「フィンテック」の未来を語る――カウンティア代表・姥貝賢次×エバンジェリスト・長沢智治

2015年に創業したカウンティア株式会社は、仮想通貨ウォレット事業やブロックチェーンの研究開発を行う、いま注目のベンチャー企業。同社代表の姥貝賢次さんと顧問エバンジェリストの長沢智治さんに、「フィンテック」の面白さや業界のトレンド、求められる人物像などについて語ってもらいました。

写真右/姥貝 賢次(うばがい けんじ):1980年、長野県生まれ。学生時代からフリーランスのプログラマーとして活躍。早稲田大学大学院会計研究科を卒業後、公認会計士資格を取得。2008年に監査法人トーマツに入社し、会計監査やシステム監査に従事する。2015年にカウンティア株式会社を立ち上げ、フィンテック事業に参入。

写真左/長沢 智治(ながさわ ともはる):ソフトウェア開発のライフサイクル全般を経験したのち、日本アイ・ビー・エムで開発プロセス改善のコンサルティングに従事。2007年より日本マイクロソフトで「テクニカル・エバンジェリスト」として活躍。現在は、個人事業「エバンジェリズム研究所」の代表として企業や個人への支援を行う。2018年3月にカウンティアの顧問エバンジェリストに就任。

「はじめは値踏みされてると思った」

姥貝:今日は、少し緊張してます。普段からいろいろと相談に乗っていただいていますが、やはり長沢さんは、僕にとって雲の上の人のような存在なので――。「エバンジェリスト」として活躍するようになったのは、いつ頃からですか?

長沢:2007年にマイクロソフトに入社した頃からですね。それまでは、日本IBMやボーランドという会社でコンサル業務を担当していました。製造業や自動車メーカー、金融会社やSI事業社などの開発部門に対して、技術アドバイスや開発プロセスの提案などを行うわけです。

姥貝:「エバンジェリスト」は、いわば企業の「顔」ですよね。IT業界に携わる人にとって、憧れの的であり、芸能人のような存在。

長沢:それは言い過ぎです(笑)。でも、たしかに講演活動やメディア出演もしていました。もちろん、プラットフォーム開発や技術開発の提案、開発チームのマネジメントなどのコンサル業務も行っていましたが。

姥貝:初めてお会いしたのは2016年、長沢さんがアトラシアンという会社に在籍されていたときでした。僕は「すごい大物と出会えた!」と興奮したことを覚えています。

長沢:そうなんですね。私はてっきり「こいつは何ができるんだろう?」って値踏みされていると思ってました。

姥貝:えっ!? そんなことないです! ただ、会社を軌道に乗せるのに必至だった時期で、深刻そうな顔をしていたかもしれませんが……。

長沢:というのは冗談で(笑)、姥貝さんと話をしてみて、すごく苦労されてきた方だと感じました。話しぶりがそう感じさせるんです。実際、エンジニアを一度辞めて公認会計士を目指すなど、大変なキャリアを歩んできている。信頼できる人だと思いました。それもあって、カウンティアの力になれればと思い、エバンジェリストとして参画させていただくことにしました。

はじめから「世界」を見据えたビジネスを

姥貝:今日、ぜひ長沢さんにお聞きしたかったのですが、日本のフィンテックはいまどういう状況にあると思いますか?

長沢:欧米よりも、歩みがゆっくりですね。それには、日本の文化や日本人の国民性が影響していると思います。技術面ではブロックチェーンをはじめ、さまざまなアイデアが登場して盛り上がっていますが、それを活用する人のリテラシーが追いついていない。日本人は現金主義で、貯蓄好きが多い。じつは私自身も現金派で、電子マネーなどはほとんど使わないんですけどね……(笑)。

姥貝:フィンテックの難しさってそこにあって、「お金」に対する価値観や感覚の影響をモロに受けてしまう。日本人の場合、「お金を必要以上に稼ぐのは浅ましいことだ」という価値観も根強く、倹約を美徳と考える人も多い。しかしその一方で、「お金を増やしたい」と本能的な思いも心の底にある。その本能をどうやって引きずり出すのかが、これから日本でフィンテックのビジネスを成功させるポイントだと思っています。

長沢:利用モデルを増やすことも大切ですね。仮想通貨にしても、一部の人が儲けたという話は聞くけど、「友達がみんなやっている」という状況にまでは至っていない。情報不足のため、始めるのに尻込みしている人も多いんですよね。利用者が増えれば、その人たちから発信される情報も増えて、さらに利用者が増える……という循環が生まれると思います。

姥貝:技術に法律の整備が追いついていないことも問題です。せっかく優れたビジネスアイデアを思いついても、日本では実行できないということもあります。そのため、世界に飛び出す企業が増えている。たとえば、LINEはアメリカで、楽天はロシアで仮想通貨ビジネスを始めることを発表しています。

長沢:フィンテックに限らず、IT業界全体がその傾向にあると思います。日本で成功してから世界進出するのではなく、いきなり世界市場に打って出て、大きな成功を狙いにいく。だから、日本に拠点があっても、サービスのUIも全部英語という会社も登場している。たとえば、2017年に誕生したソニーネットワークコミュニケーションズの子会社「Rocro」(ろくろ)は、はっきりと「米国を中心にしたスタートアップをターゲットに、自動コードレビューやAPIドキュメント生成、負荷試験などを省力化・自動化するサービスを提供する」と発表しています。

姥貝:フィンテック開発に関して、最近のトレンドは何かありますか?

長沢:いま注目されているのは、やはりビッグデータですね。既存の金融サービスを行っている会社は、とてつもない量のデータを持っています。それを分析したり、活用するためのアプリを開発したり。すでに海外ではビジネスに応用する研究が進められています。

あと、APIエコノミーですね。最近は、サービスのAPIをデベロッパーが公開しあって、お互いに利用できるエコシステムができつつあります。

姥貝:開発者に求められるスキルはありますか?

長沢:何より大切なのは、情報収集能力。言語やフレームワークは、どんどん新しいものが登場してきます。世界でいまどんなテクノロジーが使われているのかはもちろん、今後何が使われるようになるか、流行についていく必要がある。それには、英語の論文や資料を読むのはもちろん、海外のカンファレンスに出席するなどして、常にアンテナを張って勉強しつづけることが大切です。

姥貝:最前線に挑みたいエンジニアは、英語が必須ということですね。

長沢:ええ、会話はともかく、読み書きは求められると思います。姥貝さんは、フィンテックに関して注目している技術などはありますか?

姥貝:やはり「ブロックチェーン」ですね。ブロックチェーンを活用したシステムでは、トランザクションが自動的にデータベースに蓄積されていくわけですが、その活用を前提にシステム全体を設計すれば、面白いサービスができると思います。

長沢:ブロックチェーンは、他の分野でも使えますよね。たとえば、医療とか。ブロックチェーンを応用して、電子カルテを個人に紐づけることができれば、受診歴や検査結果、処方箋などの情報が一元管理されて、より便利になります。

姥貝:著作権料の管理にも利用できそうですよね。たとえば、音楽配信サービスで、どんな人が、どんなルートで曲を手に入れたかをブロックチェーンで管理できるようになると、アーティストが直接、ユーザーから著作権料を回収できるようになります。不正ダウンロードなどもできなくなるはずです。

長沢:さまざまな可能性がありますね。これからに期待したいです。

経営者より多くの給与をもらうエンジニアがいても良い

長沢:ところで、フィンテックが普及すると、世界はどう変わると思いますか?

姥貝:国境の概念があいまいになるんじゃないかと。「お金」は、国を形づくる大切な要素のひとつだと思うのですが、フィンテックによって世界中の人が自由に各国の人と取り引きできるようになれば、国境という概念が薄れていくように思います。どこにいても経済活動ができるようにるわけですから、自分の価値観にあう地域を自由に選んで住むようになるんじゃないかと。同じ価値観を持つ人が、自然と集まるようになる。

長沢:国家がコミュニティ化するわけですね。

姥貝:ええ、自分の暮らす場所を、ライトな感覚で選べるようになるのではないかと。いま、いくつかの国家では「資本流出規制」という、海外への出金が規制する政策を採っているところがあります。しかし、国民のフラストレーションは溜まる一方の様子です。このような国では、資産をビットコインに交換したいという人も少なくないと聞きます。

長沢:経済の自由は、生き方の自由ですね。

姥貝:近年、日本では、海外移送金をすべて財務省に報告するというルールができました。マネーロンダリングなどの犯罪防止のためと考えれば仕方ありませんが、結果的に日本人が世界に出ることを制限しているように感じます。富の移動を制限すると、人の移動も制限されるわけです。でも、すごく窮屈な世界になる。

長沢:世界中どこでも移動できるほうが、夢があると思います。また最近では、「格差是正」も叫ばれていますが、その点についてはどう考えていますか?

姥貝:格差の拡大は、資本主義ベースの世界では当たり前のことだと思います。やる気があって頑張っている人が、成果に応じてきちんと報われる世界であればいい。スタートアップしたい事業者にちゃんと資金が与えられること、チャンスが平等にあることのほうが大切です。

長沢:同感です。頑張りが報われることが大事。頑張ったエンジニアは、経営者よりも多く報酬をもらうことがあってもいいと思います。そうでなければ、業界を志す人が増えない。

姥貝:そうですね。僕は経営者として、同じ夢を共有してくれる、「前のめりのエンジニア」に来てもらいたいですね。成果を出すことに貪欲で、一緒に前進していけるような人。反対に、成果も出していないのに「エンジニアだから高い給料がもらえて当然」というタイプはどんな関係性を持っていけば良いのか迷います。

長沢:カウンティアは、新しい構造を世の中につくろうとしている、志の大きい会社ですよね。「フィンテック」という目のつけどころもすばらしい。エンジニアにとっても魅力的な会社だと思います。「0」から「1」を目指す段階が、エンジニアにとって、いちばんやりがいがあるんですよね。

姥貝:ありがとうございます。いまチャレンジしている「CoinOn」というサービスは、まさに「1」になりかけているサービスですね。いまは、「0.8」ぐらい。残りの0.2を一緒に完成させてくれるエンジニアを募集しています。

長沢:代表作になるといいですね。姥貝さんにとっても、エンジニアの皆さんにとっても。

姥貝:必ず成功させます。期待してください。

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