同時に上げていくことが、大きなテーマです。
常に問い続けたいのは、「それって本当に先生のためになっているのか?Mediiの都合を押し付けていないか?」ということ。どれだけ大きな組織になってもカスタマーハピネスをブラさないチームであり続けること、それがコンシェルジュ室の根幹だと思っています。
──種田さん自身は、これからどうなりたいですか?
個人として実現したいことは、あまりなくて。全ての成果をチームとして、会社として実現したいという気持ちが強いです。
ただ、ビジネス経験ゼロの医療従事者上がりの一人目社員が、いちメンバーからリーダー、マネージャーを経て、いつかMediiの経営の中枢を担えるくらいの存在に成長できたら、なんか夢ありませんか(笑)。Mediiのためにもそのくらいの存在意義は証明してやりたいと思っています。
役職を持つこと自体には全く興味はないんですが、好きなことを仕事として続けながら、同じビジョンを持ったメンバーで構成された強いチームを作り、一つひとつの成功や失敗を糧に、誰も取り残さない医療という大きな目標に貢献することができれば、それ以上に幸せなことはないです。
私の地元北海道ゆかりの作家・三浦綾子さんの小説に引用されている一節で、10年ほど前から座右の銘にしている言葉があります。
「一生を終えてのちに残るのは、われわれが集めたものではなくて、われわれが与えたものである」
この言葉に出会ったとき、まさに自分の考え方はこれだと思いました。富や名声を得ることよりも、先生方やその先の患者さん、チームメンバーに幸せを与え続けることが、自分自身の人生を豊かにしてくれている。今、そのことを実感しながら働いています。
どんな人にMediiに来てほしいか
──Mediiは、どんな人が活き活きと働ける場所だと思いますか?
医療の課題解決に対して強い思いを持ち、それを自分の言葉で語れる人。そして、まだまだ未成熟なスタートアップの環境を楽しめる人だと思います。
医療の知識や経験は、不問です。ほとんどの人が何らかの形で医療と接点を持ったことはあるはず。風邪をひいて病院に行ったこと、家族が入院したこと、健康診断で不安を感じたこと、あるいはテレビで有名人の闘病を知り医療の課題に触れたことなど。患者として、患者の家族として、そして社会の一員として、「あのとき、もっとこうだったら良かった」と感じた経験が、きっとあるはずです。その原体験から、医療の課題解決に本気で貢献したいという思いが生まれているなら、それで十分です。
──最後に、入社を検討している方へメッセージをお願いします。
ぜひ、一世一代のチャレンジのつもりでMediiに飛び込んでほしいと思っています。
私自身、理学療法士を辞めて北海道から東京のスタートアップへ、周りから見れば一見無謀に見えるかもしれない決断をしてきましたが、それでも諦めずに飛び込んだからこそ、今の自分があります。そんなチャレンジ精神を、Mediiは全力で歓迎します。