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【代表 菅野インタビュー】「私たちは人生の限られた時間を預けあっている」。Google新卒時代からFIVE創業、LINEによる買収とこれから。急成長を続けるCEOの理念とは。

FIVE は「動画配信テクノロジー」と「モバイルファースト・クリエイティブ」を組み合わせて、スマートフォンでの映像流通を一手に担う事業を展開しています。

第一弾は代表取締役CEOである菅野にインタビューを敢行しました。創業から2017年までに年率平均400%の成長を遂げ、 スマートフォン動画広告プラットフォームとして最大級の規模となった4年目のスタートアップ。なぜそこまで急速なスピードで成長を実現できたのでしょうか。

学生時代、新卒で入社したGoogle時代、そして起業。赤裸々に語ってもらった人生のバックグラウンドから見えたのは「有限の時間に対する想い」でした。


菅野 圭介
ファイブ株式会社 代表取締役CEO
2008年に Google Japan に新卒一期として入社。
買収後のAdMob の日本オペレーションの立ち上げ、プロダクトマーケティングマネジャーとして
YouTube 広告製品等のマーケティング・収益化・映像クリエイティブエコシステムの拡大を担当。
2014年に FIVE を設立。



ーー 本日はよろしくお願いいたします。今回のインタビューでは「どういう想いを持って FIVE を創業されたのか」を紐解いていこうと考えています。まずは菅野さんのバックグラウンドから色々聞かせてください。学生時代はどのように過ごされていたのでしょうか?

今の事業にも繋がっている経験なのですが、19歳の頃、広告論という授業を大学で受講していたんです。たまたま、その講義で教授から、「全国学生広告論文」という懸賞論文があると教えてもらいました。当時電通さんが学生向けに主催されていたのですが、広告サークルやゼミ生が一年通じて研究して入賞を目指すような論文でした。

僕は広告サークルに入ったりゼミでマーケティングの勉強をしていたわけではなかったのですが、当時ぷらぷらして暇だったのと、どうやら賞金が100万円くらい出るみたいだぞ、とお金に釣られて参加したんです(笑)。

ーー なるほど。マーケティングや広告の勉強はされていなかったと伺いましたが、興味自体はあったのでしょうか。

父親がずっと映画の宣伝の仕事をしていたんです。手がけた映画がヒットした、しなかったというのを幼少の頃から観ていたので、宣伝という行為そのものは身近に感じていました。映画はすべての作品が新商品。封切りまでの決まった期間で、いつも認知度ゼロからはじまって、お客さんに知ってもって興味喚起ができるかが勝負。当たるか当たらないか、ある意味博打のような商売です。どんなにつまらない映画でも良いところを見出して必死に宣伝していって、終わると父親はほとんど内容を憶えていないんですよね(笑)。タイタニックが大ヒットしたときにはボーナスが出て、家族で喜んだのも良い思い出ですね(笑)。

ーー 身近に感じていて興味があったからこそ学生広告論文をやってみたいという気持ちが生まれたんですね。実際に取り組まれてみていかがでしたか?

テーマは「未来の広告を考える」という曖昧模糊としたものでした。当時ユーザーを取り巻くメディア環境を自分たちなりにリサーチして相当考え抜いたのですが、この時の思考がいまのプロダクトづくりの原点になりましたね。賞金目当てで始めたものの、膨大な時間をかけて論文を書いて、最後の2ヶ月は泊まり込みを続けました。一緒に参加していた友人と毎晩毎晩、誰に求められるでもなく広告の未来を考えていました。

そこで一つの確信を持ちました。「広告は一つの情報であり、情報テクノロジーが今後の広告の未来を変えていくんだ」と。世の中に流通する情報の量は年々加速度的に増加しているにも関わらず、あいもかわらず人の目玉は2つで、脳ミソは1つで情報処理能力もそう変わらなくて、1日は24時間しかない。「企業の情報である広告というものは、世の中のあらゆるコンテンツと、可処分時間を奪い合う形で競合する」と当時の論文に記しました。この論文を書いてから十数年経ちますが、その原則は変わらないと感じています。

広告が生き残るには本質的には3つしか解はない


ーー 論文として導き出したのは、どのような定義だったのでしょうか。

「企業が発信するの情報としての広告」が、あらゆるコンテンツと時間の奪い合いという観点で競合するという前提に立ったとき、生き残る方法は論理的に3つしかないと結論付けました。

1つ目は関連性が高い情報としての広告です。ユーザーが欲しいと思っている情報を的確に提供するソリューションとしての広告です。これはリスティング広告が「ユーザーの検索意図に近い広告がその瞬間に的確に出てくる」という革命を起こしました。ターゲティング精度を高めるアドテクノロジーの分野はこれを包括します。

2つ目はコンテンツとしての広告です。広告とコンテンツが競合するのであれば、広告がコンテンツよりも選ばれるだけの価値があればよい。じゃあコンテンツとして価値のある広告/情報って何かというと、エンターテインメントとして成立しているか、なにか役に立つユーティリティ・機能を提供するか、新しい知識を提供してくれるものか、のいずれかです。いまは、コンテンツマーケティングという言葉もありますね。とりわけ、表現力に富む動画というフォーマットはコンテンツとしての価値を持たせやすいと感じています。

3つ目は、コンテンツに溶け込む広告です。企業の情報としての広告があらゆるコンテンツと競合するのであれば、「コンテンツと戦わずに中に入っていってしまえば良い」という考え方です。古くはプロダクトプレイスメントと呼ばれる手法(例えば映画の中に実在のブランドを登場させる手法)や記事タイアップなどの手法がありますが、現在ではネイティブ広告と言われる分野も本来はこうした発想を持っていたはずです。

資本主義の枠組みの中で、企業の経済活動によって生活者との間で生まれる「情報の循環」を突き詰めて考えると、この3つの要素を満たすことがどんな時代でも大切なのではないかと考えました。その方法論がどんどんテクノロジーやデバイスで変わっていくと思ったんです。この発想を前提に、ガラケー時代の携帯電話で、アドサーバーからユーザー自身が広告を能動的に選んで視聴するかわりに、リワードとして通信費が広告料からまかなわれるモデルを提案しました。

ーー すごいですね。とても学生が辿り着いた答えだとは思えません(笑)。

頭でっかちなことを考えていました(笑)。そして考えれば考えるほど、Google って凄いなという結論になったのですよね。なにせ「世界中の情報を整理する」がミッションでしたし、広告を一つの情報として扱って、情報技術で革新を起こしていたわけですから。たまたま私が大学を卒業をする年にGoogleが国内ではじめて新卒採用を始めたこともあって、勝手に運命だと思って選考を受けました。


新卒時代に経験した失敗。そして世界は変えられる場所、という見晴らしの良さ。

ーー 新卒でそんな学生来たら、獲りますよね(笑)

「学生にしちゃ良く考えてるな」って思われたんですかね(笑)。でも、それは広告が好きだったからですね。初めこそ賞金目当てではありましたが、広義の意味での「ヒトや社会と情報の関わり方」について考えることが楽しかったですし、取り組んでいるうちによりテクノロジーに関心を持つようになりました。「没頭できるということは自分の仕事にすれば楽しいんだろうな」と考えるようになったんです。無事に論文で賞金ももらえて、バックパッカー旅行の原資にできましたし(笑)

ーー 新卒時代はどのような職種に従事されていたんですか?

入社当時の2008年はリスティング広告がある程度普及している時代でしたが、今のようないわゆるアドテクノロジーと呼ばれる領域はまだ一般化していない時期でした。

そんな中、当時普及しはじめたスマートフォン広告ネットワークの先駆けだったAdMobがGoogleに買収されました。日本で買収後のAdMobのオペレーションを始めるタイミングと重なって、私はそこの立ち上げに手を上げて携わらせていただきました。その他ではYouTube動画広告のプロダクトマーケティングです。「スマートフォン→動画」という、まさに今の事業に繋がる領域の黎明期の経験をさせていただきました。

ーー Googleで学んだものの中で、印象に残っているものはありますか?

テクノロジーで世界を変えていくということを自然体に考えている人が多かったことには大きな影響を受けました。また地球を俯瞰して物事を捉えていく視座の高さがありました。ファウンダー、そして経営陣が発信する「世界の見晴らしの良さ」に惹かれて優秀な人が集まる好循環は印象的でした。

ーー 今に繋がっている思い出深い経験や人の言葉はありましたか?

経験の部分では、2011年頃にAdMob で手がけたスマートフォン向け動画広告の取り組みの失敗ですね。個別では面白い事例は出てきたのですが、スケールはしませんでした。今考えればのデバイスの普及台数も足りていなかったし、通信環境も3Gで不十分、動画コンテンツを高速に読み込むだけの端末のスペックもなかった。ある意味でその頃に思い描いたことを、いまの事業に落とし込んでいるとも言えますね。

印象に残っている言葉はたくさんあって選ぶのは難しいのですが、例えば、2010年頃に当時CEOだったエリック・シュミットは「3つ大事なことがある。1つ目はモバイル。次にモバイルで、最後はモバイルである」とモバイルファーストを強烈にプッシュしていました。あとは中国での検索事業を検閲の問題で撤退したときに、“It’s not a business issue, but a moral issue.” (ビジネスの問題ではなくてモラルの問題なんだ) と言い切って、中国という巨大市場を捨てる瞬間も見ました。

その先見性と経営資源の集中のさせ方、ミッションオリエンテッドな考え方、そして変化が起きるとすれば自分たちが起こしていくというマインドセット。また、業界構造を完全に先読みしたうえでバリューチェーンを埋めていく企業買収の手法。いろいろな部分で刺激に繋がっていました。Googleのファウンダーやエグゼクティブから送られてくる全従業員向けのEメールレターもむさぼるように見ていましたね。

ーー そのようなレターをもらうだけで、一緒に働いているという意識、チームとしての士気も上がりますね。

そうですね。新卒として入社して、ある意味ではGoogle が掲げていたミッションやその世界観にかなり純粋に共感していました。非常に高い利益構造の事業をベースにつつ、魔法の掛け方がものすごくうまい。いまは、どちらかというと、それらを成立させていた経営技術により関心がありますね。


自分の人生を注ぐというテーマのもと、自分でひっかき傷を残したい



ーー その後2014年に FIVE社 を創業されました。起業に至った経緯はなんだったのでしょう?

学生時代からいつか起業したいなあ、という意思は持っていました。とはいえ、「自分は何者かになれるのだろうか」という、学生時代に誰しもが通過する青春の悩みの延長線上でしかなく、正直焦っていましたね。この頃は答えを求めて哲学書を読み漁りましたが、考えすぎちゃって起業からは逆に遠のくという(笑)。

そんな時にわりと自然体で考えられるようになったきっかけは、DeNA南場さんの「どうせ生まれて死ぬまであっという間。この世界に引っ掻き傷残して死にたいじゃん」という言葉ですね。引っ掻き傷を残したいって、スティーブ・ジョブズの「宇宙に鐘を鳴らすんだ」と比べたらずいぶん控えめですよね(笑)。肩の力が抜けて、素直にそう思うようになりました。それで、Googleで働いてしばらく経って、そろそろ自分の手でインパクトを生みたいなという思いを抑えられなくなったのと、動画という大きなマーケットの波が来るのが一致しました。結果的にそれが起業のきっかけですね。

ーー 自分の妄想を具現化したいという気持ちがそうさせたのかもしれませんね。

起業するしないに関わらず、仕事は存在証明でありたいし、自己表現でもありたいと思って生きていました。せっかく強烈なイノベーションが起きている分野で、貴重な人生の時間を注ぐものだから、価値を生みだして少しでも世界を前進させようよと。その気持ちはFIVEのチームメンバーの多くも持ってくれていると思います。採用時にも何度も何度も候補者の方と確かめ合っています。

人はそれぞれ有限の人生を生きます。一方的に採用する・されるという関係ではなく、お互いに「時間を預けあっているんだ」という感覚が大切だと思います。逆にいうと、貴重な人生の時間を投じる価値のある事業ができているのか?と常に問われるということも自覚しなくてはなりません。

ーー ちなみに、FIVE の社名の由来とはなんでしょうか。

時間価値の最大化です。もともとは「5秒」で伝えられる動画広告ということからスタートしました。スマートフォンのインターネットアクセスの時間は細切れで高頻度。ユーザーの高頻度・短時間アクセスに合わせて動画のコミュニケーションも変わっていかなくてはならないと考えました。そもそも動画というフォーマットは、ユーザーの貴重な時間を何秒間かもらってはじめて成立するものです。ここをテクノロジーとクリエイティビティを組み合わせて良い体験にしていく。

そういう意味では、「有限の時間」をいかに価値あるものにするかという点で、動画広告のプロダクトづくりも、採用や組織の考え方も、根底では同じだと思っています。

ーー 起業当時を振り返ってみていかがでしょうか?

ハードシングス的な事は多かれ少なかれありましたが、思い返しても精神的にはそこまで苦しくはなかったんです。CTOの小西とVP of Engineer の松本と僕の三人。ファウンダー三人でどんな重たい荷物も背負っていけるという感覚があったので。三人のタイプは本当にばらばらで、激しい議論も沢山しますが、背中を預けあっているという信頼が崩れた事はありません。テクノロジー・クリエイティブ・ビジネスを三位一体でやっていくという現在のFIVE のアイデンティティにもつながっています。

ーー 今も昔も変わらない会社のビジョンとはどのようなものでしょうか。

有限の時間を、テクノロジーとクリエイティビティでより良いものにしていく。その結果として、今、「映像流通を一手に担う存在」になれそうな手応えがあります。

僕たちの事業は、インターネットエコシステム全体で考えると、コミュニティを支える役割でもあると思っています。毎日われわれが利用するアプリやウェブサイトは、人々の暮らしを便利にしたり、楽しみを提供したり、価値観を拡げる役割があります。しかしそうしたコミュニティはつくるのに大変な労力とコストがかかる。FIVE は、テクノロジーやクリエイティビティの力でこのコミュニティを支える。そして動画という新しいフォーマットで、これまでテレビ市場が独占してきたマーケットとこうしたコミュニティを接続している。これが私たちの今の事業の本質だと思っています。


正しいか否かという問いに対して立ち止まれるか。



ーー 社内の雰囲気はどのようなものでしょうか。

エンジニアリングカルチャー、デザイン/クリエイティブカルチャー、営業カルチャーがごった煮です。エンジニアもデザイナーも本当にビジネスフレンドリーですし、ユーザーとクライアントへの価値を常に考えてくれています。だから、ビジネスチームは顧客にテクノロジーとクリエイティビティの価値を提供することにフォーカスできる。3つのカルチャーが入り混じっている状態は今後も保っていきたいと考えていますね。

メンバーは経験値を積んだ比較的成熟した人が多いです。落ち着いてストイックな感じですね。でもその内側にはパッションを持っている。そういうメンバーが多いです。

ーー 菅野さんの考える、「FIVE らしさ」とはなにか教えてください。

事業に健全なプライドを持ちたいと願っていることでしょうか。スタートアップであまり言わないことかもしれませんが、持続的な成長や大きなインパクトを生み出すためには、最後に必要となってくるものは倫理感なのかなと。逆説的ですが、自分たちのやっていることが正しいのか否かという問いに対して真摯でいられるかという部分だと思うんです。

自分たちのプロダクトが作る未来を信じられるか?は、迷ったときに立ち戻るべき質問だと思っています。

ーー 最後となりますが、今後 FIVE に入社一緒に働きたい人はどのような方でしょうか?

申し上げたように、動画はユーザーの時間をいただかなければいけないものです。 FIVEという会社で働くということも、限られた時間をお互いに預けあうことです。動画のマーケットに可能性を感じている方、時間の価値を大切にしようとする方と、健全なプライドを持って一緒に働かせていただきたいと考えています。

ーー なるほど、時間の有限性に対する意識。本当に一番大事かもしれませんね。本日はありがとうございました!


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