2025年6月7日、大阪・関西万博のポップアップステージ南にて、小笠原流による礼法と弓馬術を体験できる『武士の学校』を開催いたしました。
本プログラムは、特定非営利活動法人 七五が推進する取り組みの一環として、弊社近衞忠大がキュレーションし、伝統文化・武芸の魅力を来場者に“見て・知って・触れる”かたちで届けることを目的に構成したものです。
『武士の学校』は2022年から東京で複数回にわたり実施しており、今回の初の関西、しかも万博会場での実施となりました。
弓馬術礼法小笠原流とは
『武士の学校』は、鎌倉時代から続く弓馬術礼法小笠原流の指導のもと、礼法と弓術の体験を通じて本物の伝統文化に触れる学びの場です。今回は、小笠原流三十一世宗家嫡男の小笠原清基(おがさわら きよもと)さんを講師としてお迎えしました。
宮廷文化と融和し、武だけでなく礼を重んじた鎌倉期の背景から生まれた小笠原流。万博特別編では、流鏑馬の演武や武具の紹介を中心に、子どもから大人まで楽しめる工夫が随所に取り入れられています。
中央右:小笠原清基さん/ 中央左:近衞忠大/ 小笠原流の皆さま
流鏑馬(やぶさめ)演武
プログラム冒頭は、神事で奉納される流鏑馬の練習実演です。
装束は鎌倉期の狩装束(かりしょうぞく)。小笠原流では、平安期の陰陽道に基づく思想を受け継ぎ、「陰陽射(いんようい)」という独特の掛け声とともに矢を放つのが特徴です。凛とした礼と射の所作に、会場の空気がきりりと整いました。
木馬からの見事な流鏑馬に会場は歓声と拍手に包まれました
武具展示と体験
演武後は、実物の武具に触れる時間を設けました。
流鏑馬・笠懸(かさがけ)・犬追物(いぬおうもの)で使い分ける矢の違い、およそ200年前に作られたという兜、鎧や弓などを間近に観察。さらにVRによる流鏑馬体験では、矢を放つ瞬間の視点や速度感に大人も子どもも引き込まれていました。
本物の兜をかぶる子ども
VRで迫力ある流鏑馬を体験
稽古と演武
講師の小笠原清基さんが最初に稽古に臨んだのは3歳。馬上で弓を引いたのは小学校5年生の頃だそうです。「才能よりも、地道な稽古に我慢強く向き合う姿勢が大切」と語られた通り、終盤には日頃から稽古に励む皆さんの演武が披露されました。
小笠原流には許状(免許)制度があり、身につける道具でおおよその技量が示されること、評価は一度きりの試験ではなく日々の取り組みが重んじられることなどが紹介され、武士の精神にある「継続と鍛錬」が今も息づいていることを実感いただける内容でした。
美多彌(みたみ)神社の子ども流鏑馬で稽古に励む生徒さん
小学生の射手も見事な演武を披露
女性射手による演武
今回の『武士の学校』は、万博を訪れた幅広い来場者にとって、日本の礼と武に触れる貴重な機会となりました。NPO法人七五(ななご)の活動として、伝統の奥深さを楽しみながら学べる場をこれからも育ててまいります。
末筆ではございますが、本プログラムにご参加いただいた皆さま、ご指導いただいた小笠原清基さま、射手の皆さま、ならびに開催にご協力くださいましたすべての関係者の皆さまに、心より御礼申し上げます。
弊社は今後も、「創造的継承」を合言葉に、礼と技にふれる機会をひろげてまいります。次の舞台でも、皆さまに新たな発見をご一緒いただければ幸いです。