シルクロード出張記キルギス/カザフスタン出張の巻(後編)~商品部 白坂

Day 4:草刈り場

翌日は簡単な朝食を済ませると、市の中心部まで乗合いタクシーにて移動し、カザフスタンのマイクロファイナンス協会の催しに参加した。会場脇にちょうど良い規模のテーブル一式があったので、予め日本から連絡していた幾つかのマイクロファイナンス金融機関の担当者とそこで面談を進めることとなった。

それぞれのミーティングで得た内容をパズルのピースのように当てはめていくと、多数の信用組合が濫立していた時代からライセンス制へ移ったことで一気に事業者数が絞られたこと、直近数年は過去の借入による過大な利払いに苦しんでいたこと、資金調達の先行きが不透明になっていることなど、大よその全体像が浮かび上がってくる。

出張前に社内の運用チームからレクチャー頂いていたのだが、コーカサス・中央アジア地域のマイクロファイナンス金融機関は、これまで野放図に貸付を行ったとか、事業規模に見合わない借入を積み上げたといったことではなく、金融危後の景気回復局面に米ドルやユーロで運転資金を調達した後、現地通貨のレートがそれらの通貨に対して急落したことで、債務規模が一気に膨らみ、結果として利払いの負担が過大となったという、リスク管理の不備によるところが大きかった。つまり、本業における主な収入は現地通貨建てであるものの、運転資金の返済は米ドル、またはユーロ建てで行う、という構図となっており、事業自体は健全に回っていても、為替差損で最終損益が赤字という時期があったようだ。こうした苦い過去が業界全体で共有されているからか、当社が現地通貨建てローンも出来るという話が徐々に会場内に広まり、午後には見知らぬところからも話しを聞いてもらえないか、といった打診が相次ぎ、まさに草刈り場といった様相であった。



持参した全ての名刺が無くなるほど多くの新規コンタクトが得られたが、世界第9位というカザフスタンの国土の広さや、前述のように現地通貨の価値が下落した経緯を考えると、これらの新規連絡先でどれほどの候補が実際の商品化に繋がるかは未知数の部分もあり、素直に喜べないところではあった。一方、日本からこれだけ離れた場所でも当社事業の有効性が大いに発揮出来る状況があることは間違いなく、相応の成果への道筋が得られた感触はあった

会場を後にしようとすると、初老と言って差し支えない年代の男性が「サムライ、サムライ!」と声をかけてきた。「またか…」と、思いながらも対応してみると、どうやらペイデイ・ローン事業者(30日以内の給料日までの短期間で少額融資のみを行う金融業者)の事業開発部長とのこと。差し出された名刺の裏には複数の液晶パネルを備えたATMのような風変りな機械のイラストがあったので、何なのか尋ねてみたところ、それを開発した創業者が直接事業説明を行いたいので、これから自由な時間はないか?とのことであった。


訝しみながらも、確かにもう自分がすべきことはホテルに帰るだけであったし、市内移動中に意味不明といって差し支えない高射砲のモニュメントまで見ていたため、この奇妙な機械についても、恐らくは話のネタになり得る「カザフスタンもしくは旧ソ連の匂いがする奇異な何か」にはなるだろうとの好奇心と、件の事業開発部長が此方の持っていたカメラについて、目にした瞬間に型番を言い当てており、前日のタクシードライバーのような「ただの日本好き」ではない何かを感じたことから、先方の提案に従って市内の別の場所にいるその創業者に会ってみることにした。

イタリアンカフェの軒先でエスプレッソを啜っていた創業者は、ライダースジャケットとヘルメットを携えていたこともあってか件の事業開発部長より一回り以上は若く見えた。双方の自己紹介を経て聞き出したところによると、この創業者は弁護士であったそうだ。10年ほど前、弁護士業以外に手掛けていたビジネスの一つとして、金地金を担保とした貸金業を行っていたが、店舗を任せていたマネージャーや他のスタッフまでの全員がグルになり、偽の金地金を担保とした不正貸付で運転資金を抜かれるという被害に遭ってしまい、それ以来、他人が極力介在しない金融ビジネスの仕組みを考えていたのだという。

その結果、5年ほど前に無人で審査と貸付が可能な端末のプロトモデルを自前で開発し、徐々に設置個所を増やした結果、現在はカザフスタンとロシアの約150ヵ所で稼働させているとのことであった。端末の各部品についても自社で設計しており、本人性確認のための画像認証システムも親族で著名なCGデザイナーが構築した流体シミュレーションのプログラムを応用している、とのことである。

前提として恐らく中国かどこかで外注した部品を組み合わせているのだろう、といった勝手な認識から話を訊いていただけに、素直には飲みこめない説明であった。また、顧客獲得コストについて訊いてみると、「人通りの多い商業施設のオーナーに許可を取り、紙幣のイラストがラッピングされた端末を置くだけで特段の広告も打たない」とのことで、これまで他のペイデイ・ローン業者から訊いた水準と比較して極めて低いものであった。端末を自前で製造し、広告費も極端に抑えながら高い金利で貸付を行うというビジネスモデルの完成度の高さから逆に何か見落としているのではないかとの思いが払拭できず、融資の実演を見てみることは可能か打診したところ、1ブロック隣のスーパーマーケットに1台設置しているので、そこでやってみよう、ということになった。



「そういえば今まで借入なんかしたことはなかったんだけど…」と創業者自らが端末の音声ガイダンスに従い、身分証スキャンや指紋認証を行って審査を申し込むと、ものの数十秒で数枚の紙幣が吐き出されてきた。こちらが見ていた感覚としては日本のコンビニATMで預金を引き出す程度の手間であった。

手元のスマートフォンでデータベースに接続すると、先ほど取り込まれたデータと諸々の貸付条件等の項目が整理されている。その説明を受けるうちに、新規の申込者からのデータが続々と追加されており、夜間に拘わらず各地で利用されているようだった。

この異様に完成度の高い無人ペイデイ・ローン事業者が当社に相談してきた内容については伏せることとするが、半ば冷やかしに近い態度で臨んだ先で予想外のものが見られたことは、「行ってみないと始まらない…」の書き出しで始まった不思議な出張の最後に相応しい幕引きであった。

とはいえ、実はこの後にもカザフスタンからキルギスへ戻る国境で入管時に書類上の不備で1時間以上、出国が許可されずに押し問答を繰り広げた挙句、乗り合いバスに置き去りにされるなど、最後の最後まで想定外の事態は続いたのだが、兎にも角にも、職務でこのような経験をさせて頂けたことを、クラウドクレジットの役職員皆様に感謝しつつ、一旦は筆を置く次第である。

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Akimichi Yoshida
クラウドクレジット株式会社 / Engineer/programmer
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