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現場担当者が見るキャラクターライセンス応用の展望~「プロジェクトセカイ」からその先へ~

初音ミクをはじめとするキャラクター/音楽のライセンス展開、クリエイターとのリレーションまで携わっている高塚/安達/天野。人気ソーシャルゲーム「プロジェクトセカイ」の企画立ち上げに関わった際のエピソードや、企画/制作を通して得た成功体験などについて聞きました。


<経歴紹介>

高塚悠司:トラックメイカーとサウンドエンジニアとしてキャリアを積み、2011年入社。Vocaloidの音声収録調整に参加しながら、声優事務所や企業クライアントとの連携業務に従事。「プロジェクトセカイ カラフルステージ!feat.初音ミク」の制作進行管理も手掛ける。
安達直輝:2013年入社。セガ(Project Divaシリーズ)・グッドスマイルカンパニーの担当を経て、「プロジェクトセカイ カラフルステージ!feat.初音ミク」の立ち上げに参加。企画戦略からライセンス管理/契約まで幅広く担当している。
天野のぞみ:2020年入社。商品/イベントプランナーとして明和電機「初音ミク×オタマトーン」企画立案や、鏡音リン・レン14周年企画の進行管理などを担当。日夜、新企画の立案と調整に勤しんでいる。

(写真左より高塚、天野、安達)

<聞き手>
佐々木渉:2005年入社。初音ミク/鏡音リン・レン/巡音ルカを企画立案。セガから発売された「Project DIVA」「Project mirai」シリーズや、セガとColoful Paletteよりリリースされた「プロジェクトセカイ」の立ち上げなどにも積極的に参加。


佐々木:まずは、自己紹介をお願いします。

高塚:音声チーム音声編集ユニットの高塚といいます。主に初音ミクをはじめとするVOCALOID、ピアプロスタジオの中の音声調整やキャラクターのセリフ音声などを制作しています。

天野:ライセンス応用チーム天野です。元々は初音ミクをはじめとするピアプロキャラクターズを使ったイベントやグッズの企画立案をしていました。去年からは所属チームが変わり、キャラクターに限らない新規事業の立案を行っております。

安達:ライセンス応用チームの安達と申します。初音ミクやピアプロキャラクターに関するライセンス全般を担当しております。現在は主に「プロジェクトセカイ」をはじめ、セガさんをはじめとする他社共同制作のゲーム関係の案件を担当しています。

佐々木: 安達さんがクリプトンに持っていたイメージと、求人への応募のきっかけがあれば教えてください。

安達:初音ミクの会社という認識は持っていました。ボカロに触れる中でクリプトンの名前はよく聞いていたので、ネットクリエイターの活動を好意的に捉えている企業なのかなと思っていましたが、実際はどのような事業を行っているかは、よくわからなかったです。
入社したのは2013年1月頃です。応募したきっかけのひとつに、Google ChromeのCMを見たことがあります。それまでは東京で仕事をしていたのですが、東日本大震災などを受け地元である札幌に帰ろうかなと思った矢先、Google ChromeのCMを見て、初音ミクとクリエイターの繋がりというテーマにすごく心を打たれました。それで就職活動中に、改めてクリプトンについて調べ、応募してみたという流れです。

佐々木:ありがとうございます。天野さんはクリプトンを知っていましたか?

天野:知っていました。中学生の頃からニコニコ動画などで合成音声を使った音楽には親しんでいましたし、クリプトンが北海道にあって札幌でソフトウェアを開発しているという予備知識もあったので、以前から馴染み深かったです。周りの友人とかも結構聴いていましたし。

佐々木:知っていたとはいえ、当初、クリプトンの仕事のイメージはついていましたか?エンタメ業界で働くにあたり、たくさんの選択肢があったと思うのですが、その中からクリプトンを選んだ理由があれば教えてください。

天野:初音ミクに対する親近感やもっと知りたいという好奇心、地元で働きたいという思いから、求人への応募に至りました。他のエンタメ業界の会社はあまり意識していませんでしたね。


佐々木:高塚さんは前職がサウンドエンジニアとのことですが、クリプトンはどのようなイメージを持たれていましたか?

高塚:私のクリプトンに対するイメージは初音ミクよりも、ヒップホップやEDMを作る時のサンプリング音源とかそっちの方を扱う会社っていうイメージでした。当時、札幌でサウンドを扱う会社はむしろクリプトンくらいしかなかった印象で。音の商材は東京から仕入れてくることがほとんどだったので、すごく新鮮な会社だなと。

佐々木:そういえば高塚さんはボカロPユニットもやっていましたよね。ファンクとかレゲエとかレベル・ミュージック寄りの。

高塚:ボカロPは入社した後に、はい。そうですね。趣味で。

佐々木:愛社精神ですね(笑)
高塚さんは現在、声優事務所さんなど他企業とのやりとりが多いと思うのですが、そういう業界の方とのコミュニケーションの経験はお持ちでしたか?

高塚:ゼロでは有りませんでしたが、経験はそんなになかったです。

佐々木:やりとりにおいて心がけていることはありますか?

高塚:特に声優事務所さんとは長いスパンでお仕事をご一緒させていただくことが多いので、事務所のスタッフさんとその先にいる声優さんと、どちらにも気を配ることを心掛けています。日々の雑談ベースでこまめにコミュニケーションを取るようにしています。

佐々木:なるほど。ありがとうございます。
安達さんは、クリエイターさんとのコミュニケーションにおいて気をつけていることはありますか?

安達:クリエイターさんとその作品に対して常にリスペクトを持つことを意識しています。案件毎に、『この世界観を表現するためにはこの人じゃないと』という思いに基づいてクリエイターさんにお声掛けしています。『あなたと仕事がしたい、あなたの作品でこのクリエイションを表現したいです』っていう話をよくさせていただきますね。誠意を持ちつつ、素直な気持ちでコミュニケーションをとっているつもりです。
また、クリプトンは商業案件にあまり携わってこられなかった、個人で活動されている方とご一緒する機会がすごく多い会社だと思います。それ故、クリエイターさんによっては肩に力が入ってしまい、いつもの絵柄からずれてしまうなんてことも起こったりします。その際は『あなたの作風がすごく好きなので、臆せずいつものご自身の表現をなさってください』とお伝えしています。

佐々木:ビジネス的なオーダーも出来るだけ柔らかく伝えたり、相手の様子を見ながら心を配ったりすることは重要ですよね。

安達:はい。とはいえ、ギャランティや納期等、依頼の詳細を先に知りたい方も当然いらっしゃるので、条件や要望も簡潔かつ明瞭に伝えることを同時に心がけています。

佐々木:天野さんは既存プロジェクトへの参加だけでなく、自ら新規企画を立ち上げることも多いと思いますが、仕事の振れ幅に戸惑ったりすることはないですか?

天野:初音ミクをはじめとするピアプロキャラクターズの通常グッズ、プロジェクトセカイのグッズ監修、自分で立ち上げる新規企画と、それぞれ重きを置く点や大事にしたいところが全然違うので、業務が詰まっている時期は混乱することもあります。

佐々木:高塚さんも、「プロジェクトセカイ」で業務量が増大したと思いますが、大体何倍ぐらいになった感覚ですかね。

高塚:大体、4ヶ月分の業務量が1ヶ月に詰め込まれた感じです…。4倍くらいですね。

佐々木:仕事量がガーッと増え、関わる人数も増え大変な中で、自分のストレス発散やリフレッシュはどのように行っていましたか?

高塚:出来るだけ自然に触れることでリフレッシュしています。山に行ったり海に入ったり…北海道らしく田植えしに行ったりとか。パソコンを手放して仕事から離れることを心がけています。

佐々木:北海道らしいストレス発散ですね。

高塚:そうですね。今までいろいろな地域を転々としてきたのですが、北海道は特に四季による風景の移り変わりを楽しめる土地で、大好きです。


佐々木:なるほどなるほど。ありがとうございます。
安達さんも「プロジェクトセカイ」が立ち上がって、前例がない新規の仕事が増え大変だったと思います。

安達:そうですね。うちの会社の仕事は、前例がないことが多いとは思っていたのですが、「プロセカ」に関しては飛び抜けて異例なプロジェクトだったので…。男の子のキャラと女の子のキャラが共存していたり、バーチャル・シンガーと人間が一緒に歌ったりと、スマホゲームでこれまでやられてこなかったことを盛りだくさんに詰め込んでいて、あらゆる意味でチャレンジングだったと思います。

佐々木:作っている最中は結果が見えないですから、不安ですよね。

安達:そうですね。盛り込んだ沢山の仕掛けは、果たしてユーザーのみなさんに受け入れてもらえるのだろうか?と、リリース後もしばらくは不安でした。

「プロジェクトセカイ カラフルステージ!feat.初音ミク」タイトル画面)


佐々木:今となっては、新旧のボカロ曲をユーザーの方々が楽しんでいて、高い需要があったことを感じていると思います。そういう実感は、いつ頃持ち始めましたか?

安達:初動からドーンと行ったわけではなく、じわじわ口コミベースで広がっていった気がします。半年ぐらい経って、『あれ、一過性のブームじゃなくなりそうだよ』みたいな。上手くいっているかもしれないという感覚が生まれはじめましたね。

佐々木:クリエイターさんと一緒に作る部分も含め、パズルのピースが組み合わさっていったみたいな感じですね。

安達:各クリエイターさん/イラストレーターさんの作品の数々もそうですし、こちらで組み立てたシナリオも声優さんに演じてもらうことで、ストーリーとしてよりよく成立したりして。こういうふうに作られていくんだみたいな驚きがありましたよね。

佐々木:皆が同じほうを向いて協力出来ると強いですよね。クリプトンは関わってくれる皆さんとの共感を大切に、仕事を盛り上げていくスタイル。気持ちがリンクしたら上手くいくし、ずれてしまったら上手くいかないしと、皆さんの心持ち次第で明暗が分かれますよね。

安達:その通りです。最初に楽曲の書き下ろしを頼まれたPさんなんて、ゲームについての情報がほとんどないまま手探りで難しかったと思うのですが、Gigaさんの「Ready Steady」とか、バチバチに決めてくれて…。クリエイターさんの音楽の説得力は凄いなぁ、と。ピノキオピーさんとかもそうですが、凄く雄弁で説得力があって、それがゲームの世界観そのものになっていったんだなと感じます。イラストレーターさん達が作ってくれた衣装の彩りとか、そういうのも含めて。


佐々木: うん。そうですよね。結局、今回、求められていたものは『みんなで作る感覚』ですよね。
「プロジェクトセカイ」に留まらず、今後もいろんな企画を行っていくと思うのですが、天野さんがクリエイターさんや初音ミクにまつわるいろんな出来事から受けた影響や刺激、印象に残っていることはありますか?

天野:私は入社時、イラストレーターさんのお名前や来歴を正直あまり知りませんでした。先輩方が『このテイストのイラストだったらこの人だよね』と次々に作家さんの名前を挙げるのを見て、私もまず作家さんのことを知ろうと思い、しばらくTwitterとpixivに張り付く生活をしていました(笑)それを通して、ネットで活躍するクリエイターさんってこんなに沢山いるんだとか、こんなに多様な絵柄があるんだとか、同じキャラクターでも人によって表現の仕方や与える印象が全然違うんだというのを知ったのはとてもいい衝撃でした。

佐々木:そうですよね。活躍されている全員を知るのは難しいほど、ネットで活動している方は沢山いらっしゃるし、理解を深めるにも書籍や画集だけに頼ったりが出来ないから、自分なりに情報収集の方法を組み立てないといけない。簡単なようで、ものすごく複雑だったりする。終わりがないからこそ日常的に知ろうとする姿勢が大事になってきますよね。

天野:クリエイター界隈においても日々トレンドは変化しているので、我々もその変化や進化に寄り添っていけるように、飽くなき探求というか、日々前のめりになって、情勢や流行をリサーチすることは今でも大事にしています。

佐々木:そうですよね。クリプトンや初音ミクが、沢山の方々に支えられていることを改めて感じさせてくれるお話だと思いました。
クリプトンで取り組む業務内容について、入社前のイメージと入社後の実際で差を感じたりしましたか?

天野:はい。入ってみると、自分でできることの幅がすごく広いと感じました。前職で事務員などをしていた頃は、与えられた指示に基づいて作業をこなすのが当たり前でした。でもクリプトンだと『まず自分がやりたいことを教えてほしい』って言われて。最初は戸惑いましたが、自分が試行錯誤しながら作った企画に対して、良し悪しの判断だけでなく、より良くしていくにはどうしたらいいかや、ここをこうすればもっとクリエイターさんとかファンの方々が喜んでくれるんじゃないかとかの観点からアドバイスをくださって。仕事への向き合い方や心構えなど、最も大事な根幹の部分を最初に教えてもらえた気がします。

佐々木:なるほど。でも逆に、『自分で考えなよ』とか『自由にやってみなよ』って言われるが故の大変さ、自分で責任を取らないといけない場面もあるのではないかなと思いますけど、その辺はどう感じていますか。

天野:おっしゃる通り、ゼロから自分で考えなきゃいけないことが多いのでエネルギーを使う部分もあります。だからこそモチベーションも含めて自己管理はしっかり行わなければいけないとひしひしと感じています。


佐々木:安達さんは入社して10年くらい経ちますが、ボカロやミクのブームの移り変わりを踏まえながら、「Project DIVA」や「プロセカ」も担当する中で、自分自身のアップデートは大変ではなかったですか?

安達:そうですね…。その時々の流行とか色とか表現ってあると思うんですけど、ミクはどの時代であってもそれらを取り入れ、その時代の象徴的存在になれる可能性を持つ類まれなIPだと感じています。その特色を活かすも殺すも自分たちの頑張り次第、という思いもありました。そのためにトレンドをみんなで見て取り入れていくのは楽しいことで、苦だと思ったことはないかもしれないですね。

佐々木:ありがとうございます。苦しいとやってられないですよね。好きじゃないと。
高塚さんも10年ぐらいその仕事をしてきて、いろんな企業さんとだとか、いろんなプロジェクトの中で苦楽があったと思うのですが。振り返ってみてどうですか。

高塚:10年間で社員の人数も50人から倍以上になりましたし、会社と共に自分も成長していった感じがあります。関わる人達に感謝をしながらコミュニケーションをこまめにとって、年数を重ね信頼関係を築いてきました。コツコツ愚直にやるのが自分には合ってますね。

佐々木:天野さんも、思い描く成長像や目標があれば教えていただきたいです。

天野:やっぱり最近は「プロジェクトセカイ」でファン層が一気に拡大したところがあるので、より多くの人にクリエイターさんの魅力的なクリエイティブに触れてもらう機会を創出できるような事業ができればいいなと思っています。

佐々木:なるほどですね。「プロセカ」の経験を経た安達さんは、今後新たにチャレンジしていきたいところとかはありますか?

安達:そうですね。「プロセカ」立ち上げ当初から近藤さん(Colorful Palette代表取締役社長)と佐々木さんがお話されていましたが、今まで触れたことがなかった子たちがボカロ曲に触れるための新しい入口を作ることが、プロジェクトの1つのゴールだと思っていて。例えば先日、雄之助さんのPaⅢ.SENSATIONという楽曲を「プロセカ」に収録させていただいたのですが、収録前に我々が確認していた段階で元動画の再生数が240万ほどだったものが、「プロセカ」収録以降、更に多くの方が原曲を聞きに来てくれて、今では当時の倍近い、およそ450万再生ぐらいに増えて。過去に投稿された作品の再評価は喜ばしいですし、昔からのボカロフォロワーと今の「プロセカ」から入ってきたカジュアルなファンの方がそれらをきっかけに交流してくれるのもすごくいいことだなと。

佐々木:そういう流れはクリエイターさんも喜ばれているんじゃないですか。

安達:そうですね。すごく喜んでくださったり、プロジェクトに対して前向きにご協力いただける方が増えたりと、良い循環が生まれていると感じます。今後もボカロ曲の魅力を伝えるための入り口を様々用意していけたらと考えています。

佐々木:クリエイターさんとの関わりあってのクリプトンですが、高塚さんから見て、クリプトンのどういうところが好きですか。

高塚:時々でしっかり攻めていくところですよね。ダンスミュージック向けのサンプルパック販売から、リアルなインスト音源やオーケストラ音源、そしてVOCALOIDをいち早く展開していくような、時代の一歩先をいくバーチャル・インストゥルメントを提供し続けるところはやはり凄いし、そういうところが自分は好きですね。

佐々木:確かに、何で攻め続けられるんでしょうね?会社が大きくなっていっても、音楽やクリエイティブが好きなスタッフが集まってくる、いい意味で社会人の枠に囚われすぎない集団って感じだからですかね?

高塚:そうですね。色んな世代の方が社内にはいますが、みんな若々しいというか。ノリや考え方も若ければ、ルックスや服装も若かったりして。そういう人たちと共に仕事をしているので自分もすごく若い気持ちでいられるのかなと。かつて、結構大きめに穴が開いたダメージジーンズで出社したことがあるんですよ。さすがに怒られるかな…なんて思っていたら、自分のよりもっと派手にダメージを受けたジーパンを履いた社長に遭遇するっていう(笑)

佐々木:社長から率先して若い姿勢でいることが攻めに繋がっているのかもしれませんね。

高塚:そうですね。僕がマリリンマンソンのTシャツを着ていったら、社長はレッドツェッペリンのTシャツを着ている みたいな(笑)


佐々木:そういえば社長はずっとケミカル・ブラザーズのTシャツを着ていましたね。昔、ビッグビートやデジタルロックが流行しクリプトンが売り上げを伸ばしたことを思い出します。

今日は皆さん、ありがとうございました。社員から社長まで、固定観念にとらわれず、アーティストTシャツを着ているという話で終わりとさせていただきます(笑)

ありがとうございました!

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