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日経MJに記事が掲載されました。

(スポーツマーケNEO) プロ野球2軍 熱狂メジャー級
イレブンスポーツ、600試合無料配信 TV形式で実況→1万人超が視聴 根尾も藤浪もスマホで「推し」

ファームは育成から稼ぐ場へ。球界の"常識"を変えるサービスが今、話題沸騰。そのサービスとは、2軍公式戦600試合超を無料でネット配信をする「イレブンスポーツ」だ。期待の新人・若手を見られるとあって1試合平均の「観客」は1万人を超え、波及効果は球場にも。スマートフォンでのスポーツ観戦が広がり、ファーム中継は一躍、メジャーコンテンツに昇格しようとしている。

バックネット裏から動きのある映像を撮る
「(中日ドラゴンズの)根尾(昂)くんのヒットが見れた!」「昼からファーム見られるのサイコー」。ツイッターで次々とつぶやかれるプロ野球・ファームの話題。そのきっかけとなっているのが、ネットで視聴できる2軍公式戦の動画だ。
今年3月に始まった動画配信サービス「イレブンスポーツ」は、主にプロ野球9球団の主催する2軍公式戦を無料で配信。年間750試合程度のうち、600試合超をカバーする。画面上には「BSO」が表示され、実況つきとテレビで慣れ親しんだ試合中継の形式を採用。ケーブルテレビなどで限定的に放送はされていたが、一気に試合数が増えた。

昨夏の甲子園大会を沸かせた日本ハムファイターズの吉田輝星投手ら期待のルーキーが活躍する姿、ケガで調整を続ける平成の怪物、中日ドラゴンズの松坂大輔投手、不調に苦しむ阪神タイガースの藤浪晋太郎投手らの登板も配信され、平日の昼間からツイッター上ではファンが熱狂する。
2軍の試合のプレーボールは平日昼間。新聞に味気なく載っている成績。アクセスがいいとは言いがたい球場。無料か1千円程度の入場料。これまで興業としてはなおざりにされていた感がぬぐえない2軍だが、熱量の高いファンほどその情報を渇望している。
「応援する感覚、濃さが全然違う」と話すのは熱心なヤクルトファンの秋葉裕子さん(41)。「推し」の中山翔太選手の打席などを中心に、休日に流しっぱなしで2軍戦を視聴。「力をつけて1軍にあがってくるのが見えて面白い」と話す。「推し以外の選手も2軍で活躍する姿を見ているから親しみがわく」。1軍昇格選手を目当てに現地観戦に行くことも。「その選手が初ヒットなんて打とうものなら……タオル買っちゃいます」

イレブンスポーツでの2軍戦の1試合平均の視聴者(累計)は1万5千~2万で、月間利用者は100万人。平均滞在時間は15分とスポーツのネット配信では比較的長い。中には1軍戦と「2元中継」を楽しむファンも。人気選手が活躍すれば試合後配信するハイライトが数十万~数百万回再生されることもある。
「甲子園大会、ドラフト、キャンプ、オープン戦と新人の話題で盛り上がるのに開幕すると1軍の話題ばかり。もったいないと感じていた」と話すのは運営会社のイレブンスポーツネットワーク(東京・港)の趙守顕社長。同社は、欧米や台湾など11カ国・地域で様々なスポーツをネット配信する英イレブンスポーツの日本支社だ。
プロ野球の2軍戦中継は長らく空白地帯。「1軍と同じような『テレビ仕様』で製作すると元が取れない」と同社では製作費を大幅に抑える。1軍なら1試合20~30人のスタッフでカメラを10台以上使うが、同社は4~5人で製作。カメラは主に3台で、メインのピッチャーキャッチャーカメラは無人で固定する。
機材も旅行かばんサイズ大のものを自社で開発。バン1台で放送設備の整わない地方球場にも駆けつける。1試合150万~200万円かかる製作費が3分の1から4分の1で済むという。「全球団、全試合見られることが大事。たまの放送では応援する選手が活躍しないかもしれない」と趙社長は説明する。一方「テレビ中継に慣れている視聴者が違和感なく見られる質は必要」と実況や有人のカメラは確保する。

若い男女など新たなファン層の姿が目立つ
現状はネット広告が収益源で、製作費を抑えても「持ち出し」状態だ。野球のデータ分析会社との提携話も浮上しており、来年以降、早期の収益化をめざす。
プロ野球のネット配信は今、伸び盛りだ。パ・リーグの1軍戦を全試合配信する会員制の「パーソル パ・リーグTV」を運営するパシフィックリーグマーケティング(東京・中央)は昨年、売上高が50億円を超え、12年間で27倍になった。
「映像はエンタメとして必須。その上でどこで何を見るかは消費者が選ぶ時代。消費者の新しいニーズに対応する必要がある」と同社メディア事業本部の森野貴史本部長は話す。
スマホの普及で卓球のTリーグなど、プロスポーツのネット配信市場は急拡大している。

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