組織はなぜ潰れるのか” ~スタートアップの成長を阻む“成長の壁”の正体~

スタートアップには「成長の壁」が存在する。事業の成長、そして組織の拡大に伴い出現するその壁は、これまでに多くのスタートアップの成長を妨げてきた。「成長の壁」はなぜ生まれるのか、またなぜスタートアップはその壁を打ち破ることができないのか。株式会社フロムスクラッチ Corporate Strategy 執行役員の三浦に話を聞いた。

【目次】(読了時間:3分) ・スタートアップの行く手を阻む「成長の壁」とは何か ・「成長の壁」の正体、まずはどう30人の壁を超えるか ・第二の難関「50人の壁」を突破する処方箋 ・最大の難関「100人の壁」は実力者の逆襲が原因? ・コアメンバーの離脱が引き起こす組織崩壊 ・「成長の壁」を乗り越える   

スタートアップの行く手を阻む「成長の壁」とは何か

組織の悩みは尽きることはありません。そして、その悩みは企業の成長ステージによって大きく様変わりしていきます。とりわけ、スタートアップの顕著な組織の悩みに「成長の壁」というものがあります。この「成長の壁」は、一般的に従業員数が「30人」、「50人」、「100人」を迎える前後で出現すると言われています。

「成長の壁」とは、「組織人員数の拡大に伴って発生する“組織課題”であり、予防策や対応方法を間違えると、一気に組織が崩れてしまうリスクをはらんでいるもの」と説明できます。スタートアップにとって最も貴重な経営資源の1つがヒト=従業員です。素晴らしい人材が、自身に相応しいロールを全うできれば、企業の成長に多大なる貢献を果たします。 しかし、この「成長の壁」は、そんな最大の経営資源であるヒトを機能不全にする“魔力”を持っているのです。

では、具体的にどういったものなのか、説明していきます。

なお、この手の問題は“どの切り口から論じるか”によって内容や主張も大きく変わります。例えば、行動科学マネジメントの観点から整理することもできれば、バイアス論やマネジメント/リーダーシップ論の観点からも言及できます。それらをすべて一様にフォローすると、何が言いたいのかわからないまとまりのない内容になってしまうため、以下、少し極端に言い切っていくこともありますが、背景を理解したうえでご容赦いただければ幸いです。

「成長の壁」の正体、まずはどう30人の壁を超えるか

最初に結論から言ってしまうと、「成長の壁」と呼ばれる問題は、以下のようなステップで私たちの行く手を阻んでいきます。

  • 成長に伴い組織人員数が増える
  • 採用チャネルの複数化により、多様な価値観を持ったメンバーも増える
  • コミュニケーションパスが複雑化する&滞り出す
  • 適切に情報が流れないor誤って伝わる
  • 問題の発見が遅れ、軌道修正をスピーディにできない

上記がどういうことか、「人数別」に説明をしていきます。

まず「30人の壁」から。一般的にアーリーステージと呼ばれるこの時期に、1~2回目の資金調達を行うスタートアップが多い印象です。この段階でのポイントはずばり「経営陣の業務・工数分散」です。これまでスーパースター人材であった経営陣(≒創業メンバー)には業務が偏りがちです。その偏った業務を“どれだけ分散させていける”かが成長の鍵を握ります。

業務の分散がうまくいくと、企業は初めて「組織化」することに成功します。特定の部署が特定のミッションを遂行する「組織の骨格」が出来上がるのです。

そして、経営陣から業務をひっぺがし、代わりにミッションを遂行するのは経営メンバーが「リファラル採用」で採用した縁故者が多い印象です。価値観もある程度理解しており、仕事のスタイルやスキルセットも把握しているため、うまいこと業務分散・権限移譲が進んでいきます。

極端にまとめてしまうと、「30人の壁」は事業成長に伴って、(リファラル)採用がうまく進むかどうかが大きなポイントになります。 なぜリファラル採用かというと、成長初期にあるスタートアップは、知名度・イメージともに相対的に見劣りすることが多いため、接点のまったくないところからの人材採用がうまくいかないことが多くあります。そのため、経営メンバーが採用にコミットメントを移し、実際に充てる時間を増やしていくことが、縁故メンバーの採用につながります。そしてそれは、企業の成長にダイレクトにつながっていきます。

第二の難関「50人の壁」を攻略する

次に「50人の壁」です。ここから徐々に組織の問題が表面化してくるケースが多いようです。組織規模が50人程度に達するのは、1~2回目の資金調達をしてから、だいたい半年~1年後くらいで迎える企業が多いでしょうか。うまく権限移譲が進み、それぞれの部門で“組織長”が生まれつつある組織に、新たに追加で数十人の新規入社者が加わるのがこの時期です。

ここで顕著な事象が

  • 新規接触による採用が急激に増える(=縁故採用中心でなくなる)
  • 組織内のコミュニケーションの階層が深くなり、複雑化する

前者は、これまで縁故採用が中心であった採用から、エージェントやダイレクトリクルーティング、直接応募などの採用手法によって、新規接点の候補者の入社が増えることを意味します。ここでやってしまいがちなのが「前職ブランド」や「スキルセット・経歴」のみを重視し過ぎてしまい、“えいや!”で採用してしまうことです。このような採用を繰り返していくことで、徐々に “異文化な人材”が組織に入っていくようになります。これが、いずれ「価値観のズレ」や「行動指針のズレ」、そして「意思決定軸のズレ」を生み出し、最悪の場合は内部分裂にまで発生します。なぜそうなってしまうのかについては後程また説明しますのでここでは割愛します。

後者は、徐々に経営陣(創業メンバー)と現場とのコミュニケーションが希薄化していくことを意味します。一般的に言われていますが、1人がマネジメント(≒コミュニケーション)できる人員数は20~30名が限界と言われています。すると、経営陣が把握していないところで、現場同士のコミュニケーションが一気に増えていきます。このこと自体は悪いことではないのですが、時に誤った(ネガティブな)情報が伝播されていったり歪んだ解釈のコミュニケーションが行われたりすると、一気に“組織の悪性ウィルス”が蔓延するきっかけになります。タバコ部屋や飲みの場などで、一気に愚痴や批判的意見が増えるのはこのころです。

このときの処方箋としては、ミドルマネジメントの強化が挙げられます。経営陣と現場 をつなぐコミュニケーションパスとして機能するミドルマネジメントが、常に適切な情報・文化・価値観・業務ミッションを伝達し続けることで、組織に新鮮な血流が絶えず流れ続けます。成長期に差しかった企業によく見られる「拡大への疑問」、「やりがいの喪失」、「売上成長の否定、顧客満足重視」、「ビジョンと日常業務との乖離で生じる疑問」なども、ミドルマネジメント層がいればすぐさま察知して、“正していく”ことができます。信頼できるミドルマネジメントを、どれだけ早期から育成しておくことができるかがポイントになります。 (画像著作者: Vive La Palestina)

最大の難関「100人の壁」。実力者の逆襲を防ぐ

30人、50人の壁を乗り越えていくと、いよいよ最大の難問、「100人の壁」が我々の前に立ちふさがります。ラスボス感が漂うこの壁は本当に強敵で、これまでに幾多のスタートアップを潰してきた魔王的存在です。

この時期は、事業の成長を加速させていくタイミングです。言い方を変えれば、人員不足がボトルネックとなってしまい事業成長が鈍化しないよう採用も加速させていく時期です。このフェーズに入ると、「50人の壁」のときに紹介をした

  • 新規接触による採用が急激に増える(=縁故採用中心でなくなる)
  • 組織内のコミュニケーションの階層が深くなり、複雑化する

に加え、

  • 成長を牽引してきたコアメンバーの離脱

という破壊力抜群なイベントが起こります。どういうことが、それぞれ詳しく説明します。

接点のないメンバーの採用は前述した通りです。事業の成長に合わせるべく、経験者採用を加速させていくわけですが、“力のある方の採用”というのは時に諸刃の剣と化します。実力者と呼ばれる方々は、幾多の死線をかいくぐり実績を出してきた方々です。当然、自分の仕事にこだわりやポリシーがあります。これが厄介の種になることがあるのです。例えば、自分の方針と異なる決定がされた場合や、前所属会社で当たり前のように行われていたことが実施されなかったりすると「普通は・・・」、「常識的に考えて・・・」、「あの決定は違う・・・」などのネガティブな解釈・発言を定常的に行うようになります。自身のやり方や過去の成功に引っ張られすぎて(俗に言う「成功の復讐」というやつです)、新しい組織にフィットできなかったりもします。これが一番危険なのです。

結局、考え方ややり方をお互いチューニングすることができず、嫌な別れ方をしてしまうことも少なくありません。だけどスキルはある方なので、メンバーからの信頼も厚かったりします。そうなると近くにいた部下やメンバーもずるずる引きずられて・・・といった最悪の事態も起きがちです。

だからこそ、採用時にはスキルや実績があるという要素だけではなく、文化やビジョンマッチング、柔軟性・順応性(素直さ)という要素も重要なのです。採用で妥協してはいけないとよく言われますが、それはこのような事態を防ぐためでもあるのです。

また、社員数が増えると組織内のコミュニケーションが複雑化することは自明です。そして、このコミュニケーションの複雑化は、前述した「実力者の逆襲」とも密接に関係します。

例えば、コミュニケーションのハブとなるミドルマネジメント層に、考え方やポリシーの合わない実力者が配置されれば、思いもよらぬところでマイナス・ネガティブな情報や解釈を現場とやり取りされる恐れがあります。そして、これが知らず知らずのうちに組織を腐らすきっかけになるのです。    

コアメンバーの離脱が引き起こす組織崩壊

そして、最も危険かつ避けがたい事象が「成長を牽引してきたコアメンバーの離脱」です。離脱する理由としては、もちろん経営方針や組織観の不一致によるものも当然あるでしょう。一方で、初期の成長を牽引してきたメンバーは、客観的に見ても非常にスキルフルで、市場価値の高い方々です。そうしたメンバーには、様々な企業から絶えず魅力的なオファーが届くものです。加えて、優秀な方というものは、自身の将来に対する強い意思や想いも持っており、機が熟せば積極的に新たな挑戦を選択する方も多いのが実情です。 

ちょうど従業員数が100人に達する時は、初期の成長を牽引してきたメンバーが入社してから2年~3年を迎える時期だったりもします。そうした時期的な要因も相まって、他社に引っ張られてしまったり、自らの意思で起業(新たな挑戦)を選択するといったイベントが徐々に増え始めます。もちろん、こうしたメンバーが離脱せず、ずーっと一緒に仕事ができたら幸せですが、そうも言っていられません。

この問題に対する処方箋は「依存度の希薄化」を推し進めることです。スーパースター人材1人に重要な業務が集中しすぎていると、その人が抜けたときのインパクトは想像を絶します。そうではなく、個人への依存度を極力低め、誰が抜けても組織が回る状態をつくることを常に目指すのです。 

「今、誰が抜けたらダメージが大きいですか?」といった質問に対して、「誰が抜けても大丈夫です」と胸を張って答えられる状態をつくることが、このとき一番大切なポイントです。

「成長の壁」を乗り越えていくために

30人、50人、100人と一気に成長の壁について説明をしてきました。もちろん、私が挙げたことは、事象のいち側面でしかないですし、取り上げた課題も真因ではないかもしれません。加えて、組織は生き物であり、100社あれば100通りの問題と解決方法があります。なので、「参考にする」くらいの軽い気持ちで、理解していただければ幸いです。

また、種々の組織課題を発生させないために最も効果のある処方箋は「採用≒エントリーマネジメントの徹底強化」と「経営陣の組織づくりへのコミットメント」であることは、言わずもがなです。 

多様性あふれる組織づくりを尊重する一方で、「ここだけは譲れない」というビジョンや組織共感を妥協せずに仲間づくりができるかがポイントになるのでしょう。同根異才という言葉を良く使いますが、多様性ある組織づくりの肝はこの言葉に凝集されていると思います。

同根=ビジョン共感があり、かつ異才を放つ=多様なスキル・価値観を尊重する組織を目指したいものです。

偉そうなことを言ってきましたが、フロムスクラッチはまさに今「100人の壁」を迎える真っただ中です。事前に処方箋を準備しているので、うまく乗り越えられるとは思いますが、気は抜けません。素晴らしい結果を生み出す、素晴らしい組織をつくるべく、今後も日々研鑽していきたいと思います。 (フロムスクラッチ執行役員 三浦 將太)   株式会社フロムスクラッチでは、世界最高峰のマーケティングテクノロジーを支えるCHRO候補を募集しています。ご興味のある方はぜひ求人ページをご覧ください!

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